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恋愛ゲームは続行中20

「次はホラゲ作りましょうよ」

 伸行がにこにこと言った途端、昌史が顔をそらしたことに気づいて智也は口元が緩むのを感じた。
 智也は知っているものの、基本的に他の皆にはホラーが苦手だと内緒にしているらしい。そういうところもかわいくてならない。

「本当は智也くんにも内緒にしたかったっていうか、誰より智也くんにばらしたくなかったんですけどね」

 だが以前智也の家で男子会した時、別の部屋に引っ込んだ智也と二人きりになるのに格好の口実だったため、秤にかけてしぶしぶ認めることにしたのだという。そういえば「ホラー映画で」と口にした昌史に「苦手なのか」と智也が聞けば少し仏頂面で「まあ」と答えていた。

「ふは」
「笑わないでくださいよ」
「悪い悪い。でもあの時、イケメンがホラー映画苦手で逃げてきたんだって思ってほんわかしてたんだよな俺」
「嬉しいような嬉しくないような……」
「嬉しがれよ。今もかわいいって思ってる」
「っもう、ほんと智也くんそういうとこ。あとかわいいは俺、ちょっと嬉しいけどわりと嬉しくない」
「どっちだよ」

 相変わらず顔を真っ赤にする昌史に智也は笑いながらキスした。
 ちなみにずっと「篠原先輩」と呼んでいた昌史だが、ある日とても言いにくそうに「名前で呼んでもいいですか」と切り出してきた。

「全然いいよ。じゃあ俺も辻村くんのこと、マサって呼ぼうかな」
「……マサ呼びは篠原先輩が佐久間先輩をアキって呼ぶのに何か似てるから微妙です」
「何だよそれ。でも昌史って長いだろ」
「そうですか?」
「うん。じゃあ、ふみ。あとくん、つけたら差別化できるぞ、なあ、ふみくん」
「は、ぅ」

 また変な呼吸音が聞こえてきた。昌史いわく「心臓を打ち抜かれた」らしい。たまによくわからない。そして昌史も智也に対して「くん」をつけることにしたようだ。ただしばらくは真っ赤になって中々ちゃんと呼んでくれそうになかった。
 名前でもそうだが、何故か昌史は亮人に対して変な嫉妬心があるらしい。それに対して亮人は「お前らが付き合う前からあいつ、俺に対してやたら敵対心持ってたぞ」と言っていた。

「マジで」
「一度、お前に対して特別な感情持ってるんじゃないかって言われたこともある」
「……わあ。で、お前は何て?」
「さあ、って」

 昌史に対して意地悪しているのではなく、智也との関係を歪んで見られようが心底どうでもいいと思っているからこそできる返答だろう。そしてそういう態度は亮人をよく知っている智也なら「どうでもいいからだな」とすぐわかるが、案外嫉妬するタイプらしい昌史にとっては火に油だったのだろう。おかげさまでいまだに変な嫉妬心がなくならない。
 ちなみにあまりに昌史があからさまなので亮人は智也たちが付き合っていることを知っている。智也も亮人にバレるのはそんなに抵抗なかった。多分亮人の性格によるのだろう。打ち明けた時も「へえ」で終わった。
 サークルの先輩二人にはいまだに打ち明けていないし昌史にも「あの二人は面倒そうだからあまり出さないで」とは言っている。ただそろそろ薄々気づかれているような気がしないでもない。あと気づいてわかって言っているのか、単に勝手に餌にされているのかこの間美恵からろくでもないことを言われた。

「篠原くんと佐久間くんと辻村くんの三角関係が前から熱かったんだけど、最近はもう3Pでいいかなって」
「……恐ろしいことさらっと言わんでくださいよ……」
「何で。すごく最高だと思うよ。私3Pはわりと王道派でさ。攻め一人受け二人や間にリバ入れるより、攻め二人受け一人がいいなあ。私はわりと平凡受け好きだし、篠原くん受け、どうかな」
「どうかなもへったくれもないんですよ却下」

 まあ昌史との関係では実際「ウケ」とやらの役割ではあるのだが。あと何気にひどいこと言われている気がした。もしかしなくても、はっきり「平凡」だと言われたのではないだろうか。

「えー。ホラゲより乙女ゲーじゃない?」
「乙女ゲーはもう作ったじゃないですか。今度こそRPG……」
「乙女ゲーで、今度はさ、学園ものがいい。あと選択男子にケモミミ男子入れて」

