338やばい >>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:04:53.02uW//TFY30 (19/36)


「ちょ、お…い?」

「もおチョイガンバってみよ! スゲー惜しかった。あっちのカメラに向かってワンモア!」

「クスリぃちょー、だ…ぃ?」

垣根は何とか搾り出すように口にした。
あっちゃあ、と男は顔を覆う。
馬鹿馬鹿しいほど大袈裟に残念そうに首を振ったが。
その顔は相変わらず笑っている。

「オニーサン的にはそこ『ら』がよかったけどオーケーガンバりました! ハーイお口あけて。
お薬ふたっつー。イイコちゃんにはさーらーに、もひとつオマケしたげちゃうぜえ」

「あー……っ、ケホ、ゴホッ」

「多いかんナー。しゃあないネー」

男は悪びれた風もなく、ただにやにや見ているだけだ。
息を詰まらせそうになった垣根は横を向いた。
もごもごと口の中で飴を転がすようにざらついた薬品を舌で混ぜていく。
目を閉じると、薬が回るまで荒い呼吸を繰り返した。

「……みず」

「んん? どしたん」

「たりねぇ、よ……ソ」

「お水かあ。ちゃんとお薬飲めたあ? 薄まると効かねえよ。んん、いいけどストローねえし、マウストゥマーウスでオーケーかなあ?」

「……チッ、らねぇ」

不快極まりない提案に、垣根は今度こそ。
はっきりと舌打ちした。
反抗的な態度をここにきてとられたが。
ペットボトルを持ち上げた男は見せ付けるようにそれに口をつけた。
うまそうに喉を鳴らしながら飲んでいた男は、不意に手を下ろして。
垣根の顎を持ち上げて、無理やり割りいるようにして口をふさいだ。

「ぷは、ァ……っげほ……ェ」

「欲しいって言ったのに吐いちゃダメっしょ。もったいねえの。なんだよカキネクーンまだツンツンしてんの? 
元気あんねえ。やっべぇ、コイツすっげぇおもしれえわ」

「あんだけ汗かかして水無しってのも有りじゃねえ? 回り早くて。逆に」

「鬼かよー粘膜死ぬわー。あーウケる腹いてー」





339nemui >>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:08:26.66uW//TFY30 (20/36)


最後の一人は着替えながら途中で眼鏡をかけると後ろを振り向いた。

「ちゃんと撮れてたんだろうな? と。お前らは今ひとつ当てにならねえんだと」

「ダイジョブダイジョブ、今日もイイケツしてましたあ」

「……やる気あんのかとお前」

「つぎ、なにした、くれ……だ?」

何度目かの要求を垣根は静かに口にした。
それまでは機嫌よく応じていたのに、そのセリフを聞いた男の顔が途端に不満そうになった。
垣根はその変化をじっと見据えていた。

「お薬かよお。なんだよサビシーなあやっぱミンナそれ目当てになんだよなあ。なあなあもう一周しよおぜ? まだ尺ダイジョブっしょ?」

「別にいいけどお前はほいほいタマ出してアメをヤリすぎなんだよ。ムチはどうした。逆に。すぐそれでガキを駄目にすんだろ」

「『置き去り』を何人潰したかまさか忘れたとは言わないかと」

「なんだオマエら何イキナリdisってんの。 イイじゃんカキネクンはスッカリイイコだし。もし、オレらで『躾』しろって話がきたらサービスしたげよおぜ」

ね、と。
女子が大げさな仲良しアピールでもするように。
男は転がったままの垣根の肩を抱こうとした。
次の瞬間だった。

「ばっかじゃ、ねえ、の」

ジャリン、と鎖が鳴った。
持ち上がるはずのない垣根の腕が。
男の胸ぐらをがっちりとつかんでいた。

「は?」

次の瞬間。
ドサァ! と男の体が勢いよく後ろに飛んだ。
頭が床に落ちる前に宙で止まる。
仰向けの姿勢のまま、倒れることも出来ない男の腹や肩、 背中を抜けて。
白いものが突き刺さっていた。
だが現れた白い凶器は間にあった垣根の腕も貫いていた。
翼の形も取らないそれは、ただ適当に線を引いてギザギザに囲んだ部分を切り取っただけの様に見えた。
なんとも不格好な白い塊だった。
普段の垣根なら『未元物質』なら、そんな無様な姿は見せないだろう。
垣根の腕を巻き込んでいた『未元物質』がばらばらに崩れ落ちると。
うざったそうに首を振って垣根は起き上がった。
ゆっくりとふらつきながら立ち上がる。
両腕を軽く振ると、ガシャン! と床に手錠が落ちた。



340nemui >>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:11:30.47uW//TFY30 (21/36)


「……っ、げほ。あー、痛ってえな。余計なことさせるんじゃねえっつうの。あーあ、見ろよ。どうしてくれんだ? 貴重な俺のDNAマップが」

ぼたぼたと床に落ちる自分の血液に舌打つ姿は、ついさっきまでされるまま転がっていたのが嘘のような豹変ぶりだった。
咳き込み気味ではあるが声もなんとか通っていた。
垣根は重そうに頭を振ると。
近くに落ちた薬を二包み分鼻に当てて吸い込んでから、新しいミネラルウォーターのボトルを手に取った。
一息で半分空けると残りを頭から被る。

「お、おい……だってまだ薬は、装置も」

「何やってんだと! こいつ何とかしねえと」

「なんでもいいだろ早くしろよ!!」

口ぐちにわめきはじめた男達を前にした垣根は。
小さく吹き出すと。
次の瞬間には声を上げて笑い出した。
肩が揺れる度に、濡れた髪からぽたぽた水が落ちる。

「おいおい、本気で言ってんのか? まだ間に合うって? 『もう遅い』の間違いじゃなくてか」

縦に大きく裂けた傷口から。
血が伝ったままの右腕を振ると。
垣根は目にたまった涙を汚れていない指ではらった。
おかし過ぎて我慢が出来なくなったらしい。


「テメェらも甘いんだよ」

笑い終えた垣根の声はゾッとするほど冷え切っていた。
男達は気圧されたのか押し黙る。
垣根は手のひらで顔を拭うと前髪をうざったそうにかきあげた。

「たかがこの程度でこの俺が。『未元物質』がどうにか出来るなんざ、本気で考えてたのか。
随分と可哀想な頭してやがんな。やべえ、哀れ過ぎてまた笑えてくんだけど」

喉を鳴らすような小さな笑い声に続いてガッ、ゴシャア! と騒音が響いた。
部屋の中に置かれていた対能力者用の機材は周囲の物を巻き込んで、全て潰れていた。
被害はそれだけに留まらなかった。
離れた床や壁も能力の影響かあちこち破壊されている。
混乱した室内の空気は先ほどまでとまるで違っていた。




341nemui >>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:18:06.92uW//TFY30 (22/36)


狩られるはずの獲物は息を潜めて反撃のチャンスを待っていたのだ。
たとえばの話だが。
頭のいいキツネを狩るにはそれより賢く対処しなくてはいけない。
狩場に慣れた猟犬が獲物に出しぬかれるなんて珍しくはないのだから。
それも、相手がキツネならと言う話で。
牙を剥いた猛獣相手に少々の訓練を積んだ犬ごときが太刀打ち出来るわけもない。

「暴走なんざビビって能力者やってられっか。本気で無力化させるつもりなら、意識そのものを奪っとくんだったな。
無様っぷりを思い知らせようなんざ、下らねー理由で俺を起こしておいたテメェらが悪い。弁明出来るもんならしてみやがれ、コラ」

場の支配権はすっかり変わっていた。
強者は弱者に、弱者は強者に。
その序列がかわっていく。
『未元物質』の出現がそれをはっきりと表していた。

「思考が鈍ってようが、たとえコンディションが最悪だろうが。演算が出来てりゃ能力そのものは使えるんだけど……
ああ。テメェらにはわかんねーか。クソ以下のゴミムシだったなそう言や」

それは汚されて貶められ、散々な醜態を今のいままで晒した者の態度ではなかった。
つまらない。道端のゴミを眺めるような目をしていた。
垣根は床に落とされていた自分の服を拾いあげた。
それらを順に身につける間、喉を慣らすように彼はゆっくりと語り続ける。


「まぁ、美味い飴も貰えたしな。あんなのはメシがわりみてえに散々食わされたけど。昔開発官に言われなかったか? 薬の扱いには注意しろって。
特にこれは血流と代謝の促進、ついでに感覚がえらく冴えちまうのが服用時に目立つ作用だ。
リスクとベネフィットを考えねえと、他の薬の邪魔をしちまう薬品があるって話も少なくねえ。
お勉強が足りてねーな」

ゆっくりとした言葉は噛んで含めるよう。
だが、まるで教える気のない台詞だった。
馬鹿を相手にする気はないのか。
勝手気ままに呟く口調は楽しげで、同時に吐き捨てるようでもあった。



342けしてなかったorz>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:20:58.58uW//TFY30 (23/36)


シャツの襟を直しながら語っていた垣根は。
黙って突っ立っている連中を鼻で笑った。
男たちは動くことも出来なかった。
さっきブチのめされた仲間の一人は中途半端なブリッジみたいな姿勢のまま、悲鳴を上げて。
まだ。
確かに動いていた。
白い凶器に貫かれたグロテスクなストレッチを並んで一緒にしたがる奴はここにはいないらしい。

「ほら、お仲間がついてこれてねーぞ。なんでテメェらはしくじったんでしょうか? 答えてみろよ。センセー」

「……あの馬鹿が、余計な真似をしたからかと。脳の血流が促進されれば働きは活性化される。鈍らせていた思考力が戻るだけでなく、
四肢の麻痺までこんなに早く抜けるとは……ちくしょうお前、俺たちを、騙していただと」

「おいおい、ちょっとそっちのレベルに合わせてやっただけで随分な言われようだな。それに痛みってのは人間の体に必要な信号だぜ? 
喜べよ。テメェらのお気遣いは最初っから充分過ぎるほど受け取らせてもらった、ってな」

と、そこで垣根は一度言葉を切ると、

「まぁ、一つ賢くなったろ? 超能力者を……あんまり甘くみるんじゃねえ」

堂々と言い放って最後にジャケットを手に取った。
軽くはたいてから上着に袖を通し他の着衣の乱れも確認する。
多少の汚れに目をつぶれば、見た目はいつも通りの彼の姿がそこにあった。
体は長い時間痛めつけられ、おまけに能力で傷ついている。
それでも。垣根は自らの力でそこに立っていた。

確かめる様に腕を、指を曲げ伸ばしながら垣根は首を鳴らした。
だるそうに一つ息をはくと。
その両手をポケットにさし入れた。

「大分……マシだな。悪くねえ、いい気分だぜ? 久しぶりに――心底ムカついてるよ。この俺がさぁ」

引き裂くような笑みと共に音もなく背中に現れたのは六枚の翼。
能力者としての圧倒的な力の象徴だった。
散々垣根を馬鹿にしていた男達は。
最早。
ただの一人も口を開くことが出来ずにいた。
目を反らすことも許されていない様にただその白い翼を見つめていた。



343>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:24:03.91uW//TFY30 (24/36)


ビリビリとしたプレッシャーが室内に満ちる。
その沈黙を破ったのは間抜けな電子音だった。
散らばった雑多な物に紛れて床に転がっていた携帯電話からだ。
垣根のものはとっくに踏み砕かれていたから、不愉快な三下連中のうちいずれかの持ち物だろうが。
垣根はうるさく呼び出し音を鳴らすそれを当たり前の様に拾いあげた。

『随分長い間音信不通だったが、問題はなさそうだな』

通話中のよその回線に勝手に割り込んでくる、なんてことも平気でやるくらいだ。
暗部組織の『制御役』を自称する正体不明のエージェントが、その辺の電子機器を乗っ取っても今更垣根は驚かない。
しかし彼は怪訝そうに眉をひそめた。
『未元物質』まで披露した反撃のタイミングで、まるで水を差されたように感じたのか。

「空気は読めねえ癖に相変わらず、ぞっとする程察しのいいヤツだなお前。まぁ、いい。これだけ時間があったんだ、勿論裏は取れてんだろうな」

垣根は馬鹿にしたように、挑む様に口にした。
「何があったのか」も「どうしたのか」も相手には聞かれなかった。
「垣根の無事」も、わかっていなければそもそもここに電話を掛けてくる意味がない。
それを踏まえて垣根は問い返した。

この状況を「何故」、「どうして知っているのか」は問題ではない。
余計な質問はする気もなかった。

だから結論だけを求める。
それが相手には可能だと彼は理解しているからだ。
この相手が、暗部の任務でも、それ以外のケースでも。
必要に応じて複雑に入り組み刻々と変わる過程を把握した上で。
その先を行くようでなくては。
甘んじて、下された指令を仰ぐなんて真似を今まで垣根は許さなかっただろう。
そこにあるのは信用でも信頼でもない。
暗部で仕事をこなすうち積み重なった事実に基づいた関係性だった。




344>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:27:42.91uW//TFY30 (25/36)


『そいつらは『人形製造(バックオーダー)』。『置き去り』中心の人身売買をしていた組織だ。
顧客や資金の出所も、今ある『素材』の保管場所も押さえてある。
今日の話を持ちかけたやつの方は……時間の問題だ。
それでお姫様、いつお迎えにあがりましょうか? 馬車の支度は済んでおりますよ』

電話の『制御役』は淡々とした口調から一転して明るいトーンで答えた。
メルヘンチックな言い回しが余計だが。
垣根に対する馬鹿にした態度はむしろいつも通りだ。
超能力者の略取なんて学園都市ではいい笑い話だ。
それだけでなく結果として、下衆な取引にも使えそうなネタを今回垣根は不本意ながら提供してしまった。
暗部の尾をどこまでとらえられるかは別として。
もしこいつらが、そして悪趣味な依頼主とやらがその気になれば脅迫の対象は垣根個人にとどまらないかもしれない。
だが。
そんな風にして『スクール』の看板に泥が塗られそうになるのを、みすみす見逃すつもりは上の人間どもにもないらしい。
そう垣根は理解した。
彼が無事なら撃って出るのに戦力は充分すぎる。

「そうか。舞踏会と洒落込む前にとりあえずシャワーと着替えだな……清掃車を二台回せ。
『酸性浄化』は多め、忘れんなよ。ちまちました後片付けなんざしてられっか。ここのゴミ処理と掃除は任せる」

雑用をこなす下部組織への指示を伝えると垣根は深く、長く息をはいた。
乾いた唇が愉快そうに弧をかく。

「ああ、そう急がせなくていい。ゆっくり来いよ。俺も……もう少し遊んでくからさ」

通話はそのままに、元のように床に落とした携帯をバキバキ踏み砕くと垣根は振り返る。

「さぁーて。お楽しみはこれから、そうだよな。簡単に楽になれると思うんじゃねーぞ? 死ぬ程ひでえ目なんざありふれててつまんねえだろ。
死ぬより悲惨な状況ってのをたっぷり味わわせてやるから感謝していいぜ。テメェらにふさわしい末路ってのを与えてやろうじゃねえか。
トレンド入り間違いなしの最新の生き地獄をさ」

垣根は笑っていた。
凄惨な処刑の宣言に軽々しく言葉を並べて。
いっそ晴れやかなくらい、心底楽しそうな顔をしている様に。
そう、見えた。




345>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:31:12.10uW//TFY30 (26/36)


「あー、まだダメだな。調子出ねえなぁ、なんかすっげえ外れるんだけど。どっかのバカ共がおかしな真似してくれたおかげだろうな。
っつうことは、これはもう仕っ方ねえよなぁ?」

垣根は白々しく男に尋ねた。
仕留める為に狩るのではない。獲物をただいたぶるだけのようなそんな態度だ。
首を掴まれ、背後の壁と白い翼に挟まれた男は答えられずにうめいていた。
刃物の様に鋭く尖った羽根が何度も男に突き刺さるが、どれも急所は捉えていない。
翼は撫でるような動きで体の上を行き来する。
無数の羽根の先はずぶずぶと浅く深く肉を抉っていた。

「く、クソぉ……」

「おっと。テメェらも大人しくしてろよ。そう焦るな、順番に相手してやるからさ」

そう告げた途端。
ゴシャア! と残りのメンバーも床の上に崩れ落ちた。
垣根はズボンのポケットに右手をしまうとその内一人に近寄っていく。
頭に足をかけると靴底の泥を落とすようにして顔を踏みつけ、上を向かせた。

「テメェは……そうだな。関節一つひとつすり潰してやる、とかどうだ? 人形気分が味わえそうだろ。
安心しろ、あっさり楽にはしてやらねえから。テメェの体が使いものにならなくなるのをただ黙って見てやがれ」

床の上で唸る男には一見、何もされていない様だが。
体に接した床に、わずかな亀裂が走っていた。
『未元物質』の作用による異常な重圧が男の体を押さえつけているようだった。
人間の体は意外にも丈夫に出来ている。
ゆっくりと少しずつ圧をかけていけば、数百キロなんて潰れずに耐えてしまう。

その時。
ごり、と鈍い音がした。
おさえつけられ赤く変色した指が、途中から空気の抜けた風船のようにくたくたになっていく。
目の前で少しずつ、端から順に。
自分の手指がゴム手袋のように変わり果てていくのを男は目の前で見せつけられていた。
大きく見開かれたまぶたの中でがちゃがちゃと目玉が揺れる。
それに見つめられた垣根は。
端正な顔に笑みを浮かべたままゆっくりと首を左右に振った。

「うわぁあああああ! ああああ……あ、お゛ッ」

ぼきん。
今度は、叫び出した男の頬からだった。
片方の顎の関節が「黙れ」と言わんばかりに一足先に砕かれた音だった。

「お望み通り遊んでやるよ。テメェら……俺を満足させてくれんだろ?」

無様に、なす術なく転がる男たち一人ひとりを見下ろして。
垣根は愉快そうに笑う。

「ははははは!! ははははははははッ!!」

バサリと白い翼が一閃する。
タガの外れたような笑い声と共に。
鬱屈とした部屋の中を真っ白な暴虐が吹き荒れた。



346>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:33:58.65uW//TFY30 (27/36)



「気をつけろ。そこのダルマ、それまだ生きてんぞ。せっかく失血なんざで死なねえ様に、余分なパーツを丁寧に削ってやったんだ。
クソつまんねえ一生を簡単に終わらせてやるなよ」

垣根は乱れた髪を手で直していた。
すぐ横で肉塊のお片付けをしている下っ端をイラついた様子で睨みつける。

「そういやすげー腕の医者がいるんだっけ? なあ、そこにそのガラクタ持ってったらそんなんでも治すと思うか? 
そいつら、きっと死にたがると思うけどさぁ」

今度はケタケタと腹を抱えて笑う。
機嫌がいいのか、悪いのか。
一転してはしゃいだ口調はいつもより子ども染みた様に聞こえるが判断はつかない。
声を出すのは垣根一人。
残りの連中は黙々と手順に従って、現状の清掃を行っていた。

「おいおい。お前らぁ……返事は?」

それまで勝手気ままに吐き出されていた呟きが一瞬で冷めたものに変わった。その一言に。
ざわざわざわ、と低いざわめきが広がった。
下を向いて作業していた男達はそれぞれ勝手に呟き返したようだった。
言葉に最低限従わなければ残虐な白い矛先が向けられるとでも思ったのか。
何人かは歯の根が合わないような震えた声だった。
凄惨な室内に広がるなんとも異質な光景だが、いやに上機嫌な垣根は反応があったことに自体に満足したのか。
微笑むと大きく腕を伸ばしていた。

「ったく……いってぇ。え、マジで痛えんだけど」


建物の外に停められていたのは一台のワゴン車だった。
ものはよくあるツーボックスフォードア。ただし、すべての窓に貼られたスモークで中はちっとも見えない。
すみからすみまで真っ黒な車に垣根が近づくと静かにドアが開けられた。
黙って乗り込むと彼はブランドもののジャケットを脱いだ。
どろりとした赤黒い汚れがあちこちついていたがしみついてはいないようだった。
不愉快そうにそれを睨むと、垣根はシャツもまとめて投げた。

「ったく、まだベタつく」

脱いだインナーで髪や顔、首周りをざっと拭うと返り血(その他etcドロドロしたもの)でぐしゃぐしゃに汚れたそれも垣根は放り捨てた。
革張りのシートが汚れるのはこれっぽっちも構わないようだった。

座席に置かれた紙袋を覗くと。
ビニールに包まれた、クリーニングしたての服が用意されていた。
見慣れた、なんの変哲もない、無機質な。
それでも日常の一端がそこにあった。
それを見て垣根は吐き出すように口を開く。

「まだ……だいぶ血腥えな。薄汚え、クソ共の臭いだ」

改めて、噛みしめるような言葉と共に。
右腕、その上に大きく走る傷を垣根は左手でなぞった。
出血は『未元物質』で既に塞がれていたが。
垣根の指は何度もそれを辿っていた。



347>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:43:10.22uW//TFY30 (28/36)


垣根帝督は決して長くはない人生のなかで。
有り余る、などという前向きな言葉でははかれない、過剰すぎるほど多くの経験を――良くも悪くも――積み重ねてきた。
その中でも先ほどまでの時間は、まぎれもなくトップクラスに『ムカつく』ひと時だった筈だ。
それでも、全てが無駄なものだったろうか。

打つ手はないと見えた状況が、覆せると気付いた時のひらめき。手ごたえ。
その為に必要なのはなにか、どうすれば手に入るのか。
窮地にあって少しでも己の勝利に向かってカードを引くだけの、それをかなえる力が彼にはあった。
はびこる現状を塗り替え、意のままに従わせる。
最後に笑う勝者はただ、一人だ。

勝てる。
負けない。

そう理解してからの時間は、次の手へ進めるために一分一秒でも早く過ぎるのを待つだけの退屈なものでしかなかったが。
垣根が得たのはそれだけではない。
怒りをねじ伏せ苦痛と、忍耐を幾度も幾度も重ねた上で解放された瞬間。
復讐をとげたあの味は。たまらなく甘美だった。
乾いた砂に水が次々と染みていくように。
喉を焼くほどの苦く重い甘さが垣根の脳に、腹の底に深く沈んでいった。

剥き出しの神経の束を肌の外に晒す様に。
薬剤で細く鋭く尖りすぎた感覚は余計な情報さえ耐えず頭に送り続ける。
要不要の精査もされず膨大で無作為な電気信号は、ガチョウの腹に流し込まれる穀類の様にただでさえ低下した脳の処理能力を圧迫していく。
少しバランスを崩せば即クラッシュ。
ハンドルからもう手は離せない。余所見をしている暇なんてない。
そんなギリギリまでアクセルを踏み続けた時のように追いつめられていた。
人間は本来ならきわめて強い緊張と恐怖を感じるように出来ているが。
同時にそれを克服し自滅を回避するための機能を備えている。

そんな危うい高揚感は体の中にまだ残っていた。
胸を打つ鼓動の高まりも、全身をめぐる血液のありえない熱も。
呼吸を忘れるほどの苦悶も。
得た一切の信号をみな快楽と錯覚するほど。


何より。
壊すことが、愉快だった。
思いついた暴力をただそのままに。
制限なく思い切り振り下ろすことが。
果物を剥ぐように、潰すようにして人の肉や骨を壊すことが。

タノシカッタ。

他のことが、頭の中の余計なものが。
チカチカ瞬く愉悦に押しのけられていく。
ぶつん、とスイッチを切り替えるように頭の裡が白く白く一色に塗りつぶされる。
タノシイからしているのか。しているのがタノシイことなのか。
どちらが先かわからないニワトリとタマゴのような問いはいつしか変わっていた。その境界もあいまいになっていく。
みずから尾をくわえた蛇のようにそれはぐるぐる回っていた。
今も、昔も。
わかっているしっていることがひとつあった。
善い悪い快不快メリットデメリット、正しいか否か。
それはみな一過性のゆらぐ価値観だ。見ようによっていくらだって変わってしまう。

そんなものより確かな一点を求めればいい。
単純な答えを掲げろ。

楽しんでしまえば、それでいいのだと。



348>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:48:11.86uW//TFY30 (29/36)


いけない、またタノシクなってきた。

「ふ、くくくっ……はははは、はははははッ!」

落ち着かない様子で垣根は膝を叩いていた。
おかしな高揚感はまだ体に残る薬品のせいなのか。
笑いが止まらないのはどうしてなのか。
ただただ、愉快だからなのか。

それだけ、なのだろうか。
むき出しの肩を掴んだ垣根は。
細い体を抱きしめる様に、背中を丸めて声を上げていた。

「あれ。お前……見ない顔だな」

ひとしきり笑い終えた垣根が顔を上げると。
声を掛けられた運転席の男はビクゥ! っと肩を震わせた。
乗り込んできたお偉いさんが突然ものすごい勢いで爆笑していたら、それだけでも充分恐怖の対象だろう。
男はこわごわとした様子でそうですかぁ、と尋ね返した。

「まぁ、下の奴らなんざ一々覚えちゃいないけど。でも新入りだろ」

若い男に所属を告げられると。
垣根は目を細めた。

「ふーん。そっか、最底辺の補充用かお前」

首を傾げて少し、考える様子の後。
垣根は前の座席に身を乗り出すと急にハンドルを切った。
ドライバーは慌ててブレーキを踏もうとしたが邪魔をされてなかなか止まらない。
その間も垣根がハンドルを切り続け。
騒いでいたドライバーが静かになる頃には車は道を外れて裏通りに停められていた。
辺りは暗く、人気もない。
真っ黒な車体は闇に溶け込むようだった。

「ひっ……あぶ、危ないだろぉ。何なんだよぉ」

「なぁ」

あくびを一つ。
首を鳴らして。
垣根は更に詰め寄った。



349>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:55:02.26uW//TFY30 (30/36)


「時間あんだろ。どうにも調子が戻らねえし、眠気覚ましだ。ちょっと付きあえよ」

何がなんだかわかんねえ、と言いたそうにまばたきした若い男は。
それでも何とかこの事態に対応しようとしたのか。
上着のポケットから携帯電話を取り出していた。

「あのぉ、予定だと、あんたを拾ったらまっすぐここに送れって言われてんだけどぉ」

「あのなぁ。俺は誰だ? そんなもん、俺がルールだろ。違うか?」

仕事内容を知らせるメールが表示された携帯の画面を見せられて。
ため息をついた垣根は勝手にサイドブレーキを引き、勝手にキーを抜いてしまう。
彼の態度に苛立ちや怒りは感じられなかった。
残念だ、と言いたげな憐れみに似たものが含まれているようだった。
諦めきった目をした垣根は肩をすくめて首を振る。
実に。
芝居がかった仕草だった。

「お前の仕事にはこれが無いと困るんじゃねえの? で。どうすんだ。そこまで言わねえとわからねえほど救えねえ馬鹿なのか。黙って俺に、従えよ」

ちらつかせたキーを握りこむと垣根はそこで再び笑った。
獰猛な笑みを向ける暗部組織のリーダーに、昨日今日入ったばかりの下っ端が歯向かえるだろうか。
答えは一つ。二択のどちらを選んだところで、恐らく結果は変わらない。

「なにをすんだよぉ…?」

「決まってんだろ。タノシイことだよ」

怯えきった男の姿を前に。
そう告げた垣根は楽しげに唇を舐めた。



350>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 02:57:14.93uW//TFY30 (31/36)


「なんで、なんで俺ぇこんな……こんなことっ…しに、来たんじゃぁ」

「うるせえ。想定外はこっちもだ。あー、まだ頭いてえんだけど。あとで調整すんのに面倒だから人の体に勝手におかしなもん使ってくれんなっつうの」

「リーダー? ちょ、あの俺本当……ほんとこんな趣味じゃぁないんだってほんとに」

「はいはいお前は大嘘吐きだな。せめてもう少し我慢してから物言いやがれ。なんだこのみっともねえザマは。
はぁ……やっぱさっきの、殺しといてやりゃよかったか? 死体にもなれねえのって悲惨だよなあ」

「聞いてねえ……っこんなの、え。待て待てほんとに?」

「いってえな。ったく、傷が開いたらどうしてくれんだよこの馬鹿。どうせならこっち押さえてろよ。ったく、まだ……グラつくな」

「まずいってまじかよぉ、うっそぉ……なんだこれ……っ」

「うるせえっつってんだよ聞こえねえのか! テメェの声は随分耳障りだな? 
ああ!? 雑魚は黙って、俺の、好きにされてりゃあ……んっ、いいんだよ……クソが!!」

「やばいっ……これぇやばいッ、らめらってぇ」

「静かにッ…して、ろっつうの……はぁ。殺すぞ?」

そう言ったきり、それまで一方的に口を動かし続けていた垣根も口を閉じた。
鈍い音を立てて。
しばらくの間車内は静かに。それでいて騒がしく揺れていた。




351>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 03:00:25.95uW//TFY30 (32/36)


「おい。車もう一台よこせ」

繋がった瞬間に垣根はそう下した。
相手は考えるより一瞬早く、それに応じた。
時差などない通話の間に短い沈黙が挟みこまれる。

『はい。ええと……確かこの前入ったって新人が向かった筈ですけど。ナビ通りならもう着いてる頃ですがどうしました。何かトラブルでも?』

「そうじゃねえ。運転もド下手クソだったからさ。ダメだな、ありゃ全っ然使えねえよ」

頭を掻くと垣根はちらりと後ろに目をやる。
停められた車は派手にボンネットが歪んでいた。
そのまますこし手を加えればすぐにスクラップに出来そうだった。
中のものは片付けた方が良さそうだが。

『じゃあその携帯から現在地を送ってください。すぐ代わりを用意させます』

リーダーの要求に応じると組織の構成員は彼の名を呼んだ。
不安や気遣いは感じられない、単純な疑問の声だった。

『それにしても一体何があったんです? こんな時間に突然連絡よこしといて、こっちが幾ら聞いても電話のあいつ何も言わないんですよ。
垣根さんが単独で出てるから迎えを出せばいいの一点張りで』

それを聞いた垣根の頭に突然、と言うのが少し引っかかった。
垣根と連絡が取れないと気付いたのはいつだ。
行方が追えなくなった時、『スクール』ではそれを捜索しなかったのか。
正規構成員でさえ、急に下部組織を動かした理由を知らされていなかったらしい。
まあ。
暗部組織なんてのは後ろ暗い人間の寄せ集めだ。
関連した組織も含めて一枚岩とはとても言えない。
詳細はともかくリーダーが行方不明、何者かに捕まった、なんて失態が組織内で不用意に広まるのを避けたのかも、しれない。

今は細かい思考の整理が出来る様な、そんな余裕は垣根にはなかった。
頭も体もぐちゃぐちゃで疲れきっていた。
後で考えればいいことだ。
そう疑問を断じると。
垣根は無駄にストラップをじゃらつかせた趣味の悪い携帯電話を肩で挟んで近くの建物の壁にもたれた。
再び袖を通した皺だらけのシャツが一層汚れる。



352>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 03:02:33.03uW//TFY30 (33/36)


「別に気にするほど大したことじゃねえよ。はー、しっかし俺も何してんだろな。らしくねえの。けど頭は少しマシになってきたかも……」

まるで。
そうしないといけないように。
何かに急き立てられる様に垣根はずっと口を動かし続けていた。相手のことはかまわない。
頭の中の雑音を散らすノイズ。代償行動の一つ。
独り言も気を紛らわせる作業だ。
壁を打つような。ただ地面を蹴るような行為でも無駄にはならない。
その感触から、自分が立っていると感じることが出来ればいい。
知覚できる現実が当人の世界の真実だ。
その足元がどれだけ汚れ歪んでいるかはまた別の問題になる。

『なにかしたんですか。似合わないこと』

「いや……一仕事終えて一服、みたいなもんかな」

無駄な雑談に応じる声に。
右のこめかみから側頭部を指で撫でながら垣根は答えた。
どくどくと指の下に流れる音は少しくらい落ち着いたかもしれない。

『垣根さん煙草なんてやりましたか?』

「だから。気が紛れっかなーって。効果はどうだか。わかんねえけどさ」

別に未成年だから、と言う社会通説一般常識に従ったわけではない。
なぜ好き好んで自分のコンディションを外的要因から乱されなくてはいけないのか。
垣根はそれが今まで疑問だったが。
もしかしたら息抜きやリラックスと言う面での効果だってあるかもしれない。
タバコとは随分とものは違うが、おかしな思いつきでもストレスのはけ口として役立つ期待をしていた。つもりだった。





353>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 03:05:32.79uW//TFY30 (34/36)


かといって食後の一服と言うのはどうか。
口直しのデザートと言うにも悪食過ぎるし酷いものだった。
八つ当たり、スケープゴート、いずれにしてもくだらない真似をしたのだとは、垣根も自覚していた。
そんなことでは満たされない。
屈辱はすすげない。
だが。
それをどう解決すればいいのか。今の垣根にはわからなかった。

垣根の実状も思惑も会話の意図さえしらない構成員はスピーカーから聞こえるため息をどう受け取ったのだろうか。

『お疲れですか。珍しく』

「ああ。あとな、すげー……喉が渇く」

では運転手に何か持たせます、と付け加えて通話が切れた。

過ぎてみればふり返ることもないくらい短い時間だった。

車を待つ間。垣根はふと頭上を見上げた。
分厚い雲に覆われた空は暗かった。
その上には月が出ているだろうか。
だが、垣根の目にはうつらない。
ならばそれは無いのと同じだ。それに遥か彼方、天上の意志は地上に立つちっぽけなものの事情には構わないだろう。
ただそこにあるだけ。晴れようが荒れようが変わらない。

つまらないことにいつまでも足を止め、立ち止まってはいられなかった。
今回降りかかったのは垣根にとって巨大な災厄ではなく小さな火の粉程度だった筈だ。
寝覚めの悪い、下らない。
だが。大したことのない問題だ。
垣根帝督に敗北は必要ない。どれだけその身を貶めても。
必要な二文字は、自分の腕でつかみ取る。
だから。
そんなものはきれいさっぱり忘れてしまえば、またいつものようにつまらない日々が帰ってくると。
その時の垣根は思っていた。
それ以外何があるかなんて。考えもしなかった。





突然別れを告げたありきたりの、昨日までが。
クソみたいな笑顔でやってきて片手を上げて挨拶する。
こんにちは垣根帝督、新しい『今日』がやってきましたよ。

ふざけるな、反吐が出る。



少年の日常は、その時一度、失われた。






354行間 蛇足・或いは  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 03:08:11.50uW//TFY30 (35/36)



じりじりと舐める様な強い日差しの下で。
少女が二人、並んで歩いていた。
下校途中だろうか二人以外にも道には制服姿の生徒たちがあふれていた。
ファストフードの新商品、なんだか舌を噛みそうな名前のドリンクをストローでかき回していた少女は残念そうに肩を落とした。


今朝は何だかとっても萌え滾る夢を見たはずなんですけど、知らない人が出てきたんですよ。うーん。なんで目がさめるとちゃんと覚えてないんでしょうね


しらない人が夢に出てくるなんてあるんだ?あははーもしかして運命の人だったりして。
あ。ねえそこのお花かわいいねえ。これなんて言うの?


これですか? シロモッコウバラです。これは棘がないんですよ。えっと花言葉は、『夢は叶うもの』です


テキトー言ってない? 本当かな……そうそう今度の都市伝説も夢の話なんだよね。なんでもAIM拡散力場の干渉で他人の――




雑踏と街の喧噪にかき消されながら少女たちの他愛のないおしゃべりは続いていた。





355>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」でした  ◆q7l9AKAoH.2015/07/02(木) 03:14:23.17uW//TFY30 (36/36)


ドーモ。


>>200「ガチホモキメセク輪姦垣根」

モブマシセリフマシマシトウカチョモランマエロスクナメチュウニオオメカキネツラメ

とりあえずゴールしていいか
じゃあまた


356以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/02(木) 08:01:48.685R/ytMyAO (1/2)

乙、すげー乙
読み応えあってふっつーに面白かった、>>1の技量やべえ。
というか感服過ぎて何ホモ書かせてんだよって感想が一番にくるわww
マジで乙ww


357以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/02(木) 14:04:13.72eUF+Ye4DO (1/2)

きてた!
まさか本当に書ききってくれるとは
激しくおつ
ただもしもしから読めないんだけどどしたらいい?


