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魔法少女まどか☆イチロー 最終話

2011年08月06日 20:06

魔法少女まどか☆イチロー

182 :まど☆イチ ◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/16(土) 20:22:22.68 ID:AwbvG8G4o
 みなさんこんばんは。週末の夜、いかがお過ごしでしょうか。

 おかげさまで『魔法少女まどか☆イチロー』(略してまど☆イチ)も残すところあと一話となりました。

 すぐにでも最終話を投下したいところなのですが、今朝突然電波を受信してしまったので、
先にそっちを投下したいと思います。



   一発小ネタ劇場 魔法少女まえだ☆マギカ

(※まどマギを見ていない人にはちょっと分かりづらいネタです)



 ☆朝の登校風景

緒方「おはよう、前田。今日も可愛いね、この」」

前田「お前に言われんでもわかっとる」

野村「お二人は本当に、仲がいいのですねえ」

 ☆転校生

山本コージ「今日は、転校生を紹介します」

佐々岡「佐々岡、真司です」

前田(む、アイツは……!)


 ☆魔女の結界

緒方「やばいぞ前田、変な生物とかいるし。ここはキケンだ」

前田「お前に言われんでもわかっとる」

???「あら、スライリーを助けてくれたのね、ありがとう」

緒方「だれ?」

???「私は、大野豊。魔法少女よ」

緒方「魔法少女?」

大野「その前に、一仕事すませないとね」

前田「……」

大野「七色の変化球(ティロ・フィナーレ)!!」


 ☆契約

大野「これでもう、大丈夫」

スライリー「助かったよ、大野(呼び捨て)」

緒方「お前、何者だよ」

スラ「ぼくの名前はスライリー。実は前田と緒方の二人にお願いがあってきたんだ」

前田(お願い?)

スラ「ぼくと契約して、広島東洋カープの選手になってよ!」


 ☆修羅の道

佐々岡「ダメよ前田智徳。広島東洋カープに入ってはいけないわ」

前田「お前に言われんでもわかっとる」

佐々岡「あそこに入ったら、野球選手として生涯怪我に苦しむことになるわ」

前田「前田智徳は死にました」



184 :まど☆イチ ◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/16(土) 20:25:48.39 ID:AwbvG8G4o
なぜこんなネタを書いてしまったのか。自分でもよくわかりません。

というわけで、本編どうぞ↓



           最終話


いつだって、チャンスのときには力が入るものです




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魔法少女まどか☆イチロー 第八話

2011年08月05日 20:09

魔法少女まどか☆イチロー

152 : ◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/15(金) 20:52:27.91 ID:5vPqj+Z0o


            第八話 

 ぼくは、すばらしい仲間から、なにかを学びたかった。
「純粋な思い」っていいなぁと思いましたね。


 初めて目にする光景と言ってもいい。

 あのイチローが苦戦している。それだけでほむらには恐怖であった。

 せまりくる不気味な使い魔たちを、バット一振りで制圧していく。しかし、倒しても倒しても敵は出てくる。

「ぐっ!」イチローの左肩の辺りが何者かに斬り裂かれた。

「イチロー!」ほむらは思わず叫ぶ。

「大丈夫だ」

 純白のシャツがジワリと赤い血で滲む。傷が浅かったことと、利き腕の右でなかったのが不幸中の幸いだ。

 地面に着地したイチローは、次にバットをボールに持ち替え、空中に向かってボールを投げた。

 ひときわ大きな化け物に、ボールが命中し、破裂する。

「油断すんなイチロー!」

 イチローの後方に迫った巨大コウモリの使い魔を、杏子が槍で叩き落とす。

「すまない」

「貸しにしとくぜ」そう言って杏子は顔をそらした。

「ふんっ」再びバットを持ったイチローは、膝を曲げて跳躍する。

 跳躍する高さも、浮遊時間も明らかに先ほどよりも減っている。

 イチローの身体に何があったのか。
 ほむらは、遠距離攻撃用のライフルを構えながら、彼の身体の異変に思考を巡らせる。

 確かに、まだイチローが本調子になる季節ではない。
 とはいえ、以前戦った時よりも戦闘力が落ちているのは問題だ。しかも現在進行形で弱くなっている。

 毒?

 呪い?