 言いかけた智也の意見はさらりとスルーされた。仕方なく「何で学園ものでケモミミ生えてんだよ……」と呟いておく。
 ホラーゲームがいいと提案してきた伸行は「ケモミミ学園ものもいっすね」と早くも望美に迎合している。せっかく重みあるストーリーやホラー系が得意だというのに、今回もどこにも生かせそうにないだろう。ちなみに伸行の今のヘアスタイルはツーブロックでセンターパートに無造作パーマ、そしてレッド系カラーだ。どことなく某星王子を彷彿とさせる。智也は伸行に対して、ケモミミだけは生やすなよとたまに心の中で呟いているが、今も呟いておいた。
 作っていたゲームだが、フリーゲーム部門のコンテストはそこそこいいところまでいったものの、上位三組には組み込まれなかった。だが皆それぞれ楽しかったらしく、こうして次目指してとりあえず話し合っているところだったりする。
 智也も、様々な意味できっかけをもらったようなものである今回のゲーム制作はとても忘れがたい思い出になった。

「智也くん、もうプログラミング始めてるんですか」

 家でパソコンをいじっていると、合鍵を使って入ってきた昌史が少し驚いたように口にしながら近づいてきた。智也は振り返って頷く。

「まあ、まだほんの齧りくらいだけどな」

 そして最近ようやく少し減ってきたはずだというのに昌史がまた真っ赤になって自分を見ていることに気づく。

「何?」
「眼鏡……」
「あ? あれ? お前の前で眼鏡かけたことなかった? 俺さ、コンタクトはしてないけど、わりと視力悪いほうでさ。パソコン作業とか勉強する時はけっこうかけたりしてるぞ」
「……知ってる」
「ん?」
「中学の時、智也くんがかけてたの見かけて……妙にドキドキしたの今でもよく覚えてる。その日は一日幸せだったんです」
「おおげさだな」
「そうでもないですよ。あと普段かけてないじゃないですか。だから余計ギャップにやられるっていうか……とりあえず堪らないです」
「堪らないって……。何だよもう……」
「ギャップといえば、智也くんの綺麗な体つきもほんっと堪らない」
「体褒めてくれてんだろけど、ギャップってどういうことだよ」
「すごく好きってことです」
「超訳すぎない?」

 昌史はいつの間にかスイッチが入っていたみたいで、気づけばそのまま押し倒されていた。最近は正直昌史とセックスするのが最高に気持ちよくなっているせいで、智也としても異存はない。

「ベストエンド後の極上ガチャってとこかな」
「ゲームに例えんの、好きですね」

 二人はお互い笑いながらとろけるようなキスを続けた。













〜プチあとがき〜

この話はあれだ。何だっけ。多分元々は転生ものとかそういうファンタジー兼ねた現代ファンタジー話がネタだったのではなかったかな、と。多分。

ただ、そうするにはとても長くなりそうとか何か諸々のアレがあって、結局現代ものにしたのではなかったかな、多分。多分。

元がファンタジーもどき、といえばネタはそう、ミムさんです。ファンタジーはだいたいミムさん。

ということでプロットほどではないですが、話の筋的なものはありました。それに血肉をつけていく感じといいますか。

ゲーム自体は好きなのでわりと楽しく書いた気がします。乙女ゲーとかそういう系はしないのですが、RPGとかシュミレーションゲームとかですね。好きなの。

とはいえ例えば先輩が酔ったわんこを担ぐ描写のように、ゲーム好きでも何だって知っているわけではないのでちょっとした言葉連ねて検索し、求めてる所作など調べるのは毎回です。

