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前回の記事の末尾で、次のように書いた。

> もちろん、アレクサンダー博士の体験を「幻覚」として片付けようとする脳科学者、
> 博士の主張に反論する脳科学者もいる。

> だが、アレクサンダー博士自身も脳科学者だ。
> 自らが持つ脳科学の知識・医学の知識を総動員して、反論に対する再反論を行っている。

> 自分の知識を総動員し、自分が昏睡状態だった時の脳の状態を徹底的に調べた結果、
> 「自分が臨死体験中に見た世界は、死後の世界だった」と結論付けざるを得なかった。

今回の記事では、
アレクサンダー博士の臨死体験を「脳内現象説」で説明しようとする科学者達の主張と、
それに対するアレクサンダー博士の反論を概観してみたい。

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死の直前、人間の脳は「エンドルフィン」という物質を放出する。
「エンドルフィン」はモルヒネと同じ作用を示すため、分泌されることで痛みが緩和されるのだが、
大量に分泌されると、緩和を通り越し、「快楽」を与えるらしい。
要するに「エンドルフィン」は、脳内の麻薬物質である。
その脳内麻薬の作用によって、幻覚を見る、これが「臨死体験」の正体だという主張がある。

だが、アレクサンダー博士が自分の脳のCT画像をチェックしたところ
昏睡中のアレクサンダー博士の脳は、「大脳皮質」がまったく機能していなかったことが判明した。

「大脳皮質」とは、言語や認識など、高度な機能をつかさどる部分であり、
ここが機能していないと、幻覚を見ることすらできない。

フジテレビの取材班は、アレクサンダー博士からCT画像を借り、
「大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所」の柿木隆介教授に見てもらった。

柿木教授も、アレクサンダー博士の脳のCT画像をチェックし、
確かに「大脳皮質」は機能していないと認めざるを得なかった。

だが柿木教授によれば、幻覚を見るのは「大脳皮質」だけではなく、「脳幹(脳の中心部)」でも見る可能性があると言う。
「脳幹」とは、原始的な機能を担っている部位であり、
呼吸や体温調節など、人間が意識することなく行っていることは、「脳幹」の指令による。

柿木教授によれば、「脳幹」でも幻覚を見る。
例えば、いないはずの人がぼんやりと見えたりするような幻視の症状は、「脳幹」によって引き起こされる場合があるらしい。

だが、アレクサンダー博士の臨死体験は、前回の記事で書いたとおり
視覚的にも聴覚的にも、非常に鮮明なものであった。
このような複雑な幻覚を見ることは、「脳幹」では不可能だとアレクサンダー医師は言う。

アレクサンダー博士の臨死体験を再現した映像を柿木教授に見てもらったところ、
もし本当に、これほど色彩豊かな映像を見たとすると、「脳幹」の働きだとは考えにくいと認めていた。

すなわちアレクサンダー博士の臨死体験は、
「大脳皮質」における幻覚とも、「脳幹」における幻覚とも考えにくいということだ。

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これに対し、脳神経外科医の佐野公俊氏(世界脳神経外科連盟 脳血管障害部門委員長)は
「臨死体験」は「脳の再起動現象」ではないかと主張している。

佐野医師によれば、一時的に機能を停止していた脳が意識を回復する際、
古い記憶が支離滅裂に放出されることがあるそうだ。
要するに、佐野医師によれば、アレクサンダー博士は「夢」を見ていたのではないか、
アレクサンダー博士が見た「死後の世界」は、単なる「夢」なのではないか、ということだ。

だが「脳の再起動現象」は、前述の通り「古い記憶が支離滅裂に放出される」というものだ
アレクサンダー博士が見た「死後の世界」が、彼の「古い記憶」に過ぎないとすると、
会ったこともない妹・ベッツィと出会ったというのはおかしいだろう。

さらに「脳の再起動現象」では説明できない事実がある。
アレクサンダー博士は、昏睡中、自分の周囲に5人の人がいたことを記憶している。
その記憶は、事実と合致しているのだが、博士が昏睡から覚めたとき、博士の傍にいたのは3人だけ。
昏睡状態でありながら、なぜ博士は、自分の周りに5人の人間がいたことを知っているのか。
これを根拠として、アレクサンダー博士は、自分の臨死体験は「脳の再起動説」では説明できないと主張している。

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以上で番組の概要は終わるが…

これまでこのブログの中で紹介してきた臨死体験事例と同様、
アレクサンダー博士の体験は、脳科学的にも「幻覚」や「夢」として片付けることはできない貴重な事例だ。

こういう事例を探すのは非常に困難だ。
単なる臨死体験事例なら、いくらでも見つかるのだが、
たいていの事例は「脳内現象説」でも「現実体験説」でも説明が可能だ。

そうした中で、「現実体験説」に立たない限り、説明不可能な事例は
「臨死体験について」という記事で紹介したマリアという女性の体験と
「再び、臨死体験について」という記事で紹介したアラン・サリバンという女性の体験くらいなものだ。

アレクサンダー博士の事例は
少なくとも「脳内現象説」を否定する事例として、全米で話題になっている。


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