 それとも、すでにイチローの身体は限界だったのか。


 不安がジワジワとほむらの心を覆う。このまま魔女化してしまいそうなほどの不安であった。



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魔法少女まどか☆イチロー 第七話

2011年08月04日 20:01

魔法少女まどか☆イチロー

135 :◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/14(木) 20:24:42.49 ID:zE5pNBgpo



                第七話



 苦しいことの先に、あたらしいなにかが見つかると信じています。



 彼女は朝が苦手だった。

 目覚める直前のあのまどろみの中で、彼女は夢を見るのだ。

 あの最悪の日の記憶。何度も何度も彼女は夢で見る。
 自分にとって一番の親友を失ったあの日。崩壊した街の中で空は暗く染まり、悲しみが心を支配する。

 いやだ。

 もうこんな思いはしたくない。

 ぐっと唇をかむ。

 彼女は何度も何度も、数え切れないほどこんな夢を見ている。

 夢の中で誰かが叫んでいる。

 誰だろう。

 彼女は耳をすませた。
 

「はやく起きろ!」


「え?」

 目を開けると、そこにはエプロン姿の佐倉杏子がいた。

「あ……」

「あ、じゃないよ。アンタ今日は学校だろう。早く起きねえと遅刻するぞ」

「……イチローは?」

「別にあいつは学校でもなんでもねえだろう。とにかく、早く起きて顔洗ってこい。
寝ぼけた顔してんじゃねえぞ」

「この顔は元々よ」

 なぜ杏子がここにいるのだろうか。ほむらは少し考えて、数日前のことを思い出す。

 イチローに勝負で負けた杏子は、アンタたちの言うことを聞く、とか言ってほむらの家にそのまま転がり込んだのだ。

 言うことを聞くなら出て行ってくれ、というほむらの要求は無視されてしまったのだが。

 イチローは、別に反対しなかったのでこのまま杏子とほむら、そしてイチローの三人で暮らすことになった。
 冷静になって考えて見れば、なんとも奇妙な共同生活である。

 顔を洗い、制服に着替えるとすでに食卓には朝食が準備されていた。

 こんがりと良い具合に焼きあがった食パンやスクランブルエッグ。

 まるでドラマに出てくるようような朝食だ。

 イチローは、朝起きるのが遅いので、いつも彼女は一人で食事をして出かける。
 もちろん、朝食といってもパンを焼いて食べる程度である。

「さっさと食っちまいな」

 やや乱暴な言葉とは裏腹に、杏子の調理は丁寧だとほむらは思う。


 朝食を終えて学校へ向かう道のり。

 いつもの一緒だ。何も変わらない。春の日差しが少しずつ夏の日差しに変わりつつある。
 しかし、夏は未だにきていない。

 もう、ずっとこないかもしれない。

 そんなことを考えながら歩いていると、不意に声をかけられる。

「おはよう、ほむらちゃん」

 一瞬、息が止まるかと思った。

「おはよう……」

 けれども、動揺は見せない。

 声の主は鹿目まどかだ。彼女のすぐ後ろには、その友人の美樹さやかもいる。

「元気そうだね、ほむらちゃん」

「そうね」

「一緒に学校行こ、ね」

「……」

 ほむらは一緒にいるさやかのほうを見た。
 複雑そうな表情をしているけれど、以前のようにほむらの存在そのものを拒絶しているようには見えない。

「行こうよ」そう言ってややはにかみながら笑顔を見せる。

「ええ、行きましょう」

 そう言ってほむらは二人と歩きはじめた。

 日常――

 それはとても尊いものだ。失って初めてわかる。

 今の自分は彼女たちと違う。わかってはいたけれども、残酷ではあるけれどそれは紛れもない事実。

 この日々があるから、まどかは幸せそうな笑顔を見せる。

 もしも、この日常を失って彼女一人だけ生き残ったとして、まどかは幸せそうに笑うだろうか。

(私は、何か大きな勘違いをしていたのではないか……)

