マップ・トゥ・ザ・スターズ
地上の星より永遠の星
公式サイト。カナダ=アメリカ=ドイツ=フランス。原題:Maps to the Stars。ブルース・ワグナー原案・脚本、デヴィッド・クローネンバーグ監督。一応、ワグナーの実体験をベースにしている。ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザック、ロバート・パティンソン、オリヴィア・ウィリアムズ、サラ・ガドン、エヴァン・バード。タイトルからすると、「ハリウッドのスターダムへの道」と思ってしまいそうだが、実はそうではないみたい。少なくとも二重の意味が込められている。
18歳になって7年ぶりにフロリダ州からバスでロサンゼルスに戻って来るアガサ(ミア・ワシコウスカ)は左の顔を隠すように寝ている。後で顔の左側に大きな火傷跡を持っていることが明らかになる。
最初にアガサが行くのはハリウッドスターの名前が書かれたペーブメント。「クラリス・タガート(サラ・ガドン)」と書かれたプレートにひざまずく。
伝説の大女優のクラリスは売れなくなった女優のハヴァナ・セグランド(ジュリアン・ムーア)の母親だが、火事で亡くなっている。そのこととアガサの火傷の跡は何らかのつながりがありそうで、決して「ハリウッド・スターへの道」を目指してかつての大女優のプレートにひざまずいたわけではないことが推測される。
さらにアガサは、その因縁のありそうなハヴァナの秘書として雇ってもらうことに。その橋渡しをしたのがツイッターで知り合った実在のキャリー・フィッシャーその人、本人役。キャリーの両親もともにハリウッド・セレブで本人は麻薬中毒になりかけた。ハヴァナはアガサの父親でテレビタレント・セラピストのスタフォード・ワイス(ジョン・キューザック)の治療を受けている。
アガサがLAに着いて脚本家ブルース・ワグナーをモデルにしたリムジン運転手兼駆け出し俳優ジェローム(ロバート・パティンソン)に行かせた場所は弟の子役スターのベンジー(エヴァン・バード)と一緒に住んでいた家が建っていた空き地。実は7年前、アガサは両親の寝ている間に放火したことになっている。この時点で何か「
音符と昆布」を連想させる。統合失調症とアスペルガー症候群の違いはあれど。
けれど、その時寝ていたのは母親のクリスティーナ(オリヴィア・ウィリアムズ)だったのかどうか。本当はスタフォードとクラリスが寝ていたとか。クラリスは7年前でも相当のお年だった筈だが何しろハリウッドの中でも超セレブ大スターだし、やっておけば凄いコネできるし。実際、娘のハヴァナも顧客になっているし、ベンジーを子役スターにさせたのもこの強力コネのおかげぽいし。
しかもクラリスがハヴァナを虐待したことも知っているゾ、のようだし。ということは、こういう秘密、キャリーが知っていてわざとアガサをハヴァナに紹介したのではと。ツイッターで知り合っただけじゃいかにも不自然だし。多分、キャリーはクラリスとお友達だったとか。
意外とハヴァナはストーリーのメインではない。彼女のやった主なことは開けっぱなしのトイレで便秘と戦いながらおならをピープーと鳴らすことぐらい。落ち目のセレブらしい脱力ぶりと言えばそうなのだけれど。挙句、過去の栄光のトロフィーでアガサに殴り殺されるってのは、ちょっと絵に描いた感ありすぎ。
さらに、さらに実はスタフォードとクリスティーナは兄妹だった、という有り得ない設定。と言っても、両親とも同じということじゃないらしい。2人は子供時代に離れ離れになって大学で知り合ったというのだから、親は途中で別居したぽい。ややこし過ぎる家庭環境。
しかも、アガサの目的はベンジーと再会し、“儀式”を再開することだった。アガサが戻って来たことで、“両親”はパニくり、クリスティーナは焼身自殺。アレレ、7年前に放火したのは実はアガサではなくてクリスティーナだったのかも。理由はあるし。アガサはそう思わされていただけなのかもしれず、案外、そのことが最大の秘密なのかも。そうでなければ、あれほどスタフォードがパニくらないだろう。
もしアガサが放火したのなら焼身自殺するのはアガサとベンジーの筈だが、2人は薬を飲んで星への道を逝くのだから。アガサが学んだのは兄妹でも愛を全うできるということだったようだ。思えば最大の犠牲者はアガサであり、麻薬中毒で社会性を身に着けられなかったベンジーだ。
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Posted by y0780121 at 20:26│
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洋画マ |
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ネタバレあり
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