猟期もラストスパートに入ったこの日は、いつも解体をさせていただいている親方(若き勢子)のご家庭がお留守。
「じゃ、人数も少ないし軽く散歩程度に犬を走らせましょうか。もし獲物が獲れたら野外解体にしましょう」
という話になります。
我が家のワンコはカヤさんイトちん。
モリは爪を剥がしてもう少しお留守番です。
1ラウンド目は私と長老勢子で山を掻き回しますが、ほとんど獲物の痕跡なし。
それでも素抜けしてきたオス鹿が1頭撃ち取られました。
1頭獲れてボウズじゃなくなったので、そのまま解体作業に取り掛かって良かったのですがまだ10時過ぎ。
「もう少しやるか」という話になりました。
そしてそこで私にはちょっと考えている事がありました。
「
殿山さん(仮名)。86歳の長老様に頼むのも申し訳ないのですがもう1ラウンドお願いできますか」
今年の猟期に攻めていない小さなポイントがあって、そこはふじの様に足が伸びず
イノシシだけに特化した犬を連れてきた時に攻めないと攻略できないのです。
(カヤとイトの俊足コンビだと、鹿を追い散らして終わり)
その点、長老様の今日連れて来ているワンコなら条件バッチリ!
「殿山さん(仮名)、この谷の突き当りの一番高い場所に小さなイノシシの寝屋があります。ワンコを連れて行って上から被せて欲しいんです。イノシシがいたらオレ達が待っている場所にイノシシが出て来る筈です」
殿山さん(仮名)は自分でこの場所を攻めるのは初めてだったので、おおよその場所とポイントに辿り着く目印を伝えます。
私も待ち役として待機。
殿山さん(仮名)が猟犬を放ちます。
「この辺まで来た」
「良い感じです。もう少し上まで行って谷を下るとイノシシの寝屋に突き当たります」
場所を知っている私が無線で寝屋まで誘導します。
暫しの時間が経過。
「あれ?大山の頂上が見えてきたよ。行き過ぎたかな?」
「あ、それは行き過ぎです。そのまま降ると目的の寝屋になりますから下に向かってください」
あっと言う間に大きな山の山頂近くまで行ってしまった。
なんて元気な86歳なんだ…。
私はその場所を何度も登ったり降りたりしているので、這いつくばらないと立っていられないような石だらけの急斜面で、殿山さん(仮名)がどれくらいの速度で移動しているかが分かり愕然とします。
そうしていると一発の銃声。
「小鹿を仕留めました」
殿山さん(仮名)が上から降りてきたから待ちにかかったな…。
「寝屋に辿り着いたよ。犬がかき混ぜているけど反応がない」
殿山さん(仮名)からの連絡。
「すみません、今日はイノシシが入っていませんでした。そこしか目ぼしいポイントが無いのでボチボチ下って来てください」
頑張って2ラウンド目に高い山を競ってくれた長老様に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら無線を返します。
そうして長老勢子が降りてきていると、ワンコがギャンギャンと啼き出します。
「啼いたよ!!」
半分諦めモードから一気に緊張感。
通し(けもの道)を黒い塊が駆け下ってきます。
谷間に木霊する銃声。
私の隣の待ち役の方が一発で仕留めてくれました。
45kgくらいのよく脂の乗ったメスイノシシ。
最初に鹿を撃ったので寝屋から出て途中で竦んでいたのでしょう。
そこを猟犬に見つかって上手く待ち(狙撃手)にかかりました。
長老勢子に無理言って競ってもらったので、イノシシがいてホッとしました。
「あ~あ、人数少なくて犬の散歩なのに3頭も獲れちゃったよ」
「さっさと野外解体しちゃいましょう」
という事できれいな谷川の側に移動して手分けして解体。
何度も車と谷川を移動して面倒くさいし、しゃがんで解体するので腰が痛くなります。
「本当に解体できる施設があるのってありがたいよね」
「オレは賃貸暮らしの時はお風呂場で捌いていました」
「一昔前は猟欲の強い人ばかりだったから、夕方まで競って真っ暗になって野外解体していた。だからヘッドライトは必需品だった」
なんて話になります。
私は時には不自由さを経験することはとても大切だと思うのです。
不自由さを感じることで人類の進歩や発展があったと実感できるからです。
まあこの現代社会で掌を血や獣の毛だらけにして食べるお肉を山から獲って来ているからこそ感じることなのですが、「現代社会における原始人」と自分の事を認めざるを得ません(笑)。
皆さん手慣れたもので残滓を土中埋設して2時間ほどで終了。
獲物にも恵まれたし、たまになら野外解体も楽しかったかな。
今日も長老勢子の活躍と自然の恵みに感謝です。
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しかし超人殿山さん、パネーっすな...
しかし超人バロムワンさん凄いですな。
コンスタントに結果を出せるようになると良いのですが、まだまだヘナチョコなので修行あるのみですね!!
はい、長老勢子さんはまさに「生ける伝説」です。
テレビ局の人~!
取材来るなら今のウチですよ(笑)。