恋の音・193
テーブルの上の料理は殆どなくなった。
そしてお約束のデザートは私も用意していたけど、総二郎達も買って来てくれたから、小さなケーキが沢山並んだ。
それを食べるのは勿論私が中心で・・・でも私が作ったガトーショコラも3人が美味しそうに食べてくれた。
それが終わった頃に美作さんが目で合図したかと思うと、花沢類が小さなバッグからガサゴソと何かを取り出した。それは美作さんも同じで、私がキョトンとしてると・・・
「はい、牧野・・・クリスマスプレゼント♪」
「えっ?」
「俺からも♪お婆様に買ってこなかったから今まで出せなかったんだ。遅くなってごめんな」
「・・・美作さんも?」
「これを渡すために来たんだもん」
「そうそう、類がどうしてもって言うから、俺も急いで選んだわ」
「・・・そんなの宅配で送ればいいのに💢」
総二郎はブスくれてたけど、私は2人からのプレゼントを受け取った。
上品な包装に綺麗なリボン・・・「開けていい?」って言うと、2人が頷いたから、総二郎を無視してその場でリボンを解いた。
そうしたら出てきたのは両方ともブランド物の小箱・・・花沢さんのは凄くお洒落な腕時計で、美作さんのは真っ赤なプリザーブドフラワーの薔薇の真ん中に青い石のネックレス。それは12月の誕生石でもある、カメリアカットのラピスラズリなんだって。
「うわぁ・・・すごい!花沢類の時計・・・なんか高そう・・・つけるの怖いかも」
「くすっ、ちゃんと牧野のネーム入れた特注品だよ」
「そうなの?」
「うん。でね、裏には俺の名前が入ってるから」
「類、それはどう言う意味だ💢?!」
「てか、美作さんのも素敵~~~!ラピスラズリって確か縁起の良い石だよね?」
「本当はダイヤにしようと思ったけど、誰かさんが捨てそうだから♪
ラピスラズリは幸福へと導く石といわれてるんだ。試練や経験を与え乗り越えることで本当の意味での幸福をもたらす・・・牧野にピッタリだろ?」
「あきら・・・俺の事が試練だと言いたいのか💢」
「「「総二郎・・・・・・」」」
「なんだよ💢!!」
本当に子供っぽい・・・私が呆れてると、総二郎はフイッとそっぽを向いた。
ただ困ったのは、私は2人に何もプレゼントを用意してないという事実・・・それに困ってどうしようかと悩んだ結果、自分の部屋に戻って「あの子達」をジッと眺めた。
その中から2つ、手に持って居間に戻ると「はい、これあげる!」と言って手渡したのは・・・
「・・・・・・なに、これ」
「牧野・・・俺達を何歳だと思ってるんだ?」
「いいじゃないの、これを私だと思って連れて帰って♪」
「・・・・・・・・・いや、つくしだと思わなくていいけど」
花沢類にあげたのはあの日、クレーンゲームで取ったコリラックマ、美作さんにはリラックマ。
それを説明したら、2人は全然嬉しそうじゃなかったけど、気が付けばその子たちを両手で抱えたまま座ってた。
「でもさ・・・これ持って飛行機に乗るの?」
「・・・・・・それより、持って帰って何処に置くんだ?」
「いいじゃねぇか、俺なんて”テレビ父さん”抱えて飛行機に乗ったんだから」
「あ!見せてあげようか?北海道の思い出、テレビ父さん!」
「「テレビ父さん?!」」
この後、花沢類と美作さんが大爆笑したのは言うまでもない・・・・・・。
********************************
時計は22時・・・俺達はそろそろ婆様の家を出ることにした。
そう言うとつくしが少しだけ淋しそうな顔を見せたので、類が「泊まってあげようか?」なんて巫山戯た事を言いやがった💢
俺は危険人物の首根っこを掴み、引き摺るようにして玄関へ・・・それを見たあきらが「窒息するぞ?」って言ったけど無視。つくしも「総二郎、やめてあげて~」なんて言うが、それにも「五月蠅い!」と答えた。
