寿永三年春、桃の木が花をつける頃。
摂津国須磨の山道を、源九郎義経に率いられた70騎の武者が行軍していた。肩車のようにして鎧武者を担ぐウマ娘達は、みな厳しい顔で歩を進めている。
芦毛のウマ娘「険しい道……次郎さま、大丈夫ですか？」
鞍上の自分を気遣う彼女の名は三日月。これまで多くの戦場を共にした自慢の愛バだ。
『俺は大丈夫。三日月は？』
三日月「お気遣いありがとうございます。私の方はご心配なく」
「……山の麓の方、浜から激しい音が聞こえますね」
熊谷殿と土肥殿が攻める塩屋口の方から、地鳴りと怒号、弓の音が聞こえてくる。敵の平氏方も必死だ。厳しい戦いになるだろう。
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2 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:18:47 FctN5ARg
山道を歩いていくと、一気に視界が開けた。大将の九郎殿が号令をかける。
義経「よーし着いたぞ！一旦止まれ！」
『着いたと言われましても、何処に？』
義経「なんじゃ畠山、そんな事も分からぬのか。下を見ろ、平家の陣が広がっておろう」
見れば、断崖絶壁の下に、青い海を背にして赤の旗がなびき、陣屋が建ち並んでいる。
義経「ここを一気に駆け降り、敵の本陣を叩く！よいな？」
場に驚愕と困惑が広がる。この崖を駆け降りる？いくらなんでも無茶だ！
壁のような急斜面、降りる者を突き刺してやろうと言わんばかりの岩場、転落したのであろう獣の亡骸……目を覆いたくなるような現実が重くのしかかる。
三日月「この崖を……？奇襲とは予想していましたが、まさか……こんな……」
パタリ、パタリと三日月の耳が左右別々にせわしなく揺れる。彼女が震えているのは鞍上からでも分かった。
3 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:18:58 vn69M1ic
かっこいい
4 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:19:15 FctN5ARg
義経「意を決して行けばウマを損なうことも無い！薄墨、行けるな？」
薄墨「……お任せください。成し遂げて御覧に入れましょう」
義経「いざ！我に続け！」
九郎殿の愛バが黒髪をなびかせ、顔色1つ変えずに駆け出した！
若い武将「我らの郷里では常日頃、ここよりも険しい場所を駆けておるわ！斯様な坂、普段の馬場と何ら変わらぬ！」
鹿毛のウマ娘「その通りッス！流石は十郎さまッス！行くッスよ～！」
それに続いて、周りの武者も次々と駆け降りてゆく。
『三日月。』
三日月「ひゃいっ！？分かっています次郎さま！いつでも行けます！」
どう見ても虚勢だ。彼女ほどの名バなら
無事に駆け降りることも不可能ではないだろうが……
『ちょっと降りるよ』
三日月「？どうされまし──」
『よいしょっと！』ﾋｮｲｯ
「ひょわぁぁぁぁぁ！？」
───高い！
次郎さまが私から降りたと思うと、ほんの一瞬で、視界が高く持ち上がった。
今まで見たことの無い景色、海に砂浜、敵の陣……何が何だか分からない。私は、主人である次郎さまに肩車されていた。
「ちょ、ちょっと！次郎さま！一体何を！？」
『君を損なう訳にはいけない』
「えぇ！？わわ、私は大丈夫ですって！ちょっと怖いですけど、必ず次郎さまを無事に下まで……」
『しっかり掴まってろ！行くぞ！』
「キャ～～～～！！！」
6 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:21:02 z0VuWI4U
6 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:21:02 z0VuWI4U
期待
7 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:23:21 FctN5ARg
『よっ！ほっ！それッ！』
私の主が！ずきうん、どきうんと走り出し、ばきうん、ぶきうんと崖を駆けてゆく。こんな事、天地が開けて以来初めてに違いない。
「ウソでしょ……」「畠山殿！？何をなさっているのですか！」「お前は主人を背に乗せるんじゃなくて主人に背負われるんだな！マジおもしれー！」
色々な声が聞こえる。この人は何を考えているのだろう。武士にとってウマ娘は単なる乗り物。時としては乗り捨てる"モノ"。なのに、私を背負って崖を下るなんて、私を傷つけたくないだなんて……
『三日月！あと少しだぞ！怪我は無いか？』
「～～～～ッ！！ありませんっ！」
8 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:26:01 FctN5ARg
必死に身を小さくして、主の兜を見つめていると、そこはいつの間にか崖の下。敵陣の真ん前にいた。
『よし、着いたな。降りていいぞ』
次郎さまがそう言い終わる前に肩から飛び降りる。恥ずかしさと嬉しさと戦の緊張でもう訳が分からないが──
『ここからが本番だ。よろしく頼むぞ』
「……言われなくても分かってます！お任せください！」
我に返り、いつもの如く主を肩に乗せる。
そうだ。戦はこれからだ。主に背負われて恥ずかしがっている場合ではない！
『やあやあ我こそは！坂東は武蔵国畠山郷がつわもの、畠山庄司次郎重忠なり！敵に武勇の者あらば、ひとつ手合わせ願おうか！』
9 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:28:33 FctN5ARg
その日、重忠と三日月はまさしく"人バ一体"となって敵陣に斬り込み、大いに活躍したという。彼らが駆け降りた塩屋口の他、夢野口・生田口でも源氏方が平家方を破り、この合戦で大打撃を受けた平家一門は屋島へ逃れることとなる。
なお、「畠山重忠が愛バを背負って崖を駆け降りた」という一件は、重忠の三日月への深い情を示す逸話として御家人の愛バ達の間でまたたく間に広まり、生喰は「いちゃついてんじゃねェ！」とキレ、磨墨は楽しそうに笑い、三日月はひどく赤面した。
敏捷が30上がった！
根性が30上がった！
『勢い任せ』の手がかりを得た！
『決意の直滑降』の手がかりを得た！
鎌倉殿の絆が4上がった
琵琶法師の絆は最大だ
～～おわり～～
10 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:32:55 FctN5ARg
ウマ娘世界の合戦がどんな物にせよ畠山重忠公の人気が凄そうだなぁと思いました
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11 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:45:56 vn69M1ic
つよそう
12 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/07(木) 23:50:08 mJhpkOy2
筋肉モリモリマッチョマンの変態（馬を背負って直滑降）
