NadegataPapaのクラシック音楽試聴記

クラシック音楽の試聴記です。オーケストラ、オペラ、室内楽、音楽史から現代音楽まで何でも聴きます。 カテゴリーに作曲家を年代順に並べていますが、外国の現代作曲家は五十音順にして、日本人作曲家は一番下に年代順に並べています。

ボロディン(1833-1887)露

ボロディン「中央アジアの平原にて」「だったん人の踊り」ネーメ・ヤルヴィ指揮エーテボリ響

はげ山の一夜/ロシア名曲集
エーテボリ交響合唱団
ユニバーサル ミュージック クラシック
2006-11-08


ロシア5人組の一人で「中央アジアの草原にて」とオペラ「イーゴリ公」の中の「だったん人の踊り」が有名。他にも交響曲や弦楽四重奏曲を書いているが、お世辞にもメジャーとは言い難い。泥臭いイメージがあるからかもしれないが、もっと見直されてもいいと思う。

中央アジアの草原にて
懐かしく泥臭いメロディが胸を熱くするが、これが形を変え、力をつけて盛り上がるところまで行かないのが超一流の有名曲になれない理由だろう。オーケストラの色彩感なんかは楽しめるんだけど、正直「もう終わっちゃったの?」って感じ。もっとラストに向けて大きく盛り上げればいいのにと思ってしまった。

だったん人の踊り
オペラ「イーゴリ公」の中で出てくる有名なメロディ。ボロディンの名前は知らなくてもこのメロディは誰もが知っているだろう。ここではエーテボリ交響合唱やバスのトルグニー・スポルセーンの歌を入れてオペラの雰囲気を出している。大きく盛り上がるところもあって聴き応えがあった。

ボロディン「歌劇“イーゴリ公"」シナイスキー指揮ボリショイ劇場

ボロディン:歌劇《イーゴリ公》 マリインスキー劇場版 [DVD]
プチーリン(ニコライ)
ユニバーサル ミュージック クラシック
2007-08-22
こちらは1997年マリインスキー劇場のDVD 


NHKBSプレミアムでボロディンの歌劇「イーゴリ公」を見た。昨年(2013年)にロシア のボリショイ劇場で行われた公演の録画だが、ちょうどクリミアがロシアに編入されるという騒動が起きているさなかの放送だったので、劇の中で「ロシアを敵の手から守るのだ!」と力強く歌う声がプーチン大統領の顔にダブって見えた。歌劇の舞台になっているプチーヴリは現在のウクライナだというから、ますますタイムリ一。
 
私はこのオペラはおろか、ボロディンの曲もちゃんと聴いたのは初めてだ。もちろん超有名な「だったん人の踊り」くらいは知っているけど、交響詩「中央アジアの草原から」さえちゃんと聴いていない。何となく聴くチャンスを逸し続けたということかな。

preview_Igor-2-photo-by-Damir-Yusupov
 
2時間少々のオペラを見終わった感想は、何と言っても「ストーリーが完結してないじゃないか!」と気持ちが不完全燃焼なまま放置されたことだ。どうも私は、こういった物語が決着が付けられずに放置されるのがとても居心地が悪い。その最大の物は、敵の手から脱走して戻って来たイーゴリ公がポロヴェツ人と最後の決着をつける前に劇が終わってしまうことだ。
 
ストーリーの構成上、ここはラスボス、コンチヤク汗と最後の決戦が終わって初めて、「完」となるべきだろう。スターウォーズで言えば、ルークがやっと修業を終えて戻ってきたところだ。ここでダーズ・ベイダーやダーク・マスターと最終決戦に赴く所に当たる。ここで物語が終わったら、ヒーローとラスボスは戦わずに終わってしまうじゃないか。ボロディンは是非続編を書いて、物語に決着をつけるべきだ。

 preview_Igor-13-1-photo-by-Damir-Yusupov
他にも回収されてない伏線が色々とあって、どうにも居心地が悪い。イーゴリ公の息子、ウラディーミルは敵の手に残されたまま。コンチャク汗の娘の婿にされて処刑は免れたが、オペラの中では助け出されもせず、そのまま放置されてしまった。最後の合唱の中で「若鷹ウラディーミルに栄光あれ!」と歌っているにもかかわらず。
 