他の文字書きさんから「よく知ってますがそういう仕事ですか」とコメントいただいたことあり、その時に小説書く際特に何も調べないで書く人もいると知りました。

正しい書き方なんてないと思うので、結局は自分のやりやすいよう、書きやすいよう、楽しいように書くのが一番ですね。

この話もネタを元に調べたり想像したり経験則書いたりとしたいように作りました。それでもやっぱりゲームは好きなので余計楽しかったかもですね。

あと平凡そうでいながら何気に懐広そうな先輩とか、わんこ系のわりに控えめ真面目な年下イケメンとかも書いてて楽しかったです。


イラストはわりと更新終わり近くにもらったかな。ミムさんが「思ったよりわんこになった」とくれた時に言ってて。

二人共通で見られるフォルダに見に行ったらほんとに思ったよりわんこがそこにいました。笑った。

もう少し大人っぽいというか落ち着いたイメージではあったんですが。これはこれでかわいいからよし。

あと先輩が好みです。こういう顔とか表情、あと髪型好き。

絵から感じられる二人の関係性もよきです。物語性感じられる表情や動作いいですよね。

改めて、イラストで表現できるってすごいなと思いました。ほんまに。


楽しんでいただけたのなら幸いです。








<了>




2023/03/07


 

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恋愛ゲームは続行中19

 *R-18指定あり注意

今回のお話は性的表現が含まれる部分がございます。
18歳以上でR指定大丈夫な方のみおすすみ下さい。




 

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恋愛ゲームは続行中


◆恋愛ゲームは続行中◆




篠原 智也(しのはら ともや)は、二年目の大学生活の勉強以外の時間や労力をほとんど大学でのサークル活動に費やしていた。

サークルでは、みんなでゲームを作成している。
内容は恋愛シミュレーションゲーム。
そのサークルメンバーの一人、辻村 昌史(つじむら まさふみ)は一つ下の後輩で、智也にとても懐いていた。
昌史自身、恋愛の意味でも智也が大好きで――。




*赤→R指定



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S1.

 

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恋愛ゲームは続行中18

 店に入る前から昌史が何となく悲しそうというか元気ない気はしていた。

 そういえば俺が、ちょうど話したいこと、あったって言ったら悲しそうな顔したように見えたけど……もしかして今の話からして、俺がこいつを振るために話あるって言ったと勘違いしたのかな。

「えっと……辻村くん。俺、な?」

 とりあえず話を切り出さないとと智也が口を開くと、昌史は肩をびくりと小さく震わせ緊張の面持ちになる。やはり勘違いしてそうだ。まずその勘違いから否定するべきだろうか。ただ、智也は肝心な時にうまく言える自信はない。ないからこそ、ここ数日悩んできた。だから考えていた通り順序立てて自分の気持ちを話すほうが伝わりやすいのではないかとも思う。

「えっと……その、な」

 結局どう話そうかと少々逡巡してしまったようだ。昌史が「待って……」と俯き気味で手を上げて智也を止めてきた。下を少し向いているからはっきり見えないが、何となく泣きそうな顔をしている気がする。

「ちゃんと言葉にされて振られる覚悟も……何とか、決めるって言ったとこ、ですけど……やっぱりつらくて……」

 自分がうまく話せないせいだとは思うものの、勘違いしている昌史に対し智也は大きなため息をついた。すると昌史の肩がまた小さく震えたのがわかる。

「……おい、出るぞ」
「え?」

 戸惑っている昌史の手をつかみ、智也は席を立った。そのままレジまで向かい、全額を支払う。後ろで昌史が「俺も、あの」と支払いたそうにわたわたしていることに気づいていたが、面倒なので無視した。そして店を出ると、相変わらず戸惑っている昌史を問答無用といった強引さで智也は自分の自宅へと連れていく。
 埒が明かない。順序立ててなどと言っているどころではない。玄関まで入りドアを閉めたところで智也は振り返って昌史を見上げた。

「せ、先輩? あの……一体……」

戸惑いを通り越してパニックにも近い様子の昌史を引き寄せ、智也は自分からキスした。唇が離れると昌史は慌てて智也から顔を離し、手の甲で口辺りを覆っている。顔は真っ赤だ。

「な、何で」
「これでも俺がお前振るって思う?」

 そう言うと、智也はもう一度、今度は少し深めのキスを仕掛けた。それでもまだ少し棒立ちだった昌史だが、途中から智也を抱きしめ返してくると、さらにキスを深めてきた。しばらく二人でお互いキスしあう。狭い玄関で何度も何度も唇を交わし、舌を絡め、食べつくす勢いでむさぼりあった。
 ようやく離れると、さすがに慣れないことをしすぎたのか足に力が入らなくて、智也はその場に崩れ落ちそうになった。

「せんぱっ」

 だが慌てて昌史が抱えてくれる。

「い……! えっと、大丈夫?」
「あ、あ。ありがとう。何か力、入らなくて」
「あ、は。でもうん、俺も。……えっと、ちゃんと話したい、けどとりあえず上がっていいです、か?」
「おう」

