例えば秘密のノートに記すように。

cancion-de-la-abeja(みつばちのささやき)          

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整理


 保留にしていた弐枚のシャツを袋から取り出し躯に当てる。迷っているならまず襟をとってみてから決めようと、襟をスタンドカラーに替え腕を通し鏡の前に立つ。和を感じさせる模様入りの藍色の彼の半袖シャツは、丈の長さを気にしなければ自分にも合うとわかった。
 長袖は袖丈を直す必要があり、切りっ放しできそうにない色柄に躊躇する。カフスを付け直すのは簡単でも、カフスと繋がっている部分(剣ボロと云う名称だそう)を付け直すのは自分には簡単と云うわけにいかない。
 他にも参枚たたんで衣装ケースにしまった長袖がある。まだ直してはいない。

 壱枚と云うわけにはいかないものだね。ぽつりと声が落ちる。残っているシャツは結局全て残すことになるだろう。
 殆ど毎日のように死にたくなってしまう。それでも朝が来る都度、にこにこしておはようと彼に挨拶する。シャツの直しは引っ越してからでもできるけれど、何かしている方が気持ちが落ち着く。特に整理は落ち着く。
 ぽきっと折れたりしなければいいけれどね。鏡に寫る自分に他人事のように言葉を投げる。
 ずっと飾ってあったオルゴールの人形をふたつ塵袋に押し込むと、朝から悩んでいた頭痛が軽くなった。

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