 学校に着いて、退屈な授業を受けながらほむらはそう思う。

 何よりも、鹿目まどかを守ることを最優先させてきたほむら。
しかし、そのための犠牲も大きかった。

 別の時間軸では、まどかの親友、さやかを死に追いやってしまったこともあった。

 結果から見ると、さやかの死は魔法少女になる、という彼女の意志から導き出されたものである。

 それでも、魔法少女になることの意味を知っているほむらならば、そんな悲劇を防ぐこともできたかもしれない。

 今回は、イチローがさやかの魔法少女化を防いでくれた(※第三話参照)。


 一人の人間が魔法少女にならずに済んだのだ。


 ほむらは、まどかを守りたいという一心で魔法少女になった。

 しかしイチローは、もっと大きな考えているはずだ。彼の思考の全てはわからない。
 ただ、自分よりもはるかに周りのことを考えていることは確実だと彼女は思う。

 そしてほむらもまた、この世界を、この日常を守ろうと思うようになった。


 それがイチローという存在と行動をともにすることの義務であると思えたからだ。


 授業が終わると、教室内の空気が緩む。

 昼休みである。

 この学校の昼休みは、皆が思い思いの場所で食事をすることができる。

「ほむらちゃん」

 まどかが呼びかけてきた。

「なに」

「一緒にお昼ご飯食べようよ」

「……わかったわ」

「よかった」

「どうして?」

「今日ね、私サンドイッチを作ってきたんだよ」

「作ってきた?」

「うん、お父さんに手伝ってもらったけどね。ほむらちゃんと一緒に食べようと思って」

 まどかの笑顔に、ほむらは少し嬉しくなった。

「おおいまどか、行こうよ」と、別の場所にいたさやかがまどかたちを呼ぶ。

「うん、ちょっと待って」

「どこへ行くの?」とほむらが聞くと、

「屋上。今日は天気がいいから気持ちいいよ」

「そう。天気……」

 ほむらは、教室から窓の外を見た。

 今日の天気予報では、降水確率0%だったはずだ。

「あれ? なんか暗いね」

「……!」

 しかし、窓の外は、まるで雨雲でもかかっているかのように、暗くなっていた。


 ほむらには、この光景に見覚えがあった。



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魔法少女まどか☆イチロー 第六話

2011年08月03日 19:02

魔法少女まどか☆イチロー

109 :◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/13(水) 20:37:10.04 ID:awUMhXhYo


       第六話

  夜食はラーメン。最高です。
  具は、白菜だけでいいんです。


 市内のスーパーマーケット――

 制服姿の暁美ほむらは生鮮食品売り場で買い物かごをもって途方にくれていた。

 日本に戻ってから二週間以上。魔女狩りや戦いの準備のため、色々と忙しい毎日を送っていたため、食事を疎かにしていた。

 もちろんほむら一人なら問題はない。魔法少女は魔力によって生命を維持しており、人間の食事を口にすることは補助的な意味でしかない。

 しかし彼女の相棒、イチローは違う。

 超人的な能力を持っていたとしても、やはり人間だ。

 これまで店屋物やインスタント食品、それにスパゲティなど簡単なもので済ませていたけれど、その能力を発揮するためには、ある程度家庭の味も必要ではないかとほむらは思っていた。

 というのも、シアトルで食べた弓子夫人の料理は、単なる美味しさだけでなく栄養バランスも考えられてており、食べれば無限の力が湧いて出てきそうなほど生命力にあふれていたからだ。

 イチローが継続的に結果を残していったことも頷ける。

 何でも一通りこなすイチローだが、料理だけはできない。

 ゆえに、彼のために食事を用意することは、ほむらにとって数少ない恩返しの手段でもある。

「むむむ……」

 弓子の話だと、イチローは好き嫌いも多いので料理には苦労しそうである。
 しかしほむらはまだ中学二年生。味覚も完成されていないし、あまり経験もないため、複雑な料理はできそうもない。

