何かおかしい。
 そう気付き始めたのは、お盆《ぼん》を過ぎた夏の盛《さか》りの日のことだ。
 その時、俺は家の居間でダラダラしながら別に見たくもない高校野球をテレビで眺《なが》めていた。うっかり午前中なんかに起きてしまったせいで、ヒマではあるが山と積まれた人生の課題に立ち向かうほど気力に満ちあふれているわけでもない、という程度には時間を持て余していたのである。
 テレビに映る試合は俺とはまったく縁《えん》もゆかりも行ったこともない県同士の闘《たたか》いだが、判官贔屓《ほうがんびいき》的精神により7対0で負けているほうをなんとなく応援《おうえん》していると、何故《なぜ》だか解《わか》らないがそろそろハルヒが騒《さわ》ぎ出すような気が、これもなんとなくした。
 ここしばらくハルヒとは顔を合わせていない。俺は妹を連れて母親の実家がある田舎まで避暑《ひしょ》と先祖|供養《くよう》を兼《か》ねて遠出しており、昨日帰ってきたばかりだ。それは毎年の行事だからであったわけなのだが、そもそも夏休みなんだからそうそうSOS団の連中とも会う機会はなく、当たり前と言えばその通りである。それに休みに入るや否《いな》や変な島に行って変な目に遭《あ》うというSOS団夏季合宿はとっくにすんでいる。いくらハルヒでも小旅行第二|弾《だん》を言い出したりはしないだろう。それなりに満足している頃合いだ。
「それにしても」
 俺は呟《つぶや》き、どういうわけだか俺は鳴ってもいない携帯《けいたい》電話を、ふと――本当にふと、ストラップに指を引っかけて手元に引き寄せた時、部屋のどこかに隠《かく》しカメラでも仕込んであるのかと疑うべき事態が発生した。
 まさにベストタイミングとしか言いようのない無駄《むだ》のなさ、電話が着信音をがなり立て始めやがったのだ。予知能力に目覚めてしまったのかと一瞬《いっしゅん》考え、頭を振《ふ》って放棄《ほうき》する。バカらしい。

 なんか自分もこの無職の夏休み無限に繰り返してる気がするわ、多分10年以上繰り返してる これはまさにエンドレスニート(´・ω:;.:...

 

 ハルヒって当時はきもいと思ってたんだけど、今だと結構可愛いなって気がする。一周回って可愛いと思う現象って結構あるんだけど、エンタメや芸術って既存の物を改良していかないとなかなか評価されない世界なので、ある時代の作品は現代のカウンターカルチャーみたいになってる側面がある。

 現代の日常系のアニメと違って、ハルヒは日常系の皮を被ったSFで今思うと結構良い作品な気がする。というより、あの時代から現代にかけてアニメ原作となりえる資源が枯渇して、きらら原作とかなろう原作で粗製乱造されてるから、相対的に良くできてると思うよ。なろうはデビューハードルを著しく下げた反面本当に金の取れる作品は少なくなったのではないかと感じる。

 あーハルヒ可愛いよずっとハルヒと高校生していたい、もう辛い現実と向き合いたくないよ(´・ω・`)