 靴も脱いでいなかったことに気づき、智也は昌史に支えてもらっているような状態のまま靴を脱いだ。そして部屋に上がったものの正直なところ、話すよりキスの続きがしたいと思った。どうせなら先ほどの勢いのまま部屋に転がり込めばよかったとさえ思う。昌史に支えられている部分が熱い。そっと触れているだけだというのに、自分の意識のほぼ大半が昌史の手のひらや指に行っている気がする。

「は、ぁ……」

 つい息が漏れた。その際に支えてくれている手がぴくりと反応した気がしたが、昌史は何も言わずに支えてくれたまま誘導してくれたおかげで、転がり込んで絡み合うこともなく智也はコーヒーテーブルのそばで座っているし、少々冷静になれた気もする。一呼吸というのはやはり大事なのだなと思う。なし崩しでそういうことする前にやはりしっかり伝えなくては駄目だと今はちゃんと思えている。

「篠原先輩……」
「俺に話させて」
「は、い」
「俺、さ、コミュ障ってわけじゃないけど、でもあんま口、うまくない」
「そ、うですか?」
「うん。で、お前の気持ち知ってから、えっと、じわじわ、多分じわじわ俺もお前が気になって仕方なくなってった」
「……」
「で、ようやく自覚した。俺も……辻村くんが好きだって」
「先輩……」
「お前の気持ち、知ってるわけだろ? だから俺は辻村くんがすごく勇気出してくれた半分以上も勇気なんていらなかったはずなのに、いつ、どう伝えていいかわからなくて……情けないんだけど」
「い、いえ! そんな。情けないのは俺です。先輩のこと思いやれず自分の気持ち押しつけるようなことしたくせに、先輩が言葉にして振ってくるのだって思うと泣きそうだった」
「あー、まあそれは確かに情けないけど」

 ついそう口に出てしまい、昌史が地味に落ち込んでいる。

「あ、悪い」
「……いえ。本当のことなので」
「でも、な。普段お前って周りからすごく好かれてるし頼られたりもしてる。そんなお前が俺に振られるかもって思ったら泣きそうになるの、正直ちょっと何だろな、うれしい? うん、うれしい気がする」

 うんうんと頷くと、智也は昌史に笑いかけた。

「あと俺もさっき辻村くんの許可なくいきなりキスしたしな。悪い、口うまくないからもう行動に出たほうがはやいかなって。でも辻村くんだってしてきたし、おあいこな」

 すると昌史がぎゅっと智也を抱きしめてきた。











ブルダックシリーズ、どれもけっこう辛いです。辛ラーメンは全然辛いと思わない書き手もこれら食べると唇腫れる。
ただ、辛いだけじゃなくてジャンクな味付けがしっかり感じておいしいんですよね。








2023/02/25



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恋愛ゲームは続行中17

 昌史としては智也を困らせたいわけではなかった。そもそも伝える予定は元々なかった。
 だが気持ちがばれてしまった以上、もう隠しても仕方ないとあからさまに気持ちを出すことにした。もう知られているのだ、隠す必要ないなら全面的に出してしまって何か問題あるだろうか。
 こちらが好きとはいえ、智也に同じ感情を求め強要しようなどとはしていないし強引に押しつけたりもしていない。ただ、こちらの気持ちを隠すことなく出していただけだ。
 中学の頃伝えるどころか話しかけることすらできなかった。そして智也がそのまま卒業して、もう二度と会えなくなったのだと思った。
 その反動のように、気持ちがばれたのもあってひたすら智也に話しかけたい。接していたい。
 だが、最近の智也はどこか元気がないというか、悩みを抱えているように見えていた。一応話しかけたら答えてくれるし、普通に食べたり笑ったりもするにはしている。だがどこか元気がない気がする。何か考え事をしているというか、悩みでも抱えているような気がする。

 もしかして……俺のせい? 俺が悩ませているのでは?

