さて所謂極右と言われるルペン候補の存在から注目されていたフランス大統領選挙、23日に行われた投票の結果、2016年に結成された出来たてほやほやの中道政党アンマルシェのマクロン候補、極右と言われるものの1972年結党で比較的歴史ある政党である国民戦線ルペン候補による決選投票が来月7日に行われることとなりました。フランスでは議会選挙でも大統領選挙でも1回の投票で1位候補が一定のラインを超える得票が得られない場合、決選投票を行う仕組みがあるのですが、大統領選挙で2大政党である社会党・共和党双方の候補が進出できなかったと言うのは異例の事でかつ相当に深刻な事態と言えます。自国第一か、EU再構築か 仏大統領選、5月7日決選へ@朝日新聞2017/4/24より
フランス大統領選の第1回投票が23日にあり、欧州連合(EU)の統合推進を掲げるエマニュエル・マクロン前経済相(39)と、EU離脱の国民投票を公約とする右翼・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(48)が5月7日の決選投票に進むことが固まった。既存の2大政党である中道左派・社会党と中道右派・共和党の候補がいずれもいない異例の対決だ。
2012大統領選挙 | ||||
候補 | 政党 | 得票率 | ||
オランド | 社会党 | 28.63 | ||
サルコジ | UMP | 27.18 | ||
ルペン | 国民戦線 | 17.9 | ||
メランション | 左翼戦線 | 11.1 | ||
2012議会選挙 | ||||
政党 | 得票率 | 獲得議席 | 議席占有率 | 占有率/得票率 |
社会党 | 29.35 | 280 | 48.5 | 1.65 |
UMP | 27.12 | 194 | 33.6 | 1.24 |
国民戦線 | 13.6 | 2 | 0.3 | 0.02 |
左翼戦線 | 6.91 | 10 | 1.7 | 0.25 |
前回2012年の大統領選挙の際は5月の決選投票の巣ご後の6月に国民議会選挙が行われたのですが、この際2大政党である、社会党・UMPは大統領選挙とほぼ同じ得票率で2大政党に優位な選挙制度のもとで大きな議席を獲得し、ルペン候補の所属する国民戦線はこの2党等に次ぐ13.6%の得票を1回目の投票で得ているのですが、獲得議席はわずか2と言うとても民主主義国家とは思えない獲得議席しか得られていません。
自国第一か、EU再構築か 仏大統領選、5月7日決選へ@朝日新聞2017/4/24よりそれが逆転する可能性が出てきているのです。2大政党の社会党やUMPは友党と言われる政策の近いほかの政党と共同戦線で戦うリスクヘッジはあるのですが、それでも現オランド大統領の所属する社会党に関しては6.4%と大きく沈み込み有力な友党である左翼戦線のメランション候補が3倍以上の19.6%もの支持を獲得した以上、左翼陣営での主導権を失いかねず、一歩間違えると獲得議席が1ケタと言うのも有り得るのではと考えられます。そして2大政党以上の支持を得たルペン氏の国民戦線、メランション氏率いる左翼戦線が前回の選挙の様に大政党の割を食うことなく100以上の議席を獲得し、存在感を得ると言うのも可能性としてなくはないと思われます。昨年話題になったブクレジットはイギリス保守党の政策の結果、トランプ大統領はあくまで共和党の候補として当選した、あくまで2大政党の枠組みそのものを崩す出来事ではなかったことを考えるとこの事は昨年の2つの出来事以上の事と言えるかもしれません。
仏内務省の集計(開票率97%)では、マクロン氏の得票は23・9%で、ルペン氏が21・4%。最大野党・共和党のフランソワ・フィヨン元首相(63)は19・9%にとどまっており、開票開始からほどなく敗北を認めた。選挙戦の最終盤で急伸した左翼のジャンリュック・メランション欧州議会議員(65)は19・6%。与党・社会党のブノワ・アモン前国民教育相(49)は6・4%に沈んだ。投票率は78・7%だった。
日本 | ドイツ | フランス | |
2011 | 4.58 | 5.85 | 9.21 |
2012 | 4.33 | 5.38 | 9.77 |
2013 | 4.01 | 5.23 | 10.31 |
2014 | 3.58 | 5.01 | 10.32 |
2015 | 3.38 | 4.61 | 10.37 |
さて既存2大政党、特に現オランド大統領の所属政党である社会党の支持は何故ここまで落ちてしまったのでしょうか?それは経済的な失策と言えます。日本やドイツと失業率を比較すると日独両国が2011年から2015年までの4年間で1.2%改善しているのに対しフランスは9.21→10.37%と1%以上悪化し10%を超えているのがわかります。
