桐生大先生の新作が届きました!

 【「乃木坂メンバーと○○」を妄想してみた。】シリーズ、3度目の投稿です。 


 過去2作の衝撃を皆さんは覚えているでしょうか。

 「【妄想小説】「乃木坂メンバーと○○」を妄想してみた。【雪中行軍&星野みなみ編】
 
 「【妄想小説】「乃木坂メンバーと○○」を妄想してみた。【喫茶店&星野みなみ編】」 


 今回はこれまでを越える壮大なスケールとなっています。


 テーマは「寝室」。

  だいじょうぶ! 全年齢対象ですよ!


 そしてなんとこの作品に、「斜めに見える青空」様が「帯」を書いてくださいました。

 青空さんの紹介ではじまる桐生ワールド。

 ぜひご堪能ください。


20160920-01
 


子供の頃、母によく叱られた記憶…
「ピーナッツ食べ過ぎると、鼻血出るよ!」
昭和の魂は死なず。
鼻血必至の衝撃、今ここに。
(斜めに見える青空)
 




乃木坂メンバーと「寝室」で出会ったら
星野みなみ 編

作者 桐生



あの日、空は見ていた。舞い散る桜の花びらの中、伝説の樹の下で再会を誓い合った僕たちを。あの日見た花の学名までは僕たちはさすがに知らないので、もしかすると、もう逢えないかもしれない。一度も好きと言えずにごめんね・・・ 

「つまらん!」 

暇潰しに読んでいたライトノベルを放り出した俺は、応接用ソファで大きく溜息をつく。 

「帰ろう」 

三浦海岸近くの海浜管理事務所には現在責任者の俺一人しか勤務していない。
美しい砂浜の安全管理という重大な任務に日々従事する俺は正直疲れ果てていた。 

終業時間はとっくに過ぎており、すぐにでも帰りたいところだったが、残念ながら責任感の強い俺は、昼間海岸で見つけた漂着物の一件だけは業務日誌に記録する事にした。
明日は五日ぶりの休みなので、関係省庁には明後日にでもメールで報告すれば充分だろう。
日誌を書き終えた俺は18時の電車に間に合うよう駅へと駆け出した。 

「奥さん・・・」「もう奥さんではありませんの」まだ夫を亡くして三日と経っていないというのに、僕を見つめる彼女の瞳は潤んでいるかのように見えた。「今日はゆっくりなさって下さいな」「それは・・・困ります」遺影が僕を見つめるかのように・・・ 

「もっとつまらん!」 

暇潰しに音読していた官能小説を放り出した俺は、京急久里浜線の車内で大きく溜息をつく。 

「まっすぐ帰ろう」 

普段なら、時折雨の降る横浜黄金町あたりで終電まで疲れを癒してから帰るのが習慣なのだが、激しく疲れていた俺は、そのまま品川駅まで行きJRに乗り換え帰宅する事にした。 

「ただいま」 

俺は誰が出迎える訳でもないガランとした部屋に挨拶をすると、そのまま寝室へ向かいベッドへと倒れ込んだ。
フランスベッドは社名からフランス共和国で発足した会社と思われがちであるが、元々は車両シートの製造工場として創業した会社でありフランスとは一切関係ない。
そんな事を考えながら俺はいつしか深い眠りへと落ちて行った。 

「・・・ください」「・・・返して下さい」 

「・・・ん?」 

独り暮らしの部屋では聞こえるはずの無い女の子の声。
重たい瞼を開き声の主を探した俺は、思わず我が目を疑った。
サイドボードに置いた真夜中を示す目覚まし時計の陰から、信じられない事に、身長30cm程の小さな少女が二人現れたのだ。 