そんな感じで靴を履き、その時には類も「冗談なのに~」と・・・その横顔をジロッと睨み、あきらに「こいつを先に連れて行け」と言うと、苦笑いしながら類の腕を引っ張って行った。
俺はその2人を溜息交じりで見ながら、見送りに出ていたつくしに近寄った。
「悪かったな・・・せっかくのクリスマスイブに邪魔が入って」
「ううん、楽しかったよ。総二郎の方が気疲れしてるみたい」
「・・・そういう訳でもねぇけど・・・明日の夜は2人で飯食いに行こう。婆様にはそう伝えておいてくれ」
「うん、判った・・・おやすみ」
「あぁ・・・戸締まり、しっかりしろよ」、そう言って抱き締めてからのキス・・・その時も俺達の周りで白い雪が舞っていた。
唇を離したら軽くつくしの髪を撫で、俺は急いで2人を追い掛けた。
あきらと類はフラつきもせずに歩いてて、追い付くと向かったのは裏門。こっちの方が俺の部屋に近いってことと、使用人がわざわざ出迎えなくて済むから・・・
2人に明日の予定を聞くと羽田を出るのは10時前で、2人は同じ飛行機に乗って渡仏。あきらはパリからロンドンに向かうと言った。
「そんなハードスケジュールなのに帰国したのか・・・馬鹿じゃねぇの?」
「そう言うなよ、牧野の顔が見たかったんだって」
「総二郎に任せていいのかどうかも心配だったしね」
「どう言う意味だ、類💢」
「まぁまぁ、そう喧嘩腰になるなって♪」
「・・・まぁ、強い味方が居るみたいだから安心したけどね」
白い息を吐きながらそんな事を呟き、裏口から母屋に入るとすぐに俺の部屋に直行。
ここではすぐに酒を出し、ローテーブルを囲んで男だけの近況報告が始まった。その時には笑いあり、軽めの喧嘩有りで、昔みたいにワイワイと・・・
でも日付が変わった頃になると、類がボソッと言った。
「総二郎・・・宗家は大丈夫なの?」
「宗家?」
「牧野のこと・・・受け入れてくれるの?」
「あぁ、その事か・・・・・・まぁ、心配ねぇよ。今すぐにどうこう出来ねぇけど、ちゃんと準備してるから」
「家元には話してるのか?」
「それよリも家元夫人が戻って来るとか言わないよね?」
「・・・お袋は多分もうここには戻って来ないと思う。
つくしのことは親父にも話してあるし、来週の正月には連れて来いって言われてる。私的な部分での顔合わせだけど、それを提案したのは親父だからな」
そう言うと類も納得・・・いや、納得してねぇんだろうけど、認めるしかねぇって感じの笑いを浮かべた。
あきらはそんな類にラストの酒を注ぎ、「いいじゃないか、牧野の嬉しそうな顔が見られたんだし」と・・・それには「そうだね」と微笑み、グラスを手に持った。
そしてその場で倒れるようにして寝たのは3時・・・俺は幼馴染みと飲めたことが嬉しくて、久しぶりに酔いが回った。
翌日早朝・・・頭痛と共に目が覚め、それは類とあきらも同じだったよう。
2人は志乃さんが持って来てくれた朝飯を少しだけ食べ、宗家を出たのは7時すぎ。すげぇ気分悪そうな顔で西門の車に乗り込み、俺も最悪な気分で見送った。
その時、何ともシュールだったのは2人の手にクマのぬいぐるみがあったこと・・・志乃さんも若干笑っていたけど、類にもあきらにもそれを気にする余裕はなさそうだった。
「・・・じゃあ、牧野によろしく・・・」
「いつか2人でイギリスに来いよ・・・・・・って、頭痛ぇ~~」
「飛行機の中で爆睡しとけ・・・・・・んじゃな、2人とも・・・」
昨夜同様、吐く息が白い・・・そんな凜とした空気の中を車は静かに走り出し、あっという間に見えなくなった。
俺はその車が見えなくなるまで見送り、そのあとで空を見上げた。
今日も雪が降りそうだ・・・・・・
にほんブログ村
