株価対策のための公的資金投入/アベノミクスの危うさ(35)
株式市場の短期的な変動で経済政策の是非を云々したくはないが、安倍首相あるいはアベノミクスは、それが最終的な評価であるかのように、株価維持にまい進している。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国内株を約2500億円買い増ししているが、資産構成で株の比率を引き上げるという。
そのためか、2013年度の運用が黒字だったことのPRに熱心である。
厚生年金と国民年金の積立金を運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)は4日、2013年度の運用益が10兆2207億円だったと発表した。株価上昇を追い風に、利回りは8・64%に達した。公的年金の資産運用が独立した形で始まった01年度以降で最高となる約11・2兆円だった前年度に続き、2年連続で10兆円を超す運用益となった。
年金積立金の運用、13年度は10.2兆円の収益
しかし、株式にリスクが伴うことは当然であり、2013年度の国内株式市場は例外的と考えるべきではなかろうか。
5年間の日経平均株価は下図のようであり、2013年度は運用が容易な相場だった。
2013年度の実績で安心をしているとヤケドを負うことになる。
5月11日の日経平均株価の終値は前日比52円43銭(0.34%)安い1万5164円04銭で、5日続落だった。
日経平均の5日続落は実は「アベノミクス相場」始まって以来、初めてのことだという。
この日のさえない展開の主因は、ポルトガルの銀行で経営不安問題が表面化し、欧米株が下げた前日からの流れだ。円相場が1ドル=101円台前半と2カ月ぶりの円高・ドル安水準に振れたため、電気機器や自動車が売られた。業種別日経平均で見ると電気が0.48%、自動車が0.43%下落した。
だが、外部環境に加え、日本株固有の弱材料を気にする海外投資家が増えている、という証言もある。クレディ・スイス証券の白川浩道チーフ・エコノミストは言う。「海外ヘッジファンドから『日本の景気は本当に回復するのか』、『安倍政権は本当に盤石なのか』という質問を受けることが増えた」
家計調査や機械受注の5月の統計で、これまで「想定内」と言われてきた消費増税後の反動減が思わぬ大きさで表れたことが原因だ。10日に発表された機械受注統計では「船舶と電力を除く民需」が前月比19.5%減と大きく落ち込んだ。統計が遡れる2005年4月以来最大だ。
「下落」は経済統計数字だけでない。安倍政権への信認も下落している。日本経済新聞社とテレビ東京の6月の調査で安倍政権の不支持率は36%と、政権発足以来最も高くなった。もともと外国人投資家には不人気な安全保障政策などに傾注した揚げ句、支持率も下落しているとあっては「来年秋予定の消費税率再引き上げや法人税減税が困難になるのでは、との懐疑論が広がりやすく、そうなると日本株は売られやすい」(クレディ・スイスの白川氏)というわけだ。
アベノミクス相場初の「5日続落」で潮目は変わるか
市場関係者のなかには、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のカイが支えになるはずという見方もあるというが、ブラックジョークのように聞こえる。
企業の株価を維持するために税金を投入するというのは、本末転倒だろう。
いまや日本株の3割が外国人投資家なのである。
投資部門別株式保有比率の推移
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