「あ、ほむらちゃん」

「え?」

 振り向くと私服姿の鹿目まどかの姿があった。

「まどか……」

「ほむらちゃんも買い物なの?」

「ええ、あなたも」

「うん。お父さんに頼まれてお使いだよ」

「お父さん?」

「うん」

「そう」

「今日はイチローさん、一緒じゃないの?」

「……彼はいないわ。私だけ」

「そうなんだ。私はね、今から御夕飯の買い物をするんだ」

「私もよ」

「今日のご飯はなに? うちはね、ハンバーグだよ。お父さんが好きなんだあ。なんか子どもっぽいかもだけど」

「そんなことはないと思うけど」

「そう? それで、ほむらちゃんのところの夕食なに?」

「え?」

 ほむらは頬に手を当てて少し考える。

 イチローが好きなもの。好きそうなもの。

「カ……・、カレー?」

「なんで疑問形なの?」

「いや、うん。カレーよ」

「そうなんだ」

「……」


「イチローさんが好きなの?」

「な、何を言ってるのよ。イチローが好きなのはカレーよ」

「だからそう言ってるじゃない」

「……」

「?」

「いや、なんでもないわ」

 ほむらは、動揺を気づかれないよう大きく息を吸った。
 生鮮食品コーナー独特のひんやりとした空気と野菜や海の幸の入り混じった匂いが鼻腔を刺激する。

「どうしたのほむらちゃん、顔赤いよ」

「なんでもないって言ってるでしょう」

「それで、なんのカレーを作るの?」

「カレーはカレーでしょう」

「そうじゃなくて、チキンカレーとか、ビーフカレーとかあるじゃない?」

「そ、そうねえ……」

「あらお嬢ちゃんたち、おつかい?」

 声のした方向を向くと、頭に三角巾をつけ、エプロンをしたいかにもパートのおばちゃんっぽい女性が声をかけてきた。

「はい、御夕飯のおつかいです」まどかが明るく答える。

「そうなの、偉いわね。今日はお魚が安いわよ」

「そうなんですか?」

「ええ、沢山入ってね。エビとかイカとかね」

「……そう」

 ほむらは、何かを考えつつ鮮魚コーナーを凝視した。


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魔法少女まどか☆イチロー 第五話

2011年08月02日 19:38

魔法少女まどか☆イチロー

85 :◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/12(火) 20:14:23.76 ID:irie9aEZo