358以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/02(木) 17:10:01.025R/ytMyAO (2/2)

>>357
まとめ速報をgoogleで挟め、鳥ググればすぐいける


359以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/02(木) 19:12:35.72eUF+Ye4DO (2/2)

アヘ顔ダブルピースだったらどうしよと思ったけどシリアスやばいね
エロでもよかったしエロもみたい
垣根最後どうなった?すげー気になる
>>358ありがとう愛してる尻Ass使っていいよ


360以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/02(木) 20:48:59.078i2/FQmo0 (1/1)

突然の伊東ライフww
にしても電車の中で読んだら拷問だった。カキネクンってこんなに可愛かったのな。乙です乙です


361以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/03(金) 13:41:38.75wy7mRZUMO (1/1)


モブがむかつくはずなのに、なんかキャラがいいなこいつらw
脇役なのに口調とかキャラ固まってんのがなんかそれっぽい
肝心のエロシーンがありませんがどちらでみれますか(迫真)


362以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/03(金) 16:33:49.25pDucOzIAO (1/1)

愛も尻も垣根以外はノーセンキューだ

次安価201じゃろ?渾身デレじゃろ?
なんかホモい目で見そうで怖いから払拭出来そうなのオナシャス


363以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/03(金) 23:49:11.96dM5JKpTvo (1/1)

てゆーか何気に来月一周年?俺男だけど>>1の事を愛してるよ


364以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/04(土) 11:00:21.14zIPhxRB4O (1/1)

モブとエロい事のプレイ内容の詳細よろしくお願い申し上げます。


365以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/04(土) 22:45:51.14sImcbIQZ0 (1/2)

まじにホモネタ書くとか乙
価値にこだわるのがそれっぽいんだけどつらい
次は笑えるのがいい


366以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/04(土) 22:47:12.52sImcbIQZ0 (2/2)

勝ちだすまん


367以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/05(日) 17:52:47.42Dog3kXyvO (1/1)

初春の夢かよw
この集団デパートだっけ。幼女監禁してた暗部のやつ思い出す。
安価もいいけどメインのスクールのやつもよろしく。ここのはほのぼのしててすきだ。
1もすきだぞ。


368以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/06(月) 15:20:50.46X5O99CPJ0 (1/1)

>>367 
初春の夢に垣根がされた事が出てきた予知夢っぽいのじゃないの
未元物資の中身とかリアルでしょ


369超能力者が鎮守府に……? ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:15:15.05AU4lR2f10 (1/14)



垣根「お前、またそれやってんのか。楽しいか?」

ゴーグル「艦隊っち、垣根さんもやってみます?」

垣根「どう言うのなんだ」

ゴーグル「よくあるブラウザゲーっス。ユーザー登録さえすればあとは基本無料っス。序盤にレア艦やレア空母並べてもコスト高で運用出来ないんでガチャ建造に課金は必要ないっスよ。資材も弾薬も放っとけば勝手に増えるんで問題ないっス。低レシピと一面周回してとりあえず艦の数を揃えて隊組んでください。序盤は泥のダブりはそのまま取っておいてくださいね。後、艦隊のフラッグシップはなるべくスキルが有利な方が――」

垣根「とりあえず日本語喋れよ」

ゴーグル「実際見た方が早いっスかね。えーっと、色々充実してくるとこんな感じになります。マイペ、母港本部の内装とかも変えられたりしますね」

ゴーグル「この隊の旗艦(フラッグシップ)が秘書艦って言ってここの、ホーム画面に表示されます。ボイス付きなんで色々喋ってくれるんスよ。友軍ってフレンド機能で共有出来るのもこのキャラっス」

垣根「喋んの」

ゴーグル「キャラによってセリフにも個性がっスね。あと結構史実ネタも充実してるらしくて萌えキャラじゃなくてそっち派のマニア受けもいいみたいっス。切り替えがここで……」

カチッ 提督!御用ですか!
カチッ てーとく
カチッ ……しれいかんさん
カチッ はぁい! だぁりん!
カチッ よお! ていとく!
……

垣根「……こいつら馴れ馴れしいぞ」

ゴーグル「垣根さんすいませんそこは仕様なんで我慢してください。断じて呼び捨てにしてる訳じゃないっス」





370うん。また小ネタなんだ ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:23:02.59AU4lR2f10 (2/14)


垣根「ん? これは?」

ゴーグル「あー、これは敵陣のボスキャラっスね。深海棲◯◯姫シリーズ、実はこいつらも色々裏設定があって……どうかしました?」

垣根「いや……何かこのデザインに妙な親近感があるんだけど」

ゴーグル「え。この中二御用達カラーリングモノクロ反転一目でわかるザ・闇落ちみたいなキャラデザの一体どこに? 垣根さんどっちかっていうと闇属性っつうか光系の見た目っスよね」

垣根「何でだかわかんねえけど。こいつらって口ん中も黒いのか?」

ゴーグル「どうなんスかね」



垣根「とりあえずタダでやれんのはいいとして、ちまちまレベル上げんのが面倒過ぎるんだが」

ゴーグル「最初はそうっスよね。そこは作業ゲーの仕様っつうか、でも段々パーティの幅が出てくると楽しいっスよ? DVDとかかけます?」

垣根「何だそれ。時間潰しのゲームの時間潰しって意味あんのかよ。飽きるぞ。飽きる……あー、もう飽きた!」

ゴーグル「じゃあ……俺のところにあかぎっちがすげー余ってるんで一体トレードします? 火力上がればもうちょい経験値のいい面に低レベ連れてっても安定しますよ」

垣根「なんで同じの山ほど持ってんだ。え、ページ半面枠埋まってるぞ」

ゴーグル「イベントとかどの編成でも使えるようにあえて未覚醒のを取ってあるんスよ。一応レア五の子なんで……あと一〇は少なくともプレイヤーランクを上げてもらわないと、コスト不足でまともに艦数揃えた隊が組めないんスけど」

垣根「じゃあ上がったら言うわ。次もログインして、そん時覚えてればな」

ゴーグル「でもこれで垣根さんも艦っち仲間かあ。下部組織にも布教したんであと三人居るんスよ」

垣根「そんなにして楽しいか? 別に複数でやるようなもんでもねえだろ」

ゴーグル「そりゃそうっスけど。みんなでおんなじ話で盛り上がれるじゃないスか。あ、SNSでゲーム用のグループもわけてあるんでよかったら入ってくださいっス。こっちが個別でRPGのと、あとソシャゲと……」

垣根「お前組織の奴らと何してんの」




371 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:28:37.52AU4lR2f10 (3/14)

ドーモ
着任したみたいです。一応。
艦隊っちです。艦これはやったことないんでしりやせん
垣根提督ってしたかっただけ


>>312
昔みさきちが腐ってるSSがあったじゃなぁい?
被害力がなかったからいいけどぉ、洗脳能力でそっちの趣味だと恐ろしいわぁ
食蜂「『強性操作(カテゴリー801)/性的指向対象は同性である』あなたたち、抱き合いなさぁい☆」
とかつまりそういう?こわい

>>313
「超能力者」でやってるから女子軍もふざけあってるよね。御坂は両手に花にきまってんだろ!ばいーんぺたっばいーんだよ

>>314
それだ!

>>315
ドーモ
ありがと>>1も小ネタが好きでね

>>316
でしたねスマンね

>>317
そんなに?!つうかおそれおおくね

>>318
このスレでよければつかんでいなされ つ藁
1もいろいろまってる。一番は原作、派生作品の露出ですよねたしか今日発売日ですよねとうぶん読めませんがね(淀んだ目)

>>319
まてまだあせるじかんじゃない



↑の流れを汲んで個室サロンでカラオケ、ダベりからのホモごっことかしてた筈の暇な日の超能力者たちも落としましょうかね
コピペ踏襲ネタ



372 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:31:56.79AU4lR2f10 (4/14)



御坂「ホモごっこ……って何よそれ」

垣根「なんつーか。どっかでそんなことしてはしゃいだ馬鹿がいて、すげーウケたらしい。じゃあ真似してゲイっぽいこと言ってみようぜ、みたいな流れになってさあ」

食蜂「そんなの面白いのかしらぁ?」

麦野「つうかオマエは組織の人間と何遊んでんだ?」

一方「やだァ、早く挿れてェ?」

垣根「一方通行、お前……いつももっと上手にねだれるだろ?」

麦野「ぷっ」

一方「こォか」

垣根「そうそう。ありえねえよな」

麦野「なにそれおっかし……っ」バンバンバシバシ

一方「ツボにはまりすぎだろ。テーブル割れンじゃねェのか」

御坂「あっ、あんた達ねえ! そんなごっこ遊びがあってたまるかーっ!」

食蜂「全然手で隠せてないわよぉ御坂さん。こう言うのは慣れてるんじゃないのぉ。それとも少年力の高いのがお好きなのかしらぁ?」

麦野「あーっはっはっはっは!!……はーおっかしかった。おいおいお嬢様ったら何カマトトぶってんのかにゃーん?」

御坂「違う違う! 男子ってこう…直接的にネタにするの? まだ黒子のがマシじゃない…って言うかカマ? 何?」

削板「?  何を入れんだ? 気合か? 根性か?」ぐっ

垣根「わからねえんならそのままにしとけ。拳を作るな」


373 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:38:27.89AU4lR2f10 (5/14)



麦野「しっかしまた、上手いことガチっぽいのをやったよなぁ」バシバシ

一方「……ガチ根ゲイt」

垣根「やめろ馬鹿。叩き落とすぞ」

一方「はァ。随分座り心地の悪ィ椅子だ」

垣根「そうやって人の上でふんぞり返ってテメェが格上気取りかぁ? いい御身分だなあオイ」

一方「事実だろォが」

麦野「なーんだアンタら実は仲いいんじゃない? 二人はホモだちって……ふふふ」

食蜂「ぷぷぷ……でもなかなかの傑作力ねぇ。こんな面白いツーショットはそうお目にかかれないわぁ」

垣根「食蜂。お前リモコンこっち向けんなよ? 俺は自分の敵には容赦しねえぞ」

食蜂「何よぉ。冗談力が通じないわねぇ。大丈夫よぉ、何かあっても記憶は消してあげるからぁ」

一方「オマエの頭の電気信号逆流させてやろォか」

御坂「えっ。食蜂、アンタってそう言う……」

食蜂「あのねぇ、私の『心理掌握』はそんなつまらないことには使わないわぁ。『心理掌握』は精神高潔で高尚力のたかぁい私だからこそ許された能力よぉ? 価値を貶めてどうするのよぉ」

麦野「でもその能力だと派閥どころかなんでも好き放題でしょ。逆ハーでも奴隷牧場でも、ムカつく奴を炙ったりとかさあ」

御坂「げ」

垣根「何でお前ってそう、露骨に品がねえんだよ」

削板「牧場であぶって…肉か? でもこいつは人間の頭を操作するんじゃなかったか?」

一方「そォだな。ブタや牛っつうのは偉いよなァ。オマエは根性の曲がった話に混ざンなくてもいいぞ」

食蜂「もう。麦野さんたら見かけ通り下劣力高すぎだゾ☆」

麦野「何だろうね……コイツたまにものすごくムカつくんだけど。ちょっと弾いてみていいかにゃーん」

御坂「気にしなくてもいいんじゃない? 私もよくあるから」

垣根「お前ら、攻撃力皆無のヤツに全力で相手すると悪者でしかねえぞ。少しは加減してやれ」

一方「俺らが言うことでもねェけどな」

削板「そう言うのはな。正々堂々タイマンでやろうぜ!! よっしゃ、表出るか?!」

食蜂「えぇ〜これだけ居て私の味方力ゼロなのぉ?」



374 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:42:12.11AU4lR2f10 (6/14)



席順 

麦 御 食


垣 一 削



御坂「え。さっきの、私たちもするの?」

垣根「何だよ。次はそっちの番じゃねえの」

麦野「まぁ確かにそっちだけじゃヤリ損よねえ」

一方「もォちょい言い方あンだろ」



麦野「それじゃあ今夜はたぁっぷり啼かせてやろうかにゃーん。ねえ? み・こ・と?」

食蜂「あらぁ。私も御坂さんのツンツン顔を蜂蜜色に染めてみたいわぁ♡」

御坂「あはは……ジョークなら、いいんだけどね」

垣根「しっかし……同じ超能力者でも、ここまで違うもんか」

一方「どこ見てンだよ」

垣根「御坂、御坂」ちょいちょい

御坂「何?」

垣根「ちょっとそこ代わってくれよ」

御坂「いいわよ」


席替えタイム

麦 垣 食


御 一 削





375 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:45:18.42AU4lR2f10 (7/14)


御坂「うわぁ」

一方「なァーンか途端にいかがわしい店みたくなったなァ」

垣根「超能力者を侍らせるクラブとかあったらすごそうだな」

食蜂「『みーちゃん』を御指名ありがとうございまぁす。サービスしちゃうゾ☆」

麦野「お客さんいい男ね。もしかして同業?」

垣根「バレたか? って誰がホストっぽいんだよ」

一方「いや。どォ見てもオマエだろ」



垣根「よっしゃ。何でも好きなもの頼めよ。支払い? んなもん気にすんな」

食蜂「お兄さん太っ腹ぁ☆ うれしいわぁ。じゃあフルーツの盛り合わせとぉ」

一方「DXチキンバスケット。ソースはハバネロにしろ」

御坂「じゃあ、私はオムライス」

垣根「何で俺の横に座ってもねえお前らが真っ先に注文してんだよ。せめてシェア出来んのにしとけ」

一方「さっき上に座ってやったろォが。充分過ぎる釣りが出ンだろ」

麦野「やだ。シャケ弁置いてないじゃない」

垣根「こんなとこに普通ねえよ」

一方「幕ノ内じゃダメか」

麦野「邪道ね」

御坂「へえーお弁当はあるのね」

削板「おっ、垣根のおごりか? ありがとな! よーし、根性入れて食うぞ!!」

垣根「はぁ。そいつに端末独占させんなよ?」




376 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:48:02.06AU4lR2f10 (8/14)



食蜂「やだぁお兄さん、おさわりは別料金よぉ?」

垣根「ちょっと当たった程度で金とんのかよ」

一方「払えばいいってのもどォなンだ」

麦野「ちょっと操祈大丈夫だった? こんな野郎に肩なんて触られて」

食蜂「平気よぉ。もぉ、沈利さんってばぁヤキモチ焼き屋さんなんだからぁ♡」

御坂「あ。それまだ続いてたの」

垣根「そう言えばお前ら女子校なんだよな。本当にあんの? こう言うの」

御坂「それは、無い……わけじゃないけど。でもでもほとんどの人は普通よ?!」

食蜂「御坂さんには熱烈力全開なファンがいるのよねぇ」

麦野「ふーん。じゃあ学校で『お姉さま』とか呼ばれちゃってるわけ?」

食蜂「そうそう。モテる美人は大変よねぇ?」

一方「へェ」

御坂「なっ何よお。馬鹿にしてんの?」

垣根「いやー。すげーな?」

削板「お前らぁ、よってたかっては根性が足りてねえぞ!!」

食蜂「ひゃん?!」

麦野「いきなり怒鳴るんじゃねえよ。何、アンタまだ居たの」

御坂「これだけ存在感があるのに、そう言えば静かだったわね」

削板「料理が来たのに誰も食わねえからメシくってましたっ!」

垣根「あーっ! エンデュミオンバーガーがすでに半壊してるじゃねえか」

削板「うまかったぞ。食うか」

一方「あァ、一番下はもらったぞォ」



377 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:51:53.12AU4lR2f10 (9/14)


削板「お前らの話は聞いててもよくわかんなかったけどな。つまり麦野も食蜂も御坂が大好きで、垣根だって一方通行が好きなんだろ?
数字の順番だけじゃねえ、コイツはすげえヤツだってビシっと感じてんだよな!!」

食蜂「なーに言っちゃってるのかしらぁ」

麦野「誰がだよ。死ね。面白オブジェに変えてやろうか」

垣根「キモいこと言うな。ばーか、死ね。愉快な死体になりてえのか」

一方「お、この肉うめェな」

御坂「限定ゲコ太コースター付き? いつの間にこんなメニューが……!」



削板「うるせえ! 同じ能力者としてお互い認め合える存在ってのはそうないんだからよ。
お前らへらへら誤魔化してないでてめぇの気持ちに素直になりやがれ。もっと根性、入れろよ!!」

麦野「お、おう。ついうなずいちゃったわ。何コイツ」

垣根「無駄に暑苦しいよな」

御坂「べっ、別にそう言うのは……間に合ってるって言うか……」

食蜂「超能力者って野蛮力の高い人ばっかりよねぇ」

一方「……そォ言うオマエはどォなンだァ」

削板「俺か? 俺はお前らみんな好きだぜ!! 根性のすわった、いいヤツらだ!!」ドバーン!!

垣根「あ。ダメだこいつとは話があわねえ」

麦野「同感。私らとは相性悪すぎね」

一方「体育会系青春ノリの元暗部とかシャレになンねェよ」



378 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:54:17.77AU4lR2f10 (10/14)



御坂「いやー、ここまで突き抜けてるといっそ清々しいわね……って、食蜂下向いてどうしたの?」

食蜂「なっ何よぉ。私が御坂さんのことどぉ思ってようが関係力ないでしょぉ?」

御坂「は?」

食蜂「御坂さんはいいわよねぇ。いつも元気で、健康的でぇ。動物的でぇ、わっ我儘力は高いしぃ……ヒック」

一方「なンでアイツ半泣きなンだ?」

食蜂「みじゃが……グスッ、ど」

御坂「ちょっと待って食蜂! どうしたのよ落ちついて話し合いましょう?」

食蜂「……みさきちゃん、って呼んでぇ?」

御坂「 」

麦野「 」

垣根「いや、引きすぎだろ。何だその面。麦野、お前女としていいのかそれ」

削板「おう! なんだお前ら青春してんのか? いい根性だぜ!!」


食蜂「うっ、グスッ……ふぇえ」

一方「あーァ。御坂が泣かしたぞ」

御坂「えええ?!」

食蜂「ひっく、御坂さんがいじわるなのぉ…好悪付与、印象操作ぁ……」

垣根「おい待て何か妙だ。リモコン持たせんな」

麦野「止めなさいって。それ御坂には効かないんでしょ?」




379 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 02:58:28.61AU4lR2f10 (11/14)



御坂「あー。はいはいよしよしいいこいいこ頼むから大人しくしてなさいよ?」

食蜂「えへへぇ。こっちはふわふわねぇ」

麦野「はいはい。ねえ、なんなのこの子。明らかに変でしょ」

一方「その系統の超能力者が精神操作はされねェだろォし……オマエら、まさか酒は頼んでねェよな?」

垣根「超能力者は全員学生ってのは常識じゃねえか。んなバレたら一発で廃業にされそうな部屋に酒なんざ向こうが持ってこないだろ……いや」ハッ

麦野「おい。何でこっち見た」

垣根「お前コンビニでも問題なく買えそうじゃん」

麦野「テメェに言われたくねえよ!!」

垣根「はぁ? 酒なんて飲んだら気軽に能力使えねえだろ。飲んだら飛ぶな、飛ぶなら飲むなって言うだろうが。
ちょいとよそ見程度で起きちまう事故の規模が、俺たちは車の比じゃねえんだぞ。そんな馬鹿が許されんのは無能力者ぐらいだろ」

麦野「普通は飛ばないけど。まあ確かに狙いはマズくなるわよねえ」

御坂「子どもがお酒はだめってぱ、親に言われなかったの? ……って、ちょっとこれ何とかして!」

食蜂「ほらぁおいしいわよぉ? あーんしてぇ」

削板「そう言やフルーツポンチみたいなのがやけに消毒薬臭かったな。根性出しても流石に食えなかったぞ」

一方「あァこれだな。ン……ガッツリ酒の味がすンぞ。ちょっとそいつ貸せ」

食蜂「なによぉ触んないでよぉ」

一方「血中アルコール濃度が〇.〇八はあるなァ。立派な酔っ払いだ。ったく、もしガキが食ったらどォなってたか」

麦野「ビール一、二本空けたくらいか。ああ、確かに強いキルシュがそのままぶち込んであるわ。マチェドニアにしてもやり過ぎ。バイトのミスじゃないの。まあ……味はいいわね」

御坂「……ねえ、コイツって」

垣根「しっ。黙っとけ」



380 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 03:02:25.23AU4lR2f10 (12/14)



削板「なんだ根性の抜けた店だな。食蜂は大丈夫か?」

食蜂「うふふーみぃさかさんつかまえたゾ☆ ぎゅー☆」

御坂「この通りぐでんぐでん。ちょっと、重いわよ」

垣根「いざとなったら俺とお前で押さえるか。洗脳ってのは『反射』出来るもんなのかわからねえしな」

削板「お前らは俺のことを普通じゃないと思っているようだが、根性で何とかなるだけで怪我もするし骨も折れる生身の人間だからな。
あと根性あるやつの洗脳はまだされたことがないから、俺にもどうなるかはわかりません!!」

垣根「よし。今すぐそいつの鞄とリモコン全部取り上げろ。ついでに腕も縛っとけ」

食蜂「だ〜めぇ〜。これはぁ、みいちゃんのだいじだいじなのぉ。それにみんなぁ仲良くしなきゃダメなんだゾ? よい、しょ」

御坂「いい加減に……しろーっ!」ビリビリッ

麦野「危なかったわね。でも食蜂落ちたわよ、ってアンタどうしたのよ一方通行、フラフラじゃない」

一方「……気持ち悪ィ」

垣根「一口でそれか? 耐性なさ過ぎだろ!」

麦野「本当に虚弱ねコイツ」

御坂「顔どころかあちこち真っ赤じゃない。平気?」

一方「ン……駄目だなァ。御坂が四人に見える」

麦野「それって少ないくらいじゃないの?」

削板「何でだ」

麦野「……ただの冗談だっての。説明なんかしたら笑えないわよ」

垣根「あー、もしもし。ええ。実はそちらの料理に問題がありまして至急お話ししたいことがあるんですよね。こちらはプラチナボックスの部屋番――、そうだよ。こっちは超能力者だ、とっとと責任者と担当よこせコラ」




381 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 03:06:06.97AU4lR2f10 (13/14)



削板「大丈夫か一方通行。座れ、水飲め。根性入れるか?」

一方「頭、割れそォ……左右に」

削板「なんか背中から黒いの滲んできたけどどうすりゃいいんだ? このままさすってたら消えるか?」

垣根「それは根性でどうにかなるもんじゃねえ。そいつもそのまま落とせ。ここを更地にしたくなけりゃ、大至急だ」

削板「任せろ。よっこいせ!」ゴシャッ!

御坂「……ねえ、大丈夫? 今嫌な音しなかった?」

削板「峰打ちだ安心しろ」

垣根「でもさ、峰打ちでも骨くらい折れるんだろ」

麦野「こいつの馬鹿力にモヤシ体型じゃ……最悪、全身イッてんじゃないの」

御坂「でも……ああ、いざとなったらゲコ太先生がいるわね」



マネージャー「お客さま、大変お待たせいたしました……本日はまことに……」

店員「申し訳ございませんでした!!」

御坂「さーて。おかげで色々大変だったのよねえ。今から聞かせてあげるけど」

垣根「こっちは二人やられてんだ」

麦野「それなりの落とし前はつけてもらおうかにゃーん」

削板「物騒なこと言ってるが安心しろ。こいつらだってきっと話せばわかるさ。お前ら二人の根性は見届けてやる」

麦野「おい」

垣根「削板」

削板「ん? ああ!! やいっ、歯ぁ食い縛れ! その根性叩きなおしてやるぜ!! よーしこうだな?」




食蜂「ふふふ……、りー……そんなに走ると転ぶわよぉ」スヤスヤァ

一方「……ボケッとしてると置いてくぞォ?……と……だー」クカァ




382 ◆q7l9AKAoH.2015/07/10(金) 03:08:39.07AU4lR2f10 (14/14)



お酒は20歳になってから!!
御坂家では大人になっても異性がいる時に酒は飲むなってきつく言われてそう

あっちこっちで大事にされてる御坂家のいもうとさんだけど実は御坂遺伝子には相当なモテ法則因子があるんじゃないのか。上条さんにはそげられてるだけで
あの子は冥土帰しのところにでも入ればお見舞いくらいは出来てそうなんだけどね?

それではみなさま良い発売日を
じゃあまた


383以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/10(金) 12:15:13.41xxo4VPhHo (1/1)

俺も艦コレ知らないけど、垣根はWW1時第二位の海軍国ドイツ帝国が似合うかも。最後第一位の英国に敗けるし


384以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/10(金) 12:57:39.09rKnvewoAO (1/1)

深海棲艦にシンパシー感じんなやwwww
というか色々ツッコミが追いつかないがこれだけは言わせてくれ、
酔っ払いみさきちかわええええええ
ありがとう!ありがとう!!


385以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/11(土) 08:42:07.19XGXmFsJmO (1/1)

ワロタw
垣根ゴーグルに甘いし
黒翼でてくんのちょろいし
麦野おまえもうだめだろww
ここのレベル5ぶっ壊れてていいな



386以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/11(土) 12:01:05.92wWQ9vg9n0 (1/1)

……おかしい、垣根と削板が常識人に見える
確かに原作での言動も一方や麦野ほどぶっ飛んでないけど


387以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/11(土) 12:23:07.09rkHOgj4+O (1/1)

すごく良かった。やはりゴーグルへの愛が溢れている。


388以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/11(土) 12:31:34.40htO3UZKDO (1/1)

何このみさきち可愛い


389以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/11(土) 19:07:54.02sNBEK4rt0 (1/1)

仲良しレベル5って好きだけど
この面子だと常識通用しないホストが常識的だったりすることが多い謎

>垣根艦これ
曙「このクソ提督!」 垣根「あ?」
解体不可避


390以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/11(土) 21:16:31.59BP4tZuQX0 (1/1)

垣根はドMで苦労人だからな他の連中とはそのへんの差がついてしまうんだろ
中身は一番幼いけど


391以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/12(日) 11:22:30.66zI8C6B6pO (1/1)

垣根と麦野がうける
>垣根「こっちは二人やられてんだ」
ってやったのお前らだろ!
削板も空気読めるんだなw


392 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:25:37.330k4V3Fdj0 (1/8)

>>200についてあれこれとレス


>>1は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐>>200の安価に片をつけねばならぬと決意した。
>>1にはエロSSがわからぬ。
>>1は、ただの暇人である。
さもないSSを書き、スレで遊んで暮して来た。
けれども初めて振った安価に対しては、人一倍に敏感であった。
って具合にあえて別ベクトルにガチなやつでやっつけたがご好評でなにより。

>>356
何をいっしょうけんめいやってんだろうと何度か我にかえったがたのしんでもらえたならいちもうかばれるくさばのかげでがっつぽーず。
垣根には悪いことしたね犠牲はつきものなのだわ。

>>357
書きましたー!

>>359
別に書いてないとこはお好きにドーゾだわ。黒幕ブッ殺エンドでもまさかのドナドナでも構わんよ。垣根にとってムカつく結果になったのは間違いないだけで。
しりあすって…え?シリアスって?
ちょっと上手いこと言ってんじゃねーw

>>360
元ネタこれか!一つ賢くなったありがとう。
そうかかわいいのか流石垣根は未元物質なんでもカバーするね。ありがとありがと。

>>361
垣根の口を塞いだらモブが無駄にやかましくなった。個性的な口調は楽でいいなかまちーは天才だな。
垣根がひどいことをされるシーンは都合削減した。でないとどんだけ長くすりゃいいのかわからんし切ってよかった気もする。
投下で三時間は正直ツラかった。
当時の全容なら『スクール』で回収しただろう撮影時のテープか、『滞空回線』にログがあるのでは、と1は『電話の相手』に見してーって言えばいんじゃないかそもそもネタでパラレルだけどなと無理を承知で進言します。

>>362
安心しろ。グレーゾーンなんて温いことは言わねえ。次の安価は真っ黒だ。
本編じゃやらないことを安価でしようぜネタに走るよ。だから次のも前のも気にすんなそのあとなんかどうするんだいレッツ常盤台だよ。

>>363
まさか一年も続くたあ驚き桃の木にしたって気が早くね。
つかなにこの流れ告白大会なの?そうか1はな…キリンさんがすきですでもかまちーはもーっとすきです!だから三期をよろしく。

>>364
詳細か

一人目主にバック、長音の人。恐らくこの中では一番ノーマルな趣味をしてるが子ども相手に暴力振るってもむしろ喜んじゃうタイプなので軽蔑すべきクソ野郎。巨根遅漏守銭奴の三重苦。

二人目拘束・SM、逆にの人。きっと機械工作が好き。相手が死ななきゃ何してもいいとか思ってそうな軽蔑すべきクソ野郎。他が濃すぎて影が薄い。

三人目BUKKAKEetc、ヤク好きの馬鹿の人。
調子こくとてきとうに薬盛っちゃうし『素材』の自爆補填が一番多い軽蔑すべきクソ野郎。ジャ◯顔のクズ。

四人目眼鏡の人。小さい時なんかあったっぽいが今では小さい子にひどいことするのも見るのも好きな立派な軽蔑すべきクソ。ロリペド教師予備軍
描写がほとんどないのはめんどくさくなったからではなく一人だけ安価内容にそぐわない為。とか言う勝手なこじつけで最終的に属性も変更。

最低限の描写でリンカーンっぽくしようとプレイのバリエーションだけでほわっとごまかした感があるんだが、かったるかったりエロがかけなかった訳ではありますん。
こう言うことが聞きたいんじゃないんだろうけど。心配するな自覚はある。
あんま考えてないからご丁寧におねがいされましてもお答えできかねます。
>>1が書いてないことは妄想暴走お好きにドーゾ。

>>365
乙ありです。
まって誤字からのダブルミーニングつらいやめて。

>>367
どの花飾り風紀委員さんでしょうね。4コマからだっけ?腐ネタがあんの。
需要があんなら供給があるのかなと思って『雑貨稼業』さんをパク…インスパイアしました。
ありがと。本編も頑張って進めるわ。
>>1も垣根が好きだよ。

>>368
夢が先か事件が先か。さてどちらなんでしょうね。
『守護神』は『対空回線』の夢を見るか?でもいいと思うしAIM拡散力場がどうのでもいいと思う。




393 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:26:28.980k4V3Fdj0 (2/8)


>>383
Marchenな第二位だけにか。
軍服ってかっけーよね!垣根はうまく乗せたらコスプレとかしてくれるとおもう。

>>384
あの白ベースオレンジ目とかが何となく垣根ホワイトを思い出してしまった。クレイジーサイコホモ気味なレーズン垣根は元気にしてっかな。
みさきちかわいいよな。でももしかしたら麦野も酔うとかわいいかもしれんぞ。


>>385
黒い翼は、レッドブル飲ませたら…ってのもやろうと思ったけどやめた。
しっ!
麦野はもう原作からしてワガママワンマン女王様だから。
多分このメンツでも麦野と削板は他人と会話のキャッチボールをしないと思う。きっと投げっぱなしだろあいつら自由だよね。
多少の壊れはギャグってことで。尖らせてる自覚はある。

>>386
やばいぞ非常識&非常識がまともにみえてくるなんておかしな集団・超能力者に毒されてるぞ早く冥土帰しに診てもらった方が良さそうだね?
超能力者が全員ずーっとぶっ飛んでるとやばいよ。誰か上条さん呼んでこいだよ。
まあ一番ちゃんとした良識があるのは美琴ちゃんだよね。

>>387
え?はい、ドーモ。
おかしいなやつを愛でたつもりもさせたつもりもないぞ。
でもゴーグルがいないと『スクール』は任務以外のイベントが起きない感がやばいから大事にしたいと思います。狂言回し大事。超大事。
垣根と心理定規二人にするとそのまま会話なくても別に平気そうなんだもん。

>>388
みさきちほんとかわいい。超電磁砲ドリー編ですっかりファンになりました。
でもここ最近禁書で一番萌えたのはやたらとパワフルなおじいちゃんとカッコイイ犬です。どうしようorz

>>389
うぃき先生に聞いてきた。解体だ……僅かな資材と装備を残してバラされてしまうんだ
ギャグやらせるとツッコミ・ストッパー役=常識人みたいにみえてしまう気もする。
上条さんとか御坂もそっち寄りっぽいよね。
とかもっともらしいこと考えてみたけど。
見た目ホストっぼいから周りの面倒見せたりまとめさせても似合うんじゃないか?
あとあの中で、外面は一番いいとおもう。

>>390
そうなのか。まあ原作の扱いは、うん。仕方ないよね

>>391
垣根「正当防衛ってしってるか。やられる前にやっただけだ」
ソギーはいいやつだからな!




394 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:29:05.120k4V3Fdj0 (3/8)


強すぎる一撃には反動がつきものらしい。
ポケモ○の破壊光線の1ターンスタンよろしく、ホモネタを戦闘シーンにすり替えるために地の文を費やした1の精神は非常に落ち込んでいた。
その為何が生じたかというと。
苦労して前回薄めたホモ成分を超えるひどいものが出来上がった。

なので次の安価レスはデレるどころかひたすらホモネタ大喜利をする垣根です。今度はほぼご機嫌です。よろしく
どうしてこうなった。本当に。

とまあこれだけじゃなんだから次小ネタ。
ちょっと時期外れだけどパズデックスのあれ。


395 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:31:04.610k4V3Fdj0 (4/8)


謎解学園てきななにか
※一方さんが会長のあれ。まさかの2本目
※諸々あって『スクール』は風紀委員をしてます


登校時


ゴーグル「はぁ。昨日の小テストが上手くいかなかった。また放課後補習とかになったら嫌だー」

青ピ「ボクはちゃーんとやったで? 赤点ギリ回避!」

ゴーグル「担当が男だからやる気出してるんじゃないよな?」

青ピ「はっはっはー。その通りっ! 野郎に叱られてどないせっちゅーの! ってセンセんとこは確か……
第二外国語、オリアナ先生やん! マンツーマンで個人レッスンとか?! うーわー出来るんならして欲しいわ」

ゴーグル「はぁ。そんなの考えただけでツラい。そうなったら委員の仕事を盾にしてでも断固回避するぞ」

青ピ「あれ。センセ、なんやテンションえらい低くない?」

ゴーグル「ああ言う激肉食系女豹女子はあんまり……男子学生が露骨な下ネタ大好きだと思ったら大間違いなんだって」

青ピ「あー、センセの好みはおとなしい子ぉやったね」

ゴーグル「そうだよ……青ピ君とこの、姫神さんとか」

青ピ「姫神が?」

ゴーグル「ど真ん中ストライク……黒髪ロングストレート、清楚系で薄幸美人とか何だよ属性フルコンプじゃないのか?! あー、もう王道最高!!」

青ピ「そうやったん? でもセンセ、ウチのクラスはほぼカミやんフラグが済みになってるから難しいんやないかなあ」

ゴーグル「現実に高望みはしないから。同じ学校にあんな子がいるってだけで俺は充分です。心のオアシスっス」

青ピ「またそんな謙虚なことを……どう? 今度帰りにみんなでお茶しまへんか~とか。誘ってみます?」

ゴーグル「えっ!」

青ピ「ボク同じクラスやし声かけたってもええよ? あ、ええんやでそんな気にせんでも! ボクとセンセの仲やないの!!」バシバシ

ゴーグル「……何が目的だこの野郎」

青ピ「え? どうせならセンセも女の子連れてきたってな~。Wデートっ! あの、風紀委員の副委員長さんとか!!」

ゴーグル「あの子まだ中学生だぞ?」

青ピ「せやから?」

ゴーグル「……ようじょとかよりはいいんだろうけどさ。幾らなんでも委員の身内は売れねえっス。青ピ君も、いい度胸してるよな。風紀委員とフラグなんてもう立たないんじゃないか? 
職質の常連通り越してそろそろブラックリストに入るっスよ」

青ピ「ボクのことをしらん子は風紀委員に居らへんってことやね!!」

ゴーグル「前向きだよなぁ。それより俺の居ないとこでしょっちゅう問題起こさないで欲しいっスね」

青ピ「なんで?」

ゴーグル「女子の風紀委員から俺に苦情と未処理の報告書が押し寄せるんス。すっかり俺が専用窓口っつうか。
おかげで無駄に忙しい…ん? いや、一度くらい委員長直々に徹底的にシメてもらえばそんな気もなくなるかもしれないよな? 早速見回りの強化をしてもらって――」

青ピ「いやー! センセにはいっっっつもお世話になってます! このとーり!! もー、んなイジワル言わんといて? な? あのセンパイさんおっかないやんイケメンやけどっ!」

ゴーグル「あ。噂をすればあんなところに垣根さん」

青ピ「おーっとじゃあボクもう行くわー、さいならっ!」





396 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:32:15.550k4V3Fdj0 (5/8)


シェリー「よぉ。垣根」

垣根「クロムウェル先生。おはようございます」

シェリー「お前のこの前の課題。なかなか良かったぞ。細部の造形まで良く仕上げたじゃない。お前の創作は見事だよ、迫力の完成度が違う」

垣根「ありがとうございます」

シェリー「ただなぁ。芸術にはもう少し遊びがあっていいぞ。作品にもっと熱を込めてみろ。面白くなるわよ」

垣根「……そうですか」

シェリー「お! おーい削板!!」

削板「おおっと。おはよーございますっ!」

シェリー「うふふ。おはよう。朝から調子がいいらしいな、作品にもよく出てるよ」

削板「『根性は爆発だ!No.20』か。あれ? でも先生は絵が好きなんじゃなかったのか」

シェリー「そうね。確かに、前作の大胆な空間の使い方。あれも良かったがお前は筆を鑿に変えても魅せるねえ……お前、本格的にこっちに進む気はないの?」

削板「うーん。俺は体動かすのが合ってる気がすんだよなあ。作って遊ぶのも嫌いじゃないけど」

シェリー「まあ考えときなさい。色んな道があるからね。しばらくは立体作品が続くけど、筆がとりたくなったらいつでも言いな。美術室を好きに使っていい。居残りどもと一緒でよけりゃあな」



ゴーグル「垣根さんおはようございます。はー、人って見かけによらないんスね」

垣根「わっかんねーな。いや、理解したくもないけどさ」

削板「お、お前ら!  オッ   ス !  !」ビュオッ

ゴーグル「あー、走っては…ないんスね。なんだあれ新技か?」

垣根「なあゴーグル」

ゴーグル「はい」

垣根「昼休みが、楽しみだな」

ゴーグル「俺は既に胃が痛いっス」





397 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:33:56.260k4V3Fdj0 (6/8)


放課後



上条「ううう……二時間格闘した粘土の上に道具をひっくり返してしまうとは。我ながらなかなか不幸だ」

上条「流石にまだ居残りしてるのは俺たちくらいだな。みんなぱぱっと終わらせちゃうしなあ」

一方「連日居残り皆勤のオマエと違って俺は忙しいンだ。誰かさンが年中データをブチ消したり書類をダメにしてくれるからなァ。放課後にそンな時間がねェ」ペタペタ

上条「上条さんだって……無差別にそげりたくてゲンコロしてるわけじゃありませんっ!」

一方「そォですか。それより進んでねェ現実をなンとかしろ」

上条「むしろまた潰したんで後退してます。ちくせう。自由課題だからな。もう、長く伸ばしてイモムシってのはどうだ。いやーでもみんなすごいな。なかなかの力作だ」ウロウロ

上条「お。一方通行の方はどう……」

一方「ンー。こォ、か?」ペタペタ

上条「…………」ゴクリ

一方「……なンだよ」ガリガリ

上条「えーと。これはなんと言いましょうか……か、かわいいな?」

一方「……ン。まァな」

上条「えっと、それはペンギン……か何かでせうか?」

一方「はァ?」



垣根「うらー下校の時間だ。いつまで残ってんだ……って、テメェらか。何だ何だ? 生徒会役員様が授業の居残りですかあ」

一方「なンだオマエかァ」ぐにゃー

垣根「……へぇ」

一方「なンだよ」

垣根「いや? もうちょっとここは短くしたほうがいいんじゃねえの」

一方「うるせェ。余計なお世話だ」のばしのばし

上条「(垣根)」

垣根「あ? (何だよ)」

上条「(あれ、何だかわかるのか? 上条さんはさっぱりですが)」

垣根「(え。最終信号だろ?)」

上条「はぁあああああ?!」

一方「上条、うるせェぞ」ガチャガチャ

上条「あの何とも名状し難い粘土の塊が、打ち止め……? なんでわかったんだ」

垣根「あのアホ毛っぽいのとか、顔の割にやたらデカい…目…なのか、あれは? その辺のバランスがなんとなく…だな。
いや、相手があれじゃ断言は出来ねえぞ」

シェリー「お前ら今日はそろそろ終わりにしろよ。お、一方通行のも仕上がってきたじゃない」

一方「あァ」

シェリー「うんうん。お前の作品はエッジが効いてるな。そろそろ名前は考えたのか? 作品にはタイトルも大事よ」

一方「そォだな……」

垣根「(何だ、何がくる? 俺の読みは一体どこまで通用するんだ)」

上条「(もし本当にそうだったらかわいそうだが本人には見せてやれないぞ)」



398 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:36:04.970k4V3Fdj0 (7/8)




一方「……『道端の犬』だな」

上条「犬?!」

垣根「マジかよ!!」

上条「犬だったじゃん! 大ハズレだぞ」

垣根「これが……犬、だと……? 上条、ならテメェは何だと思ったんだよ」

上条「ペンギン」

垣根「は。俺の勝ちだな」

上条「何でだよ」

垣根「同じ哺乳類だろ」

上条「そこ? いやいやお前のほうがひどいぞ? これと一緒にするなんてかわいそうだ」

シェリー「盛り上がってるとこ悪いけどなあ上条。そろそろ何か提出してくれないとアンタの今学期の成績がつけられないのよ。これまでまともな作品がゼロじゃねえ」

上条「え」

一方「言っとくが次の会議は休ませねェぞ。記録係が不在じゃ話にならねェ」

上条「はい?」

シェリー「途中点でもいいけど……これは、流石に作り直すだろ?」べしゃあ

上条「マズい。このままでは技能教科の成績まで……なぁ、垣根」

垣根「はい。三階の施錠は終わりました。生徒の退去の確認を終え次第戻ります」ピッ

上条「垣根! 頼む助けてくれ!」

垣根「何だよ。んなきたねえ手で触んなよ?」

上条「なんとか粘土をこねるから、出来上がった奴が『何があっても壊れたり変形しないように』してくれないか? 
上条さんは何度も何度も、何度も何度も! やり直すのはもう耐えられません!」

垣根「嫌だ」

上条「何でだよ」

垣根「俺は風紀委員、テメェは生徒会。俺は自分の敵には容赦はしねえ。残念だったな」

上条「そん……なぁあああああああ!」

一方「まァ、そンなに凹むな。俺はそろそろ終わるからな」

上条「へ」

一方「少しくらい…いや、時間があったらだけど……よォ」

上条「一方通行……おお、上条さんの心の友よ!!」

垣根「削板のって……これか?」

シェリー「うふ。うふふふふ。ああ。私も教師になって初めてここまでの才能の『原石』を見つけたわ。二五〇年に一人の逸材と言っても惜しくないくらいだよ」

垣根「やべえ。微塵も良さがわからねえ。前衛的にも程があるぞ」




後日

ザワザワ

青ピ「カミやん……またえらいもんを作り上げたみたいやね?」

土御門「実はカミやんもそっちサイドだったとはにゃー。邪神像が増えてるぜよ」

上条「ハハハハハカンセイシタノニフコウダー」





399 ◆q7l9AKAoH.2015/07/15(水) 00:38:26.440k4V3Fdj0 (8/8)

ドーモ。
最近こんなんばっかで悪いな。

シェリーさん美術の先生にしてしまったが宜しいか。
第一位が実は画伯属性持ちだったら爆笑して愉快なオブジェになる。
でも、何でも出来る奴よりプラス欠点があるとおいしいだろ!
イケメンだけど羽が生えたりよ!!

