外出することもできず時間を持て余し気味の日々。そうした状況で外の景色を眺めていると「自転車乗りたいなぁ」と哀愁感じる程度には自転車という乗り物に思い入れがある。自転車が好きだ。

 良い機会なので、旅行してると多くの人から質問される「何で自転車なの?」という疑問に対し私なりの回答をしたいと思う。この旅行の根幹を成していると言っても過言では無い自転車という移動手段。

 ウダウダ理由を書かずとも私が自転車という乗り物が好きで、旅行をするのに「茶壺なら自転車で旅行したいって気持ちが分かる」と察してもらえる文章を書ければそれに越したことはないと思う一方で、5年も6年も旅行続けていれば人の想いも考えも変わっていくものだから。

 どこかのタイミングで、なぜ私が「自転車での旅行」というスタイルを選んだのかという理由をちゃんと言葉に残しておくべきだと思ってたのだ。


 さて自転車である。徒歩旅行者は除外するとして、海外を自力で移動するという意味で自転車に近い「車両」や「バイク」で旅行するという人は一定数存在する。ただ、そうした旅行者たちは「何で車(バイク)なの?」と質問される印象は少ないし、私が出会ったバイク旅行者は「バイクである理由を尋ねられたことはあまりない」と回答していた。

 私はこれを自転車が人力であるという点に要因があると思ってて、楽して移動できる代返手段が他に存在するにも関わらず、自転車という乗り物を選ぶのは特別な理由があるからだ・・・という考え方が根底にあるためだろうと。

 確かに長期的に世界旅行するにおいて主流派である交通機関(バスや列車)を利用した移動に比べ、自転車は多くの時間と金銭が必要な上、体力に知識・強い精神力も持ち合わせなくてはならない。まぁバックパッカーにはサイクリストじゃ分からない苦労があると思うけど、そうした旅行より全体的に大変だろうとは想像できる。

 それを理解していながら自転車を選ぶのはさぞや自転車という乗り物に思い入れがあり、自転車に対して誰しも納得できるような理由があるのだ!と思われても仕方ないと思うし、私も徒歩旅行者に対してはそうした気持ちがある。

 だが違うのだ。

 何が違うって優先されてる順位が違う。旅行の手段として自転車を選んだのではなく、自転車で知らない土地を走ってみたい気持ちがあって、そこに海外が付いてきたのだ。

 だから私にとって自転車でない移動や観光というのは主目的から外れたポイントで、突き詰めれば「スルーしても良いこと」なのだけど、自転車で走ることはこの旅行の根幹なのでおざなりにしたくない。

 そういう前提で旅行してるので「何で自転車なんですか?」と問われても困るのだ。バックパッカーの人が「何で旅してるんですか?」と(嫌味ではなく)聞かれても「好きだから・楽しいから」という答えに帰結するであろうことと同じ。自転車が好きだから、自転車は楽しいから。

 自転車という乗り物の何が好きかと問われたならば、ビール片手に2時間でも3時間でも相手が「もういい分かった」言ってもしつこく喋り続ける私だけど、自転車である理由というのはそういうこと。私にとって旅行は自転車こそが当たり前で、そこに理由を求める余地がない。

 だから私は今のところ自転車じゃないスタイルの海外旅行にそれほど興味がないし、自転車で走れない土地とか国へ行きたいという気持ちが薄い。そういう旅行したいならば、それは今の自転車世界1周中じゃなくても良いやと思ってる。

 あくまで「自転車で」知らない世界を走ってみたい、その上で興味ある場所だったり面白そうな場所に行ってみたい人なのです。言ってしまえば自転車第一主義の旅行。


 まぁワールドサイクリストが移動手段に自転車を使う理由はそれぞれあると思うし、別に私の考え方は主流なのかは分らない。ただ自転車旅行者同士が出会った時に「何で自転車なの?」という疑問は生まれないし、向こうからも自転車である点を質問されたことはない。

 それは自転車で走る楽しさを知っており、楽しい自転車で旅行するというのがごく自然なことだから。そういう意味で自転車は、まだまだ一般的な「旅行の移動手段」とは認知されていないとも言えるんだけど。