恋の音・195
家元夫人と伽耶さんがいないと判っていても、正門の前に立つのは憚られる。
だから脇道を出た所で待ってると、1台のタクシーがやって来て、門の前で停まった。
誰かが降りてくるのかと思って隠れたけど、どうやら今からお客さんを乗せるよう・・・もしかして家元かな?って思ったけど、家元なら宗家の車で出掛けるはず。
だから西門に来ていたお客さんが帰るのかと思い、尚更引っ込んだ。
そうしたら門の向こうから出て来たのは若い男性・・・もう暗いからよく判らなかったけど、シルエットは・・・総二郎?ビシッとしたスーツ姿の男性が現われて、辺りをキョロキョロしてた。
その人が私の方に顔を向けた時、隠れてるのに気が付いたみたいで「何やってんだ?」って言ったから、それが総二郎だと確信し、急いで出て行くと・・・
ダークブルーのスリーピースに黒のドレスシャツ、そしてネクタイ・・・もちろん足元は革靴。
恐ろしすぎる色気に私のほうが真っ赤になっちゃう///!
「ちょっと!どうしてそんな格好なの?!普通の服でいいって言ったよね?」
「あぁ、そうだけど・・・まぁいいから早く乗れ。予約した時間に間に合わねぇから」
「一体何処に行くの?まさか、誰か他の人がいるとか言わないよね?」
「誰だよ、それ。しかもクリスマスディナーに他の奴を呼ぶと思うのか?ガタガタ言わずに、ほら、先に乗れって!」
言葉とは裏腹にスマートにエスコートしてくれて、私は身を屈めてタクシーに乗り込んだ。そのあとで彼が乗ってきて、運転手さんに告げたのは「表参道まで」。
今日の夕食はそこなのか~と、取り敢えず喧嘩したくなかったから機嫌を直す努力をした。
でも彼の格好はどう見ても一流レストランに入るとしか思えない・・・だから気になって、「この格好でも平気?」と言うと・・・
「普通の服でいいって言っただろ?どうせ今から着替えるんだから」
「は?」
「表参道の店にドレスを用意させてる。それに着替えてMホテルの展望レストラン・特別席だ」
「はぁ?!」
Mホテルって・・・この前道明寺と会った、あのMホテル?!
***************************
その電話は昼間志乃さんと話した後にあった。
相手は悪友・・・今現在ドイツに滞在中の司からだった。
一体何の用で掛けてきたのかと思ったら・・・・・・
「は?ホテルレストランの特別席?」
『今日の19時に用意させてる。遅れないようにあいつを連れて行け』
「チョイ待て。俺は別の店を予約してるから・・・」
『そっちをキャンセルしろ。いいな、19時には絶対に行けよ』
「阿呆か!俺が選んだ店で・・・」
『これが俺のクリスマスプレゼントだ!判ったな!!』
・・・最後は怒鳴って電話を切りやがった💢
空の上のあきら達には確認出来なかったが、恐らくあいつらが昨夜の写真を送ったか、もしくは一緒に飯食った話をしたか・・・要するにそう言う事だろうと思った。
だから仕方なく俺が予約していた店をキャンセルし、急いでドレスを注文・・・Mホテルの展望レストラン・特別席はそもそも道明寺家専用みたいな場所で、その名の通り特別な客しか入れない。
プレゼントだと言うから支払いはないんだろうけど、1席数十万だ。それにはムカついたが、行かなかったら余計にややこしくなるから・・・
タクシーの中でそれを教えると、つくしも目がテン。
「表参道の店にドレスを用意させてる。それに着替えてMホテルの展望レストラン・特別席だ」
「はぁ?!なんでそんなところを予約したの?」
「俺が予約したんじゃねぇよ!
