「サ-・アダムズ三世乃木坂派」様より、妄想小説をいただきました。


 何かを訴えたいとき、それを小説に込めて発表する方法があります。

 直接では恥ずかしくても、ストーリー仕立てなら素直になれる……。


 物語へと変化した想いの形、“ふたり”に届くことを願って。


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乃木坂ふしぎ冒険譚
 
作者:サー・アダムズ三世乃木坂派





まえがき
 
またどこかで、二人に逢えるカナ?
 
この広い広い世界に大きな翼を広げ、飛び立って行った二人。
 
二人の未来が、明るいといいな。





月が綺麗な夜だった。
 
まん丸な大きな月だ。
 
今にも落っこちて来そうなくらい大きな月だ。僕はそんな月を、ただ何も考えず、ボーッと家から眺めていた。しばらく眺めていると、ジリジリジリと黒電話が鳴った。もう何十年も使われているはずなのに、始めて買った時の艶やかさが未だに残っている。僕は、誰からだろうと思いながら電話に出た。
 
「もしもし」
 
「あ、坂上くん?私」
 
「マリカか。どうしたんだ?こんな遅い時間に」
 
「今何してる?」
 
「月を見てた。お前は何してる?」
 
「私も同じ。綺麗な月だよね」
 
「うん。とても綺麗な月だね」
 
「この月をさ、絵に描こうかなって思ってるんだけど、どうかな?」
 
「マリカは絵が上手いからな。いいんじゃないか?書いても」
 
「全くお世辞が上手いんだから。そうだ大事な話があるの。聞いてくれる?」 
 
大事とは何だろうか。僕は何だか胸がざわざわした。
 
「何だよ大事な話って。聞いてやるから話しなよ」
 
「あのね、私死ぬかも知れないの」
 
「死ぬかもしれない?何でそんな事思ったんだ?」
 
「分からない。でもそんな予感がするの」
 
「死ぬ夢でも見たのかい?」
 
「ううん」
 
「う~ん、いきなり死ぬかもって言われてもなぁ…」
 
「ごめんね変な事言って」
 
「いつもの事だ気にするな」
 
「も~、何よそれ。私は真面目に言ってるのに…」
 
「何がともあれ、死ぬ前に絵は完成させてもらわないとな」
 
「うん、わかった。頑張って書くね」
 
「おう、楽しみにしてるよ。おやすみマリカ」
 
「おやすみ坂上くん」
 
そこで電話は切れた。何故、マリカは自分が死ぬかもなんて思ったのだろう。前から不思議な事を言う奴だとは思っていたが、まさか死ぬと言われるとは思ってもみなかった。そう僕が考えている間も、月は煌々と輝いていた。僕は試しに月に聞いてみることにした。
 
「おーい月、何でマリカが死ぬか知ってるか?」
 
月は何も答えなかった。ただ、優しい光で僕を照らしてくれた。
 
「知ってるわけないか。そりゃそうだよなぁ」
 
僕は独り言を呟きながら、家の床にゴロンと寝っ転がった。そしてそのまま、僕は布団も敷かずに寝てしまった。一瞬、唇がなんだか変な感覚に襲われたが、気にせず僕は眠りに落ちた。






ある夏の暑い日、私は自分の部屋のクーラーをガンガンに効かし、アイス片手に音楽を聞いていた。あるアイドルグループの、夏によく似合う歌だ。この曲を聞く度、何だか歌ったことがあるような気がするって思ってしまう。そっと部屋の窓から外を覗いてみると、自動車ぐらいの大きさのカブトムシがのっそのっそと歩いている。そのすぐそばを馬車が通る。この場所にはもう何年も住んでいるけど、本当に不思議な場所だと思う。
 
ボケ~っと天井を見上げながらアイスを食べていると、いきなりスマホが鳴った。相手は坂上くんだった。
 
「坂上くん?どうしたの?」
 
「急にごめんなヒメカ。もし良ければ、休みだし一緒にどこか遊びに行かないか?」
 
「え、私と?」
 
「いやならいいぜ断っても」
 
「いっ、行く!」
 
「そうか。じゃあ水族館でもどうだ?」
 
「水族館!?いいじゃん!絶対楽しいよ!」
 
「外は暑いけどさ、水族館ならなんか涼しそうだし、この季節にはもってこいだと思うよ」
 
「いかにもザ・夏!って感じだね。待ち合わせ場所はどこにする?」
 
「欅坂駅で10時。それでどうだ?」
 
「了解。それじゃあね」
 
「おう」
 
なんだかドキドキした。実は前から坂上くんの事が気になっていた。好きな人から『水族館行かない?』っていう誘われたら、断る余地はない。さっそく何を着ていくか選び始めた。
 
結局、私は薄いピンク色の少し裾の短いワンピースを選んだ。ちょっと短かったかもしれないけど、相手は男の子だし、短い方が嬉しい…よね?なんか私、いつの間にかあざとくなっているような気がする。それにこのワンピース、オフショルだし…やっぱ男の子は女の子の露出は好きだよね!?
 
