過ぎてゆく
2023, Jul 23
後でもできることなので先ずは自分のことを、と言われ頷いてはみたが頭の中は空で、其のとき其のときしていくしかないと想った。
あれほど好きだった整理も掃除もする気が起こらず、眼についた箇所だけ綺麗にし終わらせる日々が続いている。唯一机に雑記帳とペンを広げることは忘れず、此の気持ちはよく萎えないものだと自分に感心する。それと平常心を保つ為、珈琲は欠かさない。
玖月には借家の契約が切れる。更新するべく来月早々に契約書を送付しようと想う。
此処の暮らしは愉しかったけれど、きっと弍年も済まない。離れたら父を思い出すのと同じに鮮明に思い出すのだろうと想っても。
以前住んでいたアパートのことを思い出そうとすると、嫌な記憶に阻まれてしまう。其れは其れで良いことなのかもしれない。
好きなものを置く。其処で暮らす。其れは考えていたよりずっと自分にとりだいじなことだった。
全て過ぎてゆく。ならアパートの記憶は棄てていく。此処で過ごした日々は抱えていく。其れ以上のことはまだ口にできなくとも雑記帳に記すこともできなくとも、想い描くものはあたしにやさしい。