司からお前へのプレゼントだそうだ!」
「・・・・・・うそっ・・・・・・」
「嘘じゃねぇよ・・・言うだけ言って電話切ったからしょうがねぇんだよ!」
俺の言葉に、今度は申し訳なさそうにするつくし。
でもこれはつくしのせいじゃねぇし、司が無駄に張り切ったからだ。別に俺ももう怒ってねぇし、こうなったら楽しもうと言うと、「そうだねぇ~」と中半諦めたような顔をした。
そしてタクシーは俺の指定した店に着き、そこで暫く待ってもらうことに。
つくしが怖ず怖ずとその店に入ると、待ち構えていた店員達に腕を掴まれ、奥の部屋へと連れて行かれた。ここは当然俺も行くことにして、試着室の中でギャアギャア喚くつくしを待つこととなった。
それから30分後、総レースの黒いドレスを纏ったつくしが現われた。
デザインはシンプルだが、繊細で立体な花柄レースがたっぷり使われていてエレガントな雰囲気。サテン生地のミニドレスの上にレースがあるんだけど、スカートは後ろが眺めのテールカットでSexyなものだ。
デコルテラインもレースだが、ノースリーブなのでボレロつき。その上にロシアンセーブルのコート。
靴とバッグを統一させたコーディネートで完璧・・・童顔はしょうがねぇが、髪も少しアレンジしてもらって美しく纏めていた。
つくしは仕上がった自分を見て真っ青になり、慣れない10㎝ヒールにフラフラしながら俺を睨み付けた。
「総二郎///!こんなドレスで行くの?!」
「文句あるか?この俺が選んだのに」
「マジで?!」
「大マジだ。じゃ、行くぞ」
つくしは自分じゃ気付いていない・・・こいつはちゃんと着飾ると、すげぇゴージャスな女に化けるんだ。
むしろこんな姿を他の男に見せられねぇと、俺の方が焦るっての!
*************************
凄く綺麗なシルエットのドレス・・・しかも大人っぽい黒で、こんなの初めて着たから凄く恥ずかしかった。
確かに総二郎ならこんなドレスを着た女性は似合うだろうけど、中身が私じゃちょっと・・・そんな風に気後れしていると、スタッフさんがメイクのお直しと髪のアレンジをしてくれた。
そうしたら少しは大人っぽくなったんだけど、これでいいんだろうかと不安・・・でもこの姿を見た総二郎はニコッと笑って嬉しそうだった。
お店を出る時には総二郎の腕を持ち、待ってくれていたタクシーの運転手さんは「え?!」って驚いてる・・・多分、さっき降りた女性と別人を連れて来たと思ったんだろう。
そんな事にはイチイチ触れず、乗り込んだら今度はMホテルへ向かった。
窓の外はまだクリスマスイルミネーションで綺麗・・・あちこちで恋人たちが寄り添って歩いてるのを見たし、大勢で盛りあがってる人達もいた。
そしてケーキの箱を持つお父さんとかお母さん・・・「いいなぁ~」って呟くと、「そのうちホームパーティーぐらい出来るって」って総二郎が笑ってた。
西門でクリスマスパーティー・・・全然想像出来ないけど、そんな事が出来たらいいなぁと。
Mホテルに着くと、コートを羽織った私を総二郎がエスコートしてくれる。
そして正面に見えるのは道明寺らしい豪華絢爛なクリスマスツリー・・・周りの人達もすごく着飾ってて、私の装いが全然浮いてないことに吃驚した。
そんな中でも総二郎の目立つこと・・・通り過ぎる人達がみんな振り返るから、私はもう恥ずかしくて・・・・・・
「何言ってんだ、お前の方が綺麗だろ?」
「えっ///!」
「阿呆、自身持てって。そのドレスにお前が負けてる訳がねぇだろ」
「・・・・・・そ、そうかな・・・」
「俺はつくしを連れて歩くことが自慢だからな」
「・・・・・・じゃあ、堂々としなくちゃ・・・?」
「くくっ、そう言うこと!」
歩き方を練習すれば良かった。
もっとメイクの勉強をすれば良かった。
髪ももっとケアすれば良かった。
もっともっと・・・この人に似合う女性になりたいと思った夜だった。
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誰かが降りてくるのかと思って隠れたけど、どうやら今からお客さんを乗せるよう・・・もしかして家元かな?って思ったけど、家元なら宗家の車で出掛けるはず。
だから西門に来ていたお客さんが帰るのかと思い、尚更引っ込んだ。
そうしたら門の向こうから出て来たのは若い男性・・・もう暗いからよく判らなかったけど、シルエットは・・・総二郎?ビシッとしたスーツ姿の男性が現われて、辺りをキョロキョロしてた。
その人が私の方に顔を向けた時、隠れてるのに気が付いたみたいで「何やってんだ?」って言ったから、それが総二郎だと確信し、急いで出て行くと・・・
ダークブルーのスリーピースに黒のドレスシャツ、そしてネクタイ・・・もちろん足元は革靴。
恐ろしすぎる色気に私のほうが真っ赤になっちゃう///!
