ハマミズナ科プレイオスピロス属 帝玉(ていぎょく Pleiospilos nelii)の増やし方、実生について
2015年12月03日 更新
結実が熟せば茎が枯れて、勝手に取れるか僅かな力で抜くことが出来ます。
6.採種と保存と種子の寿命
見て分かる様に茎が糸のように細くなっているのが分かると思います。これぐらいになると十分熟しています。右下に1ヶ小さな花がらがありますが、これは結実しなかったものです。たぶん一番最後に咲いた花のものです。交配相手がいなかったためです。
種まきの時期は最高気温が15度以上あればいつでもかまいませんが、発芽後の管理が楽なのは夏蒔きですので、それまではしばらくは保存しておきます。
保存はこの結実のままが一番です。ただし花弁にダニが付いていたりすることも稀にありますので、花弁などは取り除き結実のまま乾燥剤を入れたタッパなどにいれて保存しておきます。私は丸2年間結実のままで常温保存した種子を昨年蒔きましたが、発芽率はたいへん高かったです。
リトープスなどは水に浸ければ直ぐに結実のカプセルが開き種子が簡単に出て来ますが、帝玉はそんな簡単には開きません。開いても一番外側だけで10〜20粒程度しか出て来ません。また固い結実をペンチやニッパなどで割るのはけっこう難しいし種子をそこらじゅうにばらまくことにもなりかねませんので、私は水に数時間浸けて、柔らかくなったら手でカプセルを引き裂いて種子を水の中に出していきます。上の写真は柔らかくしているところです。
帝玉の種子はあまりシイナ(受精しなかった種子。発芽能力をもたない種子。)などがないせいか、水に浮かぶ種子はかなり少ないです。一応浮かんだ種子やゴミは流し、お茶袋などに入れて種子の回りの汚れなどを洗います。私は洗うときに中性洗剤を数滴入れた水の中でもみ洗いしています。洗ったあとは十分に水洗いして、袋の水気をキッチンペーパーなどで取り、その後風通しの良い場所で2、3日間乾燥させています。上の写真は5、6鞘分の種子です。1つの結実で150ヶ以上は取れます。昨年(2014年)はこれの4倍ほど取れました。結実のままでの保存が良いと書いたばかりですが、多いと場所を取るので昨年はすべて種子の状態にして保存しました。
種子の寿命は保存状態にもよりますが、2、3年はまったく問題ありません。帝玉の結実は一度に種が飛び出さないような構造になっているため、何回かの雨期を経ても発芽するような種子になっていると思われます。ですから2011年の種子を2013年に蒔いても、2012年の種子を2014年に蒔いても発芽率は100%近いです。また10年前の種子を蒔いても100%に近い発芽率だという話も聞いたことがありますので、普通に冷蔵庫などに保存しておればかなり古い種子でも大丈夫だと思います。
7.播種(はしゅ)の時期(種まきの時期)
これまで1月、6月、8月、9月に蒔いてきました。
1月(2013年)に蒔いたのは種子を散乱させてしまったためしかたなく蒔きました。3月の中頃から発芽が本格的に始まりましたので、3月の初めに蒔いても同じだと思います。この場合は暑い夏までに2対目の本葉が出るまである程度生長させられるので、この時期に蒔いてもそんなに悪くはないかもしれません。ただし発芽率は気温が低いのでやや悪いのと、発芽のタイミングがかなりバラツクので植え替え時期がやや難しくなるかもしれません。この時は60本ほど発芽していましたが、まだ小さかった株などが自然淘汰され夏を越したのは23株でした。この23株は下の写真の様に立派に生長し、うち10株は花芽をつけています。左端の写真の株は横幅40mmと我が家では最も小さな株で花芽を着けました。(2015年1月20日現在)
6月(2011年と2013年)は取り蒔きをしたのと、高い空中湿度により発芽率はたいへんよかったです。ただまだ発芽直後の小さな苗は高温に耐えられず、徐々に消滅していきました。また2013年は7月中頃にちょっとの水切れで、たった1日で全滅させてしまいました。
発芽直後の苗が高温に耐えにくいということで2013年と2014年は8月中頃と9月前半に蒔いてみました。2013年の苗は365株、2014年の株は360株が下の写真の様に育っています。左側の写真には実生のリトープスも写っています。
この3年間の経験から8月の終わり頃から9月の前半に蒔くのが良いかと思います!
