ファジアーノ岡山が提供するスタジアムグルメ「ファジフーズ」。

ファジフーズといえばサッカー界に広くその名を知られ、スタジアムに訪れる多くのファンを楽しませてくれています。また、カテゴリーを問わずクラブ関係者が視察に訪れるなど、サービスやシステムにおいても一目置かれた存在となっています。

なぜファジフーズはそこまで注目されるのでしょうか。

ファジフーズは、J2ファジアーノ岡山のスタジアムグルメということでコミュサカとは少し離れますが、ファジアーノ岡山ネクストがJFLに参戦していた時に、規模を縮小したファジフーズを展開してくれたことで、私達アンダーカテゴリーのファンもファジフーズを楽しむことができました。

色々な縁があったことで、私自身がファジフーズの世界観に興味がわいたこともあり、コラムの寄稿をお願いしたところ快く引き受けてくださいました。今回は、ファン目線からファジフーズの魅力に迫りたいと思います。コラムは前編・後編に分かれています。是非、ご一読ください。

コミュサカ@管理人

スタジアムに賑わいを生むファジフーズ

ファジアーノ岡山の試合が行われるシティライトスタジアムを訪れた際、最も目に留まるのはスタジアム外の賑わいであろう。ファジアーノ岡山に魅せられたファン・サポーターの中にはこのお祭り的な雰囲気に惹かれたという人も多い。その賑わい創出に大きく寄与しているのがファジフーズである。

立ち並ぶファジフーズの屋台のテントやそこに並ぶ人達の存在は、ファジアーノ岡山の試合の「盛り上がり」を可視化する効果がある。ファジフーズが存在することで、試合当日のシティライトスタジアムに「お祭り」感が産まれ、今ではファジアーノ岡山の試合には欠かせない存在となっている。

「スタジアムへ食べに来て」

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ファジアーノ岡山は集客において客層をカテゴリーに分け、異なるカテゴリー毎に異なるアプローチを行っている。このカテゴリー分類において最も母数が大きいのは「無関心層」である。この潜在的顧客である無関心層を+1であっても関心度を増やし、「関心がある」層に移行出来るかが鍵になる。2015年からファジアーノ岡山が行っている「Challenge1」という取り組みでは、新規観戦者を「お誘い」した人にピンバッジやTシャツなどの特典を与えることで、観戦未経験者がクラブに関心を持ちクラブの試合に触れる機会を作ることを狙っている。

残念なことに、この国におけるサッカー観戦は娯楽のファーストチョイスにはなり得ていない。言い換えれば、「お誘い」相手である無関心層にとってはサッカー観戦そのものを目的とした誘いを受けても興味を惹く可能性は低い。そういった場面においては「第二、第三の矢」が必要となる。サッカーやスポーツ観戦に関心を持たない人に闇雲に「スタジアムに来て」と誘うだけではなく、「こういう楽しみ方もあるよ」と試合以外の楽しさを紹介することでより関心を持ってもらうことができる。

ここで活用されるのがファジフーズの存在である。以前、ファジアーノ岡山の木村正明社長は日本経済新聞に連載していたコラムに「スタジアムへ食べに来て下さい」というキーワードを用いた。本来ならJリーグの試合において「メイン」となるのはあくまでもサッカーの試合である。しかし、前述の通りその一点だけでは「サッカーの試合」という部分に関心のない人への興味喚起には難しい点がある。だからこそ、「スタグルを食べに来て」「試合はビール飲みながらでも気楽に見れますよ」という「週末のレジャーという点を強調した」誘い方も必要になってくるのだ。

「地域に愛されるクラブ」を目指すファジアーノにとって、ファジフーズがこれから先「地域に愛されるスタジアムグルメ」としてクラブ同様に親しまれ愛される事が出来れば、現在は関心を持たない人たちがクラブに触れるきっかけとなり、クラブの更なる発展への寄与度を高めてくれるだろう。

「ファジフーズ」というシステム

ファジフーズの魅力は豊富なメニューや味は勿論であるのだが、一番の魅力は「システムが整備されている」という点である。ファジフーズは統一されたテントやユニフォームを用いるとともに、販売においてもPOSシステムを導入し時間毎の売上データを管理するなど他のスタジアムにはないシステムを取り入れている。店舗名を大きく表示しない(商品説明のパネルには明記あり)ことから「名物店舗」が生まれづらいというデメリットはあるものの、統一感のあるスタグルエリアの形成を可能にした。

