突然、信用保証協会から、保証債務の請求が届きました。
自営で事業はしていますが、金融機関からの借入れなどはなく、信用保証協会との付き合いなどもありません。
調べてみると、3年前に亡くなった父親が会社を経営していたのですが、その会社の銀行借入れが信用保証協会に代位弁済をされ、今頃になって相続人に請求してきたようなのです。
亡くなった父親に、相続する資産など残っていませんでしたから、私にとっては青天の霹靂です。
この様な事例は、少なくないと思います。
事業をする父親が亡くなっても、相続人が、経営状況を把握しているとは限りません。
息子が、後継者として会社に入っており、ある程度のポジションについておれば、正しい経営状況や債務の存在などについても把握できるのかもしれません。
しかし、会社債務の保証状況まで把握できているとは限りません。
もし、後継者もおらず、亡くなった父親が1人で切り盛りしているような状況であれば、相続人が正しい状況を知るのは難しいでしょう。
ましてや、父親が、友人などの会社の保証人になっていた場合などは、相続人がその保証債務の存在を知ることは不可能だといえるでしょう。
したがって、被相続人が亡くなって、暫く経ってから、突然に知らない保証債務の請求をされる、この様な事例は少なくはないのです。
資産という権利だけではなく、負債や債務といった義務も、相続の対象となります。
中小企業経営者のご家族であれば、この様な知識をお持ちの方は少なくないと思いますが、深くはご存じないことが多いようです。
相続人であるご家族が、父親の会社が厳しい経営状況であることを知っていたならば、相続において注意をなさるかもしれません。
しかし、健全な経営だと認識されていた様な場合は、保証債務までは気が回りにくいように思います。
まだ、相続すべき資産が存在している場合は、税理士などと相談もされてチェックのしようもありますが、目ぼしい相続資産がないような場合は、相続について多くは放置されることになるでしょう。
そうなると、保証人の地位を承継し、知らないうちに保証債務を背負うことになるのです。
保証債務などといった負債や債務を相続しないためには、相続放棄をしなければなりません。
限定承認という資産に見合う負債・債務だけを相続する方法や、特定遺贈などを活用する方法もありますが、相続放棄を活用されることがほとんどではないでしょうか。
相続放棄とは、相続人が被相続人の遺産の相続を放棄することで、相続の開始を知った日から3か月以内に、家庭裁判所にて手続きすることで成立します。
相続の開始時点で、保証債務などの負債・債務の存在が判れば、この相続放棄により保証債務の相続を回避することができます。
しかし、問題は、相続の発生を知った日から3か月を経過して以降に、保証債務の存在を知った場合です。
3か月を過ぎてますから、相続放棄もできないと、大慌てすることになるでしょう。
しかし、まだ、相続放棄できる可能性はあるのです。
最高裁の判例による考え方で
1. 被相続人との関りが無く、相続放棄できなかったことに相当の理由がある場合
2. 債務・負債の存在を知らなかった場合
この2つの要件を満たす場合は、相続が開始して暫く経過していても、相続放棄できる可能性があるのです。
それでも、債務・負債の存在を知ってから3か月以内の手続きになりますので、スムーズな取り組みが必要になります。
ただ、相続放棄ができたとしても、その事実を債権者が認めるかは別の話になるようです。
特に、要件の1つである被相続人と関りが無いという点や、債務・負債の認知において注意しなければならないでしょう。
冒頭でご紹介した事例の場合は、代位弁済後5年目の、時効中断のための請求だと思われます。
請求と共に、相続放棄をした書類があれば送付するようになっていましたから、まだ善意のある対応だと思います。
この好意に、少し感謝しつつ、相続放棄したことはやぶさかではありません。
しかし、世の中には、悪意を持って対応する輩も多く、相続開始後3か月が経過してから請求してくることも少なくはありません。
相続が発生すれば、資産が気になるのは仕方ないでしょうが、中小企業経営者の相続人であれば、負債・債務にも注意してください。
同時に、被相続人になるかもしれない経営者にとって大事なことは、負債・債務の存在、特に保証債務の存在を、日頃から相続人に知らせておくことだと思います。
中小企業の経営者は、保証人として保証債務を背負っていることが多く、経営破綻のリスクと背中合わせの状況です。
したがって、常に保証債務の存在を頭に入れ、万が一の準備と対応も視野に入れておく必要があるのでしょう。
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