夢のあと
2023, Aug 07
空が抱いていた雲は真夏の其れだった。
眼に入りきらない大きな雲が作る陰影は繊細で美しく、森の中の深い湖を覗き込んだときに似ている。何処までも追っていきたい気持ちに駆られ、バスの窓から線路沿いの道を探していた。
ヒロシマ、ナガサキ、の名を聞く頃、蝉の声は壱段と賑やかになり、夏が終わっていくことを教えられる。盆を過ぎれば残っているのは夏でなく残暑と云う季節で、毎日気怠くなる。夢の醒め際にも似て頭が重くなる。
夏からぱっと抜けられたらいいのにと毎年想う。
今年はサンダルを買おうと想っていたのに此処まで来てしまった。今から買おうか。買えば淋しい気持ちになる気もする。それとも遅くなってしまったと言いながら、ひとり線路沿いの道を歩こうとするのだろうか。