「しらたま」様から、妄想小説をいただきました。


 今日はバレンタインデー。

 かなりん推しのしらたま様が手がける、チョコレートのように「甘い」お話。


 でも甘さだけがすべてではありません。

 このチョコ(お話)、一筋縄ではいきませんよ。


20170214-01
 

六本木ショコラ

作者 しらたま





食べるの好きだから自分でも作ってみようと思って。

東京の美味しいお店はほとんど食べ尽くしたんだ、と自慢気な君。
ほら、暇な時間多かったから、と自虐的に笑うところも相変わらず。

最近、仕事が面白くなってきたようで電話の回数も減っていた。
久しぶりにかかってきたと思ったら、いつもの舌足らずなしゃべり方で渡したいものがあると言う。

六本木なんて久しぶりに出掛ける街だが、君に会えるのは嬉しい。

仕事の合間に時間を作ってくれたのだろう。お気に入りだという白のウールコートの下は制服らしい。
少し待たせてしまった手前、ごめん足元寒くなかった?と気遣うと、いつもより着る回数が多くなったから寒いのも慣れたんだと笑う。

落ち着いた白のイルミネーションで彩られた道路側のベンチに二人で座る。
君が以前の仕事に熱を入れていたときからお気に入りの場所らしい。確かに夜の東京タワーが綺麗に見える。

少しの沈黙の後、目線を逸らせながら手渡された小さなボックスを開けると・・
白いパウダーがかかったトリュフが2つ。クリオロさんのをイメージしたらしい。
せっかくだから一緒に食べようと思って、と早口でつぶやく君。

ついさっき食べた味が口に甦る。

寒いと固くなっちゃうから早く食べてね、と僕の口に運んでくれる白い指先。

そう、その時。恥ずかしそうな君の笑顔の後ろに見つけたんだ。
少し高い背、白い肌、ショートボブからはみ出す可愛い耳、いつもより大きくなった猫のような目。
さっきそこの坂で会ったばかりの君の姿。


刹那、口に広がるビターな甘さ。
これから起こることの予感。


20170214-02