フランス人木管楽器奏者たちで結成されたレ・ヴァン・フランセのCD。以前からNHKのクラシック倶楽部でライブが放送されたり、アクロス福岡シンフォニーホールでライブがあったりして、何度かその演奏を聴いてきたが、今回はPlaatpaalでCDを聴いた。ライブは聴いていたけど肝心のリリースされたCDは今まで聴いたことがなかったのだ。CDは2枚組で、今回の記事はそのCD1。主にフランス人作曲家の作品が取り上げられている。
ジャック・イベールは1890年パリ生まれの作曲家で、交響組曲「寄港地」や「パリ」、「フルート協奏曲」が有名。「木管楽器のための3つの小品」は1960年に作曲されている。軽妙洒脱な作風を旨とし、前衛的なところは殆ど感じられない。第1楽章はちょこまかと動き回るカワイイ曲、第2楽章はちょっと憂欝で優しい曲、第3楽章は明るくユーモラスでしゃれた味わいを感じさせる曲だった。
「クープランの墓」は、ラヴェルが1914年から17年にかけて作曲した最後のピアノ独奏曲だが、ここではメイソン・ジョーンズが木管五重奏曲に編曲したものが演奏されている。ラヴェルはこの曲を自身で管弦楽版に編曲しているが、ジョーンズの編曲とは「プレリュード」「フーガ」「メヌエット」「リゴードン」の4曲編成となっていて、管弦楽曲版では「フーガ」ではなく「フォルレーヌ」が入っている。
ピアノ曲が木管五重奏曲になると、メロディが浮き立って曲が持っている抒情性が増している。その一方で木管楽器特有のとぼけた味わいが感じられた。「フーガ」が優しい曲で、木管楽器の音色が微妙に変化していく様が味わい深くて、なんだか癒やされる気分。メヌエットは有名なメロディで、オーボエが吹くと哀愁感たっぷりに聴こえた。「リゴードン」は速めのテンポで力ワイさを演出。
アンドレ・ジョリヴェは1905年生まれのフランスの作曲家。生まれが20世紀になると、かなり曲想が現代的になってくる。響きが奇妙で前衛的な印象を受けるが、断片的にはメロディがあったりして結構楽しめる。第2楽章は2人(オーボエとバソン)が暗闇の中で奇妙なダンスを踊っているようなイメージだった。
ダウリス・ミヨーは、1892年、エクス=アン=プロヴァンス生まれの作曲家。「ルネ王の暖炉」は「愛の騎馬行列」という映画のために作った曲を7曲の木管五重奏組曲に編曲したもの。「ルネ王」とは、15世紀にプロヴァンス伯としてプロヴァンス地方を治めていたヴァロワ家傍系(ヴァロワ=アンジュ一家)のフランス貴族ルネ・ダンジューのことで、一時ナポリ王位に就いていたため「ルネ王」(roi Rene)と呼ばれ、また「善良王」 (Le bon)の異名を持つ。
ミヨーの故郷エクス=アン=プロヴァンスには、冬の間もよく日が当たって風が当たらず暖かい場所があって、ルネ王はそこへ毎日のように出かけたという逸話があり、エクスの人々はその場所を「ルネ王の暖炉」と呼んでいたことからこうした題名がついたらしい(ウィキペディア)。
曲はとても色彩感豊かで、カワイイメロディがふんだんに出てくる。お伽噺の伴奏のような曲でとても聴きやすかった。7曲がそれぞれ特徴的で、動きがあっておどけた曲や、穏やかで抒情的な曲など、聴いていて飽きさせない楽しさがある。
ポール・タファネルは1844年、ボルド一生まれの作曲家。ちょっと時代が遡るので、曲調がロマンチックに感じる。CD1の中で一番「普通」な曲だ。それ故一番特徴がないように感じる。他の曲に比べて響きが伝統的だから。所々抒情的で瑞々しいメロディが聴かれるが、曲全体としての求心力に欠けるような気がした。
レ・ヴァン・フランセ
「フランスの風、20世紀の木管五重奏曲」CD-1
1.イベール「3つの小品」
2.ラヴェル「クープランの墓」
3.ジョリヴェ「オーボエとファファゴットのためのソネチネ」
3.ジョリヴェ「オーボエとファファゴットのためのソネチネ」
4.ミヨー「組曲"ルネ王の暖炉"」
「行列」「朝の歌」「軽業師」「ラ・マウザングラード」「アルク川での馬上試合」「ヴァラブルでの狩り」「マドリガル・ノクチュルヌ」
5.タファネル「木管五重奏曲」
レ・ヴァン・フランセ
レ・ヴァン・フランセ
フルート:エマニュエル・パユ(Emmanuel Pahud)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
オーボエ:フランソワ・ルルー (Francois Leleux)
クラリネット:ポール・メイエ (Paul Meyer)
ホルン:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ (Radovan Vlatkovic)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)
バソン:ジルベール・オダン(Girbert Audin)