 普通に考えて、男から気持ちを寄せられて歓迎などしないだろう。それに智也は例えゲイだったとしても好きでもない相手にまとわりつかれるのは好まない気がしないでもない。
 昌史がそうだ。自分がノンケかゲイかすら正直よくわからないほど智也以外の誰かを好きになったことがないし、好きでもない相手と付き合いたいと思わない。

 なのに俺は好きだって気持ち隠さずまとわりついて……それに、そうだよ。押しつけてないつもりだったけど、そもそも断りもなく最初にキスしてた。最低じゃないか。

 智也は優しいから怒ったり文句言ったりしないだけで、きっと本当はとても困っているのではないだろうか。嫌なのではないだろうかと昌史は落ち込んだ。

 どうしよう。やっぱりちゃんと一度謝らないとだよな。いきなりキスしてごめんなさいって。それに……いくら気持ちばれてるからって、先輩が何も言わないからって、好きだって気持ちあからさまにしすぎかもだよな……これだって押しつけてるようなものなのかもだし……やっぱり謝らないと。

 よし、と昌史は大学の門で智也が出てくるのを待つことにした。学校にいる間に誘ってもよかったが、ただでさえ悩ませているかもしれないというのに「空いてる日に」と約束をこぎつけてもさらに智也を悩ませるだけかもしれない。その場で誘えば、いくら優しい智也でも行きたくないと思ったら「いきなりは用事あるから」などと断りやすいだろう。
 待ち伏せしていた昌史に驚いている様子の智也に「今から食べに行きませんか」と誘うと、智也は予想に反して少し乗り気のように思えた。

「おいしい酒って、酒の味、わかんの?」

 そんな風に茶化すように言ってくれて昌史の気も軽くなる。

「あは、そこは噂を耳にしただけなんで、よければ先輩が確認してください」
「了解。行く」
「ほんと? やった!」

 嬉しくなって笑みを浮かべると智也は「ちょうど話したいこと、あったしな」と頷いてきた。とたん、うれしい気持ちがしぼむのが感じられた。

 話したいこと……ってやっぱ「お前の気持ちが迷惑だ」とかそういう感じのかな。

 智也ならそこはオブラートに包むようにやんわりと言いそうだが、でも多分そんな感じのことだろうと思い、悲しい気持ちでいっぱいになりそうだった。
 店へ向かい、個室になっている席につくと、とりあえず二人それぞれメニューを見た。

 俺も二十歳がよかった。なら篠原先輩と一緒に酒、飲めんのに。

 ふとそう思ったが、今日謝ろうと思っているのにどのみち酒に頼るやり方は誠実じゃないなと内心うんうん頷く。
 注文したものがある程度そろい、少しの間飲み食いしながら普通にしゃべった。とはいえ、やはり智也の様子は少し変な気がする。会話していてもどこか心ここにあらずというのだろうか。

 やっぱり俺のせいなんだろな。

 タイミングを見計らい、昌史は「篠原先輩」と改まって呼びかけた。

「うん?」
「……ごめんなさい」
「え? 何が?」
「……先輩、何か悩んでる気がして」
「え?」

 智也は怪訝そうに首をかしげてきた。その様子は正直かわいいが、こういう時に遠慮なく「今の、すごくかわいいです」などと言ったりするから困らせるのだろうと反省する。

「何か様子が。最近の先輩。抱えてること、ありますよね?」
「あー……」

 心当たりしかないといった様子の智也に、昌史は一応笑いかけた。だが自分でもちゃんと笑えている気はしない。

「もしかしなくても、俺のせい、ですよね」
「え」
「本当にすみません。ごめんなさい。先輩の気持ちガン無視していきなりキスしたり、バレたならいいやって感じで好意おしつけたりして、本当にごめんなさい」

 何故か少しポカンとしていた智也は昌史が謝る内容を聞くと「ああ……」と納得したかのように呟き、ため息をついてきた。やはりこのことで悩んでいたのだろう。そしてはっきり振ろうと思っていたのだろう。

「困らせてごめんなさい。俺、今日はそれ言いたくて誘いました」
「辻村くん……」
「先輩、俺を振りたいのに言えなくて困ってたんじゃないですか? あの、ちゃんと言ってくれていいです。……いや、俺的には全然よくないけど、じゃなくて、えっと、とにかく本当にごめんなさい。ちゃんと言葉にされて振られる覚悟も……何とか、決めます」











ところでヘルシーなものばかり食べてそうな書き手が最近地味にはまってるのが、韓国のインスタント麺です。
チャパグリは期待したほどでなかったけど、ブルダックはやっぱりおいしい。








2023/02/23



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