傍若無人のガリツキ一公の処分もよく分からないし、イーゴリ公が脱走してきたときは、最初は「脱走なんでできない」って言っていたにもかかわらず、祖国の町が攻撃されると知ッたら前言撤回で脱走か!?しかも息子は放っておいて!?と思ってしまった。
 
実は息子に「一緒に脱走しよう」と説得する場面があり、コンチャク汗の娘とやり取りがあるらしいのだが、この場面は未完のまま残されて、後にリムスキー・コルサコフとグラズノフが台本から音楽まで作っているので、ボロディンの作ではないとして省略されることが多いそうだ。今回もかなり端折った形で上演されているようなので、ストーリーが繋がらなくなっているのだ。

Prince-Igor-3-photo-by-Damir-Yusupov
 
ボロディンはこのオペラを未完のまま死んでしまったので、きっと続編を書くつもりでいたに違いない。「イーゴリ公の逆襲」とか題をつけて、最後の決戦に勝ってロシアに平和が来ましたというラストにする。
 
一番盛り上がるシーンは、最後の決戦でコンチャク汗の大幹部を激戦の末に倒したと思ったら、それが息子のウラディーミルで、戦乱のさ中で父子の再開となるのだ。そこで「父さん、僕は父さんに見捨てられたと思っていたんだ・・・ガクッ(死ぬ)」な~んて感動的なセリフを歌に乗せたら、観客の涙を絞り取ること請け合いだ。

ちょっと妄想が止まらなくなってしまったが、それくらいストーリーが途中で途切れているのが気になって仕方ない。
 
舞台はボリショイ劇場らしい豪華なもの。歌手も立派な歌を聴かせる人が揃っている。特にガリツキ一公のウラディーミル・マトーリンは、圧倒的な声量で迫力十分。粗野な演技も上手くて、何とも憎々しい役を好演している。
 
不在の夫に代わって銃後を守るヤロスラーヴナ(イーゴリ公の妻)のエレナ・ポポフスカヤもよく通るクリアな声で立派な歌唱。ガリツキ一公と対決するところなんか緊張感があって手に汗握った。続く敵の来襲に驚く所も、焦燥感が溢れて悲劇的な雰囲気満点だった。

1384010270_Prince-Igor-4-photo-by-Damir-Yusupov
 
アレクサンドル・ボロディン(Alexander Borodin, 1833~ 1887)
「歌劇“イーゴリ公"(Knjas' Igor')」
イーゴリ公:エリツイン・アジゾフ
ヤロスラーヴナ(イーゴリ公の妻):工レナ・ポポフスカヤ
ウラディーミル・イーゴレヴィチ(イーゴリ公の息子):ロマン・シュラコフ
ガリツキ一公(ヤロスラーヴナの弟):ウラディーミル・マトーリン
コンチャク汗(ハン):ワレリー・ギリマノフ
コンチャコーヴナ(コンチャク汗の娘):スヴェトラーナ・シロヴァ
オヴルール:マラト・ガリ
スクーラ:オレク・ツィブリコ
エローシュカ:スタニスラフ・モストヴォイ
ポロヴェツ人の娘:ニ一ナ・ミナシャン
合唱:ボリショイ劇場合唱団
管弦楽:ボリショイ劇場管弦楽団
指揮:ワシーリ・シナイスキー
振付:カシャン・ゴレイゾフスキー
演出:ユーリ・リュビーモフ
収録: 2013年6月16日ボリショイ劇場(Bolshoi Theatre)(モスクワ)
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