            第五話

 ひとりの人間のできることは、かぎられています。


 アメリカ西海岸・ワシントン州シアトル――

 古いレンガの建物が立ち並ぶパイオニアスクエアのすぐ南にある巨大な建物を少女は見上げていた。

 セーフコフィールド。大リーグの野球チーム、シアトル・マリナーズの本拠地である。
 ひんやりとした空気の中、青々とした天然芝の上に彼女は立った。

 グラウンドではユニフォーム姿のメジャーリーガーたちが練習をしている。

 一般の人々の中でも特に体格に恵まれた男たちの中で、それほど身体は大きくはないけれど、その分一際強力なオーラを発する選手がいた。


 彼の名は、イチロー。


 イチローは彼女の姿を見ると、柔らかな笑顔を見せて歩み寄ってくる。

「やあ、キミだったのか」

 突然の言葉に少女は戸惑う。

「どうして、私のことを」

「ここ最近、時空の乱れが大きくてね、誰かが時間を巻き戻していると思ったんだ。
まさかキミのような可愛らしい子だったなんて」

「可愛い、なんて……」

 少女は屈託のないイチローの言葉に思わず目を伏せてしまう。

「僕とキミとは、会ったことがあるのかな?」

「いえ、こうして直接会うのは初めてです」

「そうか……」

「勝手なことを言ってごめんなさい。どうか、私に力を、貸してください」

「……」

 イチローは一瞬無言になり、それからそっと彼女の頭に手を乗せた。

「え……?」

「今までよく頑張ってきたね」

「でも、私一人ではどうすることもできなくて、結局貴方の力に頼るしかなくて」

「ひとりの人間にできることは、限られているんだ」

 はじめてできた親友を守りたい。

 その一心で彼女は戦い続け、いつしか孤独の中に身を沈めていた。

 氷のように心を閉ざすことで、自我を守っていた。

「誰だって一人では限界がある。僕だってそうだ。一人だと、野球ができないだろう? 
キミも、一人で我慢する必要はない。僕を頼ってくれていい」

 イチローの手が、彼女の頭に触れ、その手のぬくもりが少女の心に届いたとき、まるで堰を切ったように目から涙があふれ出てきた。

 いきなり泣き出した少女の姿に、イチローは困った顔をしていた。
 彼女も、イチローを困らせまいと涙を止めようとするがなかなか止まらない。

「ああ、よしよし」イチローはそう言って自分のタオルを少女に渡した。

「そういえばまだ」

「……?」

「まだキミの名前を聞いていなかったね」

 そう言えばそうだった。

 こちらはイチローのことを知っているけれど、向こうは自分のことをほとんど知らない。
 スーパースターであるイチローを前に、かなり舞い上がってしまったようだ。

 少女はゴシゴシとタオルで自分の顔を拭いて、まだ充血している目でイチローの顔を見据えた。

「ほむらです」

「え?」

「暁美、ほむらと申します」

 イチローはその名を聞くと、安心したように微笑む。

「よろしく、ほむら」そう言って彼は、右手を差し出した。

「よろしくお願いします」

 ほむらも手を差し出す。イチローの手は、毎年200本以上の安打を生みだす天才打者とは思えないほど、柔らかく感じた。


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魔法少女まどか☆イチロー 第四話

2011年08月01日 19:02

魔法少女まどか☆イチロー

60 :まど☆イチ ◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/11(月) 20:08:56.15 ID:YSX7FtLEo