「ちょっと!どうしてそんな格好なの?!普通の服でいいって言ったよね?」
「あぁ、そうだけど・・・まぁいいから早く乗れ。予約した時間に間に合わねぇから」
「一体何処に行くの?まさか、誰か他の人がいるとか言わないよね?」
「誰だよ、それ。しかもクリスマスディナーに他の奴を呼ぶと思うのか?ガタガタ言わずに、ほら、先に乗れって!」
言葉とは裏腹にスマートにエスコートしてくれて、私は身を屈めてタクシーに乗り込んだ。そのあとで彼が乗ってきて、運転手さんに告げたのは「表参道まで」。
今日の夕食はそこなのか~と、取り敢えず喧嘩したくなかったから機嫌を直す努力をした。
でも彼の格好はどう見ても一流レストランに入るとしか思えない・・・だから気になって、「この格好でも平気?」と言うと・・・
「普通の服でいいって言っただろ?どうせ今から着替えるんだから」
「は?」
「表参道の店にドレスを用意させてる。それに着替えてMホテルの展望レストラン・特別席だ」
「はぁ?!」
Mホテルって・・・この前道明寺と会った、あのMホテル?!
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その電話は昼間志乃さんと話した後にあった。
相手は悪友・・・今現在ドイツに滞在中の司からだった。
一体何の用で掛けてきたのかと思ったら・・・・・・
「は?ホテルレストランの特別席?」
『今日の19時に用意させてる。遅れないようにあいつを連れて行け』
「チョイ待て。俺は別の店を予約してるから・・・」
『そっちをキャンセルしろ。いいな、19時には絶対に行けよ』
「阿呆か!俺が選んだ店で・・・」
『これが俺のクリスマスプレゼントだ!判ったな!!』
・・・最後は怒鳴って電話を切りやがった💢
空の上のあきら達には確認出来なかったが、恐らくあいつらが昨夜の写真を送ったか、もしくは一緒に飯食った話をしたか・・・要するにそう言う事だろうと思った。
だから仕方なく俺が予約していた店をキャンセルし、急いでドレスを注文・・・Mホテルの展望レストラン・特別席はそもそも道明寺家専用みたいな場所で、その名の通り特別な客しか入れない。
プレゼントだと言うから支払いはないんだろうけど、1席数十万だ。それにはムカついたが、行かなかったら余計にややこしくなるから・・・
タクシーの中でそれを教えると、つくしも目がテン。
「表参道の店にドレスを用意させてる。それに着替えてMホテルの展望レストラン・特別席だ」
「はぁ?!なんでそんなところを予約したの?」
「俺が予約したんじゃねぇよ!