ヨーロッパの若者の失業率がヤバい!働けない若者が急増中@セカイコネクト2016/3/11より特に若い世代の失業率は30%以上とも言われそれだけが原因ではないとはいえ2015年にはシャルリー・エブド襲撃事件、パリ同時多発テロ事件と2016年には2016年ニーストラックテロ事件、大統領選挙真っ最中にはシャンゼリゼ通りで銃撃事件、とオランド政権後期には大規模なテロ事件が立て続けに発生しています。
15~24歳の失業率が、イタリアで40%、フランスで30%、ギリシャやスペインではなんと50パーセントを超えているそうです。一方日本はというと、若者失業率はおよそ6%。就職氷河期なんて言葉も耳にしますが、実はヨーロッパと比べてみると、日本では職に就いている若者の割合がかなり高い国なのですね。
19. オランドは社会党か@フランスニュースダイジェスト2015/6/18よりそしてそんな時期に行われたのは政府支出=福祉などの水準低下ともいえるEUから要請のあった緊縮財政策と言うのが政権や社会党だけでなくEUへの悪印象をフランス国民に与えたのは言うまでもありません。
ところが、オランド政権が公約ではサルコジ前政権の緊縮財政を激しく批判して経済成長優先をうたいながら、その緊縮財政にかじを切ったのを、モントブールが「公約違反」として痛烈に批判した結果、ヴァルス首相が2014年8月に総辞職という思い切った方法でモントブールとモントブールに同調していたアモン国民教育相、フィリペッティ文化相の3人を再任せずに切って捨てた。
国民戦線 (フランス)@Wikipediaよりそしてそんな中社会党に失望した人達の受け皿となったのが世間的には極右と言われるルペン候補です。確かに自国と自国民を優先する姿勢は極右や排外主義と言えるかもしれません。とは言え、給与や安定性を中心とした雇用環境の悪化の原因ともいえるグローバリズムの否定や共通通貨ユーロの存在によって失われた通貨政策の自主性、EU委員会によって押し付けられた緊縮財政などによる政策的デフレを否定していく様子は若い世代を中心とした現状に不満を抱く人たちに希望を与えたのではないかと思います。国民戦線の左傾化[編集]
一方FNのマリーヌ・ル・ペンは、彼女の父親が標榜したレーガノミクスや小さな政府といった思想を退けた。 マリーヌ・ル・ペンはフランスの福祉国家モデルを擁護し、そして新自由主義に反対し、左派の票を獲得することに成功した[18]。 さらにはグローバリゼーションをジャングルの法とし、その法の下で多国籍企業が労働力を安く使うものだとした。
マリーヌ・ル・ペンが大統領になった場合の最初の仕事は、フランス経済・財務省にフランス・フランの再導入を命ずることである。 共通通貨ユーロを使う限りフランスは独立な金融政策を採ることができない。 2000年頃にはGDPの約2.5%の経常収支黒字だったが、2015年頃にはマイナス1.5%となっている。 ル・ペンはこの現象を「ゆっくりとした拷問」であるとし、1930年代にフランスが金本位制の下で経験したデフレーションにたとえた[18]。 フランスが自国通貨を有していれば、減価させることで輸出競争力を高めることができる。 ユーロ拘束衣を着たままフランスが競争力を回復させることは非常に難しいとル・ペンは述べる。
国民戦線 (フランス)@Wikipediaよりそして蛇足的ですが、国民戦線と言う政党は、21世紀に入って出てきた政党の様に見えますが結党は1972年、日本で言えば民進党等平成にできた政党よりも20年以上長い歴史を持ち、また民進党を除く平成にできた多くの新党が中心人物から上手く次世代にバトンを渡せずに衰退していったのに比べ世代交代を実施したうえ今後の展開に邪魔になるとしたら創業者を追い出した上にきちんと結果も出しているのは確かに政策的に支持できない部分は多いにせよ、1政治家、1政党としては単純にすごい事ではないかと思います。
マリーヌ・ルペン党首となってからは穏健路線を模索しており、政権獲得も視野に入ってきたことから、反ユダヤ的発言など相変わらず右翼的発言を繰り返すジャン=マリー・ルペン名誉党首との父娘の確執が深まり[12]、ジャン=マリー・ルペンは2015年5月に国民戦線の党員資格を停止され[13]、10月には党を除名された。
さてそんなルペン党首と国民戦線が注目されるフランス大統領選挙ですが来月の決選投票でどのような結果が出るのか良くも悪くも注目されます。