【「乃木坂メンバーと○○」を妄想してみた。】シリーズに、またしても投稿をいただきました。

 今回は星野みなみちゃん単推しの「桐生」様からの作品です。


 テーマはなんと「雪中行軍」!。 

 これは思いつかない……。


 「雪中行軍」と「星野みなみ」がかけ合わせれ、生まれた奇跡。

 みなみちゃんの良さが、雪のように降り積もる物語をご覧ください。 

 
20160609-01


乃木坂メンバーと「雪中行軍」をしたら
星野みなみ 編

作者 桐生


20160609-03


昨夜からの激しい風雪が真横から激しく吹き付け、
隊列の二人前は視界に無い状況が続いている。
軍服はもちろん背嚢も長靴も水分を含んだまま凍結し、
いつ凍傷による落伍者が出てもおかしくない。
予定では田代温泉に到着していなければならない刻限だが、
早朝に露営地を出立してからまだ三里と進めていない。
ただ、山岳を吹き抜ける風の咆哮と、
軍靴が雪を踏みしめる音だけが微かに聞こえるのみであった。
油断すれば遠のく意識の中、連隊全滅という不名誉が脳裏をかすめる。

「天は我々を見放し・・・ん?」

幻だろうか、少し先の尾根の上に、藁頭巾を被った少女が、
我々に向かって手招きをしているのが見える。
果たして、幻ではなかったらしく先導の見習士官が大声で呼びかけた。

「おい!民間人!」
「みなみだよー」

少女は一所懸命に尾根を下りてくると我々に近づいてきた。

「貴様は何者だ!?」
「だからみなみだよー!」

不審な点は無さそうなので全体に命じる。

「全員銃を下せ。」

年の頃は十八、十九だろうか。
幼い顔立ちをした少女は私の傍らに来て見上げるように尋ねる。

「隊長さん、どうしましたか?」
「我々は弘前歩兵第三十一連隊である。近くの村まで道案内をお願いしたい。」
「やりたくないけど頑張ります!」

我々連隊は少女の先導に従って行軍を再開する事となった。

「隊長さん、どこに行きたいんですかー?」
「田代温泉です。そこから馬立場を経て賽の河原へ向かう予定です。」
「見つかるといいねー」

気付くといつの間にか吹雪もおさまっていた。

「娘さん、この方角で良いのですか?」
「常識です!」
「本当に?」
「当たり前です!」

「別れ道になっているようですが・・・」
「うーん、みなみ選べなーい!」

少女は時に迷いながらも着実に先へと進んで行く。

「わかったよぉー!わかりましたよー!」
「うん・・・」
「みんなー、集合!」

そして、我々は険しい崖の前へと到達した。

「みなみはもう限界だよー!」

そう言いながら崖を登って行く少女の後に我々連隊も必死の思いで続いた。

「着いたよー!」

崖を登りきったところで満面の笑みを浮かべ、
少女は麓の村落を指さしていた。田代温泉だ。

「ありがとう、娘さん。おかげで・・・」

振り向くともうそこに少女の姿は無かった。
我々を目的地に導いた少女は、現実だったのか、
それともこの地方の伝承に残る雪の妖精だったのか。

しかしよく見渡してみると、遠くの方に
一所懸命雪山を下りている少女の姿が普通に丸見えであった。
連隊全員が整列し、遠ざかる少女に軍帽を振る。

「おーい!ありがとう!」

冬の八甲田を吹き上げる風の中に、

「見つかっちゃったぴょん!」

という少女の声を微かに聞いたような気がした。