例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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夢のあと


 空が抱いていた雲は真夏の其れだった。
 眼に入りきらない大きな雲が作る陰影は繊細で美しく、森の中の深い湖を覗き込んだときに似ている。何処までも追っていきたい気持ちに駆られ、バスの窓から線路沿いの道を探していた。

 ヒロシマ、ナガサキ、の名を聞く頃、蝉の声は壱段と賑やかになり、夏が終わっていくことを教えられる。盆を過ぎれば残っているのは夏でなく残暑と云う季節で、毎日気怠くなる。夢の醒め際にも似て頭が重くなる。
 夏からぱっと抜けられたらいいのにと毎年想う。

 今年はサンダルを買おうと想っていたのに此処まで来てしまった。今から買おうか。買えば淋しい気持ちになる気もする。それとも遅くなってしまったと言いながら、ひとり線路沿いの道を歩こうとするのだろうか。

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