「俺は夢を見ているのか・・・」

目を擦りもう一度見てみたが、南国風の民族衣装に身を包んだ彼女たちは確かにそこ存在していた。 

「パンパカパ-ン・・・パンパンパン、パンパカパーン・・・」

何故かふてくされた顔で突然自己紹介を始める少女。

「パンが大好き・・・南の島の透明ガールズです・・・」
「みなみ、私そこまでパン好きじゃないって」

ちょっと色々よく分からないが現実なのは確かなようだ。 

「・・・すみません、起き上がってもいいですか?」
「いいよー♡」 

小さな少女たちは俺がベッドに腰掛けるまで待っていてくれた。
最初は双子かと思ったが、よく見ると顔は全然違う。 

「起きましたか?」

「はい。それで・・・なんでしょう?」 

しばらくの間、重い沈黙が部屋を支配した。 

「・・・シケた空気ですか?」

「いえ、そうではないんですが・・・説明してもらえますか?」 

もう一人が慌てて答え始めた。

「えーっと、あのー、本当にくだらないことなんだけどね・・・笑っちゃうなコレ、笑っちゃう・・・」

「お聞きします」

「やっぱ無理だよ!言えなーい、みなみ。どうしよう・・・せいたんヘルプミー!」 

「みなみ説明下手ってマジで!」
「怒った~(泣)」

しびれを切らしもう一人の女の子が口を挟んできた。

「えーと、あれを返して下さい」
「あれとは?」

「メンズエッグ?」
「メンズエッグ?」 

「せいたん!違うよー!」
「わかっちょる」 

もう何が何やら分からない。
これはじっくり腰を据えて聞く必要があるようだ。

「とりあえず飲み物を取ってきてもいいですか?」
「いいよー♡」 

俺は冷蔵庫からビールと、彼女たちのためにコーラを取り出したが、一人が炭酸ムリ~と騒ぎ出したため、ペットボトルのお茶を小さい容器に注ぎ二人の前に置いた。 

「ありがとー」
「では、ゆっくりわかりやすく説明して下さい」

「えーと・・・友達とワーって遊んでて、バンってなって、エイッってなって・・・卵を返して下さい!」
「・・・はい?」

「みなみ本当に言ってるの!?」
「・・・せいたん、みなみはもう限界だよ・・・」 

卵を返せ?・・・人一倍勘が鋭い俺は瞬時に全てを理解した。

「それはもしかして今日海岸に漂着した卵の事ですか?」 

そういえば昼間、管理する砂浜に直径30mはある巨大な極彩色の卵が漂着しているのを発見した事を思い出した。
直感力に秀でた俺は何となく不自然さを感じたため、すぐさま日誌に記録した。
そして、休み明けの明後日には関係省庁に報告すべく迅速に対応していたところだったのだ。

やはり俺が何となく怪しいと睨んだ通りだった訳だ。

二人の小美人は初めて美しいユニゾンを響かせた。
「卵を返して下さい!」 

「わかりました。しかし今日はもう遅いので明日にしましょう」
「はーい♡」 

サイドボードにブランケットやクッションを敷き、二人を寝かしつけると、俺も再び眠りについた。

「明日は忙しくなりそうだ」 

しかし本筋には関係ない話で恐縮だが、その夜、砂浜に漂着した巨大な卵は突然孵化し、中から芋虫に似た巨大生物二体が現れ、それに呼応するように沖合からも放射能を帯びた恐竜に似た巨大生物が現れた。
両者は激しく闘いながら神奈川から東京方面に向け移動を続け、通過した街は紅蓮の炎に包まれた。
しかし、そんな事、眠っていた我々には知る由もない。 

巨大生物同士の激突により僅か一夜にして、横須賀、横浜、川崎、そして都内大田区にかけた広範囲の地域が瓦礫と化したが、俺のマンションは西日暮里にあるため、ここからはちょっとあまりよく見えなかった。 

夜が明け、まだぐっすりと眠っている小美人二人をそのままにし、責任感の強い俺は早速情報収集へと乗り出した。

情報源によると巨大生物同士の闘いは、恐竜型が、芋虫型二匹に一度は勝利したが、いつの間にか東京タワーに作られていた繭から、いつの間にか羽化した蛾に似た巨大生物が現れ、それとの闘いに敗れた恐竜型は東京湾へと姿を消していったとの事だった。
しかし、何度も言うが、そんな事、眠っていた我々には知る由もない。 

まだ小倉キャスターと菊川怜が話を続けていたが、必要な情報を充分に得た俺はテレビを消し、頭を整理するために珈琲を淹れた。 

「おはよー」「おはよー」 

いつの間にか小美人二人が起きてきていた。

「なんか・・・終わったみたいですよ」
「あちゃー」「マ~ジ~で~!」 

「とりあえず、朝ごはんにしましょう」 

簡単な朝食を用意すると、二人とも大喜びで食べ始めた。

「食パンは何もつけずに四隅の角から食べていって、次にこっちの耳を・・・」
「うちは食パンにパセロをつけて・・・パセロ?バジル?パッチョ?」

二人揃って何を言っているのか俺には皆目見当もつかなかった。

「ごちそうさまでしたー♡」
最後に美しいユニゾンの余韻を残し、南の島の透明ガールズは去って行った。

大きな羽を羽ばたかせ、羽田から遥か南国の秘島へと帰っていく蛾のような巨大生物。 

きっと今回の事件において俺の名前が世間に知られることは無いだろう。

いや、それでも構わない。

「この国はまだまだやれる」

俺は、俺に出来る事を全力でやっただけなのだから。


― 終 ― 

20160920-03
 

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