8.播種床と事前準備
我が家のように幾つかの株の種子をごちゃ混ぜにしていると発芽のタイミングが揃いにくいのはしかたないかもしれません。しかし1つの結実でも直ぐに発芽する種子と何回かの雨期を経て発芽する種子があるようで、発芽が出揃うのに1ヶ月以上かかる場合もあります。すると1ヶ月も発芽が違えば、早い苗なら双葉は20mmほどになり、本葉がすでに生長し始めています。ですのでこのタイミングをなるべく揃えるには、播種前の吸水が有効だと考えています。吸水させた小さな種子は蒔きにくいですが、24時間から48時間ぐらいの吸水をさせてから蒔いてみようと思っています。まだ実験はしていませんが、2月の終わり頃に行う予定です。
用土はHCの種まき挿し芽用の用土とサボテン、多肉用を1:1で混ぜたものを使用しています。ただし表土10mmほどはバーミキュライト微粒のみです。
発芽直後から肥料の食いつきを良くするために、表土にはハイポネックス微粉をすき込んでいます。マグアンプKなどの緩効性肥料を砕いてすき込んでもかまいません。
鉢の材質はなんでもかまいませんが、鉢の高さの1/3程度の腰水でしばらくは管理しますので、鉢底穴やスリットは必要です。また根は真っ直ぐに伸びますので、深さは8cm〜10cmぐらいあったほうがいいです。
用土は鉢の縁の高さ近くまで入れます。帝玉の双葉は下の写真の様にたいへん平たい形なので、縁より3cmも低いと双葉に陽が当たらなくなり生育が遅れます。また種を蒔くときも縁より15mm以上は離して蒔いた方が陽が当たりやすいのでいいです。
また表土と同じバーミキュライト微粒でほんの僅か(1mm)だけ覆土しますので、その分も用意しておいて下さい。無い場合はスプレーヤーなどで種子を表土に少し潜らせて下さい。
9.播種
種子は今まで殺菌したことがありませんが、まったく問題はありません。気になるようでしたら、消毒用エタノールを散布するだけで十分だと思います。
発芽後1回目の植え替えは、下の写真の様に双葉が20mmほどでかつ本葉が10mmぐらいになって植え替えます。
双葉の状態や本葉が出始めたばかりでは、活着率がたいへん悪くなります。ですからそれまでは植え替えませんので、種を蒔くときは、鉢の縁から15mm以上離して、また種子と種子の間は25mm以上離して蒔くのが理想です!私は上の写真のようにいつもでたらめに蒔くので植え替え時たいへん苦労します!8cm角ポットなら9粒蒔くのがいいでしょう!