鹿毛のウマ娘に乗った十郎様はMUR一族の佐原義連ですね間違いない……
13 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 00:21:31 dlUSrpj2
サイレンススズカさん！？
15 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 00:27:40 O7bPz1S2
義経の薄墨はマンハッタンカフェ
ッス口調のウマ娘はバンブーメモリーで再生された
三日月ちゃんはマッイーンみたいな見た目ですかね
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16 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 00:28:35 dkRmA30Y
至るところにグラスワンダーみたいな武将がいそう
18 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 00:35:00 x2H0bnsY
おウマさんの戦いかたではない…！
19 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 01:59:49 nM0aZVLQ
ウマ娘世界の行軍とかすげえ大変そうだよなぁと思ってたけど、ウマ娘が人を背負えば確かに解決ですね
20 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 02:02:07 W.qDt5To
普通に背負うとウマ娘の両手が塞がるから、紐付きの籠を背負ってそこに人を入れれば人もウマも刀を使って戦えますね
21 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 02:06:12 O7bPz1S2
作品によっては義経が「鹿は四本足、我らとウマ娘も合わせて四本足。鹿が通れるならウマ娘と武者も通れる筈だ！」みたいな無茶振りかましてそう
22 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 02:33:04 Fctb3wqU
琵琶法師くんは友人サポカかな？
23 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 07:15:58 H9IydP/2
ランスとかも全く違う進化を遂げてるんでしょうし、文化的なウマ娘の武士をどれだけ抱えられるかが戦力の大幅な格差になるんでしょうね…
モンゴルはウマ娘が産まれる比率が高かったとか
そう考えると改めて人間の発展と馬って密接に関わってるんですね…
なあオッチャン……ウマ娘に武器持たせたら指揮官以外の人間必要ないのにどういう意味……
25 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 08:28:04 GkJH.V4w
>>24
どういう戦闘を想定しているかで変わると思うんすけど
ウマ娘がだけが引けるくらいの鉄製クロスボウは間違いなく存在したでしょうね
何故背負う必要があったかと考えると
4手を使えた方が強いから
当時ウマ娘は被差別階級であり、ろくな武器を与えられなかった
（人間を背負う事を前提に戦術が組まれていた）
ウマ娘用の武器を調達出来るほどそれぞれが裕福でなかった
などが考えられずきゅんどきゅん走りだし～♪
28 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 10:45:42 aR4tXHQM
>>24
古代ギリシアやローマみたいに騎兵と重装歩兵の分業がしっかりしてる時代ならヒトの役割も大きいのでは
ウマ娘も数が限られるだろうしね
騎兵が主力の時代は知らない
26 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 08:31:23 BgfEa1ww
昔のウマ娘は身長130cmとかになりそう
27 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 10:10:21 GzR.eZIc
ウマ娘世界の日本在来バ、例えば御崎ウマ娘は昔ながらの生活を送る少数民族みたいな扱い受けてるんですかね・・・？
知能も体格も人と同様というところが馬との違いですかね
確かにパワーとスピードはあるけど騎馬突撃ほど相手を威圧する迫力は出せなさそうだし、女の子だから民衆の感情考えると前線での積極運用は少なそう
31 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 11:00:14 bCdBp6m.
まあ真面目に考察すると体重比の関係上ウマがヒトを背負って戦うという形態にはならないでしょう
おそらく現実の騎兵の役割がウマ娘に置き換わる感じだと思います
例えば古代マケドニアのヘタイロイは量産型グラスちゃんが巨大な長槍持って突撃してくるわけです
つよい(確信)
32 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 11:04:33 Oj9tsCrY
ウマ娘とトレーナーの関係みたいに「ヒトがウマ娘に乗ることで強力なパワーを発揮できる」みたいな信仰でもあるんでしょ（適当）
34 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 12:46:11 Oj9tsCrY
ちなみに合戦当時の畠山重忠は数えで21歳なので若く武勇に秀で、謹直な性格にしてウマ娘に優しい勇将ということになりますね なんだこの超人!?
37 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 14:22:50 eH4StvBk
>>34
こうなると世間のウマ娘からの評価も高そうだし、その人気を恐れて時政が排除しにかかったのもうなずけますね
35 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 12:55:51 4abOviXY
馬の特性と役割をそのままというよりかはそもそも身体能力自体が高いので
ウマ娘だけで構成された特殊部隊的な数は少ないが強化人間的軍団が世界中にあるイメージだなぁ
早馬とか伝令はウマ娘一人だけでいいですね
38 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 14:39:04 hIogOeMs
サイレンススズカ御膳
17 ： 名前なんか必要ねぇんだよ！ ：2021/10/08(金) 00:33:27 eH4StvBk
この設定だと今井兼平は、自身を担ぐ愛バの手を振り払い飛び降りて自害したことになるんですかね
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壇ノ浦の戦いの日だと思ったら一ノ谷でした
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