   魔法少女 まどか ☆ イチロー


          第四話


 いつも、恐怖と不安と重圧を、抱えています。


 江頭2:50が上條恭介のいる病室で暴れていた同じ時刻――

 巴マミはベッドの上で濁りきった自らのソウルジェムを眺めていた。

 数日前まで、キレイな黄金色の輝きを見せていたそれは、今は見る影もない。

 恨み、妬み、悲しみ、恐怖、あらゆる負の感情のが自分の心の中に流れ込んでいるのを感じる。

 さやかやまどかなど、後輩たちの前では元気そうに振舞ってはいたけれども、彼女たちが部屋を出て行った後、イライラがとまらず親指の爪を噛んだりした。

 マミはグッと、ソウルジェムを握りしめ、それを指輪の形に変化させる。

 このままではいけない。事態を打開するための方策をあれこれと考えてはみるけれども、どれも上手くいきそうにない。

 そんな時、不意に人の気配を感じた。

 まどかたちが戻ってきたのだろうか。そう思い顔を上げると、そこには見覚えのある黒髪の少女が立っていた。

「あなた……」

 暁美ほむら。マミと同じ魔法少女の女子中学生だ。

「なんの用?」

 以前のように、感情を覆い隠して優しげに言うことができない。生の感情が声とともに漏れ出すのを抑えられない。

 ほむらは無言で何かをこちらに投げてよこした。

 ぽとり、とシーツの上に球状の物体がころがる。

「グリーフシード……」

 いわゆる“魔女の卵”。
 魔女が孵化する前のグリーフシードには、魔法少女のソウルジェムにたまった“穢れ”を除去する効果がある。

それが、魔法少女にとって失われた魔力を回復させるための唯一の方法。

「どういうこと……?」マミはほむらを睨む。

 仲間ではなく、むしろ敵だと思っていた相手からの施しに彼女の心はいたく傷ついた。

「使いなさい。今のあなたには、新しいグリーフシードを狩るだけの余力はないでしょう?」

「……」

 図星だ。体力自体は回復しつつあるけれども、魔力の消耗はいかんともしがたい。

「このまま魔力を回復しなければ、どうなってしまうか。あなたはもう、わかっているのでは?」

 ほむらのその言葉にマミは奥歯を噛みしめる。

 時間とともに心が黒く染まって行く感覚。

 魔法少女の力が、明るく熱いものであるならば、今のマミの力は暗く冷たいものだ。

「ここの病院で戦った魔女がいるわね」

 唐突に話し始めるほむら。

「それがなにか」

「あなたはあの時、あの魔女と戦った時に、死ぬ運命だった」

「……」

「右手一本で済んだのは、不幸中の幸い、いえ、むしろ不幸中の不幸だったのかもしれない」

「何が言いたいの」

「鹿目まどかに関わるのはやめなさい」

「またその話……」

「魔法少女になった後の、結末は変えられない」

「……」

「あの子を道連れにするつもり?」

「違うっ! 私はっ……」

「……」

「私は、一人でも多くの人を……、護るために……」

 自信が、誇りが、崩れて行く。

 今まで自分は何をやってきたのか。

 それはとても正しいことだと思っていた。

 本当は怖かったのだ。怖くて怖くて、そして寂しくて。

 そこにあの子が現れた。



 鹿目まどか――



 闇に沈みそうになる自分のこころを照らしてくれる太陽のような少女。

 欲しい。あの輝きが欲しい。

「もし、あの子に何かあったら――」

 ほむらは、マミの思考を断ち切るように、一瞬語気を強める。

「その時は私があなたを“始末”する」

 一切の感情を排したその言葉に、マミの背筋が凍る。しかし同時に、そんな冷酷な言葉が心地よくもあった。


 死ね、

 殺す、

 壊す、

 犯す、

 盗む、


 心が負の感情を求めている。

 あれだけ嫌っていた感情を、今は求めずにはいられない。

 もう、自分は自分ではないのか。




 そう思った瞬間、巴マミは壊れた。





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魔法少女まどか☆イチロー 第三話

2011年07月31日 19:05

魔法少女まどか☆イチロー

40 :◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/10(日) 20:38:17.43 ID:5SfnCg8To


         魔法少女 まどか☆イチロー


             第 三 話

 こんなに苦しいのは自分だけか、と思うこともたくさんあります。
 それを見せるか見せないかの話です。
 みなさん、ぼくのことは、疲れていないと思っていませんか?


 さやかがイチローと会った翌日。

 彼女は行こうかどうか迷ったけれど、結局上条恭介の入院する病院に行くことにした。

「イチローさんの尊敬する人って、誰なんだろうね」

 一人で行くのは少々心細かったため、まどかも一緒だ。

 不安がないわけではない。というよりむしろ、不安しかない。
 あの状況で半ば自暴自棄になった恭介をどうやって励ますというのだろうか。

 イチローは一体誰に頼んだのか。

 そうまでして自分を魔法少女にさせたくないのか。

「どうしたのさやかちゃん」まどかがさやかの顔を覗きこむ。

「いや、なんでもないよ」

 どうも考えるのは苦手だ。
 小学生のころから考えるよりも先に身体が動いてしまう性格だっただけに、頭の中でぐるぐると考えていると嫌になってくる。

 恭介の病室に行く前に、一度巴マミの病室に寄って様子を見に行くと、マミは昨日よりは元気そうな顔をしていた。
 けれども、最初に会ったときのような覇気はまだ感じられない。

 さて、マミのことも気になるけれど、今のさやかにとっては、やはり恭介のことだ。

 病室に行くと、昨日よりも若干落ち着いた恭介がいた。

「どうしたんだ? 今日は二人で」

 落ち着いている、とうより気力が萎えていると表現したほうが正しいかもしれない。

「今日はさ、恭介を元気づけようと思って、ここに“ある人”が来る予定なんだ」

「元気づける? 別にそんなこと頼んでないよ」

「ああ、うん。そうなんだけどさ。もう決まっちゃったことだし」

「どういうこと?」

 さやかと恭介がそんな会話をしていると、病院のスピーカーから聞き慣れない音楽が流れてきた。

 やたらテンポの早い曲でドラムの音が激しく響く。

「ああ、この曲は」まどかが何かに気がついたようだ。

 たしかにこの曲にはさやかにも覚えがある。




 布袋寅泰の『スリル』だ!





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魔法少女まどか☆イチロー 第二話

2011年07月30日 19:30

魔法少女まどか☆イチロー

17 : ◆tUNoJq4Lwk [saga]:2011/04/09(土) 20:38:35.31 ID:y4wKISZKo


   第二話

   あこがれを持ちすぎて、自分の可能性をつぶしてしまう人はたくさんいます。
   自分の持っている能力を活かすことができれば、可能性は広がると思います。   


 元々力のぬけていたマミの身体は、肩腕を失ったことによりバランスを崩し、その場に倒れこんだ。

「マミさん!」

 マミのもとへ駆け寄ろうとするまどかをさやかが止める。

「待ってまどか! あいつが来る」

 先ほど爆発したかと思われた、大きい顔のついた芋虫のような怪物が、再びその姿を現したのだ。

「イチロー!!」

 振り返ると、魔法少女の服装をした暁美ほむらが到着していた。

 彼女の視線の先には、背の高い細身の青年がいる。

「これを」

 ほむらがそう言うと、いつの間にかイチローの手に黒いバットが握られていた。ミズノ製の木製バット。
 イチローがいつも使っているやつだ。

「ふんっ」

 バットを受け取ったイチローはその場で素振りをする。
 すると、その振りで出来た風圧がカマイタチとなり、化け物の身体の一部がまるで鋭利な刃物で斬られたかように、分離してしまった。