播種前にまず用土を十分湿らせます。鉢より少し深い容器を準備して、鉢を入れ回りからゆっくり水を注ぎ用土を湿らせていきます。勢いよく入れたり、上から水さしで注ぐと表土のバーミキュライトが浮かんだり流れ出たりしますので、十分注意して用土を湿らせておきます。
そして種子を蒔きます。表土と種子の色が同じ茶色で蒔いたかどうか分かり難いので、気になる方はパーライトの微粉を表土にうっすらと蒔いてから播種してもかまいません。そして播種したらバーミキュライトをほんの少しだけ(1m程度)種子に被せ覆土します。そして上からスプレーヤーで軽く湿らせます。覆土しなくても種子をバーミキュライトに潜るように蒔けばそれでかまいません。
これで播種は終了です。
鉢底から下1/3ほどまでを水に浸した腰水で管理します。夏場ですので、水が腐らないように、ゼオライトの大粒を10ヶ程度入れておきます。またボウフラがわかないように、銅線などをいれておきます。水は状況にもよりますが、一週間で交換しました。覆土をしていればサボテンの播種のように蓋をする必要はありませんが、風が強く表土が乾きやすい場合は、蓋をしてもかまいませんが、すでに発芽している苗がある場合は温度が上がり過ぎないように注意します。基本的に遮光は必要ありませんが、鉢が乾きすぎる場合は9月末頃までは30%程度遮光したほうがいいかもしれません。発芽後はなるべく長い日照時間を与えて管理します。発芽後1ヶ月になれば遮光は必ず外します。
10.発芽
早ければ3、4日で普通は一週間ぐらいで発芽が始まります。
生育を早めるため表土にハイポネックス微粉をすき込んでいますが、私は発芽した当日からペンタガーデンを400倍にしてスポイトで1、2滴葉面散布しています。鉢はアップルウェアーの輪鉢F型5号で、直径156mm高さ110mmです。腰水用の容器はカップ焼きそばの発砲容器です。
発芽1ヶ月半から2ヶ月(発芽にバラツキがあるため)の苗で、早いものは本葉がかなり大きくなっています!このあたりから腰水は止めて通常の水やりに変えます。そうしないと下の写真のような徒長する苗が出て来ます。
水やりは表土から2〜3cmほど乾いたら水やりします。ただし直射光下で管理している場合は水切れには注意!
直射光下で無くても、水切れで赤くしてしまうと回復に数ヶ月以上かかる場合もありますので、水切れだけは要注意です!
上の写真は水切れした苗です。これぐらいの赤みが出る前に必ず水やりします。
発芽3ヶ月から3ヶ月半です。かなり苗の差が出て来たのと、重なり合ってきたので小さな苗の生育が悪くなってきました。
一週間後に間引きました。これでしばらく大丈夫です!これぐらいになれば多少水切れさせても、平気です!
2015.01.11の写真です!
発芽4ヶ月から4ヶ月半の苗です。大きな苗は最初の本葉が25mm、2対目の本葉が15mmぐらいにまで育っています。このサイズになると双葉がなくなります。逆に言うとこのサイズになるまでは、双葉を残せるように水やりと長い日照時間を与えて十分に光合成させることが重要です!
発芽半年から6ヶ月半の苗の様子 2015.03.07の写真です。
多くの株に2対芽の本葉が出て来ました。またぶつかり合ったり、双葉が枯れて株が倒れたりしてきていますので、そろそろ角ポットなどえの植え替えの適期となってきました。右端に角ポットの苗が写っていますが、これは2013年夏実生の苗です。植え替えのタイミングが悪かったり、水切れさせたりすると生育がかなり遅くなります。ですから実生1年半の苗でも、上手く育てた半年の苗にサイズで抜かれてしまっています。
2015年3月16日 1回目の植え替え
双葉が枯れて倒れたり、2対目の本葉が生長して隣とぶつかり合ったりしてきたので、植え替えました。5号鉢で栽培していた事もあり根はもの凄く良く伸びていました。8cmの角ポットに植え替えるので、根はかなり短く切り詰めます。苗によっては太い根1本になる場合もありますが、植え付けて直ぐに水やりすれば、直ぐに発根しますので特に問題はありません。切り詰めた後消毒用エタノールを株全体に散布して乾いたら直ぐに植え付けました。
水やりは100倍のメネデールで行いっています。発根促進というより切り口のカルス形成促進のためです。