じゃあまた


400以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/15(水) 10:49:36.64EStQ0NTeo (1/1)

イケメンな上に羽が生えるとか利点でしかないだろ!いい加減にしろ!

垣根は美術作品は意外と堅実なのか。常識が通用しないピカソみたいな感じかと思ったが


401以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/16(木) 00:44:25.33pFcMGr1DO (1/1)

まとめで一気に読んだけどどれもネタ多くてスゲー笑ったw
ホモのも普通に面白かったし
電話の男にデレてる垣根ははじめてみたかも
もっとえろくてもいいよ
ここの1の垣根愛はすんごいな
頭んなかどうなってんの


402以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/16(木) 09:18:36.1689AI6318O (1/1)

相変わらず垣根への愛に溢れていて良かったよ。
このスレ見てからゴーグルも好きになってきたが、原作ではもうほとんど出番ないんだろうなあ……



403以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/16(木) 09:50:46.54BkggXRVjO (1/1)

ていうかもう死んでるし


404以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/16(木) 14:50:24.66K9dua+MiO (1/1)

セロリ画伯ワロタwwww
セロリもデレてるしみさみこ百合とかほもとかあれか
イッチは両刀か


405以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/16(木) 21:38:29.169LqWfnkh0 (1/1)

垣根は能力に反して自分自身は常識から脱却できてない感じなのも似合う気はする
万能秀才だけど突き抜けてなくて、それが二位の壁っていうか


406以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/17(金) 00:17:33.32qykE4l9zO (1/1)

この学校楽しそうでいいなw
校長はビーカーから飛び出して攻撃してくんの?


407以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/18(土) 10:23:54.71vkLMyOTZ0 (1/1)

非常識を極めるにはそれだけ常識、当たり前の概念に精通してないとな、と思わんこともない
極論だけどそれらの真逆が常識外の事だし


408以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/18(土) 14:19:50.26zZZYxVrYO (1/1)

そういえば垣根って何歳なんだ?
校門で制服チェックしてる垣根におはようございます先輩って言われたい



409以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/18(土) 14:46:19.66K5dOLv4/O (1/1)

あと白井が同じ学校で生徒会だと初春と垣根は同じ支部になるのか?帝春来る?


410以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/18(土) 18:08:28.84Eocbd2TIO (1/1)

風紀委員の支部は学区内の幾つかの学校でまとまってんだっけ?同じ学校なら一緒だよな
トラブルのない垣根と初春の出会いは新しいかも
でも削×垣、一×上で薄い本のネタにされる未来が見える



411以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/28(火) 11:32:16.11BoziQS7/0 (1/1)

その後、さらに垣根に頼み込んで粘土を固めて貰うもげんころして不幸だーの展開が見える


412以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/28(火) 14:51:08.352OsUHThzO (1/1)

邪神化する前に軌道修正出来なかったのかよ
>>411
セロリ作だって知ってたら固める前にぶっこわしそうじゃね?


413以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/28(火) 18:08:01.85dJS3U45/O (1/1)

青ピの気持ちがわかる
垣根になら放課後個人指導して欲しい
風紀めっちゃ乱れてるから直してくれるよな風紀委員さん


414以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/28(火) 22:56:41.97Dylg+ScK0 (1/1)

>>1マダァ-?
(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン


415以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/29(水) 01:46:01.676DRJpZm3o (1/1)

>>1マダァー?
(U)←チンチン


416以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/07/29(水) 15:18:46.94yb3v818PO (1/1)

>>1マダァー?
 ∩
( 人 )←チンチン


417以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/02(日) 14:22:54.571w9Oj+E2O (1/1)

垣根のご冥福をお祈りします(-_-)/Ω チーン


418以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/02(日) 15:11:58.25YfCex2qq0 (1/1)

垣根提督ネタで思ったけど
艦娘の台詞を提督(役職)→帝督(名前)に変換すると
なんか親密度とか関係性が違って見えてちょっとニヤニヤできるな

生真面目な感じの台詞も名前呼び捨てだと途端に甘く聞こえる


419以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/03(月) 00:59:54.153LE603sAO (1/1)

ちゃんと考えようと思うと提督として着任させること自体が難しくてやれるネタじゃねえなあって断念したが、深海側で提督やらせんのならアリかもな
というかレ級やほっぽちゃんに懐かれる(物理)ホワイトが見たい


420以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/05(水) 12:34:28.893XF9Zivb0 (1/1)

15巻後~新訳のパラレルで、黒垣根モドキ的なのが深海棲艦の発生原因
それに対抗するための未元物質製自律兵器が艦娘
艦娘の統率・運用のために脳みそ分割から復活させられた垣根が提督に着任
学園都市に付けられた枷のせいで本人は戦えない&提督やるしかない(資源に使う未元物質も制限)
鎮守府は学園都市が作ったメガフロート的な

禁書ベースならそんな感じの設定も考えたことあるなぁ
深海側の方がハマる気もするけど、また一方通行あたりにやられる未来しか見えなくて…
艦これベースならなんやかんやあって提督になりましたでいいんじゃね?(適当)


421以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/05(水) 14:33:00.75mXmz99y2O (1/1)

さすがに艦これはスレ違いじゃね?
>>1も別にやってないんでしょ
それよりデレる垣根はよ


422以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/06(木) 18:20:59.55+4k25sQJO (1/1)

別にここの1はほっといても書くだろ


423以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/08(土) 13:01:57.44q+5fr0k4O (1/1)

スピンオフの方でもいいから漫画にスクール出ないかな


424 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:42:27.73Bv+OH5KO0 (1/14)


我がもの顔でカンカン照りだった太陽が少し傾きはじめた夏の昼すぎ。
とあるマンションの一室、その中でも一番日当りのいい窓辺に置かれたカウチソファ。
その上に寝そべっていたのは背の高い少年だった。
超能力者、垣根帝督は持て余し気味な長い足を組んでいた。ちなみに靴は履いたままだが、能力でちょっと工夫すると靴底なんて汚れないんだと彼は組織のメンバーに自慢げに語ったことがある。
女子なら真っ先に避けそうな紫外線直撃スペースで、彼は涼しい顔してくつろいでいた。
やかましいセミの声も屋外のうだるような熱気もここまでは届かない。
そのかわり室内にはプラスティックやカーボン、アルミ。
硬質な小さなものの擦れあう無機質な合唱が響いていた。
その中心点からふと、気の抜けたサイダーのような声が上がった。

「あれ……そう言やさっき…心理定規来ませんでした?」

「バイトだって言ってたろ。さっきって、もう一時間は前じゃねえか」

「そー…でし…たっけ?」

やる気、というか生気のない声で答えるゴーグルの少年。
カウチに背をあずけていた垣根は顔を上げると、その背中に目をやって顔をしかめた。

「お前いつからそれなんだ」

別に『スクール』の用事があったわけではない。
この隠れ家の一室で垣根が寛いでいるところにたまたま心理定規がやってきて(彼女はついでだと言っていた)、ゴーグルの少年はリーダーが来るよりずっと前から私用で室内を占拠している。

頭の装置から腰まで垂れ下がったコードに囲まれた姿は何だかクラゲのロボットにでも乗っ取られたようにも見える。SF映画に出てきそうだ。
猫背気味に丸まった背中もまるでゾンビのようだった。
パソコンのモニタに視線をはりつけたまま、B級ホラーものっぽい異様な雰囲気をかもしだしている少年は声だけで返事をする。

「昨日の夜っス。いやー、四つのゲームのイベント開催が被った上に、どうしても出ない素材があって。このままだと揃わないんでもう追い込みかけんのに必死です。あ、ちゃんと寝てます。二時間机で」

口調はだるそうだったが、腕から先はまるで別の生き物のように素早く動いている。
手元の携帯ゲーム機、二台並んだパソコン。
どれもシーク音を立ててばっちり働いていた。
頭に装着したゴーグルで同時に幾つものゲームをすすめているのだろう。
恥も外聞も、尊厳さえ捨てたような姿勢でゲームに打ち込む姿はまさに『廃人』と言う言葉がぴったりだった。
そこまで聞いてねえよ、と垣根は呆れたように首を振ると視線をてのひらのスマートフォンに戻した。




425 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:47:31.84Bv+OH5KO0 (2/14)


少年は腰の機械のスイッチを切ると、ケーブルを外してゴーグルを取った。
疲れているのかだらけた様子で息を吐いた。
グシャグシャと頭をかいて両手で目元をこする。

「あ゛あ゛あ゛、ちくしょー物欲センサー爆発しろ」

ぐちりながら近くのビニール袋からペットボトルを取り出すと薄オレンジの液体をぐーっと飲み干す。
カフェインたっぷりのエナジードリンクと電解質バランスのいいスポーツドリンクでカクテルを作ると効きがいいと言うのはよくある噂だが。実際どうなんだろうか。
プラシーボなんてものでも馬鹿にできない効果はあったりするが、怪しいところだ。
そんな体によくなさそうな色をしたドリンクをうまそうに飲むと、少年は腕と肩を伸ばしてからもう一度ゴーグルを手に取った。
位置を合わせて頭にかぶり、コードを順につないで。
何気ない動作で。
スイッチを入れた。

「……あ」

ヤバい、と声にする前に。
後ろのローテーブルに置かれたタブレットの上で。
ぐしゃぐしゃとタッチペンが潰れていった。

「あーーーーーーー! またやったぁあああああああ!!」

悲鳴を上げたゴーグルは勢いよく立ち上がる。
ガシャッ! と派手な音を立てて椅子が転がるが、彼は構わずそのままタブレットの前に走っていく。

「あああああああ……よかった、ひとまず平気みたいで」

「何騒いでんだよ」

「危うくこいつをお釈迦にするとこでした。無傷って訳にはいきませんでしたけどギリセーフですよもー」

タブレット端末は液晶に傷とひびは入っているが、動作そのものに問題はないらしい。
被害は、その上で『念動力』によって操作されていたペンに集中していた。
金属製のペンの軸は乱暴にもみ消した煙草の吸殻のように変貌していた。



426 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:49:23.83Bv+OH5KO0 (3/14)


「うっかり『目』を離すと切り替え時の再設定しくってたまーにやるんス。あー、集中力切れてんなー」

残念そうに言いながら、少年は端末の横のケースから別のタッチペンを取り出した。
一度、ウエストポーチのように巻かれた装置に目を向けると机に置いたペンを宙に浮かべて丸を書く。
調整は問題なかったのか、うんうんうなずきながら席に戻って椅子を起こした。

「『念動力』も力加減が難しいんで。俺はまだその辺が甘いっつうか、最大と最小の幅がありすぎんのも考えものっス。ただボタン押すだけだって、人間の指一つでも再現するのは結構大変なんスから。
前に三徹した時は、ゲーム機バキバキに潰して……あれから俺は赤牛、打破と仲良くするのと能力で遊ぶのは二徹までって決めました」

「要はさ、たるんでんだろ。何してんだか」

超能力者級の自己管理を求められても困るのか、少年は情けなく眉を寄せた。

「俺みたいな能力だと事故ってプレスとかローラーみたいな機械で起きるのと一緒なんですよね」

作業中の不意の巻き込みっスから、と息をはくと、

「能力のフィードバックも自動じゃないっスから。大体これくらい、ってしてても少し設定しくじると簡単に」

パン! と両手を叩いた。

歪んでいた金属製のペンは丸めたガムの包み紙の様に小さく潰れていた。
カフェインの摂取と睡眠不足でハイになっているのか、ゴーグルは一人早口で喋り続けている。

「だから、ちゃんと見える範囲で能力つかわねえと。コロンブスの卵くらいならいいけど生き物って意外と脆いんだよなあ。こう――」

「ちょっとやってみろよ」

「はい?」

コロンブスの卵、と復唱すると垣根は当たり前のように、部屋に置かれた冷蔵庫を指さした。





427 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:52:20.74Bv+OH5KO0 (4/14)


急で意外すぎるリクエストにこたえてゴーグルの少年はよく冷えた卵の紙パックを両手でささげ持つように運んできた。

「お前、それ着けてると幾つ出来るって言ってたっけ。四か、五か」

「いまはいいとこ三つですね。カメラの台数によるんで」

何で今やるんですか、と少年の投げかけた疑問は、
「見たことねえから」
の一言で切り捨てられた。

「そうかそうか」

ゴーグルが手にしたパックから一つつまみあげると垣根は無造作に卵を放り投げた。

一つ、二つ。
パックが空いていく。

「いいッ?!」

ラックの上に飛んで行った卵が空中で止まる。
続いてパソコンのモニタの近くでもう一つ。
壁にぶつかる直前ですとんと下に向きを変えたものもあった。

卵の動きが止まると、少年は慌ててパックを横に置いた。
体の前で両手をおわんのようにしたゴーグルの少年は宙を見つめたまま息を止めた。
息を吐くと同時に、卵たちは不可視のレールに乗せられたように空中を滑り落ちていった。
中のものを零す様にゴーグルの少年は慎重な動きで両手のおわんを左右に崩す。
コロコロゴトン、と集合した卵が静かに床の上に転がった。
ひびが入っているものもあったが中身が漏れたりひどいことにはなっていない様だった。

コロンブスの卵は生卵を手を使わずに逆さに立てる念動能力専攻の学生にはおなじみの学習メニューだ。
難易度はちょっと高めだが、異能力者でも練習すれば一つくらい成功する様になるだろう。
でも投げられた卵を割らないようにキャッチする遊びは、かすりもしない別物のはずだ。

「いきなり、何、やらせるん、ですか! あーびびった。俺これ嫌いなんですよぜってえ失敗したくな」

文句を言っていたゴーグルの言葉が途中で止まった。
垣根が指でつまみ上げたものがそれを遮っていた。
卵はもう一つ残っていたらしい。



428 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:53:24.85Bv+OH5KO0 (5/14)


「嫌か。なら仕方ねえな」

気ぃ抜くなよ、と言うと垣根はにやりと笑った。
ゴーグルの少年の目の前にかざされた白い卵から。
垣根はすっと指を離した。
そのまま静止しているのを確認すると、彼を放置してカウチに座りなおしてしまう。
わけのわからないまま、卵とその場に残されたゴーグルの少年は眉を寄せて。
動きを止めた。

「零すなよ? 部屋が汚れる」

垣根が気軽にそんなことを言った先から、何かきしむように嫌な音が立ちはじめた。
ビシッ、と殻の先端に小さなひびが入る。
目には見えない力、重圧が卵の周りにかかっているようだった。

「うえ?! なんッ……だこれぇ!」

少年の悲鳴が上がった。
それにあわせたように、テーブルに大人しく転がっていた小型ボールカメラの向きが一斉に変わる。
まるで重いものを持ち上げているように少年は自分の腕を必死につかんでいた。
一〇、二〇、三〇秒。
それに少しプラスして、それでも一分はもたなかった頃、耐えかねたような声が上がった。

「かき、垣根さん! ギブですって……もう勘弁してください」

あっそ、と垣根がやる気なく返事をした途端、ゴーグルの少年は膝をついた。
べしゃっ。
へたりこむ少年の前で床に落ちた卵は落下の衝撃で無惨に潰れていた。

「ボウリングん時にした話覚えてたんですか? でも俺、防御は得意じゃないっていいませんでしたっけ? 言った気がする。それで重くて小さいピンポイント攻撃ぶつけてくるとか鬼ですか? 卵越しに? うううううちくしょう頭いてええええ」


寝不足と、それ以外の理由で充血しきった目をがしがし押さえているゴーグルの少年に。
垣根はあきれるほどあっさりした声を掛けた。

「なんだ。やれば出来るもんだな。どうだ、眠気は飛んだか?」

「そりゃ、もう……バッチリです」

しゃっくりを止めるために、心臓を止めるほどのドッキリを仕掛けても超能力者なら許されてしまうのだろうか。

そうなっても蘇生処置をすれば問題無いとか思っているかもしれない。おまけに心臓の真上を拳で思い切り叩くような荒っぽいやり方で。

生き返るなら死んでもいいのはゲームの中だけの話だ。





429 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:55:01.82Bv+OH5KO0 (6/14)


ちょっとげんなりしながらゴーグルの少年はテレビの横でゲームのセッティングをしていた。
用意されているのは壁の『外』製の、随分と古い機種だった。
今の学園都市の技術なら、指先程度の大きさの記録メディアにこのハードで遊べるゲームのデータが何十本も入ってしまうほど昔の技術で作られたものだ。
人気のあった作品は同じ会社の最新機種でも移植やダウンロードで当時のゲームが遊べるようになっているものがあるしリメイク版も作られていた。
技術は進み、時代が変わっても色あせないもの何てものはあるらしい。
前にゲームセンターでやってみて以来、垣根も少しそのへんのものに興味がわいているらしかった。

「垣根さん、アクションゲームは頭でやるもんじゃないんスよ。わずかなラグやタイミングの癖を体に教え込んでボタンを押すんです。反復練習っス。
格ゲーも基本一緒っス。コンボなんてそのうち指が覚えますから」

「んなもんとっくだけどな。コイツがやたら反応鈍いんだよ」

「喋ってるとまた打ち漏らしますよ? ほら、あ。また、コンボ途切れてますって。意味ねえっスよ」

「うるせえ黙れ。ボタンつぶれてんじゃねえのこれ」

NPC相手にコントローラーをガチャつかせながら垣根は画面を睨んでいた。
ゲーム機の方に文句を言われて、私物をわざわざ隠れ家まで持ってきた持ち主の少年は首を振った。

「そんなことないですって。これ、なかなかきれいなの残ってないんスよ。現役で動くようなのは特に。中古っスけどちゃんと手入れされてたの探したんス。生産なんてとっくに終わってんのに、部品からリペアしてる人がいるんスよね」

称賛にも似た得意げな目を本体に向けて少年は語るが。
それはただのゲーム機だ。
簡単な計算も今日の天気も教えられない、平凡な子どもたちを非日常の冒険に少しの時間連れて行くことしか出来ないただの機械だった。
画面端にNPCを追い込んでとどめを刺している非凡な少年は気付いていないかもしれないが。
その口元にはなんだか、言葉に反して楽しそうな笑みが浮かんでいた。

「このゲームは壁ハメから卒業しないと対人は勝てませんよ」

テレビの前まで椅子を転がしてきたゴーグルの少年は、普段なら絶対に出来ない上から目線でそう言った。
ちょっと勿体を付けて、ゲーム機の入っていたケースの中からもうひとつのコントローラーを取り出す。
ことゲームに関してならゴーグルの少年に一日以上の長がある。
他のあらゆることで敵わなくても、得意分野の土俵の上でなら格上の相手の鼻をあかすことも出来る。
あと、もしかしたらさっきひどい目にあった仕返しも含まれているかもしれない。



430 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:56:09.25Bv+OH5KO0 (7/14)


「でもハンデ盛り盛りの接待プレイだと怒りますよね。こっち半ゲージなんて将棋の一丁半みたいなもんスよ。
ダメ減、コンボ、P縛りはしなくていいんスよね。どれか足しても飛車角落ちだと思いますけど」

「いいっつってんだろ。早くしろよ」

垣根の悪態を横目に画面を確認するとゴーグルの少年は自分の方の設定を変えてからゲームをスタートさせる。
前に同じゲームで対戦した時に「開始十秒は殴り放題」なんてルールを設けたが。
その後逆転負けした垣根にものすごく怒られたことがあった。
垣根は自分が負けると当然怒るのだが、彼がちょっと気を利かせてわざと勝ちを譲ってもそれに気付いて怒る。
でもまあ、垣根の上達には目を見張る早さがあったから、加減抜きで本気の対戦が出来る日もそう遠くないかもしれない。

「ゲームだろうとなあ、お前如きに手抜かれてんのは頭にくるんだ、よっ!」

「あー、また角が落ちた! 玉来いっての!」

開戦からボタンを叩いていた二人だったが連打の音がいきなり途切れた。
ピコンと画面がポーズモードになる。
スタートボタンを押した垣根は、コントローラーを握ったまま後ろを振り返った。
無人のパソコンの前でマウスが忙しく踊っていた。
と言うか確認なんてする前に、近くに座っている少年が頭にゴーグルをつけて遊んでいると言うのはつまりそういうことだ。

「言ってるそばから一人同時プレイしてんじゃねえよ! ああ? ナメてんのか?」

「えっ、俺言ってました? うっかり口に出してました?」

あれ? え? と、とぼけきれないゴーグルの頭を片手で掴むと垣根は力任せに揺さぶった。
相手が寝ぼけていようが能力を使っていようがお構いなしの容赦ない八つ当たりだ。

「誤魔化しもしねえのかよ。せめてばれないようにやれよ! 気分悪いんだよクソが!!」

「ちょっ、頭引っ張んないで下さい! ぎゃあああ線が、ケーブル抜けますってマジで!!」

騒いだままゲームも再開したが。
またしても少年は勝ってしまった。集中力が落ちているとその辺のさじ加減も難しいのかもしれない。
さらに。
垣根の不機嫌さのスイッチに手をかけたついでに、ゴーグルの少年は何か良くない法則でも引きよせたのか。
その後目的のクエストを何周してもお目当ての報酬は全然手に入らなかった。


431 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:56:48.08Bv+OH5KO0 (8/14)


「よし。もう一回」

「ダメです。ゲームは一日一時間っス」

「お前にそれは言われたくねえよ」

そんなゲーム界の格言みたいなセリフも。
平然と、体力の限界まで挑戦する人間から聞かされてはこれっぽちも説得力がない。

「でも垣根さんペース上げてやりこむとすぐクリアして飽きちゃうじゃないスか。こう言うのは、楽しみを長くとっとくもんです」

「そんなもんか?」

「それに長年の苦労を、たった数日で抜かれたら俺はどう立ち直ったらいいんですか」

「相手が悪かったな。諦めろ」

そこは得意げに言い放つ垣根。
その横顔からは言葉にするまでもない重みが感じられる。
現実に、ゲームのようなキャラクターシートやパラメータリストが存在していても垣根ならあらゆる項目でA以上の判定が出そうだった。
幾つか難あり、なポイントがあってもトータルの数値では圧倒的だろう。
たとえば……寛容さ、協調性なんかの数値が低くても、強制力やカリスマ性なんてところでカバーできてしまえそうだし。

「全方位チート(リアル対応)かぁ……わー、実生活用のPARってないのかな。昏睡とか副作用のないやつで。なんて言うといっそDNAマップの塩基配列からやり直した方が早い奴じゃねえっスか?」

笑いながら出来もしない愚痴をこぼす少年に垣根は、わかんねえなあ、と言いたそうな目をしていた。




432 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:57:14.26Bv+OH5KO0 (9/14)


「たまには体動かしたらどうだ」

「いいっスけど、能力使用オーケーならボウリングはこの前みたく俺がもらいますよ」

「そんなとこだけ強気だなお前」

「俺遊びには全力っスから。でも垣根さんもけっこーエグい配置ばっかこっちに出したじゃないスか。どっかのバラエティの無茶ブリみたいなの」

以前出かけた時に立ち寄ったボウリングコーナーで、スペアやスプリットの練習用にピンの配置が出来るコースをみつけた。
そこで二人はそれぞれ難しいフレームを作っては相手にトライさせる、と言う遊び方を試していた。
一ゲーム辺りに能力を使っていい回数も決めて相手の手を読み合いながらスコアを競うやり方は、即興にしてはいい思い付きだったらしい。

「あ、この前知り合ったヤツらはあれから連絡とってます?」

「何それ」

「えっ、あの時隣でやってたグループと垣根さんすっかり仲良くなってませんでした? ほら、俺がジュース買いに行って、SNSのアド交換して、確か今度飯いこうって話まで……あれ? しません、でした?」

「そうだっけ。ああ言うの、その場では盛り上がるんだけどな」

あまりに垣根が意味わかんねえ、って顔をしたのでゴーグルの少年はすごく不安そうな顔をしていた。
超能力者の記憶力を疑うくらいなら、自分の頭の記憶操作を心配した方が早い、みたいな反応だ。
異能あふれる学園都市では宇宙人の誘拐より小学生のイタズラでそんなことが起きかねない。

「別にいいだろ。そう言うの」

「そっスか?」

大した興味もなさそうに、吐き捨てるように垣根は言った。
単純に興味がなくて忘れていたということらしい。

コミュニケーション的な意味でなら、ゴーグルの少年も割と一人上手な方だとは自覚していたが。
それでも学校で、それ以外でも友達はいる。
なんと言うか垣根は違う。
ゴーグルの少年は、ほんの少しの関わりあいの中でしか彼のことを知らないが。
その部分だけでの印象でいうなら。世界がごく身近な、手の届く範囲で完結してしまっている感じだ。
超能力者だとそう言う価値観でも仕方ないのかもしれない。
頂点というのは文字通り点で、並ぶものがないから線にはならないし輪もつくれない。
それ以前に。
色んな経験値をすでに埋めてしまって、上りきった技能やスキルでステータスを埋め尽くしていそうな存在からするとそれ以下なんて見えているものが違いすぎて、てんで話にもならないだろう。




433 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:57:42.09Bv+OH5KO0 (10/14)



「何かそれ新しくなってねえ。あと後ろの壁もか。どうした」

一見、違いなんてないように見えるインテリアの一角を見た垣根はにらむように目を細めた。

「そうなんスよ。ちょっとダメにしちゃって。『スクール』のツテ使ったらすぐ済みましたけど。いやあ、まさか心理定規にゲームさせたらああなるとは思わなかったんス」

キャリーケースにゲーム機を大事そうにしまっていた少年は苦笑いをしながら答える。

「ふうん。で?」

それでどうしたのか簡潔に説明しろ、的なオーダーが凝縮されたクエスチョンマークに少年はうなずいた。

「ゲームなんて楽しいのかって聞かれたんで、心理定規でも出来そうなシューティングやらせたんス。廃墟系の」

「なぁ、いきなりオチが読めたんだけど」

「ちょっと我慢して下さいっス。この機種は普通のディスプレイはもちろん体感型のヘッドマウントディスプレイにも対応してるんスけど」

テレビの近くのラックに置かれているのは小さな最新機種のハードだった。
高音質高グラフィック、シアター並みの環境美の追求を謳ったコマーシャルで話題のハイチューンモデル。
真っ黒なボディは新品特有の指紋も曇りもない輝きを放っていた。
お前のそれみたいなもんか、とゴーグルを見ながら垣根が尋ねるが少年は首を振った。

「これは普通に目にするヤツっスから。俺のゴーグルに比べるとおもちゃみたいにかわいいっス。で、最初のボスに苦戦してるなーと思ったら……心理定規さんたらテンパってコントローラーぶん投げてそのままスカートに手を……」

その上に乗せられた、アイマスク型のディスプレイを手に取るとゴーグルの少年は外側についてしまった傷をいたわるように撫でた。
遠い目をしてかわいた笑いを浮かべている。
どうやらあまり楽しい出来事ではなかったらしい。

「へえ、よく無事だったな。っつうかあいつ普段どこに武器隠してんだ」

「まあ殺傷力なんてあってないような模擬弾入りの護身用だったみたいなんスけど。俺は後ろであそこのモニタ見てたんで。あと速攻で本体ぶち抜いて映像落としてくれたんで被害が最小で済みました。心理定規涙目になってましたよ」

そう言って少年は後ろを指さした。
小型ディスプレイとは別に、パソコンにも映像を飛ばしていたらしい。

「ふーん。お前ら面白そうなことしてんな」

「実は動画があります。いつもの実況用に使ってた機材一式はこっち側にあったんで無事でした!」

「じゃああいつ来たら流そうぜ」

「え。来る前じゃだめなんスか」

「その方が面白いだろ」

リーダーの口から出ると提案も決定事項になってしまうらしい。





434 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:58:28.53Bv+OH5KO0 (11/14)


その後。
小遣い稼ぎのバイトを終えて戻ってきた心理定規の前で、ゴーグルの少年秘蔵のムービーの上映会が行われた。

「内緒って言ったよね!? なんで彼に話しちゃうのかな。おまけにビデオがあるとか聞いてないんだけど?」

「いつもの癖で幾つか撮ってたやつがっスね後からひょっこりっスね……でもどこにもアップとかしてないっス」

普通に撮れていれば、『悪戦苦闘する女の子のゲーム初挑戦』って感じの微笑ましい動画になったかもしれない。
けど、心理定規がとてもネットには出せない様なオチを付けてしまったのでお蔵入り確定だった。
発砲する中学生とか少なくとも日本ではNG過ぎる。

「もうやだ……信じらんない。ちゃんと同じの買ったし、部屋の修理もしたし。ごめんねおしまいって話したよね。何でまたこんなことするの? なんで見せちゃうの?」

心理定規は腰に手を当てて少年を怒鳴りつけていた。
大画面で失態を流されたのだ。当然ながら怒っていた。
珍しく大声を出す彼女の剣幕に、誠意のアピールとして床に正座をしたままゴーグルはひたすら頭をさげつづけた。

「それは、そうなんスけどね? ええっと俺にもいろいろと事情がっスね?」

ちらちらと垣根を見ながらゴーグルの少年は言い訳をしたが、リーダーは弁護なんてしてくれなかった。
それで大体状況は分かったのだろう。
心理定規は話にならないと思ったのか怒りつかれたのか、ぽすんとソファに座った。

「あーあ。ショックだわ……私すっごく傷ついた。ゴーグル君ってばひどいんだから。どうしてあげようかな。君の彼への心理距離を操作しちゃおうかなー」

「そんなこと出来んの? っつうか俺関係ねえよな」

心理定規の問題発言に、我関せずを通していた垣根がやっと顔を向けた。
それでも。
二人で勝手に騒いでろ、みたいな迷惑そうな顔をしている。

「どうせけしかけたのはあなたなんでしょ。二人で私のことからかってたんだから悪いのは一緒よ」

むくれた顔で頬杖をつくと心理定規はぼんやりとゴーグルの少年に目を向けた。
ため息混じりの沈黙に嫌なものを感じたのか、少年はあわてて立ち上がった。




435 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:58:56.19Bv+OH5KO0 (12/14)


「待って下さいっス! 心理定規前に、悪趣味なことはしないって言ってましたよね? 言ってましたよね!」

「君が先にいじわるなことしたんじゃない。えーっと……何で君、かなり親密な距離にアニメのキャラクターがいるの? この名前ってそうだよね?」

「心理定規! 心理定規!! タンマっス。絶対に止めて下さい。俺はまだ来週の放送も明日の太陽もこの目で拝みたいんです!! 遠回しに死刑宣告は嫌ですって」

「ふーん。どんなの」

「確かよく名前出してる……あー、これかな?」

心理定規はスマートフォンで検索すると、出てきた画像を寄ってきた二人に見せる。
アイドルみたいなフリフリ衣装のいかにもなアニメヒロインみたいなイラストだった。
だが、それを見たゴーグルの少年はなぜかほっとしたような顔をした。

「あ。それなら多分大丈夫っス。まだ」

「じゃあこっちのは?」

今度出てきたのは、なんてことのなさそうなアニメキャラの画像だった。
長い髪にセーラー服、大人しそうな顔で笑う女の子。
それに今度は少年の剣幕が変わった。
合わせた両手を頭の上にかかげて拝むように心理定規に頭を下げた。
そりゃもうお白洲にひったてられた罪人か、セーブしてないのにゲーム機の電源切れと宣告された、みたいな必死の形相だった。

「その子は洒落にならないんで止めて下さい。もし垣根さんを一瞬でもそんな風に捉えたら俺は即愉快な死体決定っス」

「お前にとってそう言うのって、なんなの」

「日々の癒しと生き甲斐っスかね」

「何でそれで死体になっちゃうの?」

意味がわからないのはいつものことだけど、本気でわけがわからない。
そんな顔をする二人の前でゴーグルの少年は、苦しい胸を掻くように体の前で手を握った。





436 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 00:59:25.03Bv+OH5KO0 (13/14)


「心理定規は……俺が
『垣根さん昨日も今日も明日も未来永劫かわいいっスね! もはや世界の常識不変の真理っスね! 垣根さんペロペロ( ^ω^ )』
とかトチ狂ったことを悪気無く、つい、ポロっとうっかり本気で言ってしまったりしてもいいんですか? それで済めばいいんですけどね俺は嫌です絶対嫌です本当に!! どうか勘弁して下さいこの通り!!」

懺悔か祈りのポーズで叫んだ少年だったが、あんまりにもあんまりな発言に周囲の空気は急速に冷え切っていく。
心底軽蔑したような目を向ける垣根。
今にも息絶えそうな可哀想なものを見たような顔をする心理定規。

「テメェ、じゃあ望み通り死ねば?」

「あのね。私はさっきすっごく恥ずかしかったの。いやだったの。だから君もそんな気持ちをわかってくれるといいなぁって思っただけよ? そこまでしなくていいから。ね?」

「恥ずかしくて死んじゃうってのがシャレじゃなくてマジになるって言ってるんスよ! 
垣根さん、怖い顔はやめて下さいおねがいします。言いませんから、万一垣根さんが天使みたいに可愛いあの子に思えてもそんなこと冗談だって口にしませんから!!」

「誰が天使でメルヘンだって?」

「言ってません! 俺そこまで言ってませんからぁああああ!!」

バキバキと伸びた翼が近くの椅子やテーブルを押しのけるのを目の前にして。
ゴーグルは後悔どころか燃え尽きたような顔をしていたが既に手遅れだろう。
自分は能力も手も出さずに、ほとんど何もしないで最終的には少年をこらしめることに成功した心理定規は。
男の子って面白いなあ、みたいな顔をしてドタバタ騒ぐ二人を眺めていた。




437 ◆q7l9AKAoH.2015/08/17(月) 01:00:06.82Bv+OH5KO0 (14/14)


ドーモ。
久しぶりにメインっぽいのを。書き手体感でデレ大目だったからかなんか垣根が不機嫌です。
ゴーグルごめんよ。残りの二人の人間性がいまいちわからないからついやりやすくてやりすぎる。まあ原因はリーダーなんだけどね。
安価はまたじゃあまた。




438以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/17(月) 01:36:31.37j2/IzdxB0 (1/1)

乙ーん
実際垣根のキャラは俺もよくわからんなあ、振れ幅有りすぎて
どんなキャラしてても垣根らしくもあるし垣根らしくもないし


439以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 17:53:07.23Cd8Q+8XDO (1/1)

ゴーグル欲望に忠実すぎwオープンな職場だな


440以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 17:57:31.31BDh4HU/PO (1/1)

>>438
どこの作者?
ここって結構作者っぽいひと来るよね


441以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/18(火) 19:28:43.12AHAE0xii0 (1/1)

垣根はギャグキャラは許容できない


442以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/19(水) 04:11:29.23J7ZZlrPc0 (1/1)


学園都市トリビア:スクールで天使はNGワード

しかし楽しそうだなこいつら


443以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/19(水) 20:52:03.63hqvwXOnto (1/1)

垣根が本気出したらどんなゲームでも一月で世界大会二位になれるよ。
一位は一週間前に垣根がゲーム大会に出ることを知って妨害しに来たセロリだけど。


444以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/20(木) 01:06:49.452AxEGWvMO (1/1)

カキネクンの可愛さは不変の真理かあ
ゴーグル(覚醒)とはうまい酒がのめそうだ


445以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/21(金) 18:13:55.89b+OIQgYCO (1/1)

アイテムとグループも好きだけどスクールもいいな
暗部のやつらが遊んでんのって和む



446以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/21(金) 22:06:41.44Y4nMLq6GO (1/1)

普通の話でこんなに垣根でれちゃうと安価ですごいでれるなんてもうする事限られてくるよな
期待してる


447以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/22(土) 00:17:49.51uHv1uh5to (1/1)

手例流とは中国の殺人拳法の一つで欧州から伝来したと言われている。
殺人拳法ながら流儀を重んずるのが特徴で、勝者は敗者の手を切断し、川に流すことで敬意を表す。
現在は派生の摘手例や梁手例などが一般的である。


448以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/25(火) 21:52:20.723J8ZvmswO (1/1)

夏休みもそろそろ終わるな
スクールの夏休みはまだ続くのか待ってる


449以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/26(水) 00:17:39.354Kw081Jyo (1/1)

暗部の呼び出しで夏休みなんて無さそう


450以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/08/26(水) 21:34:46.72nvEDb3YF0 (1/1)

ジュラシックワールドみたら恐竜で遊ぶ垣根思い出した
テーマパークとか好きそう


451以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/06(日) 03:47:30.44D7S5WN+q0 (1/1)

このスレタイからこんなことになろうとはな
ゴーグル裏山すぎ


452以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/06(日) 11:12:47.150tlXAY99O (1/1)

9月になったけど>>1レスしにも来なかったな



453以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/06(日) 14:09:25.466aowFm68O (1/1)

レスとかいいだろ
他にもなんか書いてんじゃないの


454以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/11(金) 15:42:12.63bNV14CODO (1/1)

>>453
>>1はきっとUR引換券を取るために課金してる


455以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/11(金) 21:25:51.16UQvr1S/To (1/1)

キメセクで忙しいんでしょ


456以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 09:43:55.12IlhSpQsBO (1/1)

すんげー今更だけど、>>161の描写ってデッドマンズQのオマージュなのかしら


457以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 20:46:28.58tkPxpiyxo (1/1)

確かにそれっぽいな。
垣根も平穏を求めている・・・?