駅までは馬車で行った。途中で一人の男性と相乗りになった。その男性は背こそ小さいものの、立派な口髭を蓄え、優しそうな目をした人だった。
 
欅坂駅には集合時間より5分程早く着いた。坂上くんは駅前のベンチに座っていた。
 
「ごめん坂上くん。待った?」
 
「ん?いや、俺もさっき着いたばかりだから待ってないよ」
 
「そう、ならよかった」
 
「んじゃ行くか」
 
「うん!」
 
水族館は駅のすぐ近くにあって、そこまで歩いて行った。道中、私はドキドキしっぱなしだった。だって好きな人の隣を歩いているんだよ?誰だってドキドキするよね?
 
水族館はとても楽しかった。大きな水槽の中を泳ぐジンベエザメを見たり、イルカショーを見たり、お昼は水族館オリジナルカレーを一緒に食べる。私の口に付いたカレーを、坂上くんが『動くな』って言って拭いてくれた時は、もう顔から火が出るくらい恥ずかしかった。おやつはソフトクリームを食べた。坂上くんはチョコ、私はストローベリー味。ストローベリー味はとっても甘く、口の中でふわっとストローベリーの風味が広がる。坂上くんも美味しいそうに自分のを食べてた。とっても恥ずかしかったけど、お互いソフトクリームを交換して食べた。その姿は、周りから見たら完全にカップルだった。
 
あっという間に夕方になった。そろそろ帰ろうとなり、二人で欅坂駅まで歩く。
 
「今日は本当に楽しかったね!」
 
「ああ、イルカショーは大迫力だったな」
 
「あとコウテイペンギン。あの歩き方がすっごく可愛かった!」
 
「あとお前、幼稚園児みたいにカレーを口に付けてさ、何歳なんだよ一体」 
 
「う~、しょうがないでしょ美味しかったんだもん!」
 
「プク顔しても俺には通じません。残念でした」
 
「男の子ってプク顔好きなんじゃないの?」
 
「ヒメカ、お前いつからそんなあざとくなった?」
 
「いつからでしょうね?」
 
「もういい。コイツ置いてこ」
 
「え~、ちょっと待ってよ!」
 
そんな話をしてたら、あっという間に駅に着いた。
 
「今日はスゲー楽しかった。またどっか行こうな」 
 
「うん!絶対だよ!」
 
「おう、絶対な」
 
坂上くんはそう言って、駅のホームへと歩き初めた。私はなんだか急に寂しくなった。勇気を出して、坂上くんに思いっきり抱きついた。
 
「なっ、なんだよ急に。新手の痴漢か?」
 
「違う。なんか寂しくなっちゃったから、少しだけこのままでいさせて」
 
「背中じゃなくてさ、俺の胸の方が良いだろ?」
 
そう言って、坂上くんは私のことを思いっきり抱きしめた。
 
「ふぎゃ!?」
 
「変な声出すなよ。あとこのハグ、オプションあるよ」
 
「オプション?」
 
私がオプションについて問おうとしたその瞬間、坂上くんが私の唇に自分の唇を重ねた。余りにも突然の事だったので、どう反応すればいいか分からなかった。でも、一つだけ分かる事があったの。
 
『坂上くんが好き、大好き。』って。






「いや~、青春だね~」
 
「なんか微笑ましいよね」
 
「ここまで見守って来た甲斐があったよ。ひめたんも万理華も」
 
「やっぱりお別れは寂しいよ」
 
「乗り越えなきゃダメだよ。彼女らはそういう定めなんだしさ」
 
「分かってるよ」
 
「いやでも、別れは寂しいよね。その気持ちスゲー分かるよ。さあ気持ち切り替えて日村さん。最後の仕事だよ」
 
「大役だけど精一杯頑張るよ、設楽さん」
 
「二人を引き合わせないと。俺ら乃木坂公式お兄ちゃんバナナマンの一世一代の大仕事、張り切って行くよ!」
 
「よっしゃ行くぜ!」
 
どこからともなく現れた二人の男。どうやら重要な役目があるらしく、音も立てずどこかへ消えていった。一人は痩せてて、目つきが悪い猫背の男。もう一人は、太っちょのおかっぱ頭の男だった。彼らは一体、何者なのだろうか…

ここは秋元県高山区立白石高校。緑豊かな閑静な住宅地に囲まれている。この高校で二人の少女が出会う。中元日芽香、伊藤万理華である。この二人は、後に大人気アイドルグループ乃木坂46で活躍する事になる…
 
「ん~、なんだかベタだな。何か物足りないんだよな…」
 
「まあ、大抵出会いなんてこんな物じゃない?」
 
「変にストーリー創るよりかはマシか。にしても秋元に高山に白石って、我ながら笑っちゃうよ」
 
「そう言えば、坂上くんって正体は結局分からず終いだったね」
 
「あ~確かに。誰だったのかねあの子は」
 
「まあいいや。俺らが知ってる坂上くんではないだろうし。じゃ、そろそろ行こっか設楽さん」
 
「そうだね日村さん。あ、帰りにラーメン屋寄らない?」






『始まりはいつだって
 
そう何かが終わること』

確かにそうかもしれない。
 
人は必ず誰かと出会い、そして別れる。
 
それがどんなに辛くても。
 
でも、乗り越えなければいけない。
 
だって、また何処かで逢える。
 
そう信じてるから。






ひめたん、まりっか。
 
大分遅くなったけど、卒業おめでとう!
 
アダムズより愛をこめて… 


20180311-01








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