植え替え用土はHCのサボテン多肉培養土です。鉢底に5、6mmほどの赤玉を少し敷き、培養土を少し入れて、緩効性肥料を少量撒きます。その上に培養土を縁近くまでいれ、その上に表土として3mm前後の赤玉を敷いています。
霧吹きで軽く湿らせてから、串で穴を開けて株を植え付けています。そのあと傾きなどを修正しながら表土を少し足しながら調整しています。苗の向きは必ず揃えておくことも重要です。
今回初めて出現した帝玉錦は管理を別にしたほうが良いので、単独で植え付けました。
しばらくは用土が乾かないように注意しながら十分に陽に当てて管理します。今の時期なら遮光などする必要はありません。
2015年4月14日
3月20日に植え替えらた苗や間引いた苗もずいぶん生長しました。古葉が枯れたり、発根時に傾いたりしていろんな方向を向いています。ポットによっては予想以上に生長が早い苗もあるので、サイズ別で植え替えた方が良さそうです。
2015年6月09日
生育のやや悪い小さな苗だけを発泡容器(カップ焼きそばの容器の底に穴を開けたものです)まとめて植え付けました。
2015年7月14日
6月9日に植え替えた苗ですが、1ヶ月でずいぶん生長しているのが分かります。
2015年9月13日
8月終わりの2回目の植え替えで上の発泡容器の苗のやや小ぶりの苗を1ポット9本植えにしたものですが、よく生長しています。
2015年11月2日
こちらは6月の植え替えで大きめの苗を1ポット9本植えにしたものですが、もうぶつかり合って表土がほとんど見えなくなるまで生長しています。
2015年11月27日
2013年と2014年の実生苗です。上のポットの中から着花しそうなサイズにまで生長した20本ほどを2013年苗と11月中頃に一緒に植え付けました。
開花には普通2〜3年かかりますが、上手く植え替えて生長させると、2年目で着花サイズにまで生長してくれます。
7トレーで161株がありますが、6、7割は着花してくれると思います!
続く!
実生2年(対の長さが5〜6cmぐらい)以降ぐらいの株の育て方はこちらをご覧下さい
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Cometの栽培環境
関西中部の高温多湿、冬はけっこう寒い地域で、サボテン、多肉植物にとってもわりと厳しい環境です。
2006年3月から2014年9月までのベランダの温度の最低最高気温はマイナス5.9度からプラス42.2度です。(測定場所はベランダの柱の影ですので、直接太陽光は当たっていません。夏太陽が直接当たると50度は簡単に超えます。またマイナス50度からプラス70度まで2箇所同時に測定でき、MIN、MAXをメモリーできるデジタル温度計を2台使用しています。)
基本は無加温、防寒、防風処理なしのベランダと軒下栽培ですが、2011年12月から一部簡易ビニール温室で栽培しています。また水やり後一週間以内で最低気温がマイナスの予報の時だけ一部の品種のみ室内に取り込むようにしてます。
居住地は標高65m程で、風の通り道にあるようで、日照が無くても表土は割と早く乾きます。また東西と南の西半分が近隣の家が接近しているため一階軒下は春から秋の日照時間は4時間ほど、冬場は2時間程度しか取れません。またベランダは夏場は午前7時から、その他は午前8時半頃から陽が当たり始めますが、午後は1年を通じ午後1時半から2時頃までしか陽が当たりません。ただし帝玉とリトープスに関しては午後2時以降も陽が当たる特別な場所に移動させて、長い日照時間を確保しています。
水は基本的には雨水(弱酸性)を使用。貯めた雨水を使う場合と雨の日に外に出す場合とがあります。
水道水はPh5.8以上〜8.6以下に定められていますが、多くはPh7以上、地域によっては8以上のアルカリ性ですので、水道水をそのまま使うことはありません。私の町の浄水場のPhは7.39(2008年3月問い合わせ時)でした。水道水を使う場合は2L当たり2ccのお酢を加えてPh5.5程度にして使用しています。
培養土のレシピ、栽培方法等もまだまだ試行錯誤の段階です。
もし参考にされる場合は、株の健康状態、ご自身の栽培環境等十分に考慮し自己責任でお願いします。
このページは、Cometのサボテン栽培日記で投稿した内容をまとめたものを、その後の経験等に基づき、随時加筆や修正しています。