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ポゼッション


◆ポゼッション◆ 

中学生のころから、幼馴染の『瀬名 真尋』と続けている秘め事。
『月島 佐紅』はやめなくてはと思っているが――


*赤→R指定



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S1.マイペースな彼

 

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ポゼッションS01.マイペースな彼

目の前に積まれた、まるで資料集のような冊子やプリントの山を見て、佐紅は顔を引きつらせた。
そんな佐紅を真尋は無表情ながらも怪訝そうに見てくる。ちなみに怪訝そうに見えるのは恐らく真尋の家族か佐紅くらいなものだろう。

「なんでお前がそんな顔で見てくんだよ……」

微妙な気持ちになるしかない。

「さくが何故か顔引きつらせてるから」
「何故か? 何故か……っ?」

佐紅の剣幕に真尋がますます唖然とする。

「俺……何かしたのか?」
「むしろしなかったって言ったほうが正しいかもな……」
「……?」

真尋は本気で分からない様子であり、佐紅はむしろどんな顔をすればいいのか分からなかった。
ため息を吐き、俯き加減で絞り出すように言い聞かせる。

「お前な、あの長かった夏休みの間、何してたんだよ」
「さくと遊んだりさくのこと思ったりしてた」

俯いたまま、佐紅の顔が熱くなるのが分かった。
ある意味本当にブレない真尋のこういうところが嫌いではないが照れてしまうし、何より今はそういうことを言っているのではない。

「違う! この手を付けられていない宿題の山はなんだっつってんだよ……!」
「あー……」

佐紅の言葉に真尋は「なんだそんなことか」といった顔をする。
先ほどから佐紅は真尋の表情を読んではいるが、そういった場合真尋が黙っていることが大抵だ。他の人だと表情も読めないだろうし本当に何を考えているのか分からないのだろうなと思った。
とはいえ表情が分かったところで真尋が何を考えているのかは、ある意味分からない。

「あー、じゃないんだよ……! 宿題やらないつもりなのか?」
「……何も考えてなかった」
「お前な……!」

真尋の成績は普段も中の下といったところだ。よくぼんやりとしていて基本的にやる気がない。
別に佐紅もガチガチに真面目にやってきている訳ではないが自分に合ったやり方をしているだけだ。そして結果を出している。

「ちゃんとやれよ」
「……やる気が出ない」
「出せ」
「さくがいればいい」

まさか自分のせいで真尋が駄目人間になってしまうのではないだろうなと佐紅は戦慄した。
色々吹っ切れたとはいえ、それは嫌だ。

「宿題、やるまで会わない」
「むり」

無理じゃないんだよ馬鹿野郎……!

微妙な顔で真尋を見ていた佐紅はふと浮かんだ。
罰じゃ駄目だと。
この場合、真尋に対して正しいやり方は多分褒美だと。
とはいえ何が褒美になるのか分からない。

……体?

ふと浮かんだ後に佐紅は手で思い切り自分の前をわたわたと払った。もちろん思考が見える訳ではないが、つい、だ。

「……大丈夫か、さく」
「……ぁあ」

真尋に大丈夫かと言われるのは何となく微妙な気持ちになる。
だいたい褒美に体と言っても、別に普段からセックスはしている。あまり頻繁だと佐紅の体がもたないのでなるべく間は空けて貰おうとはしているが隣同士で自由に行き来の出来る状況は、他のカップルが聞けば羨ましいことかもしれないが、中々に大変だった。
とりあえずそういうことなので褒美になるとは思えない。

他にはと考えていると真尋のピアスに目が止まる。
突然開け、そしてその後佐紅の耳までいきなり開けてきた。

ピアスを更に開けるとか?

いや、真尋はただピアスが開けたかった訳ではない。意味があっただけだ。となるとピアスも褒美にはならない気がする。
とはいえ、褒美という方法は効果がありそうだった。

本人に委ねるか……。

そう思うと、佐紅は真尋をじっと見た。

「さく」

すると何を勘違いしたのか、真尋が佐紅を抱きしめようとしてくる。

「違う!」
「さく、好き」
「あーもう! とりあえずひろ、お前は宿題をやれ」
「……」

真顔でスルーしてきた。
ムッとしたので無茶ぶりをしてやろうと佐紅は思う。宿題をさせる為の褒美だというのに少しズレていた。

「三日で全部やったら何でも言うこと聞いてやる」

気持ちがいいほどに一切手をつけていない宿題は大袈裟ではなく山積みされている。いくつか本を読んでの感想文やレポートもあるので三日では相当難しかった。
言ったもののノッてくるだろうか、それとも無理と言うだろうかと内心思いつつ、佐紅はどうだと真尋を見る。

