天空への回廊(笹本稜平)
内容に入ろうと思います。
真木郷司は世界でも有数のクライマーで、エベレストへの登攀に挑んでいる。しかしその最中、大規模な雪崩に巻き込まれてしまう。
なんとか生還した郷司だったが、親友のフランス人クライマーが行方不明になってしまっていた。雪崩の原因は、エベレストに隕石が落ちたからだというが、どうも違うようだ。
エベレストはすぐ入山禁止となり、アメリカ軍がやってきた。説明によれば、エベレストに落ちたのは隕石ではなく衛星で、そこには原爆の材料にもなるプルトニウムが含まれている、という。アメリカの威信をかけて回収作戦を行うので協力してはもらえないか、と打診された。
正直付き合う義理はないと思った郷司だが、未だ行方不明だった親友の捜索についでということで了承した。
しかし事態は、どんとんと不穏な方向へと進んでいく。エベレストに落ちたのはただの衛星ではないし、エベレストでもカトマンズ市街でも、そして世界のあちこちで不穏な動きが続発していく。
一体何が起こっているというのか。何を信じたらいいのかまるでわからない中で、エベレストという超極限状況で繰り広げられる国際謀略小説!
いやはや、これはちょっととんでもないなんてもんじゃない作品でした。凄すぎます!
正直読み始めは、ちょっと厳しいかなぁ、という部分はあったんです。というのも、登山(なんかもっと適切な表現があった気もしますが)に関する描写がちょっと辛かったんです。よく意味の分からない専門用語が多々出てきて、結局最後まで、登山中の描写はどんな状況なのかよく分からないまま読みました。本作で唯一難点があるとすれば、この部分だと思います。アドバイスとしては、僕と同じく、登山に関する描写は、あまりイメージできなければ流し読みしちゃえばいいと思います。
しかしストーリー全体はちょっと凄すぎました!『エベレストの山頂付近に衛星が墜落した』という設定から、まさかこんなとんでもない物語が展開されるとは思ってもみませんでした!圧巻と表現する以外にはないくらいで、僕の中で著者の評価が一気に急上昇しました。
状況がとにかく、二転三転どころの騒ぎじゃないんです。色んな人間がそれぞれの思惑を隠したままで行動して、それが徐々に明かされていくんですけど、一枚一枚ベールを剥がされていく度に状況のとんでもなさは加速されていって、最後には、まさかこんな物語になるとは!としかいいようのない展開なんです。
いやだってですね、僕がとりあえず考えてみたPOPのフレーズが、こんな感じなんです。
『今世界を救えるのは、エベレストにいる真木郷司ただ一人!
とんでもないスケールの、圧倒的な物語!』
世界を救う、とか書いてるけど、セカイ系の作品じゃないんですよ。ホントに最後の最後、大変なことになるんです。
しかもですね、それが超極限状況のエベレスト山頂付近で展開されるわけです。そこでの真木郷司の人間ドラマは、壮絶という言葉を遙かに超えます。郷司は本当に、人間の限界の限界の限界を優に超えるような状況に挑まざるおえなくなるんです。次から次へと状況が変転する中で、一番関係ないのに(基本的にアメリカが悪い)、一番壮絶な役割をこなさざるおえなくなっているんです。世界を救う役目を果たさなくてはいけない人間が、本書でほぼ唯一と言っていい日本人の郷司である、というのも、日本人の僕らが読む場合は、かなり大きな影響を与えると思います。
ホント、最後の最後は泣きました。郷司のあまりにも無謀な、あまりにも孤独な、あまりにも悲惨な状況の数々に、しかしそうしなければとんでもない事態が引き起こされてしまうという使命感のみで立ち向かっていく郷司の姿は本当に素晴らしくて、思わず感動させられてしまいました。
ネタバレをなるべく回避したいんで、ストーリーにはほとんど触れられないんですけど、ストーリーと人間ドラマが両輪となって、どちらかが欠けてもここまでの物語は生み出し得なかっただろうという感じがしました。練りに練られたストーリーや設定が、郷司の周囲の人間ドラマを生み出し、またその人間ドラマがストーリーの方で新たな展開を生み出していく。それぞれが信じる理想や使命や、あるいは大切に想う誰かのために必死になって立ち向かおうとする姿は、エベレストという超極限状況と相まって、読む人を惹きつけずにはいられません!