458以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/17(木) 23:04:19.46ZlwduGjNO (1/1)

そんな事より1はどうしたんだ


459以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 20:20:29.95uH6LG5yi0 (1/1)

デレていとクンマダァ-?
(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン


460以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/18(金) 20:57:46.347+SJXQRMo (1/1)

テイトクマスターシンデレラていとくん
略してデレていとクン


461以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/24(木) 13:58:26.63oY7bbAf6O (1/1)

待ってるぞー!


462以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/09/24(木) 22:11:54.11P8R7w++NO (1/1)

シルバーウィークが終わったし
来るよな?


463以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/02(金) 17:22:37.38rwhfKcHMO (1/1)

このまま落とさないとは思うけど十月になったから心配


464以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/04(日) 11:03:51.32aEWSkDMx0 (1/1)

まだかよ
めっちゃ楽しみにしてんだぞ


465以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/04(日) 14:52:48.531A7F0n+tO (1/1)

1もとあるに嫌気がさしたんだろ
HOはアニメ化したけどもう3はやらないだろうし
スクールなんてマイナーじゃネタも続かない


466以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/07(水) 12:53:50.48HPhV8nmyO (1/1)

どっかで3期はないだろうって言われたらしいな


467以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/09(金) 12:41:52.95g5J41zS1o (1/1)

あと一週間以内に>>1が生存報告してくれればもう二か月希望が持てるのでオナシャス


468以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/11(日) 21:24:28.58IpCeTvgS0 (1/1)

はよせんと落ちちゃうで


469まだ八月なんだよなここ ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 02:38:56.63yXmdwrH20 (1/10)



「俺の借りものが『レベル4以上の能力者』なんスよ! ケータイは使えねーし連絡つく大能力以上のレベルの知り合いなんて垣根さん以外いないんですよ!! 
それにここで高得点をたたき出せればうちの学校にもチャンスがあるんス。ですからどうか俺と一緒に走ってくださいおねがいします失格だけは何としても避けたいんス!! 
でないと人質に取られた俺の大事な」

「はぁ? めんどい。怠い。靴が汚れる」

大覇星祭真っ最中。
二日目、とある競技場内。
観客席の学生用観覧スペースで一世一代の演説を一席ぶっていた少年のマシンガントークがたった三発であっけなく叩き落とされていた。

「そんなざっくり論破しないで欲しいっス。つか垣根さん最後って問題なくないっスか?」

「何よりダセェ。全世界公式行事なんて馬鹿言ってる場所でんな真似出来るか」

突然の事件事故に巻き込まれても微塵もダメージがなさそうなレベル5様は実害より精神的なデメリット、プライドが汚されること理由を盾に首を横に振った。
場内のコースにはずらっと報道用カメラのレンズが向けられている。

「大丈夫っスよ、もしカメラに抜かれても世界規模での垣根さんファン人口がちょっと増えるくらいっスから!」

「馬鹿じゃねえの。お前が大丈夫かよ」

必死になりすぎたのかハイテンションでいよいよおかしなことを口走りはじめた少年に、垣根は心底呆れたような目を向ける。
普段以上のトンだ言動に頭の具合を怪しんでいるらしい。

「君のところの競技は……ちょっと変わってるけどメインは二人三脚なのよね? ちっとも競走させる気がなさそうだけど」

「げ。なんだありゃ。動く障害、ぬかるんだプールに地雷式煙幕……ってえげつねえお笑いの罰ゲームかよ」

観客席の上に設置された巨大なモニターには競技場内のコースの様子が映し出されていた。
その一部を見ただけで、垣根はそのくだらなさに嫌気のさしたような顔をしていた。
この競技場で繰り広げられる競技は。
ただの二人三脚ではない。
ただの借りもの競走でもない。




470いつになるかわかんないので ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 02:48:22.26yXmdwrH20 (2/10)


二人一組で並び立つアトラクションを乗り越える、新感覚アクション強制参加な競技だった。
会場を中心とした競技範囲そのものはそこまで広くない。
だが、子ども相手とは思えないサバイバルアタックを押し出したド派手な演出はまるでスポーツエンターテイメント番組のような催しだった。
学園都市のアミューズメント事業に携わるいくつかの企業がプロモーションもかねて協賛していると噂されるくらい大がかりなコースは派手で、
極めて安全だがものすごく難易度の高いものになっているらしい。
その為話題性、動員される取材カメラと一般の観客数のいずれも高いお祭り騒ぎな種目だった。

「どうスか心理定規! その辺の能力者を協力させてもらって結構っスから!」

「あら。彼の方がずっと頼りがいがあるわよ。あなたもせっかくこんな所まで来て観戦してるんだから……参加してあげてもいいんじゃない? 思い出になるかもよ」

どうしても競技に出場しないといけないらしいゴーグルの少年はいつになく必死だった。
すぐさま標的を変えようとする少年の動きに心理定規はいち早く別のルートを示してそれを回避しようとしていた。
それも、垣根の気分を盛り下げないように巧みに言葉を選んでいる。
読み合いを駆使した本気っぽい頭脳戦をすごい小規模で繰り広げる二人を、本来まとめ役の垣根は一歩引いた様子でみていた。

「お前らって……変わり身早いよな。っつうかお前はここでもいつもの格好かよ」

「流石に自分のところに参加しなきゃいけない時は……あれに着替えるしかないと思うけど。まだいいでしょ」

そう言って心理定規は小さく頬をふくらめた。
仮に彼女の能力強度が4以上、大能力者だとしても。
体操服どころか、学校指定の制服でさえない心理定規は今すぐハードな競技に参加なんてできそうになかった。
本来避けそうな垣根に真っ先に話をそらしたあたり、本人は協力して関わるのもいやなのだろう。
と言うかドレス姿の女子を走らせるとかそれだけでも間違いなく大事故が起きる。
そちらは対策済みかもしれないが、心理定規に限っては一般人の衆目に晒してはいけない危険なおまけが短いスカートの下から出てきそうで怖い。

「はあああ……もう、だめだぁあ」

手詰まりになってゴーグルの少年はがっくりとその場で膝をついた。
その時だった。



471小ネタにしました ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 02:52:07.95yXmdwrH20 (3/10)



「よっこいしょーー!!」



「うえぇ!?」

謎の雄たけびと共に頭上から何かが降ってきた。
ズズン、と大きな地響きを起こしたそれは片腕を大きく上に突き上げる。

「うしっ! 根性っ!!」

バウーン! と特撮ヒーローものっぽい煙と爆音の特殊効果を自力で起こしたのは。
もこもこしたまるっこいシルエットの未確認飛来物体だった。

「な、なんスかこれ? 垣根さん、空から女の子が! じゃなくて手作りっぽい…着ぐるみ?」

「オレは大覇星祭非公認マスコット!! そ……根性くんだ! おまえらの根性を応援してやるぜ!」

「うわぁああ? なんだこれめっちゃ早い分身、いや残像?! なんか動きが怖い!」

コンジョウゥ! と謎の鳴き声をあげながらゆるキャラっぽい空から落ちてくる系のなにかは突然、着ぐるみにしては激しいアクションをはじめた。

「一体なんなんスか……って垣根さん? 心理定規まで。なんで急にそっぽ向くんスか? そんな他人みたいな顔って……聞こえて、ない…? ガチシカト…だと…?」

他人の振りどころか。
ゴーグルの少年も、この「オレか? オレは根性の妖精だ!」とか自称しそうなもこもこしたものも。
まるで見えていない様な反応の二人に、少年は呆然としていた。

「おいお前。そんなに落ち込んでどうしたんだ? もっと根性出せ! 根性!!」

「そうだ……超障害物借り物二人三脚に出てくれる大能力者よりすごい人がいないと俺はっ、俺の大事なものが……!」

「そんなことか根性! オレに任せろ根性! ったく、お祭りなんだぞ! 決まった競技にしか出れねえとかやることちっちぇえんだよな!」

「なんスか急になんでゆるキャラが俺の足をぐるぐる巻きに?」

ゴーグルの少年の持っていたバンドを奪い取ると、根性くんは勝手に自分の足首らしきところと結んでしまった。
おっ、また向こうの組かちょうどいいぜ、張り合いねえと面白くないからな、と意味の分からないことを言っている非公認マスコットはすっかり競技に参加するつもりらしい。

「何とか競走のルールは? 根性。手短にな根性」

「参加者と協力者がこれとこれを着けて、スタート、ゴールと途中の障害のセンサーを全部通って最後の借り物チェックをクリアしたらおしまいです」

もこもこしてるくせに威圧感ハンパない根性くんの気迫に押されて彼は簡潔な説明をした。
足についたバンド、そして手に持ったGPS付きのリストバンドを指さしてからゴーグルの少年は会場内の特設ステージに張られたゴールテープを指した。

「よーしコースはあっちか根性! 干渉数値を気にすんのはスタートしてからだったな根性。
まあ数字聞いてもよくわかんねえしどーせオレの競技じゃないからこまけえこたあいいだろ根性」

「えっあの」

「よっしゃあいくぜ! ハイパーエキセントリックウルトラグレートギガエクストリームすごい……ダッシュ!!」

「ちょt」

いきなり降ってわいた助っ人の登場と勢いについていけてなかったゴーグルの少年は。
一瞬で本当に見えなくなった。

「きゃっ! 衝撃の余波でこれって。もう!」

突然の暴風にスカートを押さえると心理定規はスタート地点の方をにらんだ。
肝心の走者の姿は見えないが、そこ目がけて一直線につむじ風のようなものが伸びていく。

「行ったか」

「あら。他人をわざわざさけるなんてあなたらしくないんじゃない? あのぬいぐるみの中身がどう考えても超能力者だから?」

「嫌なんだよああ言う言葉の通じねえタイプ。人の話を聞く気のないヤツは特にな」

コキンと首を鳴らした垣根はうんざりしたような顔をしていた。
厄介ごとが二つ、二人の前からものすごい勢いで遠ざかっていった。




472 ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 02:53:29.26yXmdwrH20 (4/10)


「おい。何かあっちで派手なのが上がってっけど」

「ゴールしたみたいね。彼は無事かしら」

高さ一五メートルほどのステージの上に作られたゴール地点では派手な三色の煙が特撮ものっぽい爆音と共にたちのぼっていた。
超難度のコースクリアに拍手と歓声が沸き起こり取材のカメラが勝者にレンズを向ける。
競技場のどでかいモニター内では、物理法則を無視していそうな動きではしゃぐ超能力者入りの着ぐるみが暴れていた。

「ちースおわりました……」

砂埃となんだかドロドロしたものと白い粉にあちこち塗れて、体操服に焦げまでつけたひどい格好でゴーグルの少年は観客席にやってきた。
カメラが追い切れていなかったところも含め、障害物コースはなかなかハードだったらしい。

「根性くん大活躍で上位に入ったのはいいんスけどまだ目の前がぐるぐるして…
うーん垣根さんが三人見えるぅうう……あなたが落としたのは金の垣根さんですか、銀の垣根さんですか……金なら一枚銀なら五枚……」

「やだ。そんなにいたら大変じゃない」

「あの着ぐるみどうした」

「ゴール直後になんか係とか警備員に追いかけられてものすごい速さで去っていきました。でもおかげでボーナス付きで得点ゲットっスよ! 
いやー怖かったけど非公認マスコットさまさまっス!! ってなんで二人ともそんな冷たい目なんスか 俺がんばったんスけど?!」

「だって。ねえ?」

「結果出したのお前じゃなくてあの着ぐるみだろ」

何言ってんだろうこいつ、と言う二人の指摘にそうなんスけどねえ?! と叫んでゴーグルの少年は頭を抱える。
圧倒的なレベル差の相手に文字通り必死になってついていった少年の苦労は残念ながらいまいち評価されなかった。


473 ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 02:57:35.51yXmdwrH20 (5/10)


「非アクティブ低フィジカル勢にこんなハードな競技をあてるなんてあいつら覚えてろ。前日のバルーンハンターがうちの種目にあったら良かったんスけど」

「どうなるんだよ」

「えーっと」

……競技開始から一〇分が経過していますがハイペースで風船が割られていきます!
突然飛んでくる球に対応できる選手もいますが……しっかし何が起こってるのかよくわかりませんね?

どうやらどこかのチームに『念動力者』がいるようだけど。遠隔操作が出来るならこの競技相当有利ね。
威力の高い能力で動く標的の頭部に乗せた紙風船を狙うのはかえって危険だ。

見えない狙撃手、序盤から攻めてるけどこんなに飛ばして大丈夫かぁ?!

『空間移動』では精密な計算と高度な演算が必要だけどそう言った縛りがないのも単純な能力の強みだけど。
ほぼ同時に離れたポイントでも攻撃している点からも能力者は複数いるとみるのが自然だろうと……


脳内妄想で都合のいいゲーム展開をざっくりシミュレートすると少年はうんうんうなずいた。
勿論、余計な装備は競技場に持ち込み禁止です、と言われたら地味に一つ一つボールを操作して割っていくしかない。

「ゴーグル有りでいいんなら、誰がやったかよくわからないまま、いい展開に持ち込めそうな気がします。クラスメイトにカメラ頼めばいけますね」

「それって盛り上がんの」

「観客はつまらないかもね。君あっちこっちひどいけど、大丈夫?」

「あー、学校戻って着替えますよ。って、ソッコーでカムバックメールかよあいつらもっと功労者をねぎらえっての……お二人とも、じゃあまたっス」

文句をいいながらもうれしそうな顔をしたゴーグルが行ってしまうと垣根は隣の心理定規にどうする、と声を掛けた。
早くも飽きてしまったようなやる気のなさだ。
ダサカッコ悪く障害に苦戦する選手たちは繰り返し見るほど面白いものではなかったらしい。

「そうね。私も競技があるからもう少ししたら行かないと。あと午後にも、一つあるけど……なぁに」

「いや? 客席から手の一つも振ってやろうか」

「いいわよ? 別にわざわざ見なくたって。そう面白いものじゃないから」

「そうだな」

頬杖をつく心理定規はそのままにして垣根は先に席を立った。

「けどまぁ、暇だからな。さーて、後はどうすっかな」

ナイトパレードは見た方がいいんだろ、とぼやくと垣根はつまらなさそうに欠伸をしていた。
日が暮れるまでの時間潰しに悩み始めた横顔に心理定規がため息をつく。

「あなたこそ所属校で何かやれば良かったんじゃない? 似合わないことしてるあなたなんて珍しいもの。応援くらいなら、してあげてもよかったわよ」

「……そうかよ」

垣根が睨むように見上げた先のオーロラビジョンには懸命に競技に取り組む生徒たちの姿があった。
夢や希望、絵空事ではなく目の前にある勝利をつかもうと汗や泥に汚れながら描かれる青春の一ページが大きく映し出されていた。



474 ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 03:00:58.59yXmdwrH20 (6/10)


『第3レースを開始しています。走者が制限時間内に競技場に戻らない場合はその場で失格と見なされます。参加者の皆さん、ご注意ください』

場内のアナウンスが聞こえる。
競技場からそう遠くない場所で一人の男子生徒が歩いていた。
足取りは重く覇気に欠けた様子で、おまけにふらふらしている。

「戦う前から勝負は終わったんや……こんな借りもん……せめて女子、いやロリショタならやる気もでるんやけど無理やん。
こんなん無理やねんなー。まず、見付からへんって……のぉっ?!」

「あぁん? なんだコラテメェどこに目ぇつけてんだよ」

うつむき加減でぼやいていた青髪ピアスはコントのようなリアクションで後ろにのけぞった。
前からやってきた茶髪に鼻ピアスの男子学生とぶつかってしまったせいだ。
青髪ピアスとキャラが被りそうで被らないちょっと被るキャラ要素をしているが、こちらはどう見ても違う方面でアウトだった。
大覇星祭なんて関係ありまっせーん! みたいなTHE不良な格好をしたお友達がたくさんいた。
スキルアウトのみなさんで、間違いない。

「なんだこれ。借りもの競走? つまんねーことしなきゃならないヤツらは大変だな。見ろよこれ」

青髪ピアスの手から落ちた、でかでかと競技名の印刷された紙切れを拾い上げると茶髪鼻ピアスはそれを仲間に回した。
開いた中に書いてある、二人三脚のパートナー兼借りものは。

『外人傭兵部隊に所属してそうなでかくて重いマッチョマン』

競技の助っ人としては大当たりの借りものでも、開発された能力の評価が極めて高い学園都市の中ではガチの体育会系はなかなかハードルの高そうなオーダーだった。
そのとき。
青ピの前をふさいで笑っていた不良少年達の後ろから。
ゴリラと、フランケンシュタインの怪物のハーフみたいな日本人離れしたガタイの男がぬっと現れた。
仲間の手から紙切れをつまみあげると。
それを読んだでかくて重そうなマッチョマンは、
「……手伝うか?」
そう尋ねて青ピに首をかしげた。
見た目によらず親切な方だったようだ。


475 ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 03:05:16.43yXmdwrH20 (7/10)


(いややぁあああそっち!? 絡むんでもカツアゲでもなくそっちぃ? なんでそこ、見逃してくれなかったん? 
こんなギャップ無駄やん萌えへんもん、ちぃっとも萌えへんから! 筋肉でも巨大でも性別:女子なら別としても!!)

ものすごく大当たりっぽいけど絶対に肩を組みたくない借りもの候補(仮)の出現を青ピは脳内で激しく嘆いた。
引いた借りものが女子でオーケーそうだったら合法的に。
いやルールだから仕方ありませんがなにか? と堂々とNO職質、YES密着だった筈なのに。

やっぱり日頃の行いとかあるんかなあ、カミやんの不幸って感染るんかなぁ……と青ピは乾いた笑いを浮かべていた。

「あははは…大丈夫やって。ボクも丁度サボったろーと思っとったとこで……」

そう言って不良たちにさよならしようと背を向けようとした青ピだが、そこで街頭のモニターが目に入った。
近くの競技場の様子を流しているそれには、クラスの奴らと小萌先生が応援しているところも映っていた。

「小萌せんせー、みんなぁ…ボクは、ボクはぁああ……なんて、なんてことをッ!!」

今まさに私欲にかられて欠場してやろうと目論んでいた人面獣心鬼畜青髪ピアスの邪智暴虐非道の所業など彼らは知らない。
ただ、青ピが競技場に戻ってくることを。
そして、全力でゴールテープを切ることを待ち望んで、いや信じてあの場に立っているのだ。
「みんなの気持ちを裏切れない」と「マッチョマンはダメ。マッチョマンはダメ」の相反する感情にさいなまれて青髪ピアスはその場に崩れ落ちた。

「ううう……この青髪ピアスにはみんなに合わせる顔なんてないんやッ」

「立て。仲間の所に戻るんだろう」

その肩を叩いたのは。
パーフェクト借りもの要素を体現したマッチョマンさんその人だった。

「駒場のリーダーが」

「出場するぞおまえらあ!!」

「っしゃあ! アレ用意しますか?」

「構わん。小細工は、無しだ」

どうやらリーダーらしいゴリマッチョ氏が手下っぽいやつに首を振ると、周りの少年たちのテンションがますます上がった。
よっしゃカメラ用意しろ、とかなんとか勝手な声援が上がりはじめる。
青髪ピアスの目の前でものすごい勢いで退路が断たれ、いかっちいオニイサンとなかよしこよしおてて繋いで出場への道に向けてルートが狭まっていく。




476 ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 03:16:51.74yXmdwrH20 (8/10)


「ガキ共に勇姿を見せつけてやってくださいよ!!」

「……行くか」

何が決定打だったのか。

それまで陰鬱だった男の声が一段と真剣さを増していた。
なぜかすっかり参加する気も覚悟完了しているマッチョマンさんを前に、とてもじゃないが青ピがお断りできる空気ではなかった。
きっと言っても周りの奴らが聞いてくれないし、今度はそれでスキルアウトの団体様にボコボコにされそうである。

(だがしかぁあし! ばっちりゴール出来たら小萌せんせーにほめてもらえるやん? なでなで付きでッッ!! 
おまけにクラスのヒーローになって帰ったらもうそれこそ女子の矢印、フラグの総取り……に、とどまらず! 学園都市さらにはテレビの向こうの女子の溢れるラヴがっ……ふはは、カミやんにばっかおいしい思いはさせられへんよねーっ!)

想像妄想たくましく、一気にテンションをぶっちぎらせた青髪ピアスは勢いよく立ち上がった。
その横に不良少年のリーダーが並ぶ。
青ピも背は高い方なのだが。
この「気は優しくて力持ち(おまけに顔怖い)キャラ」っぽい御方は更に縦にも横にもでかかった。
革のジャケットの下はプロアスリート並みに鍛えられた鋼の肉体だろうと素人目に見てもわかる。
障害物競走にはものすごーく有利だろうが、たとえ足手まといだろうとパートナーはかわいい女子がいい。
二人三脚の理想展開、足がもつれてラッキースケベなんて冗談じゃない。
もし青ピが全力で転んでも相手の軸は一ミリもブレない気がする。
競技内容におあつらえ向きすぎる屈強なパートナーをゲットした青髪ピアスはこの試合には勝てそうだが、男としての勝負に負けていた。

「やっぱりいーやーやーぁああああ!」

肩をつかまれ、ちょっとひきずられるようにして会場に戻っていく青ピを、盛り上がった不良少年達は大きく手を振って見送っていた。



477 ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 03:28:04.32yXmdwrH20 (9/10)

ドーモ。

青ピ「って言う夢をみたんやけど。いやー、おっかなかったわー」

うんまたなんだすまない。
根性つながりでモツ鍋さんでもよかったんだけど謎解の方がロリの頂点競ってたからゴリ場さんにしました。
ロリの味方とロリの天敵が手を取りあったありえねー大覇星祭いっぱつネタでしたどっとはらい。

いつからレスもしてなかったっけ…と1は自分のふがいなさを見下げ果てつつ小ネタで延命とお茶を濁そうと目論みます。

前回のスクールもの本編分は、卵の割れる音で新耳袋の怖い話を思い出した、昔のゴーグルくん能力ネタリサイクルもちょろっとしたやつ。
そんときのありえねーネタもみつかったから供養しとく

垣根「エナジードリンクって。こんなん飲んでうまいのかよ」
ゴーグル「試してみます? これは通販で買ったマジモンなんで、その辺のコンビニのより効きます。シュガーフリーのもあるんスけど」プシッ
垣根「ふーん」ゴク

バサッ

ゴーグル「え?」
垣根「なんだこれ。あれ? 消えねえ」
心理定規「何してるの? もう気はすんだんじゃなかった?」
垣根「いや…なんか翼が勝手に、っつうか…しまえねえんだけど」
心理定規「それって収納するものだったの?」
ゴーグル「あのCMほんとだったんだ? レッド○ルすげええええええ!」

当然の如く没。翼がーほーしーいー

チャンスをみつけてまたきますなるはやで


478以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/15(木) 16:19:14.84oPSqwEyx0 (1/1)

パズデックスの垣根記念カキコしようと思ったら来てた、乙
落とさないならどんなスローペースだろうが待ってる
全レスも待ってる(ニッコリ


479以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/15(木) 21:45:47.27i75RJAiAo (1/1)

SSの更新万歳!Hurrah! Ура!


480お久の本編です ◆q7l9AKAoH.2015/10/15(木) 23:59:09.62yXmdwrH20 (10/10)


午後のファミレスの一角。
比較的静かな奥のテーブル席を『スクール』のメンバーが陣取っていた。
その前にはどれも中身の少ないグラスが並んでいる。

「……で、今度『スクール』のメンバーの枠が埋まるかもしれねえって話だ。
派遣業者からのレンタル品でも、頭数が欲しいってことなら……その内デカい仕事でも回す気なんだろ」

先程までの電話の声の話を鬱陶しそうに垣根はまとめたが、その顔はちょっと楽しげだった。
一方、隣の心理定規は唇を尖らせてアイスティのストローを弾いていた。

「そんな話をさせる為に、あの人こんなところまで呼び出したのかしら」

「まあまあ。最近活動してなかったじゃないスか」

「その割にあなた達と顔合わせてる気がするけどね」

「確かに高エンカウントっスねえ。そうだ。垣根さーん、あれから艦っち全然やってないっスよね? やりましょうよー」

「……何で知ってんだよ」

むっとした返事にゴーグルの少年はカバンを持ち上げた。

「こう言うのは……フレンドのログイン状況が見えるんスよ。ほら、ここです」

テーブルをはさんでタブレット端末の画面を見せながらゴーグルはそう言った。
ユーザーネームの横には最新のログイン情報が表示されているが、垣根のものは他と比べて随分と以前のものだ。

「言ったろ。飽きた」

そんなあ、まだ全然っスよこれから面白くなるんスよボイス聞かないとさびしいなあってその内生活の一部になっちゃうんスよ? 
いや、垣根さんにこっちの道にはまってほしいんじゃないんですけどね?
と少年の無駄に熱い叫びを前に垣根はうざったそうに片手を振った。

「お前自分で作業ゲームだっつってたろ。何が楽しいんだこう言うの」

「好みのキャラゲットしよう、出たら今度は育てよう、とかそう言うのきっかけにするじゃないスか。ログボとかでもいいんスけどね。
こう言うのは、スタート押しちゃえばなんとなくで続くんス。その内ランキング上位とか報酬とかが見えてくるとまた幅がっスね」



481 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:12:29.68cKXKQ63x0 (1/14)


「こんなんに好みもクソもあんのかよ」

ゲーム画面に並んだ萌え系少女キャラの画像を前に垣根は首をひねっていた。
そうは言っても、絵師も違えばキャラタイプもさまざまでこう言うのには、
大所帯のアイドルよろしくどこか一か所一人くらいツボを狙い撃ちしてくるのがあると言うのがセオリーで醍醐味なのだが。

「ツインテが好きだー。五人いたら緑の子! とか。縦セタ最高、ツンデレはやっぱ王道だよなーとか……そういうのないっスか」

「そう言うので好みを判断すんの?」

「あー、そうっスよね。ですよね……」

新人提督様にはちっともピンとこなかったらしい。
心底不思議そうな目をしている垣根の反応に、なぜかゴーグルの少年は打ちのめされていた。
軽く額をおさえていたかと思うと、心理定規に声をかけられて頭を上げる。

「いや…非オタとのフィルタリングの違いを再認識して俺は今ちょっとした衝撃を受けてます。そうっスよね……普通は属性とか気にしないんスよね?」

高身長イケメンクール俺様ホスト系ミステリアス悪役リーダーポジ規格外能力高パラ底が見えない大物感ギャップメルヘンセレブ臭超能力者謎のチェーンetc…
本人にはハイスペックで多彩なタグ付けがされそうだが『スクール』のリーダーには縁のない知識かもしれない。

「はぁ。これ、お願いしていい? 今度はあったかいのがいいな」

「はいっスー! 垣根さんは?」

「炭酸」

男子の意味不明トークを不審そうに伺っていた心理定規はにっこり笑ってグラスをゴーグルの少年の前におしやった。
暗部のミーティングも終わったところで、ゴーグルの少年はファミレス仕様いつのもお仕事に取り掛かるべくドリンクバーへと向かっていく。


482 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:15:45.92cKXKQ63x0 (2/14)


「あぁ? 何だよ。話は終わったんじゃなかったのかあの野郎」

着信音を鳴らしながら震えるポケットに向かって悪態をつくと。
うるさい携帯電話を片手に垣根は席を立ってしまった。
その隙に、と言った様子でゴーグルの少年は腰を浮かせた。

「そう言えば、今日はいつもの運転手じゃなかったっスよね。まさか、またコレですか」

首元を指先で一閃するジェスチャー付きでひそひそ尋ねたが。
心理定規の話によるといつもの運転手はただの休みだと言う。
小声で不安そうに聞いてきたゴーグルの反応が面白かったのか、彼女はくすっと笑って目を細める。

「心配? 大丈夫よ。彼もそう無駄なことはしないでしょ。前にやって懲りてるはずだから」

「あん時は、なかなか替えに出来そうなのが居なくって垣根さんイラついてましたもんね」

下部組織から探さなくても、腕のいい専門の業者を使えばいいじゃないかと少年は遠い目をしてぼやく。
上司が目に見えて不調なのは職場の空気も悪くなるし、人員の精神衛生上もよろしくなかった。
そんな経験でも思い返しているらしい。

「そう言うのって一般人ばかりじゃなかった?……ねえ。前の運転手さんのこと、覚えてる?」

「ハイヤーの人っスよね? んーまあ。礼儀正しい、普通っぽい人でしたよね」

「普通。そうね、お子さんは二人、男の子の方は小学校に上がったばかりで娘さんは三つだったかな。きっと、私達みたいにはなってほしくないでしょうね」

カップにポーションのミルクを注いでいた心理定規はそう言って目を伏せた。
持ち上げたスプーンから小さくしずくが落ちる。

「なんでそんな詳しいんスか」

「別に私が聞いたわけじゃないわ。ああ言う人ってつい自分から話を振っちゃうのは職業柄かしら? 
特に男の人は、狭い空間で相手が女の子とみると安心感でも与えたいのか何気ない話題っていうのを頼んでなくても持ち出したがることがあるのよ」

「へえ~。そうなんスか……うわ、俺そんな覚えねーやって思ったらそもそも女子に振れる一般受けしそうな話題も、そのシチュも前例なかったっス」

「得意げにしないで。で、そんな普通の人が、わざわざこんな仕事に関わってたのも……まぁ、よくある話よね」

知ってるけどなぁに? みたいな顔をした心理定規からすらすら出てきたプライベート情報に目を丸くしたゴーグルに首を振ると。
呆れたような顔で眉をあげながら、情報網の広そうな少女はカップを傾ける。


483 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:31:08.73cKXKQ63x0 (3/14)


「そう言えば心理定規も運転出来るって聞きましたけど。立候補したりとか…」

「気乗りしないわ。仕事中に余計な気を使いたくないし、もし事故に巻き込まれたら困るもの」

「ですよねえ」

リスクをわざわざ増やしたくないと語る少女にゴーグルは同意したが。
どう見ても学生っぽい女の子が運転席に座っていることの方が、本来は問題なはずだ。
カップを置くと淵に付いてしまったリップを指先でなぞりながら彼女は続いてため息をもらした。

「前みたいに彼が一眠りできるくらいのテクニックを求められるのも、ね。
まぁ、そんなこと言い始めたら今以上に…ものすごく厳選しなきゃいけなくなるんだけど。何とか妥協してもらいましょう」

それか、今度の新入りさんの運転技術に賭けてみる?と茶化した。
そんな話を聞いていた少年は、納得するどころか改めて疑問を深めたらしい。

「それをすてるなんて…じゃなく、なんでまたそれを切っちゃったんスか。垣根さんも。確か……ちょっと言うこと聞かなかっただけですよね?」

入手の難しいアイテムをうっかり処分しようとしたプレイヤーに警告するゲーム内のメッセージを口にしかけた少年は、ますますリーダーのパターンも思考もよくわからない。
そんな顔を心理定規に向けた。

「さあ? あえて言うなら…あの人が暗部の人間じゃなく、普通過ぎたのが原因じゃない? 出過ぎた真似をして、リーダーの言いつけがきちんと守れないのは致命的よ」

ハンドルを握れなくなった運転手なんて置いておけないでしょ、と当たり前のことを疑問にも思わないように彼女は口にした。
同情めいたものも感慨もそこには感じられない。




484 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:35:00.41cKXKQ63x0 (4/14)


「あれ。垣根さんがしたんじゃないんですか? ビジネス的な意味だけじゃなく物理的に切り捨てたんスよね」

「そうよ。最終的には…ね。命に関わるほどのものでもなかったし、事故扱いで彼にはちゃんと上から手当てが出たみたいだけど。
もうこんな仕事は出来ないでしょうね。したくもないでしょうけど。そうだ、私たちがそんな目にあっても災害時の保険みたいなのは適応されると思う?」

気軽な思い付きとでもいいたげに少女は可愛らしい仕草で首を傾げた。
冗談なのか、本気なのかわからない。
そもそも想定された事態が、あまり考えたくもない類のものだ。
一応は、組織の頂点に据えて掲げている人間からそんな目には合わせられたくない、と言う気持ちはあるだろう少年は。
あえて真面目ぶった顔で彼女の問いに腕を組んだ。

「天変地異だと場合によるんですよねー。でも隕石が頭の上に降って来るよりはありえそうで嫌っスね」

「戦争だと免責なんだっけ。死んでもおかしくない状況では仕方ないのかしら」

「垣根さん戦闘能力は充分そっちで通用するクラスっスけど。うーーん。そう言う意味じゃ、俺たち暗部はいつ何が起きても、ってとこありますよねえ。その辺は自己責任で、って感じっスかね」

「まぁ、私が使えないのにそんなものがあってもね。それでブランドの新作が着れるわけじゃないし」

「同感っス。運よく生還しても入院してる間に録画予約がふっとんでたりしたら川向こうのお花畑にもっかいダイブしたくなります」

ブラックなジョークの体でオチをつけたところで、心理定規は通路の先をみると一度席を立った。
奥のシートに座った垣根はおしゃべりしていた二人を見比べた。

「何の話だ?」

「使えねーのに金だけあっても困るんで、それよりは万一ん時に積み荷を燃やしてもらうことを考えねえとって話をっスね」

「なんだそりゃ」

災害や天変地異、はたまた世界規模のドンパチとある意味並べられそうになっていた一個人が戻ってきて。
縁起でもない、くだらない雑談は終わった。



485 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:43:15.89cKXKQ63x0 (5/14)


