タイトル通り、坂道グループを擬人化して、恋愛ゲームのオープニング風の話を書いてみました。こういうのも文章のおもしろさ。動画には負けへんでー!

ゆるーくお楽しみください。

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僕のクラスには、3人の美少女がいる。そのあまりの美しさに、他のクラスはもちろん、他校からも見学に訪れる男子がいるほどだ。

彼女たちと同じクラスになれたことで、きっと僕は一生分の運を使い果たしたと思う。休み時間にこうやって3人を眺めているときが、どんな時間よりも贅沢に感じられた。

一番前の席で、グラウンドを眺めている乃木さん。乃木さんは、見るからにお嬢様だった。みんなと同じ制服を着ているのに、明らかに他の女子とは違う空気を放っている。と、男友達に話したら、わかるわかると頷いていたが、それを聞いていた吉本さんに、「失礼だわさ!」と頭を小突かれた。

吉本さんはクラスのムードメーカー。3人とはまた違った魅力ある女子だ。うん、こう書いておけば、吉本さんに怒られないだろう。

乃木さんとはまだ話したことがない。どうにも近寄りがたかった。別に、「話しかけないで」オーラがあるわけでもない。きっと気さくに話してくれるだろう。でも、きっかけがないまま話しかけて、変に思われないだろうか。

僕はちょっと腰を浮かす。「次の数学の宿題やった?」。そんな声をかけたら、乃木さんはどう答えてくれるだろう。きっと優しく返してくれるはずだ。

でも……、と僕は腰を戻す。そうじゃなかったときが怖くて、どうしても勇気がでない。

ただ、こちらの美少女は、話しかけてもそっけない態度なんだろうな。

そう思って、首をひねり、窓際の席で本を読む欅さんを見る。欅さんはいつも本を読んでいた。その横顔が、同じ歳には思えないほど大人びている。

以前、欅さんが担任と口論しているのを見たことがある。そのときの欅さんの目は、今でも忘れられない。怒りではなかった。心を凍り付かせるような、寂しい目をしていた。なんでわかってくれないの。そんな叫びが聞こえてくるような瞳に、僕は目を伏せた。

欅さんは、来月転校が決まっている。それでも感傷的にならず、欅さんはいつも通りの日常を過ごしている。その芯の強さに興味があった。

「欅さんに用事?」

いつの間に近づいたのか、僕の前には日向さんが立っていた。

「いや、用事ってわけじゃないんだけど」
「それじゃあんまりじろじろ見ちゃダメだよー」

日向さんはからかうように言ってくる。この日向さんこそ、3人の美少女のうちのひとり。とにかく明るく、クラスの誰からも好かれていた。ただ一点、彼女にはとても困った才能がある。

日向さんは、びっくりするぐらいに顔を近づけてくる。僕の顔が一瞬で赤くなった。

「ねえ、もしかして欅さんのこと好きなの?」
「そ、そんなわけないだろ」
「それじゃ乃木さん?」
「……違う」
「だったら、わたし?」

日向さんは顔を離し、僕の目を見る。ここで勘違いしちゃいけない。日向さんは誰にたいしてもこうなのだ。困った才能とはまさにこのこと。日向さんには、相手を“その気にさせる”才能があった。

しかもこれは狙ってやっているわけではない。これが彼女の「素」だった。

僕は内心でため息をつく。こんな美少女に好きかと聞かれて、なんて答えたらいいんだよ。

「嫌いじゃないよ」
「それじゃ好きってこと?」
「クラスメイトとしてなら」
「なんだ、つまんないの」

 あ、と日向さんは顔を輝かせ、わかったと手を打つ。

「吉本さんのことでしょ、好きなの」
「それはない」

僕は即答する。もし吉本さんが聞いていたら、また頭を小突かれそうだ。でも今日、彼女は風邪で欠席していた。

「おもしろそうな話してるね」

その声は乃木さんだった。彼女は微笑みながら近づき、僕の隣の席に腰かけた。良い匂いにくらくらする。僕は動転して、慌てて声をかける。

「ご機嫌うるわしゅうです」

乃木さんは、「変な言葉」と口元に手をあてて笑った。クラスの女子とはやはり違う。動きに品がある。

「失礼なこと考えてたでしょ?」

日向さんがのぞきこむように言ってきたので、僕はぶんぶんと首を振った。

「それでなんの話?」

と、乃木さん。

「Aくんがね、だれを好きかって話だよ」
「そうなんだ」

乃木さんはそう言って、僕の顔を見て、微笑む。

「わたしもそれ興味あるな」
「でしょー」

僕は助けを求めるべく、周囲を見渡す。途端、クラス中の殺気を感じた。いや、クラスだけじゃない。全世界からの殺気を感じる。おまえ美少女ふたりとなにイチャイチャしてるんだ。そんな声すら聞こえる。

ち、違う! 僕だって、なにがなにやら!

そのとき、視界に欅さんがうつった。欅さんは困り果てた僕を見て、一瞬何かを考えると、本を閉じ、いたずらっぽく笑う。はじめて見る表情に胸が高鳴った。欅さんってこんなにかわいかったんだ。

欅さんの唇が動く。決して聞こえないはずなのに、欅さんがなにを言ったのか伝わってきた。

――わたしも気になるな。

 殺気が増した気がした。この空気があと数分続いたら、殺気に殺される。

 ぼ、僕はだれを選べばいいんだ!








 とまあ、こんな感じでゲームがはじまるわけです。

 あなたはだれと恋をはじめますか? 隠しで、吉本さんルートもありますよ!