司からお前へのプレゼントだそうだ!」
「・・・・・・うそっ・・・・・・」
「嘘じゃねぇよ・・・言うだけ言って電話切ったからしょうがねぇんだよ!」
俺の言葉に、今度は申し訳なさそうにするつくし。
でもこれはつくしのせいじゃねぇし、司が無駄に張り切ったからだ。別に俺ももう怒ってねぇし、こうなったら楽しもうと言うと、「そうだねぇ~」と中半諦めたような顔をした。
そしてタクシーは俺の指定した店に着き、そこで暫く待ってもらうことに。
つくしが怖ず怖ずとその店に入ると、待ち構えていた店員達に腕を掴まれ、奥の部屋へと連れて行かれた。ここは当然俺も行くことにして、試着室の中でギャアギャア喚くつくしを待つこととなった。
それから30分後、総レースの黒いドレスを纏ったつくしが現われた。
デザインはシンプルだが、繊細で立体な花柄レースがたっぷり使われていてエレガントな雰囲気。サテン生地のミニドレスの上にレースがあるんだけど、スカートは後ろが眺めのテールカットでSexyなものだ。
デコルテラインもレースだが、ノースリーブなのでボレロつき。その上にロシアンセーブルのコート。
靴とバッグを統一させたコーディネートで完璧・・・童顔はしょうがねぇが、髪も少しアレンジしてもらって美しく纏めていた。
つくしは仕上がった自分を見て真っ青になり、慣れない10㎝ヒールにフラフラしながら俺を睨み付けた。
「総二郎///!こんなドレスで行くの?!」
「文句あるか?この俺が選んだのに」
「マジで?!」
「大マジだ。じゃ、行くぞ」
つくしは自分じゃ気付いていない・・・こいつはちゃんと着飾ると、すげぇゴージャスな女に化けるんだ。
むしろこんな姿を他の男に見せられねぇと、俺の方が焦るっての!
*************************
凄く綺麗なシルエットのドレス・・・しかも大人っぽい黒で、こんなの初めて着たから凄く恥ずかしかった。
確かに総二郎ならこんなドレスを着た女性は似合うだろうけど、中身が私じゃちょっと・・・そんな風に気後れしていると、スタッフさんがメイクのお直しと髪のアレンジをしてくれた。
そうしたら少しは大人っぽくなったんだけど、これでいいんだろうかと不安・・・でもこの姿を見た総二郎はニコッと笑って嬉しそうだった。
お店を出る時には総二郎の腕を持ち、待ってくれていたタクシーの運転手さんは「え?!」って驚いてる・・・多分、さっき降りた女性と別人を連れて来たと思ったんだろう。
そんな事にはイチイチ触れず、乗り込んだら今度はMホテルへ向かった。
窓の外はまだクリスマスイルミネーションで綺麗・・・あちこちで恋人たちが寄り添って歩いてるのを見たし、大勢で盛りあがってる人達もいた。
そしてケーキの箱を持つお父さんとかお母さん・・・「いいなぁ~」って呟くと、「そのうちホームパーティーぐらい出来るって」って総二郎が笑ってた。
西門でクリスマスパーティー・・・全然想像出来ないけど、そんな事が出来たらいいなぁと。
Mホテルに着くと、コートを羽織った私を総二郎がエスコートしてくれる。
そして正面に見えるのは道明寺らしい豪華絢爛なクリスマスツリー・・・周りの人達もすごく着飾ってて、私の装いが全然浮いてないことに吃驚した。
そんな中でも総二郎の目立つこと・・・通り過ぎる人達がみんな振り返るから、私はもう恥ずかしくて・・・・・・
「何言ってんだ、お前の方が綺麗だろ?」
「えっ///!」
「阿呆、自身持てって。そのドレスにお前が負けてる訳がねぇだろ」
「・・・・・・そ、そうかな・・・」
「俺はつくしを連れて歩くことが自慢だからな」
「・・・・・・じゃあ、堂々としなくちゃ・・・?」
「くくっ、そう言うこと!」
歩き方を練習すれば良かった。
もっとメイクの勉強をすれば良かった。
髪ももっとケアすれば良かった。
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