また着信音が鳴る。
またしても出所は垣根。
今度はスマートフォンだった。
だが垣根は通話はしないで画面を触っていた。

「あれ。出ないんスか」

垣根はちょっと面倒そうな顔をすると、
「こっちはプライベート用だからな」と言って画面をスライドすると着信を切った。

「放っておいていいんスか」

私用の電話なら余計に出ればいいのにと思うところだが。
気をつかっているのか、嫌なのか。
垣根本人は、登録してねえ番号には出ねえ、と首を振った。

「迷惑なラブコールだよ。心底ウンザリしてるんだが、一つ着拒するとすぐ別の番号から掛けてきやがる。こう言うのは無視が一番だ」

「えっ。垣根さんにそんな人がいたんスか?」

予想外の、「暗部のリーダーにまさかの恋バナ浮上か」、「お相手は某アイドル似の一般女性!?」なんて三面記事の見出しみたいな話題の予感にゴーグルの少年は食いついたが。
口にした本人は楽しいどころか、渋い顔をしていた。

「そんなんじゃねえよ。言葉通り受け取んな」

「ああ。確か相手は……男の人だっけ」

「え」

またしても訳知り顔、事情通の心理定規さんの問題発言に、ゴーグルの少年は困った顔でしばらく二人を見回していた。

「垣根さん……イケメンも大変なんスね。それともストーカーっスか?」

「ばーか。違えよ、だからそんなんじゃねえっての」

「あなたがおかしな言い方するからだと思うけどな。でも熱烈なラブコールには違いないんでしょ?」

なんなんスか、って言うかまた二人でひそひそバナシっスか? とゴーグルの少年が騒がしくなりはじめたところで。
垣根は気忙しげに髪をかきあげた。
不服そうな視線を向けられた心理定規は私? 関係ないわ、と言わんばかりに肩をすくめる。



486 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:45:25.01cKXKQ63x0 (6/14)


垣根は眉間にしわを寄せたまま大きく息を吐いた。
ものすごーく忌々しげに自分のスマートフォンを睨みつけてからやっと口を開いた。

「潮岸だよ。統括理事会理事の一人。ったく、番号も部屋も前に変えたんだがな」

「な、何でそんな人から? 『スクール』じゃなくて垣根さんに直電が?」

突然のビッグネームにゴーグルの少年はガタッと体を起こした。
知り合いに超能力者と言うのも一応はかなりのものだが、「組織のリーダーがめっちゃすごい人」と「名前は聞いたことあるなんかすげーえらいひと」では随分印象が違うらしい。

「軍事関係はあの人の仕事みたいだから。彼の能力を活かして色々作りたいんだって。前から声は掛けられてたみたいよ。プレゼントも随分来てるんでしょ?」

なんて言いながら。
垣根がいつになく困った状況にあるのを見て心理定規は楽しそうに笑った。

「全部突き返してるぞ」

「それ。この前も『スクール』傘下の構成員の子をつきあわせてたよね。理由は伏せて、わざわざあなたの部屋まで様子を見に行ったんでしょ?」

その言葉にゴーグルの少年はピンと来た顔をした。
夏休み前後、このリーダーは仕事もないのにやけにあちこちの『スクール』の隠れ家に顔を出していると見たり聞いたりしていたのだが。

「もしかして垣根さん、最近こっちによくいるのって」

「ああ。そうでなくても、俺名義のとこにはよく交渉人とかがうろついてんだ。暑くなるとヤブ蚊も増える。んな所に帰るのも面倒だろ。そう言う連中を一々熨斗付きで帰らせるのも最近じゃ飽きてきたし」

垣根は今度は気軽に答えた。
ひょっとしなくても、自分の部屋にあまり帰っていなかったらしい。
学園都市内に暗部組織のものとは言え、勝手に使えるセカンドハウスみたいなものがゴロゴロしているとあまり不自由は感じないのかもしれないが。
聞いていたゴーグルの少年は、おかしな話だと言いたげに眉を寄せた。
そして。
超能力者の倍返しなんて想像するのも恐ろしいのだろう。
詳しく中身を質問するような真似は自粛したらしい。

「大丈夫スか垣根さん。牛乳とか冷蔵庫の中のもんダメにしてませんか」

「俺の冷蔵庫は最新式だ。まぁ、腐る様なもんも放置してねえけど」

ふと。垣根が首を傾げた次の瞬間。
バキバキと音を立ててゴーグルの前にあった空のグラスが上からきれいに潰れていった。
一瞬前まで容器だったのに、今はちょっとおしゃれなコースターのようなものに変貌している。

「なんスか?! 俺何かしましたっけ?」

「ムカついた。何でかはよくわかんねえけど」

場を和ませるつもりだったのか適当に振った話題が予想外の方向に転がってしまった。
加害者本人もよくわからない怒りをぶつけられた不運な無機物に、少年は申し訳なさそうに目をやった。



487 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 00:51:54.29cKXKQ63x0 (7/14)


「幾らなんでも個人情報漏れすぎじゃないっスか? 待ち伏せプレゼント攻撃とか芸能人の出待ちじゃないんスから」

「そうかな。まぁ、家に押しかけるのは確かにちょっとやり過ぎな気はするかも。向こうから呼びつけるくらいはしそうだけどね」

「第四学区のお高い料亭で会談とかっスか。かっけー」

心理定規とゴーグルがのんきに議論しているのを。
垣根は腕組みしながら見ていた。

「っつうことは、少なくともお前らが売ったんじゃねえのか」

何気ない垣根の言葉にゴーグルの少年は激しく首を振った。
ついさっきの物騒なたらればトークが頭に浮かんでいるらしい。
もしどこかから取引をもちかけられて、どんな魅力的な報酬が用意されようと。自分の命には代えられないだろう。
この組織のリーダーを裏切るなんて真似をしたらそんなものはまとめてあっさり消し飛ばされてしまいそうだ。
裏切ったなんて真っ黒間違いない事態では出過ぎた真似、で済む様な余地もない。

「んなことしませんよ! ってか、知らねえし……ええー……垣根さん俺ら疑ってたんスか。そんなに信用ねえっスか」

「『スクール』の関係者がリークしてたんなら、私達の使ってる隠れ家なんて真っ先におさえられてると思うけどな。
まあそんなことしてもすぐに上にばれて、悪い子はとっくに首を切られてそうじゃない?」

「それもそうか」

一人へこむゴーグルの少年を放置して。
話を続けていた二人は首を傾げ、肩をすくめて顔を見合わせた。


「先回りしてこっそりサプライズってのは、好意のある相手だから喜ばれるんスね。そうじゃなけりゃただのこわーいストーカーっスよね」

アニメや漫画のような展開は補正のない現実世界では通用しないのだと深くうなずくゴーグルの少年。

「学校の先生が生徒の連絡先や住所を知ってるのは別におかしなことじゃ無いんだけどね。きっとそういう人は情報源なんてあちこちに持ってるんでしょうし。まぁ、後は本人のモラルの問題と感覚の違いになっちゃうかな」

悪気のない押しつけが好きな人っていうのもあり得るのよね、とひとまず疑問の落としどころを具体的に提示してみる心理定規。

「確かに理事って言ったら、学園都市って学校の偉い先生みたいなもんっスけど。納得しちゃっていいんスかこれ」

「この街で俺らが管理されてるなんざ、今にはじまったことじゃねえだろ。わかり切ってることを今更ゴチャゴチャ言うんじゃねえ」

そう言うものだ、と知っていても割り切って、まして愉快な気持ちにはならないだろう。
垣根はうんざりしたように息をはくと氷のなくなった薄いコーラを飲みほした。



488 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:00:57.44cKXKQ63x0 (8/14)


「お偉いさんからプレゼントって何が来るんスかね。中見ました?」

「ここのさぁ……リストに良さそうだと思ったもんを入れといたら、たまに何か持ってくるみたいなんだよな。全部確かめてるわけじゃないけどさ」

「カッキーさんの欲しいものリスト……怖っ。こんなもんまでチェックしてるんスか? 学園都市のサンタクロースか足長おじさんか知らないっスけど有難迷惑っつか怖いっスね。
俺こんなん人にみられたら恥ずかしさにのたうちまわってプライドの粉砕が死因でニュースになっちゃいます」

「そりゃ安いプライドだな」

スマートフォンで垣根が開いて見せたのは、よくありそうな通販サイトだった。
その中の会員ページの一部をのぞくとゴーグルの少年は顔をしかめる。

「こんな薄気味悪い真似されて、もし物贈られてもだぞ? 喜ぶとか本気で思ってんのかな。こっちの情報が筒抜けだって脅しにしてもちょっと遠回しすぎねえか」

「潮岸って、確かそれなりに高齢だったわよね」

「ボケか。なんだ、施設にブチこんでジジイの見舞いに死に花でも贈ってやりゃあいいのか。それともあれか。お望み通り頭の上から『未元物質』でも降らして欲しいってか」

苛立っているのか、ふざけているだけなのか。
垣根の発言はいつになくテンションが高かった。

「そんなツッコミ死んじゃうっスよ、そこはタライにしときましょうって。
じゃあ反・潮岸派の妨害工作って線はどうスか。潮岸のせいにして、垣根さんに嫌われちゃえばいいとか思ってるのがいたりして。
どっちにしろリストを非公開にするか、ダメ押しでアカごと消した方がいいかもしれないっスね」

「嫌がらせは別人とか、余計面倒じゃねえか。相手が誰だって構わねえけど…いい加減泳がすのも甘すぎんのか」

じゃあ潰すんですか、と聞かれて垣根は首を振った。

「馬鹿の相手で消耗したくねえ。関わるのも面倒なんだよ」

その後、「寝床があちこち変わんのも意外と面白えぞ」と言っていたので今の状況も、もしかしたらそれなりに楽しんでいるのかもしれない。

「このショップでID紐付きのアドレス使ってました? 学生IDって『書庫』や他のデータベースもたどれるんで。
セキュリティさえなんとかすれば、個人の開発記録までいけるらしいって噂っスから。最新の現住所くらい楽勝じゃないスかね」

「いや。別に作った方だ」

「じゃあ、サイトの提携先と共有してた情報から漏れたとか?」

「そう言う面倒なことするか? 俺達だって似たようなことは出来るんだ。その気になりゃ個人情報くらいなんとかなるだろ」

んなこと気にしてどうすんだよ、と垣根はあんまり中身のないここまでの議論をまぜっかえした。
いやー出所不明ってもやもやしないっスか、と言いながら頭を悩ませていたゴーグルの少年はふと。
あることに気付いたのかハッとして顔をあげた。

「もしかして……いつもマネーカードなのってそのせいっスか」

「別に。まあこう言う時にも便利だぞ」

「クレジットカードは買い物のデータが残るからね」

「使い捨てで替えが利く、手軽な方が何かとな」

薄いケースに目をやった垣根は大したことがないようにそう口にした。




489 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:04:57.26cKXKQ63x0 (9/14)


「相手がほんとに理事かどうかは別として、そう言うストーカーっぽいのに見られてる前提でなんか牽制とかしときます? なんかいい害虫駆除はないっスかね」

「こう言うの入れておいたら? 後は盗聴器チェッカーとか。持っていても便利だけどね」

そう言って心理定規の鞄の中から出てきたのは携帯用の防犯グッズだった。
実際に動きがなくても、素振りだけでも相手の警戒は引き出せるのよとすっかり用意周到キャラになりつつある少女は信ぴょう性二割り増しで語る。

「ちょっとアレな本とかどうっスか? いかにも大人の嫌いそうな、無駄に殴りあってそうなのとか」

次にリストに追加されたのは「バイオレンスヤンキー列伝~ムカツクヤツらのオロシ方~」のコミック全巻大人買いセット。


「よくわからないものがあったらどれが本命か混乱しないかな」

「ミステリのガイド完全犯罪指南毒殺編改訂版」と「サイコパスに学ぶアリバイ作りマニュアル『そうだ、殺そう。で後悔しないためのアフターケアの重要性』」

なんて人生でもそんなに役立ちそうにないハウツー本が二冊。
読者層のニッチが狭すぎて何故発行したのかもちょっと理解出来ない感じのものだ。

「確かに意味わかんねえっス……あ。こんなのありましたよ」

「大人のピタ◯ラ装置その5~ハピ◯リ風事故発生装置・良い子は真似しちゃいけません~」なんて愉快なタイトルのDVDが一本。
木を隠すなら森のなか、ないなら作ってやろうぜ! とばかりにそうやって、別に欲しくもないものをいくつも追加された本人は呆れた顔で向けられた一覧画面を眺めていた。

「人のリストを香ばしい中二思考のガキの本棚みたいにしてんじゃねえよ。ったく、ここまでくるといっそ笑える」

「相手は運送屋じゃなくてわざわざ人使って持って来させるんスよね? 重くてデカいのわざと入れて、持って帰ってもらいます? 
冷蔵庫とか家電とか。後は時期的に生ものっスかね。パンパンに膨らんだ世界最恐のニシンの缶詰めとかどうスか。お、こっちにパーティ用食べ頃指定が出来るやつが……」

「出前や宅配ピザをたくさん送り付ける嫌がらせじゃないんだから」

「ピザ送り返してみます?」

「そういうのは住所がわからねえと駄目だろ。なんで直で持ってくんだと思ってたが、業者使うとデータが残るからそっち対策か?」

「手渡しだとお使いの子にただご馳走してるだけになっちゃいそうね」

そんな風に。
三人揃って散々ふざけた話のネタにしていたところで、ゴーグルの少年は急に真面目ぶって腕を組んだ。

「でもしつこいようならやっぱ対策したほうがいいっスよ。警備員に話し通したり、訴え起こすのもまるっきり無駄ってことないんじゃないスか」

ソッコーでもみけされそうっスけど、拒否の意思は伝わりますって、と改めて進言したがトラブルの中心人物はそんな対処は不満そうだった。





490 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:13:43.73cKXKQ63x0 (10/14)


「ああ言う連中に頼るくらいなら自分で何とかするっつうの」

「いくら理事とのコネクションが欲しくても、お互いに利害が合わないならむしろ邪魔よね」

軽犯罪じみた馬鹿な真似を理事本人がしているか、と点はさておいて。
大きな影響力と権力をもった人物が、垣根個人とつなぎをつけたいと申し出ているのは事実だった。
学園都市理事会の一員の後ろ盾、なんて得ようと思って手に入るほどのものではないが。

恐らく求められるだろう対価が『未元物質』だと言うのは垣根にとって大きな問題だろう。
この街の学生たちならきっと少なからず共感出来るはずだ。
特に、高いレベルにいる能力者にとって自分の能力の成果を開発官でもない他人に好きにされると言うのはあまり気分のいい話ではない。
人の役に立つ、世界の為に、技術の発展に、とそれらしい美辞麗句を並べるならならまだしも。
当然のように旨味を利用する気でいる、と言う下心が透けていそうな。
疑念を抱かせる相手にはそれは難しい。

能力としてだけでなく資源としてみても『未元物質』は魅力的で希少な存在だ。
それを占有している垣根帝督を第二位たらしめているのも学園都市における有益さ、その点によるところが大きい。
それを十分に自覚しているからこそ、垣根は相手が理事であってもやすやすと交渉には応じない様子だった。
暗部でつまらない雑用をこなしていても。
自身の価値をポンド単位でバターの様に切り売りしたがるような趣味はないのだろう。

「こっちが下手につついてかえって手間がかかるのも癪だ。今の所はくっだらねえ話のネタにしかならねえな」

垣根帝督が、それこそ本気で取り合えば今起きている問題は解決するだろう。
その問題が片付いても、どこでどんな風にそのしわ寄せが生じるかは不明。
そもそも相手の目的や真意さえ見えていないのだ。
そう言った不確定な部分が出そろうまで待っているのか。
話をするのでさえ、こちらに優位な絶好のタイミングを見極めるためにあえて放っておいているのかもしれない。
まさか、すべらない話の鉄板にでもする気で温めていた、と言うことはないだろうが。
案外、本当にただ面倒なだけなのかもしれない。

「これ可愛い。バッグはピンクもいいなあ」

「あ、あのゲーム新作出てるんスね。次ちょっと見せてくださいっス」

暫くスマートフォンを覗いていた二人はそのうち勝手にショップのページをあちこち開きはじめた。

「お前ら幾らなんでも調子に乗って変なもんばっか入れんじゃねえぞ? 悪趣味な馬鹿に俺の趣味が疑われたらどうすんだよ」

もし届いても受け取らねえぞ、と釘を刺してから垣根はスマートフォンを回収した。
どこか気の抜けた、苦笑いでそれをポケットにおさめる。


491 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:15:22.16cKXKQ63x0 (11/14)


店内が混んできて、あたりはがやがや騒がしくなってきていた。
ゴーグルの少年がドリンクバーの前に出来た列に並んでいると後ろから背中をつつかれた。
ついさっきおかわりはいらないと言っていた心理定規は、空のカップを持ち上げて席の方を示した。
テーブルで通話中のリーダーに気を使って席を空けてきたらしい。
持っているのが携帯電話、と言うことは迷惑電話問題ではなく仕事がらみだろう。
どっちにしろ彼にとってあまり愉快な話ではなさそうだ。

「まさか垣根さんにそんな事情があったとは。知らないとは言え俺、相当邪魔してたんスねえ」

「ああ、君結構隠れ家使ってたものね」

「でもひとこと言ってくれたって良くないスか? そしたら被んない様に気を付けるくらいするっつうか。隠すほどのことっスかね?」

「カッコ悪いのは嫌なんだって。話をした時も相当渋ってたし。男の子はほら、面子とかそう言うの気にするでしょう?」

「超能力者って大変ですね」

「彼は特に、かな。イメージとかこだわる方みたいだし」

ちらっと後ろを振り返った少年は、心理定規にちいさく手招きした。

「さっきやけに静かでしたけど、もしかして俺に余計な話したから怒ってます?」

「どっちかって言ったら……悔しいんじゃないかな。私たちに弱みを見せたと感じてるのかもね」

「リーダーって、大変なんスね。いやあ俺手下ポジでよかったあ。隠しごととか緊張感とか重い空気苦手なんで。あ、心理定規は何にするんスか」

能力でグラスを持ち上げボタンを押して、一度に三人分のドリンクを用意していたゴーグルは、短い通知音にスマートフォンを取り出した。
それに心理定規はあからさまに嫌そうな顔をしてみせる。

「君は、もうちょっと気にしてもいいと思うよ。周りの目とかその辺も」

「趣味のことなら大丈夫っス。俺はそういう路線なんで」

カバーからストラップまで『痛』仕様な少年はわかりやすいオタク属性の目印と、飲み物を乗せたトレーを持って席に戻っていった。



492 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:33:04.32cKXKQ63x0 (12/14)

ドーモ。

垣根ハロウィンコスプレデビューおめでとう!
お祝いしたかったけど小悪魔なみさきちが二枚もきただけでしたちくせう水泳部もアイテムも揃ったし軍覇もきたしノーマル垣根が増えたよちくせう
どうせ女子はのちのちカナミンショップに並ぶんだろうにな!むしゃくしゃして投下した。今は心臓が痛い。

equ.darkmatter関連で一枚噛んでそうだよなと前々から思ってた潮岸の絡め方がわからなくてこのSSではこうなりました。
田舎のじいちゃん系お土産攻撃(善意)もしくはstkアピール(悪意)なのかは現在真偽不明で。すいません偉い人なのにネタにして。

>>502くらいでまた安価とろうかなと二か月くらいまえは思ってたんですけどね。
もちろん前のも消化はしますがここんとこペースがひどいのでどうしようかなと思っとります。
ずるずるしてるデレメルヘンは次の予定です。おまたせしてますが期待値ハードル低めでオナシャス

この際まとめてレスも

>>400
そうですね!未元物質は最高です。
常識は通用しねえだからピカソでもよかったんだけど原型ありだと再現がすごそうじゃん。
その分削板が爆発した。芸術はばっくはつだー。
まぁオフ時のシェリーさんの趣味がわかんないからな。フォークとチョコパンで感動する人だし。

>>401
えーと貴方は初めまして。のあれをやったほうがいいのかな?めんどいからいい?
垣根がデレてるっていうか……うん。
まだ『滞空回線』は知らない体で書いたからねー。
知ってたらあんなこと言わずに何してやがったさっさとしろ!ってキレると思う。
電話のヤツもそれまで何もせずに放置してた訳だし。
1の頭の中はフツーです。妄想力はそこそこ。レベル3くらい。日常でSS書くには便利だと感じられる強さ。

>>402
ここのは名前はゴーグルだけど全然別もんだしな。まあそれ言ったらキャラみんなそうなんだけど。結局、そこは原作が全てって訳よ。
垣根愛か。そっちもレベル3くらいかな。自分でSSスレとか立てちゃうくらいの強さ。

>>403
15巻終了時でイラストが黒くされてた麦野、砂皿も後で実は生きてました!ってなってたからゴーグルは戦闘不能、生死は不明でいいんだろうけど。
ステファニーの活躍の為に、生死不明で退場から復活を遂げた砂皿と違って、今後確認する理由がないから生きててもゴーグルは原作で出番はないだろな。

>>404
1は普通中庸ノーマルストレートでーす。
そっち系のネタは、どうせなら笑えるのがいいです。

>>405
垣根はあんまり感情移入とかしなさそうだよなーと思ったら熱さの足りない上辺きれいな仮面の秀才みたくなった。そこまでやったら盛りすぎだけど。
常識外のことができる筈なのにその常識が邪魔をするのか…かっこいいな!!

>>407
君はあれか1のソウルメイトか?フォロワーか?ツボ過ぎて素敵だとりあえず笑った。
ビーカーから飛び出すアレイスターってなんかすっっごい懐かしいんだけどどこで見たんだ。みんなやっぱ考えるよな。
理事長はビーカーinでもout+衝撃の杖でもいつか実装されないかなーとたのしみにしております。サイド問わず味方攻撃超特大みたいなボーナス仕様のスキルで是非。

>>407
常識に精通しようとして常識問題っぽいマニュアル本読んだり、『スクール』内でも「今のおかしくねえよな?」ってつい聞いてしまう垣根を想像してしまったがちょっと悲しいだけだった。
自分だけの現実由来の能力振り回してる時点で常識ってのが一般かつ普遍的なもんじゃないよな学園都市に限っては。いかに非常識で枠と殻をぶち壊せるかみたいなとこがありそう。
って言うと>>405が的を得てる感素敵よな。

>>408
一方さんは高校生だよね。浜面も上条さんと同じくらい?垣根も高一か二、それくらいじゃないかとは思ってるけど。
ここのゴーグルは中三から高一くらいのイメージ。心理定規と垣根の間でいいすか。
学園都市は圧倒的にレベル>>>学年その他だからあんま関係ないかもしれないけどちょっとそういう情報もほしいわ。

その風紀委員はすげー爽やかな作り笑顔で朝の挨拶しそうですね。校則違反はとてもじゃないが出来ませんね。

>>409
「『風紀委員』だコラ」って羽バサーする垣根はかっこいいかもしれない。ですの!にインパクトで勝てるか?
うーん、帝春かあ。まだみぬ次回ネタに期待?

>>410
風紀委員は基本校内所属じゃなかったっけ。
支部って各校、各学区内にいくつもある交番みたいなイメージでいいのか?
あの辺よくわからないんだよな。レールガンアニメと禁書原作でも微妙に設定違うらしいし。

最初のがただの単発ネタだったから風紀委員さんネタの続きがあるのかもわからん。
まあまたイベントでなんかネタに出来そうなのがあればやるかもしれない。しかしあのシリーズは教師もみんなメガネか?女子がメガネなのか?
つうかお前らホモが好きか好きだな好きですねー

>>411
生徒会役員である限り委員長はツンを通しそうでもある。デレはくるのか。
今回は潰れて未完 < 一方さんに手伝ってもらい最終的に邪神像が出来上がる方が不幸判定が上っぽそう。

>>412
製作過程で上条さんがやらかしたところを一方さんが修正して、上条さんがしくじったところに一方さんが手を加え……と繰り返すことで上条さんの努力が段々そげられて画伯成分が濃く残ったんじゃないんだろうかと今考えた。
そんなにひどいやつじゃないかもしれないよ。いやわかんないけど。第二位は第一位と直接交渉権が絡むとよくわかんなくなるギャグ方面のイメージ。



493 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:36:11.87cKXKQ63x0 (13/14)


>>413
警備員さーんこっちです!風紀委員じゃ埒があきません!
それは個人指導と言う名の粛清じゃないか?そんなに愉快なものだろうかと1は心配します。

>>414
茶碗は叩くものではありませんよと1は遅くなっていたことに頭を下げつつ食卓でのマナーを注意します。

>>415
この夏は暑かったけどパンツと靴下くらい我慢しよう。警察組織のお世話になる前に。

>>416
風紀委員さーん!ですのの風紀委員さーん!危険物の通報です。座標>>416をどっか飛ばしてくださいです。どこか遠くになるべく遠くに精度度外視でお願いします。
何か既に座標ずれてるみたいですけど構わずに。

>>418
ああ大丈夫だ『未元物質』がある
それにここはまだ八月だからね!まだ二ヶ月あるよ

>>419
その下に信頼感や思慕が透けるんですかね呼び方って大事。ベタだけどここぞって時の名前呼びは燃えるな。
おねーさまとかあの馬鹿とかクソガキとかニックネームも大事。
垣根はいきなり呼び捨てだとシカトしそう。


>>419
ちょっと妄想してみた。
なんやかんやで垣根に提督になってもらうには

鎮守府にGO
アレイスター「『直接交渉権』が欲しいか?探せ!この世の全てをそこに(ry」
エイワス「今日からお前は富……提督だ!」
暗部の指令『海洋上に謎の敵性組織が発見された。対抗戦力を率いて迎撃にあたれ』
「えっまだ提督じゃないんですか第一位は既に着任したらしいですよ(棒)」

深海にGO
バレーボールがどんぶらこ
上里君がホワイトを転送(科学サイドに効くのか?効かないかもな)

提督じゃないけどまさかの学園都市で
垣根ホワイト「……白いガキを拾ったんだが」???「ウミ…ドコ?」

こんなとこか。
オリジナルより数倍柄悪いあんちゃんみたいな垣根ホワイトが懐かれてほのぼのとか微笑ましすぎて腹筋が割れるね。物騒で殺伐日常ライフでもいいね。
かたき役が似合うなあ垣根は。深海サイドならノリノリで敵艦出撃させそうだし。
残留思念でサルベージさせるなら、より深海向きではあるかもね。

>>420
艦娘も正体はよくわかってないんだよね?
なるほど禁書と絡めるとそういう設定も出来るんだすげー。
はたから見ると垣根のものすごい遠回りなひとり相撲だけどw
がんばれ垣根提督。
超能力者が提督になりましたって言うと六人中ほぼ全員自ら前線に出張りそうだもんなあ。麦野一人でも相当いけるよ。

一掃の粗大ゴミも沈んでるから深海艦は魔術産って言うのもいけるかもしれない。
対魔術ならプロがいるし、鎮守府に着任するゴールデンレトリーバーはちょっと……いやかなりみたい!!だれかたのむ。

>>421
思えば最初の投下からそんな話したのは1だから原因はそこかな。すまんね。

>>422
そうな。出来る限り書かせていただいてます。>>1も早く六道から外れて、妄想をSSとして吐き出すだけの存在とかになりたいわー。解脱しようにも煩悩しかないけどね。

>>423
なー!禁書の方で、上条さんの出ない暗部パートをはたしてやってくれるのかがもう不安だしお願いしたい。
でも超電磁砲な…もっと絡まないイメージが。



494 ◆q7l9AKAoH.2015/10/16(金) 01:53:22.21cKXKQ63x0 (14/14)

>>438
そこでカブトムシさんですよ。抽出されたポイントと濃度によっていろんなタイプの垣根が…ってそんなに居ても大変そうなだけだがね!

>>439
「様子のおかしなやつ」として受け入れられつつある。『スクール』でも1の脳内でも

>>440
そうなの?まあみんな禁書が好きなんだな。こんなとこまでありがたいな

>>441
ここでも容赦なくボケさせたりオチにしたりとやってまして、ご容赦ください。残りの安価もはっちゃけてるってレベルじゃなさそうなのがもう内容からして続く予感なので。ええ。

>>442
おつありっすー
SSでくらい楽しそうに、してほしいじゃないか(遠い目)

>>443
それなら宇宙人がピコピコ侵略してきても安心ですね!!わざわざ妨害してくれる一方さんお暇か。

>>444
どんな覚醒。そんなスキスロあっても埋まっても困らないか。B連打でキャンセルできるやつですか。まずは心理定規ちゃんが他人の間の距離が操作できるか話し合わないとな。

>>445
暗部はみんな個性的だしな。オンオフのオフ時、休日ネタみたいなのはいいよね。

>>446
ありがとうございます。合間に本編一回くらいはさみそうです。でもあまりきたいはしないでください。

>>447
知っているのか雷電?!

>>448
まだ…ハイ。続きます。ハイ

>>449
暗部の仕事って何してんだろ。上からくる指示によるんだろうけど他の組織と変わらずに邪魔者への対処がメインとか?基本ゆるくても時間問わず呼び出されたりしそう。

>>450
恐竜園いいね遊びに行かせたいね。そう言うのなら超能力者勢かなと思うけど安心力が高すぎてちょっとくらい事故が起きてもあいつら平気で観光してそうだな。クロスっぽいのもやってみたいね

>>451
1も予想外でしたのことよ

>>452-455
ほんとうに1の不徳の致す限りだと…
でもおかしなことはしてない。そこはないよまずないよ>>455。課金はしてないけどBOXは回しまくった。3周しても出なかった

>>456
すまん元ネタがわからない。のでオマージュではないですね。

>>457
垣根の平穏はどこにあるのでしょう、と1は原作の行く先に思いを巡らせます。

>>458
引換券も本体も落ちないとのたうちまわってました(hz

>>459
このつぎだよー(予定)

>>460
カブトムシを720匹捕まえてテイトクマスターを目指す奴かと一瞬思ってしまった

>>461-464
大変お待たせしておりました。

>>465
心配するな。気持ちもネタもまだある。

>>466
いつかの電撃祭だっけ。禁書のキャストさん呼んだけど三期の話は一切なかったとか言う。

>>467
お恥ずかしながら戻ってまいりました

>>468
セーフ?!

>>478
ドラキュラなのに天使の羽がでてしまう垣根をリーダーにしたい。特大変換とかおいしい木原くンリストラ確定。乙ありです…!んな甘いこと言ったってなあ、1を持ち上げてもくだらねえネタしか出てこないぞ!

>>479
ワールドワイドなばんざーい!ありですの

改行大杉久しぶりwいろいろながーく伸ばしまくることで定評がついてしまいそうな>>1ですが。コンゴトモヨロシクしたいです。ではまた


495以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/16(金) 11:41:45.02pKu1Oi18O (1/1)

めっちゃ久々に見に来たらまだ続けててビビった



496以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/16(金) 14:02:05.83wvZXdl36O (1/1)

ツッマンネーはなしはいいんだよ
いいからあくしろよ
やらねーんなら養分になっちまえ


497以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/16(金) 18:42:30.48esDluAawO (1/1)

本当に久しぶり小ネタが小ネタって長さじゃないぞw
大覇星祭でも心理定規はツンツンで垣根はツンデレ
ゴーグルを見習ってちょっと素直になったほうがいいんじゃないか


498以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/16(金) 21:22:09.69nAwf+b+x0 (1/1)

乙!
どこのスレも最近停滞気味だから戻ってきてくれて嬉しいっす


499以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/16(金) 22:50:20.94e7nCla9l0 (1/1)

小ネタのゴーグル君は相変わらずはっちゃけてんなぁ
そしてそれを受け流す垣根はだいぶ甘いな
金でも銀でも未元物質でもない垣根が欲しいよ


500以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 10:34:55.00rb8I5EcAO (1/1)

今回の潮岸の件ってファミレスで黒ひげ危機一髪やってたときに垣根と心理定規が話してたやつ?
エンカウント率とか、話の持っていき方が丁寧ですごい好きだ
ごく自然に冷蔵庫ネタ入れて笑かすところもなww


501以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 15:17:13.10EofbbcOPO (1/1)

1さえよけりゃまた安価やってよ
スクールのはなしもあるしここ落とさなきゃ待つから
白カブトムシとフレメアでやってほしいんだけどどう?


502以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 17:00:46.04DOd4mxo70 (1/1)

カブトムシとフレメアはスクールに関係なくね
俺は心理定規中心のも見てみたい


503以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 17:46:10.89BE5JB9H50 (1/1)

おお、来てたか乙
心理定規の風に煽られた裾とレアな体操着ぺろぺろ
あと首を傾げる駒場のリーダー可愛いぺろぺろ

何気に垣根の通販サイトのユーザー名カッキーかよwwww
ゴーグルがカッキーさんとか呼んだらオブジェ不可避だろうか


504以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 18:25:11.10kjwXiYPRO (1/1)

垣根と心理定規って雰囲気絶妙だな
暇だからって言いながらちゃんと様子見にいったのか垣根はパレードも一緒に見たのか
なんだこのリーダーたまんねえ
あと誰も触れてないがそぎっしーさんはっちゃけすぎだろww
二人三脚してやる爽やかな垣根も見たかったけどな
ファンはどんどん増えればいい


505以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 21:49:04.21UwF09L5GO (1/1)

風紀委員のやつで初春が出てくるのもみたいな
あとレスしてた艦これと垣根のやつも。ほっぽちゃんとホワイトとか完璧に保護者


506以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/17(土) 23:35:03.2750igA6wco (1/1)

垣根に冷蔵庫を送り続けて愉快な死体になりたーい


507以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 00:21:51.11PAN2gjLCO (1/1)

毎日ベッドが変わるのを楽しむ垣根だと
お泊まりフラグはあるのか


508以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 01:58:52.96jhxsP0SN0 (1/1)

艦これ×垣根は一時期大真面目にネタを考えた事があるが、どう足掻いてもチートハーレム物にしかならなかったから諦めた
結局だらだらしてる垣根と心理定規を妄想してる方が楽しいし


509以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 08:50:27.494MK2mkjC0 (1/1)

NカブトムシR冷蔵庫SRバレーボールLR垣根オリジナルな垣根オンリーソーシャルゲーム思いついたけど、垣根主人公で冷蔵庫から吐き出される未元物質を使役する方が面白そう
最弱のカブトムシが進化で稀に白垣根ができたり


510以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 18:15:47.08sLG2f1l8O (1/1)

>>508
>>11
さてはお前>>1だな


511以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 20:46:52.05lECZT/8So (1/2)

実はこのスレの書き込みは殆どが>>1の自作自演であった可能性が微レ存・・・?


512以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 21:10:47.361tCeftdDO (1/1)

俺たちが>>1だ!!


513以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 21:24:43.89eg52OGArO (1/1)

垣根はかきやすいとか艦これなら設定はこうするとか講釈してるどっかの作者様達だろ
どうせなら宣伝もしてけばいい


514以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 22:29:59.75llqWIy1o0 (1/1)

垣根スレ、自演、ホモ…そうか!わかったぞ!
>>1の正体が!


515以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/18(日) 23:33:48.45lECZT/8So (2/2)

野獣先輩垣根帝督説

変幻自在→未元物質も変幻自在

野獣先輩は人間の屑→暗部だから

野獣先輩女の子説→天使で可愛いから


516以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/26(月) 22:44:11.53eMJeVk1U0 (1/1)

垣根がアイドルのスピンオフに出たってな
カブトムシじゃないらしいし良かった


517 ◆q7l9AKAoH.2015/10/26(月) 23:49:16.794ulPkCn+0 (1/1)

え。なにそれ
ちょっと意味がよくわからないからパズデのガチャ回してくるね?


