借金を処理する場面において、時効の活用は、債権債務両面において重要なキーワードとなります。

時効が完成すれば、借金は請求されなくなるのですから、貸した側の債権者は万全の態勢で阻止しようとしてきます。

正しく、債権者である金融関係機関と、借金をした債務者間における、生死を掛けた攻防といっても過言ではないでしょう。

時効など、債権者が完成させるわけはないといいますが、知力と体力と経験さえあれば、時効は十分に活用できる現実なのです。



ここまで、時効に関する大きな改正点について理解してきましたが、未だ、外すことのできないキーワードが幾つか残っていますので、最後に理解していきたいと思います。

前回、完成猶予と更新についてご説明をしましたが、その対象に『承認』が抜けていました。

今までの民法であれば、承認も立派な時効の中断事由となりますから、当然に、今回も対象となります。

ただ、完成猶予から更新という流れになった強制執行や請求とは違い、承認は、着手から決定までのタイムラグがなく一瞬で決まります。

したがって、弁済をしたり、債務承認書にサインをしたりなどといった『承認』は、その瞬間に更新をして、時効は新たに始まるということになります。



今回の改正で設けられた大きなキーワードに『協議』があります。

今までの民法では、『協議』に関した規定はありませんでした。

したがって、当事者が弁済について協議している途中で時効の完成期間が迫ってくると、何らかの中断手続きを執る必要があったのです。

この点について、協議を行う合意が書面でなされた時は、一定期間は時効が完成しないとされました。

一定期間についても、細かく規定をされており、当事者の片方が協議続行を拒否したとしても、その通知時から6か月間は時効が完成しないことになったのです。



前々回のブログで、借金などの消滅時効の期間は、実質5年に短縮されたとご紹介しました。

権利を行使できる時から10年という規定はありますが、借金などの性格上、行使できることを知ったときから5年という規定が、ほぼ当てはまるからです。

そして、裁判などの判決で確定した権利については、時効期間は10年になるという規定が、今回は新たに設けられました。

これは、今までの商事債権と同じ理屈になりますので、理解はし易いと思います。



最後に、時効に関する重要なキーワードについて触れたいと思います。

今までの民法では、439条で、複数の連帯債務者の中で、1人の連帯債務者の時効が完成すれば、その対象部分について他の連帯債務者も負担を免れるとなっていました。

これは、債権者側からすれば、納得のいかない話になるでしょう。

債権者にすれば、債権の回収を保全するために複数の連帯債務者と契約をしているのです。

それなのに、そのうちの1人の連帯債務者の時効が完成すると、その効力は他の連帯債務者にも及ぶとすれば、債権額自体が減少して不利益を受けることになってしまいます。

この点について、今回の民法改正で見直され、439条が削除されることになりました。

その結果、連帯債務者のうちの1人の時効が完成しても、その効力は、他の連帯保証人には及ばないということになったのです。

この規定は、時効を活用した債務処理においては、1つのスキームとなる選択肢でしたので、今後は注意が必要ということになります。



この3回で、時効に関する民法改正について理解をしてきました。

法律の条文は、妙に理解しにくい表現になっており、私自身も、ブログにすることで、理解を深める作業になっています。

口語で、もう少し判り易い表現にすれば、もっと法律に興味を持てるのではないでしょうか。

次回は、詐害行為について、理解をしていきたいと思います。




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