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第3回ノギザカッション小説コンテスト
エントリーNo10
とどけたい思い
20180104-01


もう、どれくらいここにいるだろう。それが何日なのか何年なのか、僕にはもう分からなくなっていた。
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幼馴染の一実とは、もう15年の付き合いになる。
隣近所で親同士が仲良しだったこともあり、事あるごとにどちらかの家で集まり、食事をする事もしばしばあった。
何をするにもいつも一緒。一緒に笑ったり泣いたり怒ったり。隣にいるのが当たり前。僕にとって一実はそんな存在になっていた。
きっと一実にとっても、僕はそんな存在になっていたんだと思う。

そんな2人が思春期を迎え、彼氏彼女の関係になるのに時間はかからなかった。
それでも、周囲の友達や親にも内緒のまま過ごしてきた。

学校からの帰り道、友達と別れた後わざわざ遠回りして待ち合わせ、一緒に家まで帰ってみたり。家族同士で集まった時もさりげなく隣に座り、机の下で手を握りあってみたり。
小さな秘密を共有していることが、楽しくてそして幸せだった。

高校生活最後の12月。

僕たちはお互い関係を両親に話すことに決め、2人だけのクリスマスを過ごす約束をした。

プレゼントの水色のニット帽を買い、待ち合わせ場所へ向かいながらふと見上げた街は、赤や緑に飾り立てられ綺麗なイルミネーションに包まれていた。
その風景に目を奪われてしまった僕は、不用意に一歩、足を踏み出してしまっていた。

「危ない!」

叫び声に我に帰った僕の視界に飛び込んできたのはヘッドライトと思しき2つの光だった。
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そこからの記憶が途切れ途切れだ。

僕だったはずのその体が僕の目の前から運ばれていく。
僕も行かなきゃと思ったけれど、この横断歩道を渡ったあの角を曲がれば一実が待っている…そう思えば思うほど、僕はそこから動けなくなっていた。

もしかして僕は、
嫌だ。認めたくない。

「この先もずっとずっと一緒にいよう」

プレゼントを渡し、そう告げるはずだった。

まだ伝えられていないこの言葉を胸にしまい込んだまま、あの日から僕は、今もここから動けないでいる。

20180104-02