518以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/27(火) 13:59:12.25EG9VIxsAO (1/1)

パズデに脊髄反射ワロタ
アイドルの方はさておき、超電磁砲が盛り上がりそうだなスクール好き的に
単行本化したらカラー絵拝めっかなあアイテムみたいに


519以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/27(火) 16:29:09.69e9RFJ4qe0 (1/1)

アイドルの方は垣根出てたし超電磁砲に心理定規さんとゴーグルも出てた

もう死んでいい


520以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/28(水) 00:30:28.71F2A8Ouj70 (1/2)

まじかよちょっと電撃大王買ってくる


521垣根帝督偶像化計画? ◆q7l9AKAoH.2015/10/28(水) 00:51:14.08UkFX5uCs0 (1/5)


学園都市某所。
人気のない場所に一人で呼び出された垣根帝督は、ポケットから取り出したPDA相手に盛大に顔をしかめていた。

【この度お前は『スクール』アイドルとして売り出すことに決まったからな。
上からの決定事項だ。
今日から、「プロデューサー」と呼んでもらってかまわないぞ】

『スクール』の上役である電話の男が、任務の話かと思いきやとんでもない話を放り投げてきたのだ。
ここが組織の隠れ家なら垣根は容赦なく吹き飛ばしていただろう。
もちろん、それも見越していたのだろう。
暇そうな素振りも見せず、違和感も消し去ってごく自然な店内の背景の一部と化している店主を横目に垣根は息を吐いた。

「馬鹿じゃねぇの? 待て。俺は、ってどう言うことだよ」

【お前以外の超能力者(レベル5)も『絶対能力(レベル6)』目指してこれからアイドルとしての活動をだな……】

「あのなぁ、そんな真似してレベルが上がるんならこの世に無能力者なんざいねーよ」

【多くのファン、そこに含まれる能力者のAIM拡散力場の指向性を――】

垣根が馬鹿にして吐き捨てると、PDAに長々とした計画の詳細が送信されてきた。
一応は、理論的に成果の見込みありと裏付けられている実験計画なのだそうだ。

「テメェら…何かっつうと『AIM拡散力場』っつっとけばいいと思ってるんじゃねえよな」

ざっくりそれに目を通した垣根は。
なんでテメェがマネジメントまで兼任してんだ、と続けてぼやくように言った。

【暗部の仕事とのスケジュール調整は他の人間にはこなせないだろう】

おかげでこちらは大忙しだ、と言う嫌味は無視された。



522小ネタなんですよ ◆q7l9AKAoH.2015/10/28(水) 00:53:35.83UkFX5uCs0 (2/5)


「芸能活動(笑)しながら暗部の活動も続けんのかよ。なぁ、テメェら俺にどうなって欲しいんだ?」

【トップアイドル。そして、『絶対能力者』だ】

予想外に真面目な声で返事があった。
おや、と目を丸くした垣根だが。
次の瞬間にはそれがゆがむ。
獰猛な獣じみた視線を液晶に落とすと舌打ちがそれに続く。

「俺にそんなもんの頂点取らせようって? ったく、阿呆らしい話は大体見えたが。俺に何の旨味もねえのにそうですかって馬鹿な真似やってられるか」

【いわゆる「セレブリティ」の連中を考えてみろ。やつらの財力、コネクション、各界への影響力、それらを束ねるカリスマ性。表立って大々的に「神に選ばれし者」の一員となって潜在的な支援を集めることも……野心的なお前には悪い話ではない筈だが】

「俺の影響力が高まれば、連中も無視出来なくなる。発言権も得られるか……馬鹿なパフォーマンスでレベルが上がるとはとても思えねえが、そっちなら……まぁ」

垣根は真剣な目をして何事か考えはじめた。
ある意味神々しいギフト、彼の能力について触れそうな単語も、珍しく頭にこなかったらしい。

「たまにはつまらねえ話にも乗ってやっても、いいかもな」

いい退屈しのぎをみつけた、とでも言いたげにその口元が釣りあがる。
まるで、そのタイミングを見計らったかのように電話の男は話題を次の段階へとすすめた。

【今までの経験上、お前の資質はある程度こちらも把握している。
不要な営業活動や仕事は除き、お前の強みを活かした仕事が出来るよう「今まで通り」組織で支援してやろう。
当面の活動に必要なスポンサーとも話を進めてある。
まずは幾つかの企業のコマーシャルをこなしてもらう予定だ】

そう言って、次にいくつかの企画資料が送られてきた。
そこに名を連ねているスポンサー候補は。
各分野の有名企業のような大手から、一六学区の個人事業主など規模はさまざまだった。
能力者と聞いてまっさきに飛びついてきそうな学習塾や開発関連企業は、既にあちらでカルテル染みた協定が出来上がっているようだ。
出資し合った企業ごとに、アイドル活動をしている超能力者たちのPR期間のローテーションが平等に組まれるらしいと注釈が付いていた。
超能力者なんて能力開発分野でも反則レベルの絶大な偶像を奪い合っては、競合して潰し合うのは目に見えているから、かもしれない。




523 ◆q7l9AKAoH.2015/10/28(水) 00:56:13.76UkFX5uCs0 (3/5)


大がかりなライヴ、大手雑誌のグラビア、特集記事などそう言う派手な仕事は、もっとアイドルとしての知名度を上げてから効果的に進めていくらしい。
とりあえずは地道に宣伝広告の方を頑張ってもらう方針だと言う。
どうやらプロデューサーや上層部は餌を充分撒いてから、雑魚をごっそり網にかける気でいるらしい。

【お前達がアイドル活動をしてるってことを市民に周知させる必要がある。
超能力者アイドル化計画推進として、それぞれCDも出すからな。
お前の音源もサンプルが幾つか用意してある。すでに本格的な楽曲製作を進めて……】

「待て。いつそんなもん録った」

【この前カラオケに行っただろう】

「完全プライベートだぞあんなの。油断も隙もねえな、本当」

【とりあえず致命的な音痴じゃなくて一安心だそうだ】

よかったな、と言いたげな言葉に。
はあー、と仕方なさそうに垣根はため息をつく。

【超能力者の話題性にそのルックスだ。
お前のような逸材にはかかる声も多くてな、それでも随分厳選したんだぞ】

更に資料のページを進めると、具体的に詰められた企画のスケジュールの予定が並んでいた。
一体、垣根を納得させられなかったらどうするつもりだったのかと呆れるくらい、本人のしらないところで勝手に話が進められていたらしい。

「なんだこりゃ……お、ファッション系が結構入ってんな。ふーん、どこもそこそこのブランドじゃねえか。
『外』のもあるな……ん、高級寝具メーカー? こっちは……ガキ向けの学用品のPRって? 
なーんかまともそうな中にちょいちょいおかしいのが混じってんぞ。何やらせる気だテメェら」

【垣根帝督を前面に打ち出して広告をだしてもらうんだよ。喜べ。どちら様も喜んで受けてくださるそうだぞ】



524 ◆q7l9AKAoH.2015/10/28(水) 01:01:11.60UkFX5uCs0 (4/5)


「まぁ、向こうから頭下げてくるくらいが筋ってもんじゃねえの? で。テメェらのプランの核になりそうな…俺の強みって……なんだよ」

【そりゃあ、天使の羽に決まってるじゃないかw】

「はぁ?」

ここに来て一転。
馬鹿にした時の口調になった電話の声もといプロデューサーは笑い転げるのを我慢しているように裏返り気味な声で続けた。

【年末年始の特番『絶対に笑ってはいけないin学園都市スペシャル』と『芸能人格付けチェック』の能力者席には出れるように頑張ろうな!】

「完ッッッ全にお笑い枠にねじ込む気だろ? なぁ!!」

ガターンと椅子が一つ後ろに飛んだ。
騒音にも店主は眉ひとつ動かさない。

【顔がいいのがあえて外して、馬鹿をやるのがいいんだろう。
お茶の間にはそう言う方がウケがいいらしいからな。
お前の能力にもぴったりじゃないかwww】

「ナメてんのかテメェぇぇぇッ!」

PDAを掴むと垣根は吠えるように叫んだ。
その背中には、いま馬鹿にされた翼が翻っている。
既存の物理を捻じ曲げる能力でも、流石に居場所の知れない通話相手を愉快な死体にはできない筈だが。
既に垣根はそんなことは考えていないだろう。

【そうやってお前ら超能力者はすぐキレるけどな、芸能界の先輩方を見習えよ。
今日日そんなやっすいキレ芸じゃ流れ星にしかなれないぞー?】

「芸でキレてんじゃねえっつうの!!」

【悔しかったら結果を出せ。垣根帝督。障害をねじ伏せその手で登りつめてみろ。お前のやり方が通用するなら、の話だがな】

チィッ、といまいましげに舌打ちすると垣根は近くの椅子を乱暴に引いた。
どさりと再び腰を下ろした。
ほんの少し。
何かを切り替えるような空白を置いて、垣根は顔をあげた。

「いいぜ。俺にその常識は通用しねえ。アイドルだ? 愚図な聴衆共がなんだって?」

その顔は、挑む様に薄く笑っていた。
みてろ、と彼は牙を剥く。

「世界を、ガラリと変えてやるよ」



こうして。
まんまとアイドルに担ぎ上げられた垣根帝督は、トップアイドルの座を目指して学園都市のお茶の間を席巻するようになるのだが。
それはまたべつのおはなしである。




525 ◆q7l9AKAoH.2015/10/28(水) 01:05:01.11UkFX5uCs0 (5/5)

と、いうはなしだったらいいのになーなおはなし。
とあるあいどるの~~に垣根が出てるって聞いてちょっと読みたくなったのでやっつけた。
ガチャはこころをしずめてくれないしいくら回しても徳もつめないのである。
ので。いきなりの小ネタ。失礼。

正直、ちょっとしたデモンストレーションすら不安の塊だった奴らをステージから下ろすのだけはやばいと思う。
超能力者並べてバラエティとかトーク番組出したら編集地獄にしかならないって。
しばらくお待ちくださいからのCMあけたら357以外ちょいちょいぬいぐるみになってそう。生放送は絶対ダメだゾ☆
アイドルな超能力者様は第一位以外もやんのかね?
ラブリーミトンとコラボして泣いて喜ぶ御坂さんとかは大歓迎です。

ドーモ。
ではまた!




526以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/28(水) 09:52:31.21F2A8Ouj70 (2/2)



言いたいことがあるんだよ
やっぱり垣根はイケメルヘン
すきすき大好きやっぱ好き
やっと見つけた天使様
俺が生まれてきた理由
それはお前に出逢うため
俺と一緒にlevel6目指そう
世界で一番愛してる


527以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/28(水) 14:44:37.63yLF/NLPQo (1/1)

アイドルは生がダメとな!?


528以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/28(水) 16:37:37.69IhdM+e7CO (1/1)

>>321の安価の中身を初春がインディアンポーカーのカードにしてくれてたら間違いなくSランクで超高額取引されただろうな


529以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/28(水) 19:32:43.60prWCd+dfO (1/1)




530以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/28(水) 19:47:11.43NvkkFCAAO (1/1)

羽毛布団とランドセルwwww
ひでえwwwwww



……その布団3セット下さい!


531以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/10/30(金) 12:35:24.88rGZW7Ghg0 (1/1)

垣根さんマジちょろいっす

垣根の能力フル活用したらジャケ絵とかPVとか撮影楽そうだよな
自前で羽散らせるしwwww


532 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:25:13.50Pjr5JOri0 (1/23)

ドーモ

>>495
恥ずかしながらまだやっとります。ハイ。
スレが埋まるかネタが尽きるまではやるのか、いい加減だらだらしてんのもどうなのとはね?

>>496
話によってむらがあるよなあとは書いてても思います。
見事にハロウィン垣根はこなかったよ!ノーマルな垣根はぞろぞろ来たけどな!
超能力から絶対能力まで諭吉が楽々シフトしたって言うところまではお伝えしておこう。経済力も運もない甲斐性なしの1だからか…これが……不幸、か。
ちくしょうそうさ、俺が養分だ!

>>497
リーダー、ツンデレ。紅一点、ツンツン。オタク、だだ漏れ。あれ?バランス取れててよさそうだね?(白目
垣根はある意味素直な気がしてきた。最近。

>>498
そういってもらえると1も嬉しいっす。乙あり!

>>499
垣根はキョロちゃん知ってるのかなって今思った。
ゴーグル君の起こした波に度々乗せていることはこのスレの公然の秘密だからな。

>>500
そうそう。ゴーグル君思いつきよかった。こじつけと寒いギャグは任せろ。
白くて大きな家電を見るとついね。帝凍庫君を思い出してね。disってない、いじりだ。

>>501
そう言ってもらえるとほっとするでな。
前もなんか言われた気する。カブトムシ。
なんか思いついたら保守ネタにするかもしれないししないかもしれない。
レスをネタにしたのはちょいちょいあるんだけど、確約は安価のみと言うことで一つ。
うん。僕もあんまりスレがごちゃごちゃしてるのはどうなんだと思うんだけどね?むずかしいんだね?

>>502
では心理定規濃度の高いのが出来たら。
なぜかゴーグルびいきだとみんなに反応されるけど、定規ちゃんもめでたい。

>>503
名前で呼んで欲しい垣根さんはニックネームだと喜ぶのか、キレるのか。
青ピやつっちーが一緒にいたら普通に返事するかもしれないけど、カッキーさんが奴らにも定着しかねない諸刃の剣。そうなると怒るな。

>>504
垣根はツンデレか。そうか。
暇ならなにしてもいいってわけじゃねえんだぞコラーって言ってやりたいな。
上手く垣根が出場してくれても、別のどっかの誰かの借り物に立候補したゆるキャラと同じレースだと、白熱しすぎた展開にゴーグルが愉快な死体になってしまうんじゃ…

>>505
風紀委員長ネタもか。もしなんか思いついたら(r
艦これはね、元ネタがよくわからないから難しいな。運がないから多分建造でかぶりまくってすぐ詰む。
あえてちょっとやってみるなら

海中から突如として現れた生物兵器の艦隊。
最新鋭科学の過剰戦力を投入してどこよりも早くその敵性の撃破・虜獲に成功したのは学園都市だった。
その根源、敵の正体を探る為の研究材料として、敵艦を壁の中に搬入する運びとなった。
だが移送中にトラブルが発生、拘束していた対象の逃走を許してしまう。

垣根ホワイト「ああ? なんだこれ」

北方棲姫「ウミ……ドコ?」

異形の白い少女と少年が遭遇する。

世界の大洋で発見される謎の『深海棲艦』。
奇しくも過去の大戦、歴史の記す戦火の跡地に彼らは現れた。
砲身を向けられた各国の決断が刻々と迫られる中、港湾棲姫が動いた。
その標的は――学園都市。
第四次世界大戦の勃発は免れないのか。
緊張の増す中、襲撃者が次々と二人に迫る。

???「乱造品の不始末を私に取れとかいい度胸してんなぁクソが」

???「『とりあえず』……それを引き渡してもらおうかァ」

少年は少女を海に帰すことが出来るのか。
彼女の望みは叶うのか。

北方棲姫「テイトク、ゴメンナサイ……」

科学と深海両者の闇が交差する時、物語が変わる。
禁書×艦これの新感覚クロスオーバー、この秋進水開始。


こんな感じで。嘘です。


533 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:33:36.49Pjr5JOri0 (2/23)


>>506
何でムカつくかわからないけどもやもやする垣根さんの怒りが有頂天でゴーグル君がストレスでマッハなんてことになるぞ。
鬼かどMか

>>507
その発想は無かった(棒)
突撃!隣の構成員!とか言っていきなりお宅訪問したら心理定規に全力で追い返されそう

「どちらさまー? って」

「よお」

ガチャ……ギッ

「なん、で……あなたがいるのよっ?!」

「よお」

「……何なの。こんな時間にいきなり来て」

「え? 泊まりに来た」

「どうして」

「昨日はゴーグルんとこだったから。今日お前な」

「帰ってちょうだい」

「へー。お前こんな部屋に住んでんだ? ん? なんだよソファ小さいな? じゃあこの辺にベッドを作って……」バサッ

「ねえちょっと勝手に部屋のものに触らないで羽も出さないで。家具を増やさないでってば! 帰ってちょうだい!」

困った。リーダー帰ってくれそうにない

>>508
なー。チートハーレムじゃないガチな戦史ものでクロスとかはまたハードル超たっかいな。
1は今脳幹先生のかんこれSS探してる。
なんだよ妄想してんならなんかかいてよーねーねーかいてよーーー

>>509
オリジナルのレア低くねwはいむら絵なのか?なら仕方ない
ガチャの冷蔵庫が、冷蔵庫(家電)なのか冷蔵庫みたいな装置なのかで愉快さが変わるんじゃ。
冷蔵庫のドアガチャーなら微笑ましいが、引くたびに病理さんがボタンポチーだったら嫌だ。
カブトムシの中にたまにエラーがいてそいつは垣根未元体(SSR)に進化とかなんですか。需要狭すぎて誰得だよお。

>>510
やったー1が増えたぞよしじゃあこっちの1はひたすら強敵叩く係な。そっちの1はNカード集めて売却しといて

>>511
いつからお前が>>1ではないと錯覚していた?

>>512
奇遇だな。私も1だ。

>>513
雑談はおーけーなのですよ。って言うかあれだよきっとこのスレ話題がねえんだよ。1が来たり来なかったりだからだよいわせんなばか
宣伝か。ちょっとくらいしてってもいいよね。なんか書いてんならいいじゃんなー教えてくれても

>>514
な、なんですって?一体誰が犯人なんです!

>>515
そんなこといったらこの世のほとんどが垣根になっちゃいます。未元物質こわい

>>518
えー。アイテムみたいに超人気が出て超出番が超増えるンですか?超嬉しいンですけどォ超ほンとですかァ




534 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:35:10.43Pjr5JOri0 (3/23)


>>519

待てよ。そんな簡単に死ぬんじゃねえよ。
まず超電磁砲で垣根が登場するだろ。俺ら死ぬだろ。
上手く進んで禁書の方で暗部サバイバル編がやるだろ。俺ら死ぬだろ。
絶望しろコラで博士死ぬだろ。俺ら死ぬだろ。
次々でてくる垣根往年の名台詞。俺ら死ぬだろ。
一方通行出てくるだろ。垣根死ぬだろ。
数年たって三期アニメ化の話が出てくるだろ?死ぬわ。
声優が決まるだろ。死ぬわ。
アニメのカラー絵が発表されるだろ。死ぬわ。
放送日が決まるだろ。死ぬわ。
OPで垣根が出てくるだろ。死ぬわ。
アニメで喋って動くんだろ。俺たち死んでられないだろ?
いいぜ。せいぜい今のうちにさっさと死んどけよ。
いつまでも死体のままでいれると思うなよ。こっからが本番だろ。

気を付けろ。死に続けてるとな、そのうち起き上がって痛いSS書いたりするようになるんだよ。1みたくなんぞ

>>520
まじかよ。もっと早く言ってよーだよな

>>526
ごめんちょっと笑ったw
ジャ二◯ズとか男性アイドルにもああ言うのあるのかな
キラキラ衣装で踊る垣根とかメルヘン過ぎていろいろ耐えられる自信がない。腹筋とか

>>527
一方垣根、御坂食蜂は一緒にしたら挑発しあって騒動になりそう。麦野はピー音入れそうなことも平気で言いそうだし削板が一番何するか読めなさそう。やっぱ全員問題あり放送事故必須。

>>528
インディアンポーカーて?

>>529
乙ありですドモ

>>530
キレッキレでランドセル体操踊る第二位とかテレビの前のお茶の間が愉快なことになってしまうよ。第二位のイメージ的にまずそうなことはさせないと思いたい。事務所OK出ても本人が断ってくれるはず

きっと企業も便乗しまくってくれる。
限定プレミアム特別仕様だと販促用グラビアポスターやシーツ他コラボおまけが付いてきて今ならお得な羽毛布団夏冬1組二十四回払い月々二万円コースとかがあるんじゃ(適当)

>>531

【超能力者とか言ってもまだ子どもだからですかね。レベル5の中でもお前先発だから第一位に先手打てるぞって言ったらあの後笑えるくらい張り切ってやんのwww】

【見た目通りやっぱ派手好きなんでしょうねー。撮影やステージやらせても自分で演出したがるんですよ。照明スモーク特殊効果おまけに火薬なしで爆発までいけるしいろいろ費用も浮いてます。いやー便利な能力で助かるわww】



今さらだけどスクールの制御役って男でよかったのかな
『アイテム』が軽めでテンション高いステファニーさん系のおねーさん、『グループ』が嫌味な丁寧口調の「くどい海原」みたいな男。
『スクール』は全然描写ないけど超電磁砲のあれで「煽ると草生やす兄さん」イメージなんだがそんなんでいいのか

誰ですかー?本屋さんの電撃大王ラスワンゲットした子はー。先生しかたなく密林さんにお願いしたのですよー。
こっから安価>>201のなげおとすけどなー1も予想外に心配なかんじになったからくれぐれも注意ですよ。





535>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:41:45.82Pjr5JOri0 (4/23)


※キャラクターイメージを大いに損なう恐れがあります。くれぐれもご注意ください
※ネタをネタと(r



「あれ……ここ、どこだ?」

ベッドの上からぼけぇ~っとした声が上がる。
間抜けなセリフの主は、寝癖だらけの頭をぐしゃぐしゃと掻いて首をひねった。
彼のことは某組織での呼び名で仮に『ゴーグル』の少年としておく。
ゲーム機とアニメグッズだらけの自室とは似ても似つかない場所で目覚めた彼はちょっとした浦島太郎気分でぼんやりしていた。
思わず口にした疑問はまだ解決していない。
見たことのない部屋だった。大きなベッドと真っ白なシーツ、広い部屋はどこかのホテルみたいだった。
確か昨夜は寝落ち寸前までゲームをしていたが、こんなところにきた記憶がない。
どうしたものか、とりあえずその場に正座してまぶたをゴシゴシしていると。
白い部屋のドアが開いた。
そこから入ってきた人物にゴーグルはねぼけ眼を大きく見開いた。
一発で目がさめるどころか、うっかり心臓が口から出そうなくらいびっくりした。

「おう。目ぇ覚めたか」

暗部組織『スクール』のリーダー、垣根帝督がにこやかに入ってきた。
朝から「ご機嫌なリーダー」なんて言う激レアに遭遇したゴーグルは、その後ろのドアをじっと見つめた。
心理定規や下部組織のやつらがベタなプラカードでも持ってきて「寝起きドッキリ大成功!」みたいなのを期待したが。
垣根は黙って後ろ手にドアを閉めてしまった。
何やら片手にトレイを持って、垣根はベッドの前まで歩いてきた。
ぼさっとしているゴーグルのだらしない格好を見るとしょうがねえなあ、って顔をして眉を寄せた

「ったく、遅く帰ってきてゲームすんならちゃんとしろっつったろ。ソファーで落ちてたから俺が運んだんだぞ。ほら」

そう言われてもさっぱりわからないし、なんでそんなことをされたのかも覚えてない。
じゃあここは垣根の部屋なのか? なんでそんなところで寝てた?
ますます状況が読めなくなる彼の前にマグカップが差し出された。

「あ……なんかわざわざ、すんませ……え」

ペコッと頭を下げてゴーグルは差し出されたマグカップを受け取った。
トレイに残っていたのはソーサーに乗ったティーカップだった。
白く華奢な造りのそれと、自分の手の中のアニメプリントのカップを見比べて少年は反射的に垣根を見返した。

「片方淹れてる間に支度は済む。ついでだ」

ベッド横の椅子に掛けると垣根は足を組んだ。
いちいち絵になる様でカップを口元へ運ぶ。

「紅茶のついででカフェオレっスか」

「コーヒーいれんならお湯は九〇度以下、紅茶の方は沸かしたてに限るだろ。んなことより。味」

なんで全然種類が違うんだろうと思わずつぶやいたが垣根はこれぐらい当然だろ、と言う風にお茶の知識を披露していた。
そして、カップを持ったままぼけっとしていたゴーグルに目を向けてくる。
慌ててゴーグルもコーヒーをすすった。
焦って口をつけた瞬間、火傷を覚悟したのだが。
ちょうど飲み頃な温かさだった。

「なんスかこれ……メッチャうまいっス」

軽く感動しながらそう言うと、垣根は得意げに目を細めた。

「そうだろうな。ま…隠し味が違うからよ」

「だ、『未元物質』っスか?」

「お。お前も違いがわかってきたな」

冗談のつもりでそう聞いたのだが、垣根は特に否定もしないでうなずいている。
まさかの当たり、ガチでしたか? それは口にしても大丈夫なのでしょうか。
ごくん、とカップの中身を飲み込んでから固まるゴーグルの少年。
それを見ていた垣根は愉快そうに笑った。

「ばーか。冗談だよ。俺がちょっとその気になりゃこんなもん楽勝だっての。どうだ? コーヒーメーカーの買い替えは、無期限延期だろ」

「こーひーめーかー?」

「もう忘れたのか? いつまで頭が寝てんだお前」

一体なんの話だろう。
ゴーグルの少年が首を傾げている間に。
垣根は空になった食器を持って部屋を出て行ってしまった。



536>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:45:37.44Pjr5JOri0 (5/23)


とりあえず起きよう、と意を決した彼が寝室っぽいとこを出て、やっぱり見覚えのない白くて広い部屋をうろうろしていると。
ひときわ広いスペースに垣根がいた。
壁にはめ込まれた大きなテレビの前に立っていた垣根は、ゴーグルに気付くとキッチンらしきスペースの方を指さした。

「俺そろそろ出るぞ。お前の飯はそっちな、有難く食えよ」

「えっ?! すんませ……あれ」

激レア、超激レアときて更にありえない追加イベントが発生した。
なんかもう、いきなりおかしな事故にあうとか突然敵対組織に襲撃されてうっかり死ぬんじゃないか俺と混乱しながらゴーグルは頭を下げた。
びっくり仰天意味不明の連続だが、反射的に謝罪を忘れなかった。
そして。
顔をあげた時、ここにきて一番の違和感を目にした。
さっきまでは下ばかり向いていたから気づかなかったが。
彼の頭にある疑問が浮かぶ。
今目の前にいるのは本当に垣根帝督なんだろうか?

ぽかんとするゴーグルの少年に、垣根は何故か得意げな顔をしてネクタイを結んでみせた。

「これか? よそのやつも呼んで朝からミーティング。あいつら俺にちゃんとした格好してこいってうるせえんだよ。誰に物言ってんだか。で、どうだ」

「いや……垣根さんっスよね? 垣根さんだけど、垣根さんじゃない?」

以前から大人っぽい服が似合うとは思っていたが。
仕立ても値段もよさそうなスーツにきちんとネクタイまでしていると「ぽい」がすっかりどこかへ行ってしまうようだった。
暗部のリーダーの貫禄はそのままに全体的に落ち着いた雰囲気の垣根が立っている。

「見違えるほどか? それとも寝ぼけてんのか? ったく、ほら。我ながらイケてんだろ。何もねえの」

寝起きの瞬間からよくわからないこと続きでゴーグルの少年は混乱していた。

「はぁ……似合ってるっス」

てきとーな返事がお気に召さなかったのか、垣根はむっとした表情で足をゴーグルへと向けた。

「別に俺は、お前が『嫁』を何人持とうが気にしねえけど。その倍は俺に尽くすのがフェアなんじゃねえか?」

「え、あ」

ゴーグルの少年は不機嫌な垣根の迫力に後ずさる。
言ってる意味はよくわからないが。
垣根は明らかに怒った様子で一歩一歩向かって歩いてくる。
近づいてくる垣根をよく見て、さっき感じたひっかかりの正体が彼にも何となくわかった。
整った顔や細いシルエットは記憶にあるものより精悍さが増しているような気がした。
今目の前にいるのは彼の知っている十代の垣根ではないようだった。
数年越しの記憶喪失、とか中身だけタイムスリップなんて単語が頭に浮かんだ。
まさかそんな、漫画やゲームじゃないんだからと否定したいが、目の前の現実はそうはいかない。

「お前はやっと休みだろうけど、これからつまんねえ用事で出掛ける恋人に気の利いた言葉一つ言えねえのかよ。お前ってさー、何年経っても本当変わんねえな」

「はい? 今……なんて?」

ここ一番の爆弾発言にあっけにとられながら。
おかしな声で叫びそうになるのをこらえて、なんとか聞き返した。
ゴーグルの前まで詰め寄ってきた垣根はそこでふと眉を寄せた。
よく見る不機嫌な表情とは少し違う。
心配そうな目をしている……かもしれない。

「俺今日仕事だぞ。あれ、言っといたよな?」

「いやそこじゃないっス。えっ、冗談ですよね? こいびととかまさ……か」

口にし終える前に、瞬間ゴーグルは悟った。
これはあれだ。

やってしまった。

それを聞いた垣根の顔が一瞬無表情になった気がした。
その後で唇がゆっくりと弧を描く様がなんだか死神の鎌にみえた。
それはそれはきれいにみごとに思いっきり地雷を踏み抜いた実感があった。
背筋にブワッと嫌な寒気を走らせて、引きつった笑顔のままゴーグルは立っているしかなかった。




537>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:48:06.21Pjr5JOri0 (6/23)


「ふーん。随分笑えねえジョークだな? お前にしては」

「あの、いや、なんか寝ぼけてて、あれー何言ってんだろ……すみません」

「なあ。俺は朝からすげームカついてんだけど」

「だってあの……俺っ」

ゴツ、と後頭部が壁にぶつかる。
元からどこにいたってなさそうだった逃げ場は完璧にゼロになっていた。
だが。
ゴーグルを追い詰めた垣根は何故か楽しそうに笑ってみせた。

「んなガチでビビんなよ。何それ。うっかりときめくだろ」

「ぎゃあっ!」

ベキャア! と垣根が手をついていた壁が砕けた。
ゴーグルの背中の後ろまで大きくヒビが入っている。
垣根は某第五位みたいな、他人をてっぺんから見下したいい笑顔をしていたが冗談ではない。
恐怖の壁ドンにゴーグルの頭は真っ白になった。
垣根の次の行動がまるでわからない。何だか話もいつも以上に通じていなくて。
ただただこの意味不明な状況が恐ろしかった。
事故とか襲撃とかんなかわいいもんじゃねえ、ここ? 俺ここで死ぬ? と心臓を縮み上がらせながら少年は震えだした。
その耳元に顔を近づけると垣根は静かに囁いた。

「『俺が悪かった、帝督ごめんなさい』って言ってみ。三回くらい」

「はい。えっと……」

「言えよ」

命令する垣根の声が低くなった。
ゴーグルは目を閉じると必死に声を張り上げる。

「俺が悪かったです。垣根さんごめんなさい。ごめんなさい!」

命じられたままにそのあと三回分繰り返すと垣根は腕を組んだ。

「うーん、そうだな。『帝督愛してる』って言ってみろ。百万回くらい。努力次第で考えてやってもいいぜ」

「えええ!」

おまけに考えてやる、だ。
そこまでしてもこの元(?)リーダーはあっさり許してはくれないらしい。
でもゴーグルだってしたくて怒らせた訳じゃないのだ。

なんでこんなことになったのか彼には覚えがない。
あってもそれは嫌だが、いきなりすぎてついていけない。
まるで夢でも見てる気分だった。
夢。

そのひらめきにゴーグルの少年はハッとした。


「なんだこの流れ……あれ、これ夢? ギャルゲ御用達な夢イベントだ? しかも垣根さん√?! なんだそれ誰得だよ!」

そう考えると何となく今までの展開にも納得できた。
覚えてないだけで何がどうおかしな世界線に突入したのか。
生涯ぼっち予備軍だったオタクの俺が暗部のリーダー(男)とくっついちゃったらしいです!なんて話よりはよっぽど。
夢オチの方が可能性と希望がある。
と言うかそうでないとわけがわからないよ。

未来設定の夢の中で新婚さんな二人がいってきますのチューや何やらを巡ってイチャコラする感じのイベントは漫画やゲームでもよくあるやつだ。
目がさめると遅刻寸前とか、登校前にその子とバッタリとかそんなオチのつくやつで。
ラブコメのテンプレってぐらいあるあるなネタの一つな訳ですが。
もし、そうで。
お約束の展開の流れ通りにするなら、垣根にはなんとか穏便に出勤してもらえば話は済むんじゃないか。
「いってらっしゃい」できれいにオチをつけるのが平和なやり方だと思いたい。
ドタバタは勘弁だ。
間違ってもラブコメ路線なんてもってのほかだ。



538>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:50:40.12Pjr5JOri0 (7/23)


「これから仕事なんスよね? ダメっスよいかないと」

「平気だって。俺一人抜けたくらいで回らなくなるなんて柔な環境も、ダメな部下もいねえから。
ある程度、トップ不在で動ける組織作りってのはしておかねえと。相変わらず下にいるのは無駄に年だけ食ってる奴らばっかだけどな」

何だか無駄に過去の背景設定の生かされていそうな台詞が出てきた。
一体どんな仕事をしてるんだろう、と興味はわいたが今はそこにかまっていられない。
垣根は、自分の機嫌を損ねたゴーグルになんらかの責任を取らせる為に仕事を休むつもりらしい。
機嫌悪いから休みます、だと小学生でもやらないサボりになってしまいそうだが。
この人なら平気でやりそうな気もするし、そのあと休んだ分くらいはしれっと挽回しそうでもある。


「えーっと……俺のせいで垣根さんの仕事にまで迷惑かけらんねえっス。そういうの、ちゃんと大事にして下さいっス。俺、ちゃんと反省しときます」

(これいけるんじゃねえ? 垣根さんを立てつつ、反省してますって感じで満点はいかなくても高得点なセリフだと思う!!)

よかったこれは現実じゃないぞと思った時点で、彼の心は少し持ち直していた。
ふだんの夢のようにただ見ているというよりは自分である程度行動できるかんじなので、ちょうどゲームでもしている気分だ。

ゴーグルの少年の好きなゲームの中では、途中でちょっとしたズルをすると次に電源を入れた時に彼女から怒られてしまうことがある。
最悪、スタート画面にさえ移動出来ないと言う目にも何度かあったことがある。
おまけにそう言う時に限って場所が電車の中や教室だったりするのだ。
不思議と、マイクでの解除ワードの催促をされても答えられないような悪いタイミングが重なる。
そんな時にゲームしてんじゃねえよ、と言う話は置いておいて。

今、この場合。
ミスると夢の中でもオフになる可能性がある。
ゲームの電源や何かよりよっぽど大事なものかもしれない。
夢だからって嫌なものは嫌だ。
悪夢はすすんで見たくない。今だって十分そんな状況だけど。

そして、夢だと言っても相手はあの垣根帝督。それを避けるには最大限の注意を払って対応しないといけないだろうとゴーグルの少年は直感していた。
愉快な死体エンド痴情のもつれ?バージョンはないと願いたい。
ゴーグルは最悪の目覚めから逃れるために一生懸命頭を下げた。



539>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:51:42.02Pjr5JOri0 (8/23)


「……お前がそこまで言うんならしょうがねえな」

垣根が仕方なさそうに頭を掻くと。
その後ろ。離れた床の上に白い点が現れた。
ばしゃん、と液体でも固体でもなさそうなものが大きく広がる。
白いその中から人型が生えてきたと思うと。
あっと言う間に目の前の垣根とそっくり同じ姿をした人物が出てきた。
着ているものも髪型も、もちろん顔も見分けがつかない。
『未元物質』で作られた偽物と言うことなのか。
それに向かって垣根は、気になっていた小さな汚れを片付けたような顔をして晴れやかに笑った。

「よし。俺の代わりに行ってこい。これ、今日のスケジュールな」

ぽいっと投げつけられたPDAを受け取ると二人目の垣根は画面を覗いて顔をしかめた。
ゴーグルの少年が夢の中(仮)だというのに驚いてしまうほど自然な、生き物のような反応だった。

「うわーオリジナルお前サボりかよ。こんだけ予定詰めといてよくぶっちぎるな」

「先方には愛想良くしろよ? ただでさえこっちが優位な話じゃ反感食らいやすい。精々向こうの顔くらい立ててやれ」

「何お前ら修羅場? それとも……えー、朝から随分元気だなテメェら」

垣根(その2)は垣根とゴーグルを呆れた様な目で見ていた。

「ばーか。まぁ、その辺はほら。こいつの今後の態度次第だな」

「はい?!」

心臓によろしくない不穏なワードが次々飛び出してくる。
だが、垣根は二人ともそれを無視した。
大したこともなさそうな、慣れきったような態度が逆に恐ろしい。

「面倒事人に押し付けといて何だよな。楽しそうでうらやましいぜ。久しぶりに血の雨の降りそうなやつかそれとも……
まぁ、どっちにしても後で俺も混ざっていいか。怠いし、幾つか削れんだろこれ」

「うるせえ。いいから行ってこい。手ぇ抜くなよ」

荷物を押し付けると垣根は蹴り出すようにして垣根二号を部屋から出て行かせた。
窓からじゃなくてよかったなあとかくだらないことを考えていたゴーグルの少年は。
何も事態が良くなっていないことにやっと気付いた。


「これでいいだろ。なんかさ、もう行く気なくなったわ」

遅かった。
せいせいしたろ、と笑う垣根は既に問題が解決したと判断しているらしい。
垣根の方はそれでいいかもしれない。
まさかの、気分で仕事の予定をぶっちぎってしまった。
いや。確かに現状で問題は何もないかもしれない。
垣根帝督(らしきもの)は出勤しているわけだし。
残っているのは、ゴーグルの少年がいかに最小限の被害でこの先のステージをクリアできるかと言う未知の課題だ。
それに備えて出来ることはまだあるのか。

「大丈夫だ、俺がしっかり数えとく。だからお前は余計なことなんざこれっぽっちも考えなくていいぜ。ただ俺を満足させりゃいい」

ラスボスはさわやかな笑顔でそう言った。
ここで何か抵抗できるか。
いや。そんなことしても、事態が良くなるとは思えない。
何よりすっかり垣根帝督のペースだ。
きっとこの先待ち受けているのは超能力者ランク『未元物質』の固有結界ステージだ。

「あの馬鹿が帰って来る前に済ましちまおうぜ。まぁ、勝手に増えるなって言っといたからあいつまで替え玉立てて戻ってくるってのはないと思いたいが」

「え。あの垣根さんっぽいの増えるんですか? 更に?」

「そうそう。それにあいつらはほら、俺と違って色々と……な?」

『未元物質』驚愕の新機能らしきものや、さっきからの同性に向けるには色々と問題ありそうな発言と無駄にいい笑顔となんかフェロモンっぽいのやらと、トドメに怖い台詞含みまくりなウィスパーボイスがゴーグルの少年に繰り出される。

丸腰のゴーグルの少年は隙のない垣根の連撃を前にして。
迎撃するにもこっちは弾幕張れない、回避もないしこれ着弾したらアウトだとゲーマーの勘で悟っていた。
なにより相手は垣根帝督。

大人しく従うしかないだろう。

今までも、if未来軸の夢でもそこは変えられないのか。

今までの常識ゲームオーバーの予感に彼のこれまでの人生がつまらないエンドロールになって浮かんできそうだった。




540>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:53:08.63Pjr5JOri0 (9/23)


「わぎゃぁぁぁあああああ! あああ、あ……あれ」

がばあっ! と跳ね起きたゴーグルはベッドの上でぜえぜえ息をしていた。

「夢……スか」

肩を上下させながら、少年は部屋の中を素早く見回した。
垣根大人バージョンはそこには居なかった。
部屋のなかは薄暗い。
さっきまでの出勤前の朝っぽい雰囲気もここにはなかった。

「よかったぁ……本っ当に夢でよかったー」

目が覚めた、ということはあのわけわからん空間は夢だったらしい。
これで無事だ。
一安心だ。

「あっちこっちおかし過ぎて、気になるっちゃー気になるけどあの場で深く考えたらそこで終わりな気がする。SAN直的な意味で」

手元にダイスが無くて良かった、振ったらがっつり持ってかれるやつだ、と呟きながら。
悪夢から無事目を覚ませたことに安心しきってゴーグルはベッドの上をごろごろ転がり始めた。