「……やる」

少なくとも日を伸ばして欲しいくらいは言ってくるかと思っていたが、真尋は一言だけ口にすると早速手前にある冊子から手をつけ出した。少し見て首を傾げた後で凄い勢いで教科書をめくり出して調べ始める。
佐紅はただ唖然としていた。
しばらく様子を見た後に、邪魔にならないよう佐紅は自分の家へ戻る。

あんな集中した真尋は見た記憶がないと思っていたら翌日、真尋がベランダを通じて部屋に入ってきた。

「さく、終わった」

一瞬何の話だと佐紅はポカンとした。そして唖然とする。

「は? お前適当なこと言って……」
「ちゃんと全部やった。なんなら見に来て」

真尋はぼんやりしていたりマイペースだったりして適当なところもあるが、嘘は吐かない。

「え、だって読書感想文とかもあっただろ……」
「化学と社会でもあった。それらもやった」
「おま……」
「三日のところ一日で終わらせた。言うこと三つ聞いてくれる?」
「は? 何言って……」

ふざけんなと言おうとして、真尋がじっと見ていることに気づいた。

いくらなんでもそこまでやるか?

呆れたように思いつつも、その為なのか凄まじい勢いで実際に宿題をやりとげたのは真尋だ。

「……三つは多い……」
「じゃあ二つ」

やれば出来るヤツだと思ってはいたが、極端過ぎるだろ……!

よくやったと褒めるのを通り越してドン引きだった。

「ちなみに三つってなんだったんだ……?」
「結婚して。妊娠するまで何度も中で俺受け止めて。手をつないでデートして」
「馬鹿なのか……っ? 却下だ! いや、約束だしな……夜、暗いとこなら手だけはつないで歩いてやる……」
「ほんと?」

ふざけんなとばかりに言えば、真尋はそれでも嬉しそうに佐紅を見てきた。










佐紅厨の真尋は書いていて楽しいです。
佐紅がドン引きするようなことも全部真顔で言います。









2017/08/29

 

 

 

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ポゼッション20

 *R-18指定あり注意

今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。
18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。




 

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ポゼッション1

 *R-15指定あり注意

今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。
15歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。




 

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ポゼッション2

今日も自分の部屋からベランダへ出ると、真尋は隣のベランダへ向かう。
隣、といっても別にベランダの柵を乗り越える訳ではない。そんなやり方をしていたら絶対に佐紅が許してくれないだろう。
二人が小さかった頃に、誤って隔て板の下を破ってしまったのだ。隣同士を隔てる仕切りになっているもので、ベランダは本来マンションの共有部分なので報告して弁償になるのだが、今もそのままになっている。
普段はそこから隣へ移動している。
別に玄関から出て隣の家の玄関から入れてもらえば済む話なのだが、いつだって真尋はすぐに佐紅の部屋へ向かいたかった。

真尋から見た佐紅は昔から面倒見がよく、なんでもそつなくこなす姿はまるでヒーローのような存在だった。
社交的で友だちも多い佐紅は、いつも友だちに囲まれていた。
それに比べて真尋は内気で、人と話すのが苦手だった。その為友だちという存在も少ない。
ただ、佐紅はいつも真尋のそばに居てくれた。
それがどれほど嬉しいことなのかは、当然というか未だに口下手な真尋には伝える力はない。

……でも、さくは俺の表情を見て気持ちをなんとなく分かってくれる……。

いつも無表情だと真尋は周りに言われる。
怒っているのか、とも言われたことがあるが、意味もなく怒る筈がないし、そもそも真尋の沸点は高い。ぼんやりしているからだとは親だけでなく佐紅にも言われる。

「生意気だとか怒ってるように見えるのはお前が大抵ぼんやりと白けたような目をして、口を堅く閉じてるからだ。せめてもっと口元を上げてみろ」

中学生の頃、佐紅に一度言われたことがある。
その時もいつものように真尋を助けてくれていた。上級生から「生意気だ」といきなり言われて戸惑っているところを間に入って助けてくれたのだが、ため息を吐いた後にそう言われたのだ。
よく分からないが言われた通りにしようと、人差し指で口角をくい、とあげると「そうじゃねーよ」と微妙な顔をされた。

佐紅は社交的なだけあって表情も豊かだ。
親からは「小さい頃からずっと佐紅ちゃんと一緒なんだから、表情も擦りこまれてもよさそうなものなのにねえ」と顔をもみくちゃにされたことがある。それを佐紅に伝えると「おばさんってば自分の息子で遊びすぎ」とその時も微妙な顔をしていた。

