【アカデミー賞全作品】 2013.10.05 (Sat)
『シマロン (1931米)』
≪感想≫
このたび初めて観ました。
大平原のさら地に小屋が立ち、道路が整備され、やがて摩天楼のビル街へ・・・。ゼロから町が生まれるその瞬間の 「定点観測」 が興味深い。われわれ外国人には珍しい切り口なので、アメリカ史劇として貴重。
また、先住民の人権や女性の社会進出を前面に出した良心的な作り。実際の、暴力と略奪の歴史を忘れるわけにはいかないが、生涯をかけて貫かれる夫妻の信念と愛・・・。とてもいい映画だった。
タイトルになった主人公夫婦の息子の名前 「シマロン」。劇中ではたまに出てくる程度だが、彼の人生の選択が、この作品の理念すべてを表わしているんだろうな。(追記・・・「シマロン」 は主人公の愛称でもあったらしい。)
オスカー度/★★☆
満足度/★★★
『シマロン (1931米)』
監督/ウェズリー・ラグルス
主演/リチャード・ディックス (ヤンシー・クラバット)
アイリーン・ダン (セイブラ・クラバット)
エステル・テイラー (ディキシー・リー)
≪あらすじ≫
1889年、オクラホマ州が白人入植者に開放され、人々は土地を争って我先にと押し寄せる。
ヤンシーとセイブラの若い夫婦も、一夜にして荒野につくられた町に移住。新聞社を創業して町の浄化と発展に尽くしていく。
≪解説≫
開拓者夫婦の半生を軸に、19世紀末の「ランドラッシュ」と呼ばれた土地開放に始まる、開拓から近代化までの40年を描く大河ドラマ。「西部劇」といっても撃ち合いはスパイス程度の、広い意味での西部史劇。
冒頭、人馬が大地を埋め尽くす土地争奪レースが圧巻。 もともとオクラホマ州は先住民諸族が強制移住させられた最後の安住の地だったが、あくなき開拓への欲望が移殖者の浸食を許してしまった歴史がある。
大恐慌まっただ中の劇場公開であったため、この年最大のヒット作でありながら興行赤字に終わった。アカデミー作品賞唯一の例。
≪受賞≫
アカデミー作品、脚色、室内装置賞の計3部門受賞。
(他の作品賞候補 『犯罪都市』 『女性に捧ぐ』 『スキピイ』 『トレイダ・ホーン』)
西部劇初の作品賞。
(『風と共に去りぬ('39)』のような破格の例外はあったものの、) 実はこれら開拓時代ものは 「マッチョな娯楽活劇」 のイメージが強すぎて、アカデミー賞からは長く冷遇されたジャンルだった。次の作品賞は 『ダンス・ウィズ・ウルブス('90)』 と 『許されざる者('92)』 まで待たなければならない。
『CIMARRON』
製作/ウィリアム・ルバロン
監督/ウェズリー・ラグルズ
脚本/ハワード・エスタブルック
原作/エドナ・ファーバー
撮影/エドワード・クロンジャガー
音楽/マックス・スタイナー
室内装置/マックス・リー
RKO/125分
【続き・・・】
まだ主・助演の区別がなかった男女の演技部門は、大恐慌下の暗い世相を反映してか、暗い役柄を演じたベテラン俳優に手堅く贈られた――
◆男優賞は俳優一族として名高い名優ライオネル・バリモア(『自由の魂』)。子役スタアのはしりであったジャッキー・クーパー(当時10歳)らを退けての受賞。
◆女優賞はマリー・ドレクスラー(『惨劇の波止場』)という個性派性格俳優に。『モロッコ』 で鮮烈米デビューを果たしたドイツ出身マレーネ・ディートリッヒらを退けての受賞。
歴史的名優のディートリッヒだが、当時はふしだらな役柄のイメージから今回が唯一のノミネートで、無冠に終わった。・・・ちなみにこの 『モロッコ』 は、日本では初めて翻訳字幕を付して上映した作品として有名で、「カツドウ弁士」の職を完全に奪うことになった名作として、愛憎をこめて映画史に刻まれている。
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