「何してんだか。お前も面白えな」

ドアの開く音と聞き覚えのありすぎる声にグギギギギ、とゴーグルは振り向いた。
ギリギリセーフなのか今度はよく知っている垣根の姿だった。

「目は覚めたか?     」

「かきね、さん? いま、俺の……」

スクール』に入ってすぐ、自己紹介の時に『ゴーグル』を見せたら次の瞬間にはあだ名が決まっていた。

それ以来、もしかしたらはじめてかもしれない。
自分の名前、なんてきっと一生で相当の数見て聞くものを久しぶりに呼ばれて。
ゴーグルの少年は日ごろの扱いとのギャップでうっかり泣きそうなくらい感動していた。

「何だよ。大袈裟だな。それよりハニーとかのが好みか?」

「え」

油断したとたんに雲行きがまた怪しくなった。
垣根が口にしたのは、ついさっきまでの夢の中を想起させる単語だった。

やばい。
これはやばいやつだ。
パターンの判別なんてするまでもない。
この流れはあれだ。
「私はまだ変形を残している」系のボスキャラや、アクションものやホラー映画のオチでよくある「終わったと思ったか? はっはーんまだあるぜ!」的な奴だ。
この場合、物語は一旦締められたように演出されているが、それは次の展開への伏線や次作への期待を持たせるものだ。
残念なことに、油断していたところをひきずり落とされたゴーグルの少年はその気配に恐怖と絶望しか感じない。

「嫌か? じゃあ、ダーリンとか後は……俺の天使? いや、流石にねえな。そんなことより」

「え」

「まだ九十九万四千二百七十三回分残ってるけど。どうすんだ? 続けんのか?」

「あーーー! そっちかぁあああ?!」

はっとして少年はベッドから駆け下りた。
垣根を押しのけてドアを開けた先にはまた広い空間。
そこはまたしても白い壁紙白い床。
見慣れない、白い部屋だった。



541>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 02:54:59.53Pjr5JOri0 (10/23)


「る、ループだ?! 終わってなかったのかよさっきの続きなのかこれどこだ二面か? 
おまけに地味に減ってるってことはガチでやらなきゃダメなんスか、ノルマはスルー不可っスか? 
そして俺はいつの間にそんなに言わされたんスか」

「何だ。やっと気付いたのか。じゃあお前まだそんなに飛んでねえの?」

ドアの前でへたり込むゴーグルの後ろで垣根はコキンと首を鳴らしていた。

「と、飛ぶって?」

「これ何回目だ、って話してんだけど。へえ、意外ともつもんだな」

「い、嫌だ……覚めない悪夢とかなんの冗談スか。つうかループしたってことは、前の俺はどうなった? 
よくあるやつは特定のポイントでループだしあとは……死んでトリップコース? まさか……か、垣根さんに? とうとう俺も愉快な死体デビュー?」

「何だよ。あれ? お前それも覚えてねえのか。詳しく聞きてえか?」

一旦リセットすんのかこれ。いや、状況がわかってんなら最低限、背景設定くらいは頭に入ってそうだよな。
と意味のわからないことを呟きながら垣根は首を傾げた。

「それは気になるけど恐いので遠慮させて下さい」

「遠慮なんざしなくていいっつーの。んなことより、もっと大事なことに頭を使え」

「この垣根さんも前の垣根さんも設定とか何とかは諸々引き継いでらっしゃるのでしょうか?! その優しさが俺には怖いっス」

「別に優しさじゃねえよ」

「それでは一体なんなのでしょうか」

「真心じゃねえから下心、とか」

おっと。
ちょっと不穏な空気がやわらいだぞ、とゴーグルの少年は垣根のベタっぽいボケの振りに便乗してみた。

「でははい、そのこころは」

「えーと。恋?」

「垣根さんにしてはなんかベタすぎっスね」

「そこはスルーかよ」

危険なワードはあえて触れない。
下手に内部パラメーターでも変動して、会話がおかしな分岐に進んでしまっては困る、とゴーグルはノベルゲームにでも興じる気分で笑って返事をした。

「言葉あそびっスよね? そうですよね。ツッコんだら駄目な気がします」

「え? 何だって?」

「あー、いや。はい。スルーしました」

絶対に聞こえていたのに、狙い澄ましたようなおうむがえしで尋ねた垣根に、ゴーグルはあえて言葉を変えた。
その切り返しに垣根は感心したように、にやりと笑った。

「自分からの見え見えの振りをシカトかよ。いい度胸してんな」

「自己防衛本能っス。俺はチキンなんで運良く踏みそこなった地雷は全力で回避します」



542>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:02:09.71Pjr5JOri0 (11/23)


おい、とゴーグルに一声かけると垣根は隣に座ってきた。

「は、はい? なんスか」

「ん? いや、やっぱよくわかってなさそうだからさ。どうすりゃいいかヒントくらい教えてやろうか?」

大サービスだぞ? と人差し指をたてて得意げに言うが。
なんかもうノリがおかしすぎてゴーグルはぽかんとしていた。

「なんでこっち来るんスか?!」

「ほら、俺別にお前の敵じゃねえけどこう言うのが許されてんのかまではわからねえだろ。バレない様にこっそり聞けよ?」

そのまま内緒話をするように更に距離をつめてくる。
普段ならそこまで過敏にはならないだろうが、さっきまでの悪夢体験でゴーグルの少年はひどく怖がっていた。

「だからって近っ、顔近いっス!」

「デカい声出すなって。『総体』にバレんぞ」

「えっ。なんスかそれ。もしかして夢の平行ループ世界に散らばる垣根さんの中核が? じゃあその垣根さんに許して貰えたらこのおかしな夢も……」

「いや適当言ったんだけど。そんなの本当にあったのか。へえ、外に出て探してみるか?」

窓の外を指さして垣根はそんなことを提案したが、またしてもほっとしかけたところを落とされてゴーグルの少年はろくに話を聞いていない。
大慌てで垣根から距離をとった。

「なんで! 今! そんなテキトーな嘘吐いたんスか? ちょっと期待したじゃないですか」

「やたらビビってるお前に近寄るには、いい口実だろ? 何お前そんな引いてんだよ」

完全な棒読みで「うわー傷ついた。俺いますげー傷ついたぞ」と言っているのも、普段の垣根ならありえないふざけ方だ。

「やっぱこれ俺の知ってる垣根さんと違う」

「どんなもんかは知らねえけど。お前の知ってる俺ってのが、本当の俺なのか? どれだ? 『スクール』のリーダーの俺か? 『超能力者』の俺か? 他には何だ。何がある?」

皮肉めいた笑みをうかべると。
垣根はふと遠い目をして呟いた。

「そいつの何を、誰が本当にわかってやがるんだろうな」

ゴーグルの少年もオタクの端くれだ。
妄想とかそんなのは大好きだし、実は◯◯設定やもしもネタも笑って楽しめる。
だからって「何故か全力フルスイングで盛大にデレてくる垣根さん」とかはゴーグルの少年は嬉しくなかった。
なんかもうデレとかそんなちゃちなレベルじゃねえのはうすうすわかっていたが。

アクション映画やサスペンスの手に汗握る展開だって見ているからこそ面白い。
自分の身に降りかかってくるのは別問題だ。
もし二次元嫁推しキャラなら強制ラブコメ大歓迎オールオッケーこっちから三つ指ついてお願いしますでも。
実は垣根はホモだったんだよ! 世界は滅亡する!! とか言われたら世紀末の終焉の方に激しく納得同意してしまうと思う。

「なんスかねこの状況。いっそ楽にしてもらった方がマシなのか……
いや、もし死んでも戻るんならなんにもならないじゃないスか長引くだけっスよね。何がループのフラグだったんだ」




543>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:03:38.21Pjr5JOri0 (12/23)


ゴーグルの少年は悩みだした。

別におかしなものに触ったり、謎のゲートを通ったりバケモノの返り血を浴びたり。
時間や世界を移動する色んな装置を使ったり乗り物にも乗っていない。
世界を自分の意のままにする女子高生と交流なんかもしていない。
白くてウザいちんちくりんに何か願いごとをしたりもしていない筈だ。
それに、そう言う系のループなら何か便利そうなことや前回の記憶を持ちこしているのがお約束の筈だった。

そもそも夢の中身に理由なんてないのかもしれないけど。それにしてもいきなりすぎて訳がわからなかった。
早く目が覚めるのをまつ以外に対処も浮かばない。
夢だとわかっている夢の中でタイミングよくいまだ! Yボタン、とかすると現実世界に戻れたりするのだろうか?

「俺もよくは知らねえけどお前のことだ、大方俺の機嫌を損ねたんだろ。それがマズいって思ったんじゃねえのか」

「まさかそんなのが原因って……」

「否定出来んのか?」

「そんなぁ? だってここ俺の夢の中ですよね!?」

「そりゃあな。だが相手は垣根帝督だぞ? 俺にそんな理屈や、お前の常識が通じると思ってんのか」

根拠も説得力もないはなしだが、そう言われると何故か納得できてしまう気がするのは暗部組織でのあれこれに毒されているのだろうか。
別に垣根帝督個人はそこまで破滅的に傍若無人で非常識で血も涙もないクレイジーさんではけっしてないのだが。

「夢にしたってすげー理不尽なのになんかしょうがない気がする……垣根さんってすげーなー。えー。じゃあとりあえず、さっき聞いた一〇〇万回どうの…ってのがんばるしかないんスかね」

「まぁ、俺の不満を先に解消させた方がいいだろうな」

そう言うと、垣根はゴーグルをほっといてその場を離れた。

「さっきから随分余裕こいてるみたいだけど……そうやって口が利けてるうちに数稼いだ方がいいんじゃねえのか」

ベッドに腰かけながら垣根はゴーグルの少年を見下ろした。
なぜそこに? 椅子そっちじゃね? と思いながらゴーグルは垣根さんは何してるんですか、と聞いた。

「いや。どうせなら、特等席で聞いてやろうと思って。お前はそこで正座な。まだ」

まだってなんだろうと思ったが、余計なことはきっと聞かない方がいい。
探索者系の一般人寄りのジョブは下手に深追いするとすぐおかしくなって死んでしまうのがゲーム盤上のお約束だ。
長生きしたかったら手も口も出さずにスルースキルを磨いたほうがよさそうだった。




544>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:09:06.77Pjr5JOri0 (13/23)


「口にすんのはもう止めたのか」

「夢の中だからってそんな長時間愛を唱えて過ごしてたらうっかり事故りそうで嫌っス。なんか心理定規が前にそんな様なことをっスね……あとで目が覚めるからってToLoveるのは勘弁っス」

とりあえず、一〇〇万回の罰ゲームノルマを遂行中のゴーグルの少年だが言いはじめてみた解除ワードが予想以上に厳しかったので。
もう少し優しいやり方でなんとかならないかと垣根に相談してみた。
なぜかあっさりノートとペンが用意されたので、今は小学生の漢字の書き取りみたいなことを床の上でしていた。

「嘘から出た真って言葉があるよな。別にいいんだぜ、何か芽生えちまっても」

「殺意とか争いの芽とかは縁起でもねえっスけど。愛とかこの場で芽生えても何にもならないスよ」

「何もねえってことないだろ。そうなったらとりあえず、今の俺はしばらく退屈しないで済むだろうな」

「はぁあああ、何故ここにいる垣根さんはそんなに広くオッケーなんスか。
『俺と垣根さんがこう……口に出すのも憚られる感じの、夢の中の設定』の影響なんですか。そこを目指さないと旅は終わらないとかだったらどうしよう」

「なんだよ。そう言う方向性で行ってみるか? っつうかむしろ不満があんのか。顔も頭も良くて金もあって超能力者で、非の打ち所のねえ俺のどこが気にいらねえんだか。
あ。完璧過ぎるとだめってやつか? そればっかりはな。仕方ねえよ。天に二物も三物も与えられてるもんな、俺」

「それを自分で言っちゃうのが垣根さんっスよね。いやあの俺男はものすっごく守備範囲外です。フラグも圏外です」

「じゃあ女ならいいのか。そうだな、別に夢だしなんとか……あれ。お前女の方がいい?」

「そうだ。そうですそうでした。そもそも俺三次元はですね」

「アニメって幾らあれば作れんだ」

金かけるとワンクール数千万だっけ、億いくっけ? いや。垣根さんならリアルワールドでも、用意できたとか言いそうでこわいぞ、とゴーグルはビビッていた。

「えー、あの俺垣根さんのことは『スクール』のメンバー以上に見れないっスから。やっぱ無理ですって」

「お前なあ。ここ夢だぞ。何堅く考えてんだ。まぁ、それでもお前がそこまで言うんなら……仕方ねえ」

あーあ、と残念そうに言うと。
垣根は頭を掻いた。

「お友達から…よろしくな。幸せにしてやるよ」

「最後なんでカッ飛ぶんスか? なんで恋人ルートで完結しちゃうんスか他のENDはどこいったんスか!」

ものすごいファールを場外にぶち込んだ超能力者はものすごくさわやかに片手を差し出したが。
拳を握ったゴーグルの少年が握手に応じないのを見るとすぐにそれをポケットにしまった。

「何言ってんだ終わってなんざねえよ。俺達の活動はこれからが本番だ」

「だめだ。やっぱり聞いてくれない。俺の声は聞こえてるはずなのに話にならない。なぜだどうしてだ」

ただでさえ真偽のあやしい常識なんてものはここではカンナかけてやすりで削っておまけにロードローラーで轢きつぶされてしまったくらい粉々なのかもしれない。

「夢の中の垣根さん、あれっスか……あなたさまは実は男も大丈夫だーとかそんなのが……?」

現実ならもちろんばっさり否定してもらいたい質問だがどうしても、この夢の中が不可解すぎてつい聞いてしまった。

「男だから女だからってのは、そんなに大した問題か? そいつだから、って答えの前にはつまらねえもんだろ」

「夢にリアル世界の理屈を持ち出すのもなんスけど。違和感ハンパねえっスよ」

幅のありそうな返答にほっとしていいのか悪いのか判断に悩みつつ、ひたすらページを埋めながらゴーグルは新たな疑問をぶつけてみる。

「何でだよ。この俺がいいっつってんのにか」

「だって俺っスよ? 能力も大したことねえ顔も並みモブ・ザ・モブいいとこなしオタクで名無しのゴーグルっスよ?」

自分で言っててちょっぴり悲しくなる事実を告げるとベッドの上で暇そうに転がっていた垣根は起き上がって反論した。

「おい。俺のもんを馬鹿にすんのはたとえお前でも許さねえぞ」

「垣根さんかっこいー! じゃなくて! もうちょっとこう、具体的にですね。知りたくないけどきになるっつうか。俺のどこがそんな気に入られてんのかさっぱりなんで…」





545>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:12:24.56Pjr5JOri0 (14/23)


「何だよ。じっくり聞かせてほしいって?」

よーし、いいぞ、と。
何故かちょっと照れくさそうにしながら垣根はベッドから降りてきた。
慌てて、ゴーグルの少年は両手を広げてそれを止めた。

マイペースでいつでも俺のターン! って感じのこの人をうかつに近寄らせてはいけない。
そう直感した。

いつだったか心理定規の話を聞いておいてよかった。
何ていうか、相手の都合なんて最初からお構いなしな垣根は相手のテリトリーに踏み込んだら最後、すべて総取りでもぎ取っていきそうだった。
肩ポンで敵も味方もイチコロ、ワンパンキルみたいな。もちろん文字通りの意味でも。

「タンマっス。わかりました。下手に垣根さんの好感度が上がりそうなチョイスは俺の為にならないんですね。
藪から『未元物質』でソッコー詰むの怖いんでとりあえず見た目で! 顔は?」

「ほら、えっと……主張し過ぎねえ控えめなとこがお前らしくていいと思うぞ? なんとかは三日で飽きるっつーけどそんな心配もねえし。
いい意味で平均的なのはマイナスが少ねえってことじゃねえの」

イケメンにドヤ顔でそう言われてゴーグルの少年は肩を落とした。
何故か不思議と悲しかった。

「どうしてでしょう褒められてるはずなのに心が痛いっス」

「お前は自分でモブだなんて言うけどな。たとえ三〇〇人居たって俺はそこからお前を見つけてやるよ」

「……垣根さんて、すごいっスね」

「ゴーグル! って呼んでいい感じに返事すんのがお前だ」

「俺の、アイデンティティ……」

ゴーグルの少年はがっくり床に伏せた。
とどめの余計な一言がなければ。
ちょっと、いやかなり感動しそうだったのだが。
色々恵まれたハイスペックな人間ともなると、あんまり他人の外見に興味はないのだろうか。

「んなこといわれてもだな。じゃあさ。お前は女だとどう言うのがいいんだよ」

「そっスね。やっぱ大和撫子系の、守って応援してあげたくなるよーなのが。基本けなげ系で……髪は黒でロングがベストっスかねー。
ふわふわ系、頑張り屋さんもいいっスけど、ちょいネガちょい病みも全然。派生で毒舌とかもまあ。眼鏡はあってもなくても……あとは」

二次元キャラの個人的萌えポイントをずらっと並べてみたが、垣根はちっとも理解できなさそうな顔をしていた。
かと言って、それに具体的な作品とキャラ名をあげてわかるわかる超わかるー、と同意されたらそれはそれで激しく微妙だったが。

「簡潔にまとまらねえの」

「うーん……わかりやすく正反対なキャラ二派で分かれるやつなら…懐かしアニメのWヒロインでいくと、俺はこっちのアルビノ1st派っスね。
ハーフの2ndはちょっと……性格言動キツい子はあんま、ついでに金髪もそんなに嬉しくねえっつか中外ゆるふわタイプだとむしろ有りなんスけど、
傍若無人に蹴り入れてきそうなのはちょっと」

何かないか、と探したら都合よくズボンのポケットからスマホが出てきたのでゴーグルの少年はそれで画像を検索すると垣根に見せた。
そんなところは夢仕様で便利で助かった。
しかし、それをみた垣根の顔色がさっきまでとはまるで変ってしまった。

「テメェもあれか? やっぱ『第一候補』だよなってことか? ああ?!」

「はい? ちょっ、え、垣根さん?! 意味わかんねえけど……ごめんなさい!?」

背中から翼が出てきそうな勢いで怒鳴った垣根に、訳も分からずゴーグルの少年は頭を下げた。

「女の子の話でしたよね。垣根さん、一体何が地雷だったんだ?」

まさかリメイクででてきた三人目とかをちゃんと数に入れた方がよかったのか。
もっと違う最近の作品ならよかったのか。
何がまずかったんだろうとゴーグルは会話イベント失敗の原因に首を傾げていた。


546>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:16:11.49Pjr5JOri0 (15/23)


「ほら。そんなことより手が止まってんぞ? いいのか」

「不思議と手とかは疲れないんスけどこれ精神的にきます。気分転換にひらがなオンリーでもいいっスかね」

垣根の名前は地味に書きづらい上に画数が多い。

「いいんじゃねえの別に」

よし。じゃあほら、後ろにハートも付けろ。
とかすごく似合わないメルヘンなことを言われてゴーグルの少年はもう数えるのも嫌になるくらいのため息を吐き出した。
今まで彼の頭の中にあった「垣根帝督像」がガラガラ音を立てて崩れていきそうだった。
クールでカッコいい暗部のリーダーはどこにいってしまったのだろう。

ていとくあいしてる♡とかもう頭がおかしいとしか言いようのない文字の並び始めたページを見て垣根はちょっぴり嬉しそうだった。
なぜか、ハートマークだけじわじわと色が変わりはじめている。
視界の端で芸の細かい仕事がされているが最早そんなことに一つ一つ反応しているゴーグルではない。
そういったアクション一つにも消費されていそうな精神力的なものを温存しなくてはいけないのだと自分に言い聞かせていた。

(あれ、これ秘書艦に言われてるって思えば……いける? はっはっは、もう、俺ってば愛されてるなぁ)

とひたすら手を動かしながら妄想で逃避しはじめる始末だった。

「あれ。意外とルール緩いんスか?」

「いや、お前が勝手にはじめたんだろ」

「でも垣根さんだめなんていいませんでしたよね?」

「俺も待ってる間暇だし。これなら、話くらい出来るだろ」

おや?
と微妙な意見の食い違いに、怖くなってゴーグルは手を止めた。
彼は、「原因である垣根さんがいいって言うんだからやり方変えても大丈夫だろう」と思っていたのだが。
当の垣根はまるで責任感のないコメントをしている。
この差はなんだろう。
って言うか、こんなことしてていいのだろうか。

「……このノートとペンは?」

「お前がいるって言うから用意したんだけど」

「……この、愛のデスノートみたいになってるものはどうなるんでしょう。最後の審判的なので有利な物証になるんですか」

「さあ?」

「俺…何してるんだろう。え、この時間がまるで無駄だったなんて考えたくもない」

既に何ページもぎっしり文字で埋まったノートを前にゴーグルの少年は割と本気で落ち込んでいた。
時間をかけてこつこつ進めたゲームの報酬がなんかすげーしょぼいしおまけに中途半端で全然使えそうにない大外れだった時の心境に近い虚しさがあった。

「いや、うん。そんな落ち込むなよ大丈夫だろ? 多分だけどさ」

「じゃあ今何回分クリアになってます?」

「あー……良かったな。ちゃんと残り減ってるぞ」

垣根はちょっと慌てた様子で、落ち込みまくるゴーグルのフォローをした。
そして。何か確認しているのか宙をにらんで考えると、つまらなさそうにそう言った。

「……なんでそんな、残念そうに言うんスか?」

「きっとこれが全部済んだら、俺達がこうしてる意味もなくなるんだろ」

「垣根さん」

「なぁ。俺はさ」

「なーんて言っても騙されませんよ! だからなんですぐ距離を詰めようとするんスか。境界線! 境界線!! はーい、こっから俺の陣地ーー!!」

何か言いかけながらまた接近してこようとする垣根だったが。
白い床の上にペンでガーッと線を引きながらゴーグルは大声で騒いだ。

「チッ。だめか」

何らかの、きっとあんまり愉快じゃない目論見が外れたのか垣根は悔しそうに舌打ちをしていた。



547>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:19:00.77Pjr5JOri0 (16/23)


「よし」


「……あれって、聞いた方がいいんスかね。垣根さん、そんなとこで一体何してるんですか」

「来いよ」

さっきゴーグルが床の上に適当に引いた線の向こうでは、垣根が腕を広げた姿勢で座っていた。

「仰る意味がわからないのでスペックの低い俺にもわかる言葉でお願いしていいスか。出来たらやさしいにほんごでおねがいします」

「俺が行くのがだめならお前が来りゃいいだろ。ほら、受け止めてやるから」

「どうしてそこで俺がそっちに行く前提なのかがわからないんスけど。いや、キョトンとする所でもないと思います」

なんでお前こっち来ないの? って反応をされてしまった。
目を丸くして首を傾げる「らしくない」垣根の振る舞いにゴーグルはがっくり肩を落とした。
なんというか、ギャップが普段とありすぎてリアクションに疲れる。

「なぁ。お前ノリ悪いぞ」

「うっかりノリツッコミでもして取り返しのつかないことになったら怖いので。そして俺はページを埋めるのに今とても忙しいのです。
そんな訳で塩対応で失礼します」

一応、書き取り地獄が有効なことはわかったのでゴーグルの少年は一刻もはやくこれなんとかしないとって気持ちでひたすらペンを動かしていた。

「なぁ……暇なんだけど」

ペット禁止の学生寮住まいのゴーグルには未経験のことだが。
お猫様と呼ばれる生き物のお世話をしている人間は、何かやっていてもまともに作業をさせてもらえないらしい。
下僕がなにやら忙しくしていると、それが膝だろうがテーブルだろうが、たとえキーボードの上だろうがお構いなしにお猫様がよじ登って来て『相手をしろ』と邪魔をしてくることがあるというのだ。

不満そうに睨んでくる垣根を見たゴーグルはそんな話を思い出していた。
ギャグ漫画よろしくダイビングポーズで飛びかかってこられでもしたら色んな意味で瞬殺っぽいのでその点はありがたいのだけど。

なんでそんなことを思いついたのか。
第二位だけに、にゃんにゃんなのか。じゃあ一位ならわんわんだったのか。
ははは。猫とか洒落にならない。

今の状況を思い出して、そんなおかしなひとり連想ゲームの中身にNGのタグを脳内で速やかに追加した。
どこかに数値化もされていないし実感もないが疲れてきているのだろうか。
妄想脳内逃避も残念な感じになってきていた。


「そんなこと言われても一体何故こんなことになったのか……ってきっと俺のせいなのかもしれないけど
残りはネタをガチでやらせることにした垣根さんのせいっスよね。一〇〇万回ってマジっスか」

「その一〇〇万回だけどさ。お前このまんまで本当にいいのか」

突然真面目な顔をする垣根に、ゴーグルの少年も背筋を伸ばして話を聞いた。

「ここは夢の中だ。なら疲労しねえんじゃねえか、って想定で。お前が今まで通りちまちま数を稼ぐとする」

そこまで言うと垣根はゴーグルがもっているノートを指さした。

「やってみてわかったと思うが、声に出した方が断然早いだろ。一分間に三〇回なんとか言えたとして。
そのペースを維持して、それでも不眠不休で二〇日は掛かる計算だぞ? 不毛過ぎねえか。んなことやる意味、あるのか?」

僕とゲイ約して、ホモォ少年になってよ、みたいな無茶ぶりから。
今度は小学生にもわかりそうなさんすうのお話でいかにゴーグルが無駄なことをしているか説いて落としにきた。

「ぐぅううう。その根本はなんとかならないんスか根っこから問題は解決しないんスか」

「だから俺にはわからねえんだって。しらねーもんそんなの。もっとマシな解決法くらい自分で考えろよ」

「どっちだ……どっちの笑顔なんだこれ」

僕わかりません、みたいにいい笑顔をしてくる垣根は知らないふりをしているのか、本当にわからないのか。
疑念のこもった目を向けてもゴーグルにはさっぱり判断がつかない。




548>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:21:40.11Pjr5JOri0 (17/23)


「漫画だと段々スピードアップしてって、一日一万回の正拳突きとかも出来るようになっちゃうんだけどなあ」

「そうだ。それでちょっと思いついたんだけど。面白い話がある。まあ聞け」

「……なんですか」

「平均して十分に一回。一日で百四〇回『愛してる』とか『好きだ』って言う生活をすると一〇〇万回まで十年掛からねえんだよ」

「あれ。計算おかしくないっスか? そのハイペースでも二〇年は掛かりますよね」

「お互いに言いあえば数は半分で済むだろ。で? そんな生活ってのはどうだ」

何となく、いい感じのオチをつけようとしているのを察したゴーグルは垣根の発言を踏まえつつ、少し考えてから口を開いた。

「……幸せは倍、ってオチですか」

「そ。『一〇〇万回の……』って言葉は色々あるけど、何も大袈裟な例え話じゃねえ。実現可能な数字だって気がしてくるだろ。
十年なんて短いスパンで考えなくても人生ってのは長いんだしもっと緩く気楽にすりゃいい」

なんだ。お前ちゃんと上手いこと出来るんだな、なんでそれを使わねえのかわからねえ、とよくわからない独り言を言うと垣根は「面白い話」を終えた。

「はー。なるほど……じゃあ、一生の間に一〇〇万回のありがとうとかも聞いてるかもしんないっスね」

「で、どうだ。俺に養われる覚悟はそろそろ決まったか?」

がくっ、とそこで少年は肩を落とす。

「ああーっ! なんか女子にも受けそうないい話だと思ったのに! 
意外と垣根さんロマンチックな話もできるんですね素敵! って思った途端にこれですよ。
そしてさりげなく最後すり替えないでくださいなんスか俺は何故に養われるんスか。最早対等だとかパートナーとかそんなレベルでもないんスか俺ペット枠っスか?!」

「だから幸せにしてやるって。俺が」

「俺の幸せは俺が決めます! 大丈夫っス!!」

このパターン何度目だろう。
頭を抱えながら。
そんなことが考えられるくらい、ネタ化したやりとりに段々慣れ始めていることにゴーグルの少年は悲しくなった。
流せるようになってきているのは夢の中での彼がいまのおかしな状況に順応している証拠だ。
この先ちょっとやそっと変な振り方をされても、座布団が狙える対応が出来そうなくらいだ。
だが気持ちのハードルが下がってきているのは、まだ笑えるレベルとは言え、振られるネタの傾向を考えてもあんまり良くないだろう。

「チッ……遠回しなプレゼンは失敗か」

「垣根さんって『ガンガンいこうぜ』な感じのゴリ押しパワータイプだと思ってたのに。何だか戦闘スタイルが変わってきてる気がする……垣根さんやっぱすげえ」

「なんだ。競争でもするか? 『ガンガンイ」

「余りにレベルの低いとこに反応するのはどうなんスか。小学生スか」

ゴーグルの言葉にかけて、垣根が下方面の問題発言をしそうになったが。
下らなさすぎてさすがに言い終わる前に止めた。

「あれっスよね? なんか『ホモネタっぽいこと言ってみたいなー』って言うやつですよね? そう言う設定で、ちょっとふざけてるだけですよね」

「いいのか」

「へ?」

「じゃあ、本気出してもいいのかよ?」

小さくため息をつくと垣根はその口元をつりあげて問いかける。
それに言葉を詰まらせたゴーグルの少年の全身からダラダラと嫌な汗が噴き出す。
凍りついたような反応に垣根が目をそらすと、ついさっきまでの圧迫感はなくなっていた。
へなへなと腰を抜かしたゴーグルはそのまま額を床に擦り付けた。

「すいませんでした俺が大変悪うございました」




549>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:25:15.76Pjr5JOri0 (18/23)


「少しは理解できたか? この状況でお前が平然と過ごせてんのは俺が遊んでやってるからだ。俺の広い心、俺の温情、つまり」

「つまり?」

「愛だな」

一旦ためて、もったいつけた後に垣根は見事なドヤ顔で言い切った。
ここしばらくの間に、ゴーグルの少年はすっかり見慣れてしまってありがたみが薄いのだが、ドヤ顔品評会とか決め顔選手権があったらグランプリを狙えそうないい表情だった。

「ああ。はい」

「あれ……そこ噛みつかねえな?」

渾身のいい顔と絶好のつっこみどころな一撃に、当然ゴーグルの少年のカウンターを期待していたらしい垣根は。
狙いが外れてちょっと困ったような顔をしていた。
一方、散々な垣根の言動をいまや軽くスルー出来るほどになってしまったゴーグルは修行中のお坊さんの様に静かな表情でうなずいた。

「はい。日本語として広い意味でみればその単語には特別問題がなさそうなんで」

「まぁ……いいや。俺の愛がちっとはわかったところで……おい聞こえないフリしても意味ねえぞ」

「いいえ。聞いていますよ」

「なら……感謝の一つくらいしたらどうだ」

「ありがとうございます垣根さん」

「どこでそんなの覚えたんだよ」

このタイミングで流れるような五体投地をするゴーグルの少年に。
今までさんざん押していたはずの垣根も若干引いていた。

仏教徒みたいなお礼では感謝の気持ちが届かなかったらしく。
垣根はもっと心に響くやつにしろ、とお礼の上乗せを要求してきた。

「で。なんでハグしろなんでしょうか」

「別にいいだろこれくらい。ハグなんて挨拶だろ? ははあ、お前もしかして俺のこと意識してんのか。
まぁ、仕方ねえよな。自分で言うのも何だが、俺は相当魅力的だ」

この自信はどこからくるのか。
垣根さんはこんなこと言うキャラじゃないはずだ、とゴーグルは思うが。
ナルシシズム溢れるセリフもなんだか似合ってしまうのは確かだった。
色んな時に使える魔法の言葉「但しイケメンに限る」は伊達じゃないらしい。

「いや? それはっスね」

「何とも思ってねえんなら……出来んだろ」

「思ってないっスよ? 思ってませんとも」

こんなやすい挑発に乗る奴はいない、と普通なら思うかもしれないが相手は垣根帝督なのだ。
ジャイ○ンがの○太の漫画を「貸せよ!」と言った瞬間にはもう奪い取っているように。
ここまで発言したからには要求でも挑発でもない、確認ですらない。確定事項なのだ。
主導権も決定権もゴーグルにはない、是非も無し。

「え。俺は顔見ながらしてーんだけど。お前、前から嫌なの?」

「顔見ながらハグってどうやるんスか。繰り返しますが、ハグっスよね。絶対間違いないですよね」

「うん。とりあえずは」

少し嫌な含みがあったが、素直にうなずいてくれたので良しとした。
別にまあ普段の垣根相手ならHAHAHAって感じで欧米ノリのハグくらい、何すんだコラと返り討ちにあわなければ出来ると思うのだが。
今この垣根に正面から近づくのは、野生のクマに背を向けるよりはるかに危険だとゴーグルの少年は感じていた。

「はいはい。お前って何気にワガママだよな。意外と度胸あるっつうかどっか抜けてんのかわかんねえけど」

じゃあバックで、と残念そうに垣根は言ったがゴーグルの少年は黙殺した。
ネタを振られた予感は悲しいかななんだかとてもしたが、今その相手をするとやばーいフラグ満載の地雷原で詰むことになる。
辺り一面まとめて吹っ飛んで、この様子のおかしな垣根さんに笑顔で骨を拾われるのは嫌だった。

ビシッと仁王立ちする垣根の背後に回って、ゴーグルは言われたように腕を回した。
長身の垣根とでは身長差があるのでなんとも中途半端な感じに終わり、ゴーグルの少年はげんなりした顔で手を放した。

「何だこの虚しさと敗北感」

「想像以上に……つまらねえんだけど」

こんなことしない方がよかったんじゃないかと言うくらい、不満そうな顔で垣根は首を振った。




550>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:28:50.03Pjr5JOri0 (19/23)


「せめて補う努力をしようぜ」

「いやこんなもんっスよね? 挨拶程度のサムシングに俺はいったい何を期待されてるんスか?!」

「じゃあ、ほら。交代」

そう言って強制的に立ち位置が入れ替えられる。
あまりこうして他人を近づけたことが無いのだと垣根は言った。
日本人ならそうそうこんな風にハグとか、よっぽどふざけてないとしませんよねーとゴーグルは返したが。
そう言うことじゃねえよ、と呟くと垣根は肩のあたりに顔を寄せた。

「どこ行っても厄介な実験動物扱いだったからな。昔っからさ」

「垣根さん」

「……何だよ」

「なんかめっちゃ当たるんですが」

「んー? 何が」

「耳に、息が! つうか話の途中で息を荒くしないでください!!」

「なんつーんだっけ。こう言うの。やると喜ぶんだろ? ……えっと、『耳つぶ』?」

「垣根さんがおかしな流行に毒されてる?! っつうかこれもうハグじゃないっスよね? ホールド寸前っスよね俺。ブレーク! ブレェエエエク!!」

ゴーグルの少年は自分の胸の前まで回された腕を激しくタップしてタイムを要求した。

「なんだバレたか。いい作戦だと思ったんだけどな」

垣根はケロっとした顔でターゲットの確保に失敗したことを笑っていたが。
難を逃れたゴーグルの少年はまだ嫌な鳥肌が…と腕をゴシゴシさすっていた。

「けどまぁ、いいニュースだ。お前がひっついてる間の愛してるPはちまちま言ってる時より数倍早く増えたぞ。試してみるか?」

「悪いニュースの間違いっスよね。何スかその、課金扇動みたいな露骨な追加システム。せめてその恐怖のなんとかポイントを可視化してもらえないことには。どんなもんかわからないのにそんなこと出来ねえっス」

「別に何か減る訳じゃねえだろ」

こいつ何マジになってんの? と言われそうだがゴーグルの少年はそこはきっぱり断った。

「形は無くても俺のだいじなものが減る、そんな気がするので。お断りします」

「仕方ねえなぁ。これでいいのか?」

「ああ、垣根さんの機嫌が『悪くねえ』だと高ポイントで『ナメんな?』だとゼロ、『上出来だ』なら更に追加でボーナスなんですねって、何でコマンド結果表まで作られてるんですか?」

突然どこからかニョキニョキ現れたボードは白かった。
ひょっとしなくても、メイドイン『未元物質』のようだ。
そこに出ている表によるとトータル一〇〇万のペナルティ分を、なんとかごにょごにょポイントを増やすことで相殺出来るシステムらしい。
ゴーグルの少年はそりゃもうがんばったのだが、まだ半分以上ポイントを消化しなくてはならないようだった。

「あれ。でも思ったより減ってるんスけど。俺いったいどこでそんなに稼いだんだ?」

そう尋ねると、垣根は「今までもそれなりに楽しかったからな」
と言って笑った。

「俺が飽きて来るといい結果は出なくなるから工夫しろよ。お前、こう言うの好きだろ?」

「思考停止でひたすらタップはダメってことスか。いやいや、ここは地道に頑張らせてください」

「まぁいいぜ。どうせ楽な方に流れちまうんだから」

「恐ろしい予言はやめてくださいっス」

「今はな。すぐに勝利宣言をしてやるよ」




551>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:33:56.85Pjr5JOri0 (20/23)


なんと、『ゴーグル』の使用も大丈夫らしい。
もっと早く聞いとけばよかった! とゴーグルの少年は後悔したが、能力を使えば今までの数倍早くノートのページを埋めることが出来る。
おまけで新しいノートやなんかも用意してもらって、ゴーグルの少年は久しぶりに喜んでいたのだが。

