「しょー」様より、妄想小説をいただきました。


 とても短いお話ですが、その行間からさまざまなメッセージが感じとれます。


 きっとこのお話は、はじまりでもなく、終わりでもない。

 点と点の間にあるひとつの物語。

0cf58ca0cae0e5aba153056255894822_s



海からみた遠い空
 
作者:しょー





海からみた空はどんな色をしているのだろうか?
そんな事を考えながら海沿いのへりに座る。足元は群青色の重たい海。わたしは今まで手に持ってきた薄い文庫本を投げ出し、足をパタパタと揺らす。
太腿に触れるザラザラとした凹凸が心地良い。
どこかで船の汽笛が聞こえる。
いまごろ、5時間目の授業中か。
ふと思い出す。
いつものように家を出たけど、途中で行くのがめんどくさくなった。
だからいつものように此処へ来た。
つまり学校へは久しく行ってない。

欠伸をしながらぼんやり海の向こうを見つめているとあいつが後ろから声をかけてきた。
「飛鳥なにしてんの?」
「何?」
私は振り向いてあいつをみる。
あいつの白い頬は少しだけ赤くなっている。今日は昨日より少し気温が上昇した。たぶんそのせいだろう。
「なーんか怠くて。」
わたしはそういいながら、アスファルトに寝っ転がる。
あいつがわたしの顔をのぞき込む。
やけに大きくみえるあいつの顔。
わたしは思わず笑ってしまう。
「なんだよ。」
「なんでもないよ。」
「あっそ。」
日差しが眩しい。わたしは起き上がって制服のスカートを叩く。
「どうせまた、いつものサボりだろ。」
あいつが言う。
「さぁー、どうでしょう。」
わたしはまた海沿いのへりに座って足をパタパタ揺らしながら答えた。

強い潮風が吹く。私は乱れた前髪を直し、
周りを見渡す。近くには誰もいない。
「あれ?」
いつの間にかあいつはいなくなっていた。
「どこいったんだろ。」
ひとりつぶやく。
鴎がのんびりと遠くで鳴いている。
「・・・ふん。」
わたしは目を閉じて潮騒に耳をすます。昔からこの音が好きで何かあるとすぐここへ来た。

いたずらな潮風が頬を撫でると、ふいにあいつの声がした。首筋に冷たい感触が走り、変な声がでる。
「ほら。サイダー。」
あいつが私に水滴の付いた冷たい瓶を差し出す。
「・・・ありがと。」
あいつは額に幾つも汗を浮かべている。
息は荒い。
「走らなくたっていいだろ、べつに。」
するとあいつは、はにかんで
「冷たい方がいいじゃん。」
と言った。
ふたりで海を見ながらサイダーを飲む。
炭酸は音をたて、わたしの喉を通ってゆく。
「明日はこいよ。」
あいつはニヤニヤしながら言う。
「うるさいな。」
わたしはあいつから目をそらしてサイダーをごくりと、一口飲む。
さっきより炭酸が強く感じた。
海からみた空がどんな色かわかった気がした。

b94e397a1a9a3a12a127a840bad75eec_s