二次創作あるあるネタなのにあるあるにならない話
二次創作あるあるネタなのにあるあるにならない話
「……」
「……」
先ほどからお互い無言で顔を見合わせている。
しかしそれも仕方のないことで、廉治はとうとうため息を吐いた。すると三弥がビクリと体を震わせる。
「あ、おい。別にお前にため息を吐いたんじゃ……」
「ううん……気、使わなくても……。だって俺も理解出来ないし、そりゃ斉藤が気持ち悪いって思うのも仕方ないと思う……」
「気持ち悪いなんて言ってねぇだろ……! ほんとお前は相変わらず……」
ネガティブ過ぎだろ、と心の中で呆れる。声にしないのは言えば更に三弥が落ち込むのが目に見えているからだ。
先ほど、突然三弥が女になった。
もちろん廉治の妄想でも何でもない。だいたい普段の三弥が十二分に可愛すぎて、女だったらと妄想するどころかこれっぽっちも思ったことがない。
いや、でも……と廉治はチラリと俯いている三弥を見た。
……乳、でけぇな……っ?
正直少し驚いている。もちろん女になった時点で今まで生きてきた中でぶっちぎりトップで驚いているが、それとは別枠で驚いている。
三弥の顔や雰囲気があまり変わらないのは何となく分かる。三弥自体は女顔ではないのだが、多分かなり三弥の母親と雰囲気や顔のつくりは似ているのを知っているからかもしれない。
だが胸は、想像したこともないが改めて目の当たりにすると予想外と言うのだろうか。
別に身長も普通にあるし、体つきも普通に男のそれである三弥が女になるとかなりスタイルがいいのも、特に予想外という訳ではない。
……にしても乳、でけぇだろ……。
でもそういやミヤのちんこって、小さいよりはデカい寄りかもしんねぇよな……だからか? いやそれでも乳、デカくね……?
もはや三弥が女になったというあり得ない状況よりも何よりも、胸のことしか廉治の頭にない。
おかしい、と思う。
だって俺、別に乳はデカい派でもなんでもねぇけど。デカいのもいいが小ぶりも好きだし、というか乳はなんでもエロいと思うしついでに普段のミヤの乳だって――
「斉藤……?」
待て、俺マジで乳のことしか考えてなくね? それよりもせっかくなんだから女のミヤとヤって……、じゃねぇよ、まず何でこうなったか原因究明と戻る方法をだな……、いやでもマジ、乳、デカくね……?
「さ、斉藤……? 大丈夫……?」
「だ、大丈夫だ、つかお前のが大丈夫じゃないだろうし何より不安だよね。根拠もねぇのに安心しろとは言えねぇけどさ、でも絶対俺がついてるから。とりあえず状況をもう一度……」
実際とても不安そうな三弥をとりあえず抱きしめようとして、廉治はまた胸に目がいってしまった。
その頃有紀の部屋では、亜希が有紀のベッドの中にくるまっていた。それを有紀が必死に宥めている。
「アキちゃん、とりあえず落ち着こ!」
「落ち着ける訳ねーし! とりあえずっつーなら、とりあえずユキ、出てって」
「出てってって、ここ俺の部屋……!」
同じく突然女になった亜希は速攻で有紀を殴るとベッドに駆け込んでいた。
殴られる意味が全くもって分からないが、何よりも亜希が突然女になったことが理解出来ない有紀は結構動転している。だが亜希は余計にだろうと有紀は布団の上からぎゅっと亜希を抱きしめた。
「アキ、大丈夫だよ、きっと戻るって!」
「何でそんなの分かるんだよ」
「だって俺、アキのこと大好きだもん。その俺が何がなんでもどうにかするから!」
「で、でもユキ、女の子好きじゃん。俺が女のがいーんじゃねーの?」
「女の子のアキも一瞬しか見えてないけど可愛かったよ? でも俺のアキは男の子のアキだから」
「ユキ……」
「アキ」
亜希がもそもそと布団から出てきた。男に戻ってはいないが、亜希が少しは落ち着いたのかなとホッとして抱きしめようとした有紀の手が亜希の言葉で止まる。
「つーかさ、なるなら普通ユキのほうじゃね? 俺のが男らしーのに。それに何、このだっさい体。何で背まで縮む訳ー? あとガリガリじゃん! 最悪ー」
と、とりあえずガリガリって程じゃないし華奢で可愛いし、つか小ぶりなのはアキちゃんが元々華奢だから――
とは言えず、有紀は手を広げたまま笑顔で固まった。
***
「待て……!」
「先輩ったら動揺して俺を犬か何かだと思ってるんです? やだなぁ」
「何でだよっ? むしろお前こそ少しは動揺しろよ……!」
いつものごとく自分の部屋に連れ込んでいた光樹が突然、心底微妙な顔になり呆然としだした。それを少々怪訝に思いながらも引き続き押し倒して行為を進めようとしたら「待て」と言われたのだ。
「動揺?」
「俺を見ろよ……!」
「熱烈ですね。もちろん普段から穴が開くほど見つめてますが」
ニコニコと言えば赤いのか青いのかよく分からない顔をしてくる。
「おま……、いや、と、とりあえずおかしいだろ、俺……」
「先輩が? 何言ってるんです? 先輩のどこを見てもおかしいところなんてありませんが」
「誠也……ちゃんと見てる?」
「こんなに見てるじゃないですか」
愛しげに囁くと、誠也は光樹にキスをする。そのまま口内だけでなく体を貪ろうとすると「だ、だから待って……」と光樹が必死に誠也を引き離してきた。
「どうかしたんですか? 具合、悪いとか……?」
「お前こそどうかしてんじゃないのか……っ? 俺見て何も思わ……俺、今急に女になっただろーが……!」
途中、誠也を見て微妙な顔をしてきた光樹が、きゅっと目を瞑った後に言い切ってきた。
「ああ、確かに。大丈夫ですよ、ちゃんと痛くないように……」
「そこじゃないから……! お前、驚いたり心配したり引いたりとか、何かないの……?」
「何故です? 先輩が具合悪いなら心配ですが……ああ、そうですね、体に何か影響あったら怖いですよね。後で医者を呼んで検査だけはしましょうね」
「…………。あの、な? お前は何とも思わないのか……?」
「先輩が愛しいとか?」
「じゃなくて……!」
「もしかして女だからですか? やだなぁ。先輩が先輩なら、俺は別に男女に拘りません」
「誠也……」
光樹が何故か心底呆れ、引いている。だがどんな光樹も愛しいので、誠也は構わずぎゅと抱きしめた。
一方、その頃たまたま用事があって涼の部屋に来ていた翼に、涼が「そういえば俺、ここ急に痛くなったんだけど翼、怪我でもした?」とシャツのボタンを二つほど外して聞いているところだった。
流石の翼も、自分と同じ体であろう涼の鎖骨辺りを見た位では心臓が少しドクドクとする位で、「我ながら双子ってすげーな。怪我、したした」と少し笑いながら頷いていた。そして顔を上げると涼なのに涼じゃない涼が膨らんだ胸元を開けて唖然としている状態に出くわした。その後の記憶はない。
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