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テントにはそれぞれのテントで提供している料理の写真が付いた看板が掲げられており、スタジアムで配布されているフード紹介チラシには販売されているテント番号も明記されている。どこで何を売っているのか明確化することで初観戦の人やアウェイサポも迷わずに購入できる。

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また、各店舗には販売待機列・提供待機列・出口などの導線がはっきりと区分けされているので購入時の混乱を低減する工夫がされている。

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各店舗にはPOSのレジが設置され、「いつ」「どこで」「何が」「どのくらい」売れたのかデータの集計が可能となっている。このデータは次回以降のファジフーズのメニュー決定や販売量の設定などに活かされているのだ。

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このように、「ファジフーズ」とはファジアーノ岡山の試合で食べることができるスタジアムグルメの総称であるとともに、そのスタジアムグルメの販売システムそのものであると言える。

ファジフーズができるまで

ここまでファジフーズの魅力について書いてきたが、もちろん初めからこんなに充実したシステムが構築されていたわけではない。ファジアーノ岡山がJFLを闘っていた2008年の途中から桃太郎スタジアム(当時)前の広場に1つ2つ程のテントが並ぶようになり、「ファジフーズ」という名称が付けられた。当初は少なかったテントの数はシーズンを重ねるごとに増えていき、ファジアーノカラーのテントや統一されたユニフォーム、POSシステムの導入などなど現在のファジフーズのスタイルが徐々に確立されていった。

ファジアーノ自身も2009年のJ2最下位から徐々に順位を上げていった。チームには各国のA代表経験者やオリンピック代表候補が名を列ね、J1昇格プレーオフ決勝まで駒を進めるほどの躍進を果たした。このように、クラブの成績に比例するようにファジフーズも成長を遂げることが出来た。これは一重にフロントスタッフの努力により運営規模を拡大できたことだけでなく、地域の飲食店などからの多大な協力を受けることができたことが何より大きいと考える。

先述の「地域に愛されるスタグル」造りには「クラブが地域から親しみを持たれていること」が前提となるからである。「クラブが親しみを持たれている」からこそ、「このクラブに協力したい」という人の支援の輪を広げていくことが出来るのだろう。

ネクス盛りでお馴染みのカレー屋さんについて

ファジフーズにももちろん、「名物メニュー」というものがある。このブログにおいては「ファジきっチキンと勝カレー ネクス盛り」がよく取り上げられていた。ただでさえボリュームのあるチキンカツカレーのチキンカツがファジアーノ岡山ネクストの試合時は通常比1.5~2倍になるというお店の方の大盤振る舞いメニューである。

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あるトップチーム・ネクストのダブルヘッダー開催時、いつものようにカレーのテントに並んで提供を待ちながら店主の男性と何気なく会話をしていた。店主は調理をしながら「ネクスは今年なかなか勝てなくて(サポたちも)大変だろうから、せめてこういうので楽しんでほしい」と言い揚げたてのチキンカツを山のように盛っていた。サポーターにとって親しみ深くスタジアムでの「楽しみ」のひとつであるファジフーズだが、販売するお店もこのクラブに対して「親しみ」を持って参加してくれていることがわかり、サポーターとして凄く嬉しく感じたエピソードである。

岡山の街に彩りを

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ファジアーノ岡山はJ1昇格の目標に向かって殻を破ろうとしている。

そんなクラブに対して地域の期待は高まっており、観客動員数は年々増え昨年は平均観客動員数1万人を突破した。チームの躍進に伴って岡山の街にこれまでになかったような大きな盛り上がりが生まれた。

「熱しにくく冷めやすい」と揶揄される事も多かった岡山の街が、ファジアーノ岡山というクラブに彩られているように感じる。街を彩るファジアーノ、スタジアムを彩るファジフーズ。そこに触れる人達が更なる彩りを与えてくれるだろう。


【コラム】「雛雉達の舞う空に」セカンドチームシリーズコラム ファジアーノ岡山ネクスト 編
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【コラム】「ファジフーズとは何か」ファジフーズの魅力に迫る ー前編ー
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【コラム】「食レポ!スタジアムへ食べに来て!」ファジフーズの魅力に迫る ー後編ー
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著者
popmas
iek:岡山のポッポマスター @iekiek1984

紹介
 岡山出身大阪在住のファジサポさんで、通称「ポッポマスター」。ホームゲームのたびに大阪から帰省しとんぼ返りするツワモノで、トップチームだけではなく注目の集まりにくいファジアーノ岡山ネクストを盛り上げるべく地道な活動を続けておられます。(ゼロファジ: @ZeroFagi

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