「凄い」

 美しい、と言うほかないほど完ぺきなフォームでバットを振るイチロー。

 しかしその美しさとは裏腹に、そこから生み出される風は強力な武器となっていた。

「ふんっ!」

 今度は、鋭利な刃物というよりも強力な鈍器のように大きな風圧が魔女を襲う。
 地面が揺れるほど。

「イチロー、そいつは本体じゃないわ。本体はもっと奥にいる!」

 いつの間にか、イチローのすぐ側に移動していた暁美ほむらは彼にそう告げた。

「わかった。そこの倒れている彼女を頼む。それから球を一つ」

「一つでいいの?」

「十分さ」

 ほむらは、円形の楯のような物の中から、ローリングス製のメジャーリーグ公式球を手渡す。

 それを受け取ったイチローは、狙いを定め、それを投げた。

 バッティングのフォームに勝るとも劣らない無駄のない、それでいて美しいフォームが、一直線で部屋の奥へと進んでいく。

 レーザービーム

 アメリカでそう呼ばれたイチローの送球だ。

 次の瞬間、まるで太陽のような眩しい光が周囲を包んだ。まどかは、あまりの眩しさに思わず目を閉じてしまう。

 一体何があったのか。

 爆発?

 これで死んでしまうの?

 色々な不安がまどかの脳裏を掠める。 

 しかし次に目を開いた時、そこは先ほど見た病院の敷地内の通路であった。

「あれ? ここは……」

「結界は消えたわ」

「あ……」

 彼女の目の前にいたのは、まどかと同じ学校の制服に身を包んだ暁美ほむらの姿だった。

 そして、彼女の後には、さきほど魔女の結界内で見た、私服姿のイチローがいた。

「ほむらちゃん……、それにイチローさんも」

「あれ? あたし、何してたんだ」

まどかと同じように気がついたさやかも、すぐには今の状況が理解できていないらしい。

「わっ、イチロー選手。本当にいるよ。ってことはやっぱり夢じゃ」

「夢……?」

 振りかえると、そこには制服姿の巴マミが横たわっていた。

「マミさん!」

「マミさん、大丈夫!?」

 さやかがマミを抱き起こす。意識はないようだ。

「でも、確か……」

 まどかの記憶では、マミの右腕は千切れていたはずだ。その場面が脳裏に焼き付いている。

「あれ、右腕が……、ある。やっぱりあれは――」

 しかし、今のマミには、しっかりと右腕がある。これはどういうことか。

 やはり、さやかの言うとおり夢だったのか。

「夢じゃないわ」

 まどかのわずかばかりの希望を打ち砕くように冷たく響く暁美ほむらの声。

「夢じゃ、ない?」

「ええ、たしかに魔女の結界の中で巴マミの腕はなくなった。でも、彼女は魔力でその肉体を再生させたの。
彼女が今、意識がないのは、魔女との戦いで魔力を消費した上に、更に肉体再生をやってしまったからね」