久々に、ちょっと『凄過ぎる』物語を読んだな、という感じがします。本当に練られた物語で、物語の一部だけに触れるということが出来ないんで、内容についてはほとんど触れられなくて残念なんですが、このスケールのデカさは、並の日本人作家の作品にはない圧倒的なものだと思います。初めの方でも書きましたが、正直登山に関する描写は、専門用語が多すぎてなかなかイメージしにくい部分もあって、そこがじゃっかん読みにくさを与える部分はあるだろうけど、僕のアドバイスとしては、そういう部分は流し読みしてしまえばいいと思います。厚い作品ですが、イッキ読み間違いなしです!これは是非読んで欲しい作品です。
笹本稜平「天空への回廊」
真木郷司は世界でも有数のクライマーで、エベレストへの登攀に挑んでいる。しかしその最中、大規模な雪崩に巻き込まれてしまう。
なんとか生還した郷司だったが、親友のフランス人クライマーが行方不明になってしまっていた。雪崩の原因は、エベレストに隕石が落ちたからだというが、どうも違うようだ。
エベレストはすぐ入山禁止となり、アメリカ軍がやってきた。説明によれば、エベレストに落ちたのは隕石ではなく衛星で、そこには原爆の材料にもなるプルトニウムが含まれている、という。アメリカの威信をかけて回収作戦を行うので協力してはもらえないか、と打診された。
正直付き合う義理はないと思った郷司だが、未だ行方不明だった親友の捜索についでということで了承した。
しかし事態は、どんとんと不穏な方向へと進んでいく。エベレストに落ちたのはただの衛星ではないし、エベレストでもカトマンズ市街でも、そして世界のあちこちで不穏な動きが続発していく。
一体何が起こっているというのか。何を信じたらいいのかまるでわからない中で、エベレストという超極限状況で繰り広げられる国際謀略小説!
いやはや、これはちょっととんでもないなんてもんじゃない作品でした。凄すぎます!
正直読み始めは、ちょっと厳しいかなぁ、という部分はあったんです。というのも、登山(なんかもっと適切な表現があった気もしますが)に関する描写がちょっと辛かったんです。よく意味の分からない専門用語が多々出てきて、結局最後まで、登山中の描写はどんな状況なのかよく分からないまま読みました。本作で唯一難点があるとすれば、この部分だと思います。アドバイスとしては、僕と同じく、登山に関する描写は、あまりイメージできなければ流し読みしちゃえばいいと思います。
しかしストーリー全体はちょっと凄すぎました!『エベレストの山頂付近に衛星が墜落した』という設定から、まさかこんなとんでもない物語が展開されるとは思ってもみませんでした!圧巻と表現する以外にはないくらいで、僕の中で著者の評価が一気に急上昇しました。
状況がとにかく、二転三転どころの騒ぎじゃないんです。色んな人間がそれぞれの思惑を隠したままで行動して、それが徐々に明かされていくんですけど、一枚一枚ベールを剥がされていく度に状況のとんでもなさは加速されていって、最後には、まさかこんな物語になるとは!としかいいようのない展開なんです。
いやだってですね、僕がとりあえず考えてみたPOPのフレーズが、こんな感じなんです。
『今世界を救えるのは、エベレストにいる真木郷司ただ一人!
とんでもないスケールの、圧倒的な物語!』
世界を救う、とか書いてるけど、セカイ系の作品じゃないんですよ。ホントに最後の最後、大変なことになるんです。
しかもですね、それが超極限状況のエベレスト山頂付近で展開されるわけです。そこでの真木郷司の人間ドラマは、壮絶という言葉を遙かに超えます。郷司は本当に、人間の限界の限界の限界を優に超えるような状況に挑まざるおえなくなるんです。次から次へと状況が変転する中で、一番関係ないのに(基本的にアメリカが悪い)、一番壮絶な役割をこなさざるおえなくなっているんです。世界を救う役目を果たさなくてはいけない人間が、本書でほぼ唯一と言っていい日本人の郷司である、というのも、日本人の僕らが読む場合は、かなり大きな影響を与えると思います。
ホント、最後の最後は泣きました。郷司のあまりにも無謀な、あまりにも孤独な、あまりにも悲惨な状況の数々に、しかしそうしなければとんでもない事態が引き起こされてしまうという使命感のみで立ち向かっていく郷司の姿は本当に素晴らしくて、思わず感動させられてしまいました。
ネタバレをなるべく回避したいんで、ストーリーにはほとんど触れられないんですけど、ストーリーと人間ドラマが両輪となって、どちらかが欠けてもここまでの物語は生み出し得なかっただろうという感じがしました。練りに練られたストーリーや設定が、郷司の周囲の人間ドラマを生み出し、またその人間ドラマがストーリーの方で新たな展開を生み出していく。それぞれが信じる理想や使命や、あるいは大切に想う誰かのために必死になって立ち向かおうとする姿は、エベレストという超極限状況と相まって、読む人を惹きつけずにはいられません!
久々に、ちょっと『凄過ぎる』物語を読んだな、という感じがします。本当に練られた物語で、物語の一部だけに触れるということが出来ないんで、内容についてはほとんど触れられなくて残念なんですが、このスケールのデカさは、並の日本人作家の作品にはない圧倒的なものだと思います。初めの方でも書きましたが、正直登山に関する描写は、専門用語が多すぎてなかなかイメージしにくい部分もあって、そこがじゃっかん読みにくさを与える部分はあるだろうけど、僕のアドバイスとしては、そういう部分は流し読みしてしまえばいいと思います。厚い作品ですが、イッキ読み間違いなしです!これは是非読んで欲しい作品です。
笹本稜平「天空への回廊」
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