「口んとこにも筋肉あんだろ。それ使って口元を上げんだよ」

もちろん佐紅の言葉だから言われた通りにしたかったのだが、必死になって口を動かそうとした挙句、何故かなんとも言えないような顔をしながら「俺が悪かった」と佐紅に謝られてしまった。
それ以来、佐紅は真尋に表情をどうこうしろ、とは言わない。
ただ、読み取ってくれる。

真尋もこれでは駄目だなと思うこともあるのだが、とりあえず佐紅にさえ伝わればそれで十分な気もしてしまう。
社会へ出た時は出た時だ。
佐紅には「まひろは内気なんじゃなくて内向的なだけだと思う。合う場所や合うことをすれば絶対いいとこ発揮するやつ」と言われたことがあるが、真尋にはそれらの違いがよく分からなかった。

中学の頃、といえば佐紅との関係に少し変化があったのも中学生の時だった。
ある日、友人の誰かが押し付けてきたのか、今までそういったものは全然なかった佐紅の部屋に、それ系の雑誌が置いてあった。
真尋も一応多少の知識はあったが実際に目の当たりにしたことはなく、好奇心に負けて佐紅と一緒にそれを読んだ。そして流れで雑誌の真似事のようなことをした。

もちろん雑誌は男同士でどうこうするような内容ではなかった。
ただ、プレイの一環か、男女二人でする自慰行為についてたまたま載っていて、それを見様見真似でやってみたのだ。
その行為がとても気持ちのいいことだと知ってから、今のような関係が続いている。

本当は佐紅が止めたがっていることに、真尋は気づいている。
でも真尋はこの関係を止めたくなかった。終わらせたくなかった。恐れているといっても過言ではない。
あの行為をすると、佐紅がとても近く感じるのだ。
そしてとても暖かい気持ちになる。
大切な存在という感じを味わえる。

終わってしまったら、繋がりがなくなってしまうような気、さえした。
自分と佐紅はどうなってしまうのだろうと不安が過る。
もちろん、ただの幼馴染になるだけだろう。幼馴染という関係は消えない。恐らく。
だが今の関係で感じる近しさがなくなってしまいそうで怖いのだと真尋は思っていた。

だから、止めたくない。

ベランダから部屋への窓はいつも鍵がかかっていなかった。真尋が中へ入ると佐紅は「また来たのか」と少し呆れたように言う。
とはいえ真尋を突き放すようなことを言ったりしない。

「ああ、来た」
「そういえばお前、テスト勉強は大丈夫なのか」
「……多分?」

ベッドにもたれて真尋を見上げていた佐紅がますます呆れた顔をしてきた。

「多分ってお前、今、顔逸らしただろ……!」
「そ、らしてない」
「嘘吐くな」
「……逸らした」
「……ったく。見てやるから勉強道具持ってこい」
「っ分かった」

真尋はコクリと勢いよく頷いて、ノートなどと取りに戻る為にすぐに踵を返す。
もちろん、あの行為だけが目的な訳ではない。
繋がりを感じられるのなら、テスト勉強を一緒にするのですら、真尋は嬉しかった。

翌日、教室で真尋はぼんやりと佐紅を見る。
今日も佐紅は沢山の友だちに囲まれて談笑している。佐紅も友だちも楽しそうだ。
真尋はそんな佐紅を遠目で見ていた。

「つーきしまっ」

佐紅の友人であり、数少ない真尋の友人でもある相良 雄大(さがら ゆうだい)が佐紅に近づいていくと佐紅の肩を抱いた。

「明日のテスト範囲教えてくんね?」

すると周りにいた生徒も「あ! 私も!」「俺も」と佐紅に手を合わせてきた。

「ってお前ら俺に対して一斉に拝みだすの止めろよ」
「なんで。いーだろ、神様みてーだろ」

テストが近くなると皆が佐紅を頼る。
真尋はぼんやりとその光景を見ていると何故か胸がモヤモヤとするのに気付いた。
痛いというのではない。
なんだろうと考えてみるが上手く言い表せる表現が思いつかない。
なんだか妙に不安になる感じというのだろうか。

だが不安になるというのも妙な話だ。テストのことで佐紅が頼られても別に佐紅が真尋を嫌いになる訳ではない。
この気持ちがなんなのか、真尋には分からなかった。










内気、とは違う内向性というのは、社会など周りからの刺激に対して、どのように反応するか。
外向的な人はが多くの刺激を求めるのに対し、内向的な人は、静かで目立たない環境でこそイキイキとやる気に満ち、その能力を余すことなく使うことができるらしい。









2017/03/02

 

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