かみさんが元気だった頃。
俺たち夫婦の朝は、
とても賑やかだった。

毎朝7時に目が覚めた。

俺は顔を洗い、
かみさんが作ってくれた朝食を摂り、歯を磨き、スーツに着替えた。
かみさんは俺のために「愛妻弁当」
を作ってくれた。

その間、かみさんはずっと“おしゃべり”
をしていた。
寝起きであるにも関わらず、
かみさんは元気いっぱいで、朝から本当に楽しそうだった。

かみさんがいた頃の朝の騒がしさ。
かみさんが放つ明るい空気。

それらが俺に良質なエネルギーを与えてくれたのだ。

今から仕事に行かなければならない。
今日も深夜まで残業だ。
そう考えると気が滅入りもした。

だが、かみさんの明るい声は、
俺を前向きな気持ちにしてくれた。

・・・

かみさんが亡くなってから。
俺は朝がいちばん嫌いだ。

なんとなく哀しくて、なんとなく重苦しい。
頭がぼんやりする。
身体が小刻みに震えている。

酒に溺れていた頃は、
全身がダルくて起床するのがしんどかったけど、ここ最近、俺は禁酒をしている。
肝機能が良くなっているからか、
倦怠感はほとんどない。

しかし、鬱(うつ)がとても酷いのだ。

一般的に、鬱は希死念慮の原因になると言われるが、俺も目覚めた瞬間、死にたくなる。

この鬱を抑圧するのが難しい。
顔を洗っても、シャワーを浴びても鬱は消えない。

酒を飲んで眠ってしまいたい…と思う。
このまま消えてしまいたい…と思う。

俺はかみさんの仏前に座る。
かみさんに線香をあげる。

かみさんの元気で明るい声が聞きたい。
もしも聞くことができたなら、鬱なんか吹き飛んでしまうだろう。

だが…
かみさんの声は聞こえない。

かみさんはいないのだ。
かみさんは死んじゃったのだ。

俺は消えたい…
という思いを抱えつつ、スーツに着替えて出勤する。

そうだ。
俺の朝は、いつだって鬱との闘いだ。

たぶん俺は、
死ぬまでずっと、爽快な気分で朝を迎えることはないのだろう。

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