「そんな……」

「あなたたちもわかったでしょう?」

「え?」

「魔法少女は、“普通の人間”ではないの。普通の人間でありたいのならば、キュウべえと契約して
魔法少女になろう、なんて思わないことね」

「あ、そういえばキュウべえはどこに行ったんだ?」そう言ってさやかは周囲を見回した。

 しかしキュウべえらしき白い生物は見当たらない。

「さっきまで一緒にいたのに」

「んもう、なんだよ。肝心なときにいなくなって。それよりまどか」

「え?」

「マミさん運ぶの手伝って。丁度ここは病院だし」

「あ、そうか」

 まどかはさやかと協力して、マミを外来病棟まで運ぶことにした。

 しかし、ほむらはそれに付き合うこともなく、踵を返した。

「いいのか? ほむら」とイチローを声をかける。

「いいのよ」そう言ってほむらは歩きはじめた。

 まどかは、そんなほむらの後ろ姿を見つめながら、寂しく感じるのだった。

「ほらまどか、行くよ」促すさやか。

「う、うん」

 夕焼けの中で、ほむらとイチローの会話が微かに聞えた。

「ところで今日の夕食はなんだい?」

「明太子スパゲティーよ」

「……そうか」

「ごめんなさい、お買い物に行く暇がなくて」

「いや、気にしなくていいよ。そこは――」

 それにしてもあの二人の関係は何なのだろうか。まどかはそんなことを考えながら、マミを支えて歩いた。


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魔法少女まどか☆イチロー 第一話

2011年07月29日 19:09

 最悪の結末を迎える未来。

 その未来を変えるため、親友との約束を守るために暁美ほむらは時間を逆行する。

 しかし、現実は非情である。

 何度時を繰り返しても、変わらない結末。
 
 そんな彼女が最後に頼ったのは、ある一人のメジャーリーガーだった。


 苦しいことの先に、あたらしいなにかが見つかると信じています――


 史上最強のアスリートが人類存亡の危機に立ち向かう



   魔法少女 まどか ☆ イチロー




魔法少女まどか☆イチロー

1 :◆pbCrJT38xt7R [sage]:2011/04/09(土) 19:59:07.41 ID:y4wKISZKo

 鹿目まどかは、荒廃した暗い街の中で、“闇”と戦う一人の長い黒髪の少女の姿を見た。

 闇の中心には、巨大な歯車のようなものが見える。まどかにとって、これまで見たことのない物体。
 でもそれが危険なものであることは本能で理解できた。

 巨大なビルが宙を舞う。

 闇と戦う少女は、不思議な力を持っているらしく、飛んでくるビルやコンクリートなどの塊をかわしながら、巨大な闇に向かって攻撃をしようとする。

 しかし、少女の力はその闇に対してはあまりにも小さかった。

 十分な攻撃を加えるどころか、相手側からの攻撃をかわすだけで精いっぱいといった印象だ。

「酷い……」その光景を見てまどかは言葉をもらした。

「しかたないよ。彼女一人には荷が重すぎた」

 どこからともなく声がする、と思ったら彼女の隣には、小型犬くらいの大きさで、白い身体、そして赤い瞳をもつ不思議な生物だ。

 しかし、まどかはその時、不思議とその生物のことを知っているような気がして、“それ”が喋ることをなんら不思議とは感じなかった。

 白い生物は、まどかの動揺を他所に淡々と喋る。

「でも、彼女は覚悟の上だよ」

 次の瞬間、何かの波動のようなもので吹き飛ばされる黒髪の少女。

「そんな、あんまりだよ! こんなのってないよ」

 絶望的な戦いを強いられている少女の姿を見て、まどかもまた悲しくなった。

 ふと、戦っている少女と目が合った気がした。
 遠くにいるはずなのに、なぜか彼女の顔や体型が目の前にあるように感じることができる。
 自分と同じくらいの歳の少女だ。

「あきらめたらそれまでだ」白い生物は相変わらず淡々とした調子で喋る。

「でも、キミなら運命を変えられる。その力がキミにはあるんだ」

「ほ、本当なの……? 本当に、私にそんな力があるの?」

「もちろんさ」

「ど、どうすればいいの?」

「そのために、僕と契約して、魔法少女になってよ!」

「魔法……、少女?」


 ――その必要はない


「え?」

 不意に目の前の生物が爆発した。
 正確には、何かにぶつかって砕け散ったと言ったほうが正しいかもしれない。

「ええ?」


 状況が分からずその場に立ちすくむまどか。
 そんな彼女の後ろから、彼女を追い越すように歩いて行く一人の背の高い男性。

「あなたは……」

 どこかで見たことのあるような白い野球のユニフォーム。そして背中には、大きく「51」という文字が見える。



 彼女が目を開くと、そこはいつもの自分の部屋だった。

「夢オチ?」

 わかっていた、といえばわかっていた。巨大なビルが飛び交うあんな非現実的な光景が現実とは思えない。

 しかし、夢の中で見た黒髪の少女、そして背番号51の野球選手とは、どこかで会ったような感じがしたのだった。






       魔法少女 まどか ☆ イチロー






  第一話  感情を、おさえることにしました。自分が、壊れると思いましたから。


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