応援、よろしくお願いいたします♡
そしてお約束のデザートは私も用意していたけど、総二郎達も買って来てくれたから、小さなケーキが沢山並んだ。
それを食べるのは勿論私が中心で・・・でも私が作ったガトーショコラも3人が美味しそうに食べてくれた。
それが終わった頃に美作さんが目で合図したかと思うと、花沢類が小さなバッグからガサゴソと何かを取り出した。それは美作さんも同じで、私がキョトンとしてると・・・
「はい、牧野・・・クリスマスプレゼント♪」
「えっ?」
「俺からも♪お婆様に買ってこなかったから今まで出せなかったんだ。遅くなってごめんな」
「・・・美作さんも?」
「これを渡すために来たんだもん」
「そうそう、類がどうしてもって言うから、俺も急いで選んだわ」
「・・・そんなの宅配で送ればいいのに💢」
総二郎はブスくれてたけど、私は2人からのプレゼントを受け取った。
上品な包装に綺麗なリボン・・・「開けていい?」って言うと、2人が頷いたから、総二郎を無視してその場でリボンを解いた。
そうしたら出てきたのは両方ともブランド物の小箱・・・花沢さんのは凄くお洒落な腕時計で、美作さんのは真っ赤なプリザーブドフラワーの薔薇の真ん中に青い石のネックレス。それは12月の誕生石でもある、カメリアカットのラピスラズリなんだって。
「うわぁ・・・すごい!花沢類の時計・・・なんか高そう・・・つけるの怖いかも」
「くすっ、ちゃんと牧野のネーム入れた特注品だよ」
「そうなの?」
「うん。でね、裏には俺の名前が入ってるから」
「類、それはどう言う意味だ💢?!」
「てか、美作さんのも素敵~~~!ラピスラズリって確か縁起の良い石だよね?」
「本当はダイヤにしようと思ったけど、誰かさんが捨てそうだから♪
ラピスラズリは幸福へと導く石といわれてるんだ。試練や経験を与え乗り越えることで本当の意味での幸福をもたらす・・・牧野にピッタリだろ?」
「あきら・・・俺の事が試練だと言いたいのか💢」
「「「総二郎・・・・・・」」」
「なんだよ💢!!」
本当に子供っぽい・・・私が呆れてると、総二郎はフイッとそっぽを向いた。
ただ困ったのは、私は2人に何もプレゼントを用意してないという事実・・・それに困ってどうしようかと悩んだ結果、自分の部屋に戻って「あの子達」をジッと眺めた。
その中から2つ、手に持って居間に戻ると「はい、これあげる!」と言って手渡したのは・・・
「・・・・・・なに、これ」
「牧野・・・俺達を何歳だと思ってるんだ?」
「いいじゃないの、これを私だと思って連れて帰って♪」
「・・・・・・・・・いや、つくしだと思わなくていいけど」
花沢類にあげたのはあの日、クレーンゲームで取ったコリラックマ、美作さんにはリラックマ。
それを説明したら、2人は全然嬉しそうじゃなかったけど、気が付けばその子たちを両手で抱えたまま座ってた。
「でもさ・・・これ持って飛行機に乗るの?」
「・・・・・・それより、持って帰って何処に置くんだ?」
「いいじゃねぇか、俺なんて”テレビ父さん”抱えて飛行機に乗ったんだから」
「あ!見せてあげようか?北海道の思い出、テレビ父さん!」
「「テレビ父さん?!」」
この後、花沢類と美作さんが大爆笑したのは言うまでもない・・・・・・。
********************************
時計は22時・・・俺達はそろそろ婆様の家を出ることにした。
そう言うとつくしが少しだけ淋しそうな顔を見せたので、類が「泊まってあげようか?」なんて巫山戯た事を言いやがった💢
俺は危険人物の首根っこを掴み、引き摺るようにして玄関へ・・・それを見たあきらが「窒息するぞ?」って言ったけど無視。つくしも「総二郎、やめてあげて~」なんて言うが、それにも「五月蠅い!」と答えた。
