――小高さん小高ちはやさーん、七番診察室へどうぞ!
ポム先生の声はとってもげんき。肝っ玉母ちゃんだ。
入室して椅子に座り、目を合わせると、先生は、すいこまれそうなふかいふかーい瞳をしているのでした。
「おはようございまーす! 小高さんどうしてましたか」
「あ、えっと、お薬の相談が3点あって」
「うん、さっき箕浦さんから、眠れてないみたいってきいたよー」
さすが箕浦さん、話が早い。
「そうなんです。ずーっとレボトミンを飲んできたんですけど、セロクエルに戻したいなっておもって」
「うんうん、」ポムせんせいはキーボードかたかた。
「セロクエルはほんとにねむれるお薬だからね、その感覚は合っていると思うよー。
でもわたしすごい心配性で〜、だから一気にがんって変えたくないのね、だからいままでどおりレボトミンに加えてセロクエル1錠出してみるね。ちょっとずつ移動していきましょうか。」
「はい」
なんか逆らえないや(∩´∀`)。
「25mgから始めてみようかな。少ないからあんまり効果は感じないかもしれないけど、我慢してね。……んで、ふたつめのご相談は?」
「えーと、アーテンは、もう要らないかなって」
「アーテンはいつから飲んでたの? アカシジアとか副作用の対策?」
「いいえ。フラッシュバックの予防に良いってワサヲ先生が……」
ああ、そっかそっかと先生はまたキーをたたきます。
「わかりました。でもね、またまたわたし心配性だから、悪性症候群とか出たら心配だから朝1個だけは飲んで欲しいな。いいかなー。」
「わかりました」
なんなのだこの絶対逆らえない雰囲気は、母ちゃんよ。
「はい、それで三つ目は?」
「えっとっ、フルニトラゼパムよりネルボンの方がもしかしたら眠れるかもしれないなあっていう……」
ポム先生はとうとうがははと笑いました。
「それも次回の診察で相談しましょ。あんまりたくさん、いちどに変えられないわあ」
「そうですね、はは……」
「あとは心配なことはあるかなあ?」
やっぱり深い。深いひとみ。
「……えっと、この医院から精神科病棟なくなるって、どうなんでしょうか」
「うーん。小高さんの今までのカルテ、みたけどねえ、」
ポム先生はかんで含めるように言いました。
「小高さんはねえ、今後必ずしも入院しないとは言い切れないでしょう?」
「あ、は……はい」
え、そうなの!? それは困るわ!
私の心の叫びなどきこえないポム先生は、淡々と続けます。
「だからね、転院ってなったら、できれば入院設備のある病院がいいとおもうのね。そのあたりも、ゆっくり話し合っていきましょ、ね? じゃあきょうはこれでおしまいです、またね」
ありがとうございます。私は機械みたいなおじぎをして診察室を出ました。
ショック。
だった。
でも入院はもう二度としないよ。決めたもん。
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■処方(1日量)■
フルニトラゼパム1mg×3錠
トリンテリックス10mg×0.5錠
スルピリド50mg×4錠
レボトミン25mg×1錠(※2錠減)
アーテン2mg×1錠(※2錠減)
エスゾピクロン3mg×1錠
リボトリール0.5mg×2錠
ブロマゼパム2mg×3錠
トラゾドン25mg×2錠
レキサルティ2mg×1錠
クエチアピン25mg×1錠(※新)
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