1985年の大晦日と正月を僕は信州の片田舎でミチコさんと過ごした。お母さんもさることながら、ミチコさんも体調が芳しくないらしく、かなり窶れて見えた。ほとんど寝たり起きたりの生活で、食べるものもあまり口にしなかった。どこか悪いのか訊いても曖昧な答しか返ってこなかった。
時おりミチコさんは吐き気を催してトイレに立った。ドアの向こうからうめくような声が聞こえることもあった。
意を決して僕はミチコさんに訊ねた。
「赤ちゃんできたんですか?」
ミチコさんは虚を突かれたような顔で僕を見た。
こたに大将