そんな感じで靴を履き、その時には類も「冗談なのに~」と・・・その横顔をジロッと睨み、あきらに「こいつを先に連れて行け」と言うと、苦笑いしながら類の腕を引っ張って行った。
俺はその2人を溜息交じりで見ながら、見送りに出ていたつくしに近寄った。
「悪かったな・・・せっかくのクリスマスイブに邪魔が入って」
「ううん、楽しかったよ。総二郎の方が気疲れしてるみたい」
「・・・そういう訳でもねぇけど・・・明日の夜は2人で飯食いに行こう。婆様にはそう伝えておいてくれ」
「うん、判った・・・おやすみ」
「あぁ・・・戸締まり、しっかりしろよ」、そう言って抱き締めてからのキス・・・その時も俺達の周りで白い雪が舞っていた。
唇を離したら軽くつくしの髪を撫で、俺は急いで2人を追い掛けた。
あきらと類はフラつきもせずに歩いてて、追い付くと向かったのは裏門。こっちの方が俺の部屋に近いってことと、使用人がわざわざ出迎えなくて済むから・・・
2人に明日の予定を聞くと羽田を出るのは10時前で、2人は同じ飛行機に乗って渡仏。あきらはパリからロンドンに向かうと言った。
「そんなハードスケジュールなのに帰国したのか・・・馬鹿じゃねぇの?」
「そう言うなよ、牧野の顔が見たかったんだって」
「総二郎に任せていいのかどうかも心配だったしね」
「どう言う意味だ、類💢」
「まぁまぁ、そう喧嘩腰になるなって♪」
「・・・まぁ、強い味方が居るみたいだから安心したけどね」
白い息を吐きながらそんな事を呟き、裏口から母屋に入るとすぐに俺の部屋に直行。
ここではすぐに酒を出し、ローテーブルを囲んで男だけの近況報告が始まった。その時には笑いあり、軽めの喧嘩有りで、昔みたいにワイワイと・・・
でも日付が変わった頃になると、類がボソッと言った。
「総二郎・・・宗家は大丈夫なの?」
「宗家?」
「牧野のこと・・・受け入れてくれるの?」
「あぁ、その事か・・・・・・まぁ、心配ねぇよ。今すぐにどうこう出来ねぇけど、ちゃんと準備してるから」
「家元には話してるのか?」
「それよリも家元夫人が戻って来るとか言わないよね?」
「・・・お袋は多分もうここには戻って来ないと思う。
つくしのことは親父にも話してあるし、来週の正月には連れて来いって言われてる。私的な部分での顔合わせだけど、それを提案したのは親父だからな」
そう言うと類も納得・・・いや、納得してねぇんだろうけど、認めるしかねぇって感じの笑いを浮かべた。
あきらはそんな類にラストの酒を注ぎ、「いいじゃないか、牧野の嬉しそうな顔が見られたんだし」と・・・それには「そうだね」と微笑み、グラスを手に持った。
そしてその場で倒れるようにして寝たのは3時・・・俺は幼馴染みと飲めたことが嬉しくて、久しぶりに酔いが回った。
翌日早朝・・・頭痛と共に目が覚め、それは類とあきらも同じだったよう。
2人は志乃さんが持って来てくれた朝飯を少しだけ食べ、宗家を出たのは7時すぎ。すげぇ気分悪そうな顔で西門の車に乗り込み、俺も最悪な気分で見送った。
その時、何ともシュールだったのは2人の手にクマのぬいぐるみがあったこと・・・志乃さんも若干笑っていたけど、類にもあきらにもそれを気にする余裕はなさそうだった。
「・・・じゃあ、牧野によろしく・・・」
「いつか2人でイギリスに来いよ・・・・・・って、頭痛ぇ~~」
「飛行機の中で爆睡しとけ・・・・・・んじゃな、2人とも・・・」
昨夜同様、吐く息が白い・・・そんな凜とした空気の中を車は静かに走り出し、あっという間に見えなくなった。
俺はその車が見えなくなるまで見送り、そのあとで空を見上げた。
今日も雪が降りそうだ・・・・・・
にほんブログ村
応援、よろしくお願いいたします♡
- 関連記事