勢いで書いてみました。いろいろ放り投げて前のめりに一発勝負。改稿なし。甘々です。シリーズ化する、のか?
共通設定
恋愛禁止なんて関係ねぇ! アイドルと公衆の面前でいちゃいちゃしても問題ない世界。
作者による補正大なので、「実際はこんな性格じゃない!」と思っても優しくスルーしてください。
乃木坂メンバーと「プリクラ」をしたら
井上小百合 編
「うわー、久しぶりだなぁ」
流行りのプリクラに入るなり、小百合は嬉しそうに言って、慣れない手つきでパネルの操作をはじめた。
「どんな設定にする?」
振り返る彼女に、任せるよ、と答える。正直、どれでも良かった。好きな女の子とふたりっきりの空間にいる。それだけで鼓動が高鳴る。今一番の心配事は、この動揺がばれないかどうか。たかだかプリクラでこんなにも緊張しているなんて気づかれたら恥ずかしすぎる。
でもしかたないよな、と自答する。だって相手はあの有名なアイドルの――。
「よしこれに決めた」
操作を終えた小百合が隣にやってくる。室内にカウントダウンが聞こえ、僕は慌ててピースサインを作った。ありきたりだが、他のポーズが思い浮かばない。本当はもっとカップルのような撮り方をしたかったが、彼女はベタベタした付き合いを好まなかった。付き合ってから手を握るまでにも相当な時間を要したぐらいだ。ここで「一緒にハートを作りたい」なんて言ったら嫌われてしまうかもしれない。
でも、せっかくなら……なぁ。
迷っている間に1枚、撮られる。出来上がりが正面の画面に表示された。
僕はおもわずつぶやく。
「すげー……」
心からの声に小百合は照れたように、口元に手をあてた。
画面には、完璧な「井上小百合」が映っている。たいていの人は、その容姿から柔らかな雰囲気を彼女に感じるが、ひとたび人前やカメラの前に立つと、がらりと変化する。彼女の好きな戦隊ヒーローになぞらえれば、それはまさしく「変身」だった。
「やっぱりアイドルなんだな」
「なに? 嘘だと思ってたの?」
「そうじゃないけど……」
画面に映っている完璧な笑顔の彼女を見て感じる胸の痛み。その理由は分かっている。
これは、みんなの井上小百合。みんなが求める彼女。
でもせっかく付き合っているなら……わがままだと分かっていても、
僕にだけ見せる顔でいてほしい。
「もう1枚、撮ってもいい?」
確定ボタンを押そうとする小百合を止めると、彼女は怪訝そうな表情を浮かべる。
「何か変だった?」
「完璧だったよ。でも僕が、ね」
「いつも通りだと思うけどなぁ」
そう言いながらも、撮り直しのボタンを押し、跳ねるように彼女が隣にやってくる。喜びが全身からあふれているようだった。
「でも嬉しいな」
「なにが?」
「……それ、言わせる?」
カウントダウンがはじまる。ふたりにある微妙な距離。彼女の手を握ろうとする。……もし、拒否されたら。だめだ、勇気がでない。横目で見る。アイドル井上小百合の完璧な微笑みがそこにはある。でもこれは――。
逡巡していると、彼女がぽつりとつぶやいた。
「好きな人と……一緒にいられること」
覚悟が決まるよりも先に体が動いた。
――っ。
小百合を抱き寄せた瞬間、シャッターが切られる。
胸に感じる温かさに緊張がほぐれていく。彼女の体が一瞬強張った。突き放されるかと覚悟したが、静かに腰に回された手に安心する。
彼女はそのまま静かに言った。
「いきなりはだめだよ、恥ずかしい」
「ごめん、でも、ほら」
「……わたし、ひどい顔」
「そんなことないよ。今まで見た中で一番綺麗だと思う」
「ほんとに?」
「本当」
「もっと、見たい?」
潤んだ瞳で見上げてくる。恥ずかしさからか、顔が紅潮していた。
「見せてくれるなら」
視線を逸らさずに言うと、彼女は僕の胸に顔を埋める。
「あんまり見ないで、すごく恥ずかしいから」
表情は見えない。けど、どんな表情をしているか、手に取るようにわかる。
「安心していいよ」
そのまま小百合は言う。
「あなたの前でいるときが、わたしが一番わたしらしくいられる……」
だからね……。長い間のあと、見上げてきた彼女は、
「わたしの今は、あなただけのものだよ」
誰にも見せたことのない、
僕にしか見ることのない、
最高の笑顔で見つめてくれた。
一瞬は儚い。
繋ぎとめておく術などない。
「なに言っちゃってるんだろうね、恥ずかしいなぁ」
でもきみが、その刹那を僕にくれるなら。
「え?」
香り、温もり、笑顔、そのすべてを、
「こんな僕を選んでくれて、ありがとう」
必ず永遠にしてみせる。
「わたしこそ。ずっと一緒にいようね」
プリントクラブから吐き出された1枚の写真。
ここからはじめよう。
一瞬が繋ぐ永遠の旅へ、
ふたりの世界を作るために。
次作として、
生田絵梨花と「カラオケ」に行ったら
斉藤優里と「映画」に行ったら
伊藤万理華と「買い物」に行ったら
中元日芽香と「握手会」に行ったら
山崎怜奈と「美術館」に行ったら
などを考えています。