「あのー、垣根さんこれは」

「おまけしてやってんだ。これくらいいいだろ。ポイント稼がせてやるよ。ほら、手出せ」

横に座ると垣根は少年の腕を引っ張って自分の頭の上に乗せた。

「撫でろ」

「えー……」

ちっとも嬉しくない新イベントの開始に思わず本音が出てしまう。

「も少し右」

明るい色の髪をわしわし撫でながらゴーグルの少年は無心でペンを操作していた。
どうやら垣根はスキンシップがずいぶんとお気に召したらしい。

「ちゃんと触れって。こっちもだ」

「はいっすー…」

そんな風にひとしきり頭を触らせて満足したのか。

「よーし。次お前な」

垣根はご機嫌で、またしても選手交代を宣言した。

「は!? いや大!丈!夫!っス! 間に合ってますね全然」

「遠慮すんなって。こいつをいじらなきゃいいんだろ?」

「ほんっとーに! 大丈夫です」

どーこーにしーよーうーかーな、と。
頭についた『ゴーグル』をよけて触る場所を探していたがゴーグルが本気で嫌がっているのを見て垣根は手をおろした。

「俺がこうしてやって、喜ばねえ奴なんざいないぜ? つうか、あれだ。お前もいい加減さ」

「だか……あーっもう、俺に触んなって! 言っ」

叫んだ瞬間。
少年の姿はなくなってしまった。





「あー。またか。今度は長くもったと思ったんだけどな」

そうぼやく垣根の前に、何やら白く光る文字が現れて流れてくる。
なにかのコードのようなそれをしばらく目で追っていた垣根は残念そうに首を振った。

「欲を掻くとかえって面倒だな。リセットだリロードだのして同じようなの何度も出来るやつの気が知れねえ。ゲーマーってのはあれか? 暇人ばっかか?」

ちょいちょい、とところどころ文字列をスクロールしながら呟く。

「まぁ、ここでハイスコア、記録更新か? そろそろあの馬鹿も気付けばいいんだけど。俺はそこまでこだわらねえぞ? つーか、その前に飽きるだろ普通。本気で一〇〇万って馬鹿かよ」

英字で短いメッセージが表示され、最終的なスコアデータの様なものが垣根の前に出そろったらしい。

「ここはあいつの夢なんだからさ。あいつがそう思い込んでるうちは、テメェが頭んなかで決めたルール通りに同じことの繰り返しだ。
それは本当に俺に通じんのか、って折角言ってやってんのに。気付くどころか別のプランを試しもしねえ。テメェが悪いの一点張りで、こっちの気はどうでもいいんだろうが」

コーヒー買って来い、と言われたがコーヒーがなかったら手ぶらで帰ってきた。
そんな機転の利かなさに呆れるような口ぶりだった。

「それに、あんなビビんなくてもいいだろ。逆らったところで別に…………」

一瞬をどこまでも引き伸ばしたような、さっきまでの下らないやり取りを思い出しているのか。
少しの間垣根は考えていたが。

「いや。やっぱ、ムカつくな?」

それとこれとは別だ、みたいな顔をすると垣根は近くに浮かんだ光る数字を邪魔そうに手ではらって消した。





552>>201「ゴーグルに渾身のデレをかます垣根」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:38:44.59Pjr5JOri0 (21/23)


「なぁ、心理定規」

「なぁに」

「そいつ、今どんな夢みてやがると思う」

垣根にそう聞かれて心理定規はそいつ、ゴーグルの少年の方にちらっと目を向けた。

「そうねえ。何かミスしてあなたにこっぴどく怒られてる夢……かな」

「ううう……ごめんなさい……垣根さん…俺が悪かったんです……うーん」

「なんかすっごくうなされてるしね」

そうじゃないかな。しょうがないわね、と言いたげな少女の呟きはあんまり興味がなさそうだった。
三人そろって移動中、と言うことは『スクール』がらみのあれこれなのだが、一仕事するまえだと言うのに誰もかれもそんな空気じゃない。

「もう着くんだからそろそろ起こせよ」

自身も、やる気がなさそうなままそう言うとリーダーは軽く肩を回してあくびをした。

「私が?」

「俺にどうしろっつうんだよ。お前そこから手届くだろ。つうか、よくこれで寝れるな」

助手席に座った垣根は後部座席をちらっと振り返った。
左後ろのドアにもたれる、と言うか頭をゴツゴツぶつけながら寝入っているゴーグルの少年の隣。
シートの右端に座る心理定規は声をかけられて不満そうに首を振った。
車内の上座は運転手の後ろ、というのが世の常識らしいが。
それも『スクール』では通用しない。
もしも車が絶望的に大破しても一人無傷で降りてきそうなリーダーは、気分で勝手きままに乗車していた。

結局。
目的地に着くまでに起こしてもらえなかったゴーグルはどうなったのかと言うと。
強制的に下車させられていた。

「わあああごめんなさいっス垣根さんが垣根さんしか垣根さんだけ垣根さんは世界一っスだからあのどうか勘弁して下さい!!」

ドアが開いて、支えがなくなった少年はずるずるとそのまま地面に滑り落ちていた。
重力に負けて転がりながら意味不明な悲鳴を上げる。

「おい、この馬鹿まだ寝てんぞ」

「いだっ……たたた、あれ」

ぱち、と少年が目を開けると。
心理定規と垣根がさかさまに映っていた。

「一体どんな夢みてたの」

「いや……それが……あれー? 覚えてないんスよね。垣根さんが俺の話を全然聞いてくれなかったのはなんとなく」

「いつも通りじゃねえか」

「覚えてなくて良かったかもね。ここにすっごいシワ寄せてうなされてたから相当嫌な夢だったみたいだよ」

心理定規は笑っていたが、垣根は気のゆるみまくった態度に厳しい目を向けていた。

「お前なあ、そんな調子で大丈夫かよ。ヘマするんじゃねえぞ」

「夢だけじゃなくてこっちでも怒られたりしてね」

「そうだな。じゃあもししくじったら――」


寝起きのぼんやりした頭で。
ゴーグルの少年は何故か。
どうしてか無性に嫌な予感がしていた。
一度言葉を切った垣根はにやり、と。
確かに愉快そうに笑っていた。




553長いよばか ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 03:46:47.52Pjr5JOri0 (22/23)

ドーモ
ちくしょうやっとだ。寝るか寝るぞ寝ますよいいよね

>>201

「ゴーグルに全力でデレる垣根」だったはずだがどうしてこうなった。
ホモ大喜利とかなんじゃこりゃ

ゴーグル「デレデレのリーダーに死ぬほど愛されそうで眠れない安価ぎゃーーっ!」
心理定規「なにそれ」
垣根「キモい」

前に「夢オチなら問題ない」って聞いて。そしたら某プラスの新婚さんスチルのあれが浮かんだのでゴリゴリ押し切った。特に理由のないデレがゴーグルを襲う。
いやもうデレるとかいうかなんかだけど。
一〇〇万回って絶対無理だろうけどほんとにやるとどうなるんだろう?と思ったら無駄に伸びた。
結果、垣根が飽きた。
多分もう今回の以上、様子のおかしな垣根を書くことはないと思います。おかしさの限凸MAX。
ゴーグルくんの敗因は。
別に聞かなくても親切にお話ししてくれる垣根さんにろくすっぽ喋らせなかったことだといちはおもいましたまる



554以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/01(日) 11:45:53.36zzdAJwB+o (1/1)

そろそろ他の暗部との絡みが見たいのだがどうだろうか?
アイテムとか、アイテムとか、後アイテムとか!


555以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/01(日) 13:57:16.489NCGKmrd0 (1/1)

ハグしたり頭撫でたりとりあえず鼻血が止まりませんどうしてくれんですか1
インディアンポーカーにして売ってくれ


556以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/01(日) 15:11:43.80ibXt5Bg20 (1/1)

おっつおつ
このリアル体感型シミュレーション(アクション?)ゲームは何処に行ったらできるんだ
垣根を喜ばせたいけど終わらせたくないジレンマに苛まれながらエンディングを迎えて幸福感と謎の喪失感につつまれたままエンドレスモードに突入したい
たとえイベントが100万通りあったとしてもコンプリートしてみせるぜって廃人宣言してみたり

インディアンポーカーってのはレールガンで出てきた見た夢を保存したカードのことでそれを使って他人の夢を体感できるってやつ
そんで需要の高い良質な夢を安定供給する奴はドリームランカーって呼ばれてて青ピもそのうちの一人
詳しくは電撃大王と同時発売のとある科学の超電磁砲11巻を見てね!


557以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/01(日) 18:02:52.10GUai+Q8VO (1/1)

どこが悪夢なんだよ超いい夢じゃないか
ゴーグル爆発しろ
垣根が増えてサンドイッチとかハーレムとか出来る未来のゴーグルも爆発しろ
垣根とゴーグルのどっちがどうなのか気になって読んでから寝れないので1は責任を取ってくれ


558以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/01(日) 21:55:32.37w5tu+jDrO (1/1)

>>534
1しにすぎだろwwwwww


559 ◆q7l9AKAoH.2015/11/01(日) 23:05:20.07Pjr5JOri0 (23/23)

>>556
教えてくれてありがとう。なぜか11月発売だと思ってた助かった。
青ピすげえ。


560以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/02(月) 03:33:42.33JMNb+FsAO (1/1)

やたら親切なのもデレ(愛)かと思ったが、ていとくん元々自爆型だった

つか、むっちゃ笑ったけどゴーグルくんの恐怖が手に取る様にわかるタイプのガチデレ過ぎて
なんかジワジワSAN値削られてる…これは余裕もなにもあったもんじゃねえww
特にオチは最早ホラーだよwwww

おもろかった、乙


561以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/02(月) 22:21:31.97z6by2GxN0 (1/1)

デレていとクンキテター(゚∀゚)ー
俺がいるからコーヒーメーカー要らねぇとかなンなンですかァ、コーヒー飲みたくなったら毎回淹れてくれんのかよヒャッホゥ
ばーかってのがいちいち可愛すぎるし愛してるPとか今時バカップルでもやんねっつの
つかわりと適当にあしらわれてんのに減ってるしなにこの色々甘過ぎるていとくんたまんねぇ、むしろたまる
とりあえずゴーグルは爆 発 四 散しろ
コ/"/ー/ク/"/ルくらいになってくれ
つーことで帝子ちゃん(♂)を全裸待機するしかねぇな


562以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/02(月) 23:26:21.93zir+pp9bO (1/1)

おっつ
>>545
第1位っぽい女子に嫉妬するときちゃんとテメェって呼んでる
1のゲイの細かい事
それでもポイント減らさない垣根の愛か
ゴーグル愉快なオブジェになれ



563以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/03(火) 21:07:09.828zwihmKd0 (1/1)

安定して面白かった乙
いやー、3Pも惨[ピーーー]も気分次第とは流石垣根さん過激っすね
たとえ230万人がすし詰め状態でも垣根なら見つけられるって思ったけど想像したら空飛んでた、むしろ不可避だった、一通さんは半径3mくらいの空間ができてた、上条さんは痴漢騒動の中心で不幸を叫んでた、ウォーリー改め妹達を探せやりたくなった


564以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/05(木) 11:21:48.98jrrqxdQy0 (1/1)

誰も触れてないけど頂点のむぎのんvsていとくんの罵りあい超俺得です本当にありがとうございました
そこに割ってはいろうなんて流石上条さん自殺行為がお好き
よし、俺は垣根のスーツの中探って愉オブになる役やるから上条さんは麦野のビーム受けててくれ

ところでドキッ!まるごと仮装!超能力者だらけのハロウィンパーティー~グシャリもあるよ~はまだですかね?


565以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/05(木) 14:18:13.49HSm3e7N6O (1/1)

垣根ハッピーゴーグルバッドないちゃラブエンドがみたいんですが続きはどこでみれますか



566以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/06(金) 00:26:47.23K67CL0QY0 (1/1)

ネタバレだったらごめんだけど
ゴーグル君のゴーグルの使い方が判明したけどここのSSは続くよな?マジ心配なんだが

ゲームにめちゃくちゃ役立ちそうwwww


567以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/06(金) 00:51:07.87V10KGqZco (1/1)

本編とは別の平行世界かもしれないからセーフ


568以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/08(日) 16:55:54.80553lDuMl0 (1/1)

レイプや輪姦ものがすげえ苦手で避けてたんだが>>1の書くキャラとか世界とか好きだから今更ながら読んでみたらわりとイケた、多分垣根の精神が屈してないからだと思うけど。くすりちょうだいでうっかり興奮した、>>1のおかげで新しい扉開いたありがとう>>1。


569以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/08(日) 17:30:17.98t6oF1pAYo (1/1)

かくして日本は少子高翌齢化にまた一歩進むのであった


570以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/09(月) 02:43:45.19JTD2OB+z0 (1/1)

ゴーグル君が夢だからといって反抗的過ぎるのは垣根さんが自分の邪魔になる奴以外にあまいからだと思います!もっと教育すべき
つかテメェ前に定規タソも膝に乗られて拒否ったろ、表出ろこの野郎芸術作品にしたるわ


571以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/12(木) 07:11:03.11bDIJzMm/O (1/1)

未元物質ならなんでもありだから仕方ないね!


572以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/17(火) 23:11:53.68PlMSEA1r0 (1/1)

土星は帝督様(エンペラー)の直属の配下であるにも拘わらず帝国民としての忠義に欠けている
帝督様(エンペラー)の御言葉には全神経ごと耳を傾け
帝督様(エンペラー)の勅令にはハイ喜んで!
帝督様(エンペラー)に最高の賛辞を
帝督様(エンペラー)に第一位又はそれを想起させる話題を出すときは細心の注意を(メルヘン,冷蔵庫,カブトムシ,バレーボールついでに鍋の具にも気をつけるべし)
以上のことを心がけよりいっそう帝督様(エンペラー)の為に尽力するように


573以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/19(木) 10:32:44.168WynZC8R0 (1/1)

酔っ払うミサキチ可愛かったから他のメンツも見たいわぁ
できれば垣根&麦のん、削板&美琴がいいんだゾ☆


574番外編「メタネタで暗部同士が接触してみる」 ◆q7l9AKAoH.2015/11/22(日) 02:50:10.21aAPCJAsm0 (1/6)


垣根「さて。ここに向こうの組織の資料がある。お前、あいつら相手にどう対処する」

ゴーグル「何で俺だけに聞くんスか?」

心理定規「私? 私は誰が相手でも一緒よ。『心の中へは近付いて、離れた所から撃つ』あとはタイミングを見て撤退させてもらうわ」

垣根「俺もそうそう変わったことなんざしなくてもいいし。相手によって出方を変えなきゃならねえのはお前くらいだろ」

ゴーグル「なるほど」

垣根「絹旗と戦えっつったらどうする」

ゴーグル「……窒素で身を守ってても、本人の動きに問題はなさそうだな。それなら、酸素の確保に必要な空気交換が普通にされてるか、それとも窒素の装甲化にある程度条件があるのか……
とりあえず俺は盾抜けるほど威力ねえし防ぎきれるほど壁張れないんで、前面突破は避けて麻酔ガスとかスタングレネード系の武器が効くか試します」

垣根「フレンダは」

ゴーグル「余計な武器を使われる前に能力で素早く拘束しますかね」

垣根「滝壺」

ゴーグル「狙いを外されるとかならいいんですが。演算がまずいことになると俺も危ないんで、何とか能力以外で押さえ込む作戦ですかね。
直接攻撃できそうな能力じゃないし。別に、空手の有段者とか暗殺術の使い手なーんてことはないですよね?」

フレンダ「うちの滝壺はりんごくらい片手で楽勝って訳よ!」

滝壺「うん」メゴシャッ!!

麦野「テメェの×××もこうなるわよ 」

絹旗「いくらなんでも超かわいそうです。滝壺が」

ゴーグル「……やっぱり近付くのはまずそうなんでこっちが刺される前に能力でさくっと寝てもらう作戦にします」

垣根「じゃあ麦野を攻略するのはどうすりゃいい?」

ゴーグル「えーっと。基本的にはプライドもその他スペックもハイクラスっスよね。お嬢様女王様にありがちな本人も周囲も高い評価を求められる感じの。
そう言うキャラは、一芸ゴリ押し一点突破だと押しに欠けるんで……イベント何回かやってじわじわ攻めるのが有効手段っス」

麦野「何…急に」

ゴーグル「後は、こう言うタイプはやっぱり肩書きより中身重視に弱い筈なんで選択肢はそこメインで。ただし高いプライド損ねんのはダメっス」

絹旗「そんなことしたら超面白オブジェですよ」

ゴーグル「ちょっと相手のペースを乱しつつ、女の子扱いが効くパターンもあるんで『かわいいね』で向こうの防御を削りたいっスね」

フレンダ「麦野! 麦野は美人だし結局かわいいって訳よ」

麦野「何なんだよこれ」

心理定規「気にしないで。ただの茶番よ」

垣根「そっちの奴らものってるけどな」



575殺伐してない『スクール』と『アイテム』の場合 ◆q7l9AKAoH.2015/11/22(日) 02:56:44.88aAPCJAsm0 (2/6)


ゴーグル「やっぱり自分の壁をぶち壊されたりライン越えられると気になるじゃないスか。それも、かえって一撃で行かないほうが良くも悪くも相手の関心は引ける筈っス」

浜面「あー……なるほどなーだからかよ」

絹旗「何で浜面が頭を超抱えるんですか」

麦野「どつかれたらやり返してやりたくなるじゃない? それも何度もってそりゃもうブチ殺し確定よね」

垣根「…………わかる気がすんのがムカつく」

ゴーグル「プライド高めで気が強い系の女子は、自分で追いかけはじめるとあっと言う間なんで。傾きはじめたら後は楽なのがセオリーっス。
ざっくりこんな感じのベタな攻略プランでどうっスか?」

心理定規「悪くないと思うよ」

滝壺「うん。いいと、思う」

垣根「よーし。じゃあそれでいってみろ。『アイテム』の頭を籠絡しろ」

ゴーグル「いや。俺ああいうタイプは趣味じゃないんスよね。『アイテム』で選べ、って言われたら……ぶっちぎりで滝壺さんっス」

滝壺「え。私?」

麦野「はあ?」

絹旗「超どの辺が?」

ゴーグル「黒髪清楚でおとなしめキャラっスよね。守ってあげたくなる感じの。あと……陰性電波っぽいとか、もうサイコーです」

滝壺「ごめん。私には、はまづらがいるから」

ゴーグル「プラス、確実な良妻タイプ……!! ハーレムには不向きだがピンのルートなら圧倒的に強い……ここまで揃った子が学園都市の暗部にいるなんて感動もんっスね!」

麦野「なんで私がこんなのにフラれなきゃいけないんだろうなあ?」

フレンダ「結局麦野は高嶺の花って訳よ。その辺の奴には無理無理」

滝壺「はまづらは?」

ゴーグル「は、はい?」

滝壺「はまづらはどうするの?」

ゴーグル「そっスね……浜面…君。ちょっとこっちいいっスか。男同士、話をしようじゃないか」



ゴーグル「はーいここに、タブレット端末があります。今から画像を流すんで浜面君はこれ見てくださいねー」

ゴーグル「一画面に女子が①から⑧まで。全部で四枚ありましたが。浜面君が注目したのが1-②と⑦。2-③と⑤。3-④。4-0枚でした。全員キャラもカラーも属性もみんな違うように見えるんスけど……」

浜面「けどなんだよ」

ゴーグル「四枚目に該当なし。それでここまで被ってないってことは……あれスか。浜面君、露出多めの装備が好きっスか? ビキニアーマーとかバトルスーツとか」

浜面「速攻で人の趣味を暴いてんじゃねえよ! なんなんだよこれ」

ゴーグル「俺が友だちと遊びで作った萌えキャラ診断第一印象編っス。これがあればゲームやアニメの作品を知らない非オタでもどう言う見た目の娘にぐっとくるのか傾向がすぐわかるんスよ。いや……あの二人の観察眼と嗅覚はもはやプロの域っスね」

浜面「なんのプロなんだよ」

ゴーグル「はい。では浜面君はコスチューム萌えの人と言うことでいいっスかね」

浜面「そう言うのじゃねえよ。オタクと一緒にすんな。俺は単に水着っぽい格好をプールでもないその辺で見れんのがいいなって思うだけでさ」

ゴーグル「……シチュエーション込みではもはや萌え単体じゃなくてフェチシズムのレベルじゃないっスかね……
と俺は思いがけずディープな嗜好にあたったことにちょっとおののきますってなんだこの口調」

浜面「……なんで俺がオタクに引かれなきゃいけないんだ」



576 ◆q7l9AKAoH.2015/11/22(日) 03:00:41.87aAPCJAsm0 (3/6)


ゴーグル「仮装とかコスプレって可愛いっスよね。非日常っぽいシチュがいいなあってのもわかるっス。ファンタジーほど遠くなくてその辺の隣だけいつもとちょっと違うっつうか」

浜面「そーそー。あとお祭りみたいな特別感があるだろ。別にこんな派手じゃなくていいんだよ。バニーとかそう言うのでさ」

ゴーグル「その前後で私服姿を見ちゃうのは浜面君的には有りスか無しっスか」

浜面「あー、そんな進んで見たくはねえけどありっちゃ有り……かな。なんだあんた話がわかるな?」

ゴーグル「いやー俺のだってただの好みなんスけどね。趣味って結構理解されないじゃないスか。じゃあ……浜面君にはこれを。お近づきの印っス」

浜面「なんだこれ。ちっこい外部メモリ?」

ゴーグル「ビキニアーマー、スーツ系のアルバムっス。特撮キャプが多いっスけどコス写もあります。本当は対青ピ君のジャンル別交渉用なんスけど。どうぞ」

浜面「コスプレって」

ゴーグル「コミコンみたいなイベントともなるとコスプレしたおねえさんも普通に居るらしいっスよ。学園都市はあんまりそう言うのないし俺もまだ行ったことないんだけどさ」

浜面「……どうも。あんたFUKIDASIやってるか?」

ゴーグル「仕事用プライベート用ゲーム用各端末で番号三垢分あるっス」



ゴーグル「垣根さーん! 心理定規! 仲良くなりましたよ!」

垣根「なってどうすんだよ」

浜面「なんだあいつ……いや、師匠と呼ぼう」

麦野「なーに馴れ合ってんだよはーまづらぁぁああ!」



浜面「あんた、俺とやりあえっつったらどうするんだ?」

ゴーグル「え。スキルアウトが武装してない訳ないんで、撃たれる前に即叩きます。俺レベルでも車引きちぎるくらいはいけるんで。
さようなら浜面君カエルの死体の真似してアスファルトにキスしてな、になりますよ」

浜面「ちぎるって何だよ怖えよ」

ゴーグル「いやースパッと切断とか苦手なんスよ。あ、垣根さんは車なんてペーパークラフト扱いだし分厚い鉄板もサクッと通販の包丁並みに切っちゃいますけど」

浜面「こっちのリーダーもやるわ。そう言うの」

ゴーグル「どこの組織もその辺は一緒っスかねー」





577追加でおまけ  ◆q7l9AKAoH.2015/11/22(日) 03:04:22.64aAPCJAsm0 (4/6)

ドーモ

がんばれ愉快な下っ端くん達。

ちゃんと名前で呼んで欲しいから自分も名前で呼んでみる垣根



垣根「しーずりちゃーん?」

麦野「死ねエセホスト」

垣根「フレンダ」

フレンダ「はいはーい! お返しにていとくん、て呼んでもいい訳?」

垣根「最愛……ってすごい名前だな?」

絹旗「超お前が言うな、ですよ」

垣根「理后。元気か」

滝壺「はまづらにも、呼ばれたこと…ないのに……!」

垣根「よっ。仕上」

浜面「は、はい?! 何だよ!」

心理定規「」

ゴーグル「」

垣根「えーっと」

心理定規「」

ゴーグル「」

垣根「いや、ほら。あれだよ、あれ…………うーん。あのな?」

心理定規「…『未元物質』」

ゴーグル「『未元物質』!」

垣根「お前らは……許す。ああ。お前らは、悪くねえ」

一方「よォ、垣根くゥン」

垣根「……この時点で想像以上に気持ち悪いんだけど。うわーみろ鳥肌たった。俺に鳥肌って笑えねー」

一方「なンだよ不満があンですかァ。てーいとくゥーン?」

垣根「喧嘩売ってんだろ一方通行ぁぁぁあああ!?」


強敵出演:第一位

きっとあれだね?真名を人に教えてはいけないとかいう魔術的な何かが一部のやつらには恐らくあるんだね?冥土帰しとかだね?
いや、他のメンツも大体は科学サイドのはずだけどね?
カブトムシさんのフルネーム呼びは相手へのリスペクトなんでしょうかね。


578 ◆q7l9AKAoH.2015/11/22(日) 03:13:51.98aAPCJAsm0 (5/6)


>>554
アイテムと関わらせるとなると夏休みから九月をすっ飛ばして十月まで話を進めるかどっかでゲストかネタにして出すか……
とか言ってたら頂点でエセホストと年増が並んだー!やったー!
1は垣麦も好きだ。
チアもきたー!やったな浜面!

>>555
ゴーグルくんに言ってください。
あんなんでも人によっていい夢だったりするのか。

>>556
どこだろうな。六羽野市とか…ちょっといやだ。
こっちの好みに合わせて髪形や性格変更も、ってもうそれ垣根じゃない。カブトムシか?

>>557
1も書いてるうちにゴーグルがプレイヤーなのか垣根がゴーグルを攻略しようとしているのかよくわからなくなってだな。主導権をもぎ取っていく垣根さんはんぱねえ。
垣根は一人で充分だよ。増えても困らないか?
1は書いてない部分の責任はとれないからなー。

>>558
1は死なない!何度でもよみがえるさ
早く楽になりたいので三期を…

>>560
乙あり
ゴーグル「マタタビ装備で大人のライオンの檻に放り込まれた気分です」
って嘆いたら垣根に「俺そんなにかっこいいか?」って喜ばれて逆効果って言う頭の弱い没ネタがあってな。悪意がなさすぎるのもこわい。
楽しんでもらえてよかった。ほっとする。
ゴーグル君は一体何周したのか。彼の冒険はまだまだこれからだ!ご愛読ありがとうございました!
自爆型が自覚ありでデレるのはおっかねえが、本当に恐ろしいのは無自覚のデレの破壊力だと思う。

>>561
基本的には「ゴーグルにデレる垣根」で構成された垣根帝督だからゴーグルには甘い。何しろ渾身のデレだからね。
クレイジーサイコさん気味な垣根さんをあしらわずちゃんと相手していたらもっとサクッと終わったんだろうおそらくは。
あ、やっぱていこちゃんでいいの。そうか寒いぞ着て待って。

>>562
ありっす
「ムカついたからお前が稼いだとこから減点な」とか言ったら垣根がゴーグルに嫌がられるだろ!
おかしいな夢オチなら多少羽目を外しても良かったんじゃないのか。ちっとも許されてないぞ。ゴーグルが。

>>563
おつありです。
うん。飛んでるわ。垣根は飛んでるわ。人混みとか嫌いそうだわ。
そんなに密集してたら痴漢騒ぎどころか将棋倒し(被害約1名)の中心になりそうで主人公不幸つらい。
直径じゃなくて半径かよどんだけあれなんだよ第一位。ごそっと空いたスペースの後ろでは人混みに埋まった幼女がちょっとどいてどいてってミサカはミサ
そこはあれだよ「なんだよこっちも妹のほうじゃねーか!」ってオリジナルをさがせ!をしよう。妹達のほうはそっからさらに10032を厳選するんだ。目をこらせ。

>>564
いいよなあ。たぶん>>554もそれでだと思うよ。
あの二人並ぶとまず絵面がいいんだって、次に雰囲気がいいと1はなんでていとくん茶色に水玉にしたんだろうなと懐かしく思います。
古くからヒーローってのは自己犠牲の塊なんだぜしかし上条さん安定の不幸なセリフが涙を誘う。
十分に命知らずの>>564に合掌。
でも「お兄さんちょっとポケットの中身出してもらえます?」って言って右手と左手と携帯電話しか出てこなくても垣根なら驚かない。
ハロウィンな……垣根引けなかったからなーマントばさばさする垣根ほしかったなーーーあーーー大分時期過ぎてるから時効で?
グシャリもあんのかい。こえーよ超能力者。

>>565
バッドなのにいちゃラブってなんだよSAN0なのかよ。とりあえず1はその展開を書いてないから上のやつらと一緒に>>535のゴーグルを読心能力者のとこに連れていって脳を洗うんだどっかのルートにあるかもしれない

>>566
どこバレかな電撃かなでも大丈夫だ。そもそもここのゴーグルはゴーグルって呼び名だけど全然別人じゃないか。
サブキャラごときでんなこといったらSSなんもかけなくなっちゃうだろ。
垣根なんか……脱色して、分裂して、虫で、キーホルダーだぞ……
ゲームに便利ってオタクなゴーグルに毒されてないか。
そんなことで能力の無駄遣いしてどうするんだ。
ゴーグル能力問題は今こじつけてるから大丈夫だ。

>>567
オティヌスが作って消してみせた世界のどこかにはうっかりしくじって残念なことになったゴーグルとそれを生温い目で放置する『スクール』がいたかもしれないな。
別に原作とだいぶ違ったからって問題はないよね?
どうせSSですしすでにゴーグルじゃねえし

>>568
ひどいことをされてる垣根をなるべく書かなくて済むようにはしたんだ。うん?それは、よかったのかな?>>568がよかったんならまあいいか

>>569
翌ってどこでもわいてくんの?!魔力だけじゃないのか



579 ◆q7l9AKAoH.2015/11/22(日) 03:19:16.61aAPCJAsm0 (6/6)


>>570
じゃあ夢のゴーグルがはいっスわかったっスーって垣根に良いようにされればよかったのか。夢の垣根が喜ぶだけじゃないか
……垣根が幸せなら、それでよかったのかもしれないな? 1は垣根の幸せを願っている。
ゴーグル君を殴る列が形成されそうですが、最後尾はこちらですか

>>571
そう。
どんな時でも便利なのが、未元物質なんです。
そう。
一位を叩ける二万五千ものベクトル注入があるんです未元物質ならね。

>>572
なんでだよ何その勢い笑ったよw
では帝国民は一位を連想させそうな白子入りのタラちりとかもやし鍋はNGなんですかね。
バレーボいや内臓ともやしが一緒に入ったモツ鍋なんてのは厳罰対象なんですか?!うまいのに!
まあ>>1は帝国民ではないので食べる。ハフハフホフッでシャッキリポンさせてもらう。
もちろん、鍋には食べ物いれますよね?〆に鳴き声萌えっぽいしょご☆たんとかいれませんよね?

>>573
おさけはーはたちにーなってからー!
SSなら問題ないな。愉快な超能力者さんはまたやるんだろうか
いつかやりたいネタのとこにメモっとく


とりあえずレスな。
ドーモ

15巻あたりまで順当にいくとゴーグルVS麦野を書くんだなー……ゴーグル大丈夫かな
原作暗部パート辺やるなら心理定規vsフレンダとか書きたい気持ちがわいている。

レールガンの新刊読んだけどなんだあれw
あわきんが我が道つっぱしってるのは置いといて青ピからカードもらってたの『メンバー』の査楽?
テレポーターってあれなの。みんな残念なの?レア能力者ってそうなの?

レベルが高いほど中身がヤバい法則ならやっぱり第六位は青ピだよな!って1は古い噂話をまだ信じてるって言いながらも最終巻まで出てこなかったらそれはそれで藍花悦おいしいねって小並感をのべてみたり。
づらが無能力者なのは素養格付や手抜き時間割のせいだけじゃなくクズでも性根がそこそこ常識人だったからなんだそうに違いない。





580以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/22(日) 09:26:03.15g0LHFaCo0 (1/1)


最近更新多くて嬉しいぜ

超電磁砲で一人だけ出番ねえと思ったらアレだもんなwwwwww
レベル=妄想力、稀少=中二度、高次元=マニアックさだと思ってる。一通は当たり前のようにカンスト


581以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/22(日) 13:59:11.97SNAySPXAO (1/1)

心理定規vsフレンダむっちゃみたい!
けど暗部抗争パート入ったら終わっちゃうじゃないですかやだー


582以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/22(日) 21:12:56.72s1Ml7jQp0 (1/1)

浜面あっさり攻略されてんなよ
殺しあい無しの暗部なら今度はグループも混ぜてほしい
一位二位のどつき漫才も見たい
心理定規もゴーグルも名前で呼んでもらえないの仕方ないけど可哀相すぎ


583以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします2015/11/23(月) 00:11:32.342EMgvjAZO (1/1)

>>577
垣根=鶏
チキン→ミンチ→保存・加工→丸める→鍋に入れる
なんだただの鳥団子鍋じゃないか


584 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:06:04.25qCiiFrl70 (1/15)


Tシャツの上に着たノースリーブのシャツは地味なチェック柄、背中には膨らんだリュックサック。
オシャレさを意識していないことをあえて前面に押し出したスタイルの少年はふんふーんと鼻歌交じりであるいていた。
アップテンポなメロディは、はやりの洋楽でも人気アイドルの新曲でもない。深夜に流れるアニメソングだ。
クレヨンで紙にかいたオタク族がそのまま歩いているような少年は第七学区にいた。
目的地のいつものゲーセンで筐体に座り、プリペイド機能付きのユーザーカードを入れてボタンを押す。
さーてゲームスタートと、思ったところで頭上から能天気な低音が降ってきた。

「おーっセンセやん。なぁなぁこれ何だか知ってる? 『インディアンポーカー』って言うんやけど」

そう言っておなじみ青髪ピアスが自慢げに見せてきたのは一枚のカードだった。
特に目立ったイラストもない。両面つるっとした何用かもわからない一見ただのカード。
このゲームセンターにあるどのゲームにも使われていないものだ。
あとは一般的なトレーディングカードより少し大きくて厚みがある、と言うくらいだろうか。

「今、一部の物好きの間で話題だとか言う? 青ピ君よくそんなん持ってるねー」

ゴーグルの少年は生返事でゲームをスタートさせる。
どこかで名前だけ見た覚えがあった。
その時は調べてみても元ネタらしい遊び以外それらしい情報が出てこなかったから気にしていなかったが。
最近どこかの掲示板で見かけた気がする、その程度の印象だった。

「さーすがセンセ、聞いたことあったんや。まだプレ体験版って感じらしいけどけっこーおもろいよ?」

「なんだっけ。『夢が見れるカード』だっけ? あんまりなぁ。物見るのに困らないんだよなあ俺」

そう言って少年は、そばに置いた荷物に目をやった。
中に入っている彼のトレードマークでもある便利な装備を使えば。
ゲームしながら同時にアニメを見て別作品の劇場版をついでで流すことも可能だ。
市場に出回るヘッドマウントディスプレイの最新機種でさえ、まだ目で物を見せている。
『ゴーグル』本来の役割は「使用者の視点」を補強することだが副産物的な利点として、使用者の脳直通で情報を視せるゴーグルにはその質も性能も遠く及ばない。

人間の目は確かに優れたレンズ機能を備えているがそれでも生身の生き物である以上の脳の処理とのバランスを取っている部分がある。
眼球が本来備えた機能を画素数に置き換えると視野全体で五億以上のとんでもない数値になるが、目は常にそれだけのものを認識しているわけではないのだ。



585 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:11:12.84qCiiFrl70 (2/15)


いくら情報の多くを視覚に頼っていてもそれを四六時中、水道の蛇口を目いっぱいひねった様に延々流し込まれ続けるデータを処理していたら。
脳みそだってたまったものではない。
普段はっきりとものを見ている中心部分、意識的に処理される有用な情報を得るための範囲はごく狭いもので。
その部分の画素は合計しても約八〇〇万近くまで落ちてしまう。
どんなに高画質なたとえば『磁性制御モニタ』に映し出された映像でさえ、出力されたデータそのままの精度で脳に到達することはない。
その過程である程度の劣化は避けられないだろう。

学園都市の最新型スマートフォンのカメラ機能のスペックは『外』の一般的なデジタルカメラ並みの性能を誇るすぐれものだ。
そして彼がゴーグルをそう言った、またそれ以上にハイスペックな機器にリンクさせれば。
映したものを場所ごとで劣化なんてしない均一な画像情報としてまるごと脳に処理させることも出来る。

それは機材のつなぎかえで静止画動画を問わず、更に多様化する。
外付けのデバイスに入力を頼っている分、はじめからバックアップがある状態なので印象や記憶違いによって情報の劣化や変質もほとんど起こさずに済むはずだ。

学園都市が目指している能力開発ではその身ひとつで便利な能力が起こせるのが利点なのだが。
少年はちょっとした事情から余計なものを頭に着けて能力を延長して扱うことになってしまった。
だが彼はそれに不自由さは感じていない。
それどころか日常的にゲームやアニメと無駄な方面にそれを活用しまくっているのでプラスアルファ分お得な恩恵にあずかっている。

そして。
そういったものに慣れ親しんでいるおかげで、学園都市お得意の新技術で作られたらしい謎のカードをみても、
「なんだこれすごーいどうなってるの?」なんてテンションが上がることも残念ながらなかった。
地味なワケあり少年は興味なさげに視線をゲーム筐体の画面に戻す。
青髪ピアスはどうしても関心をひきたいのかカードをひらひらさせながら、

「じゃあセンセ作る方は? 今なら限定五名様に制作方法伝授キャンペーンらしくてボクは『親』モニターに前回教えてもろたから、抽選枠に孫モニターを一人紹介できるんやけど」

と追加要素を発表した。
まだ大衆に認知されていない隠れ面白アイテムの制作・体験モニターを募集する活動があるらしい。
簡単に説明された参加資格ははっきりした強いイメージの夢を見れることだとか。
カードに夢を記録するなんてよくわからないことをしようと言うなら、情報も中身も濃い方が抽出しやすいのかもしれない。
だが。
画面内の自機を操作しながら話を聞いていた少年は一層気分の乗らなさそうな声で聞き返した。

「……すっげえ怪しくね? 大丈夫スかなんか金巻き上げられたりしてない?」

「ないない。カード作る装置作るのにおもちゃを幾つか買わないとでちょっと元手がかかるけどそれくらいやし、あとはさらのカードが今んとこ一週間くらいの順番待ちがあって……」

「装置だけ売りつける詐欺じゃなくて? なんでそんな内々でやってんのさ。え、もうこれ俺じゃなくて風紀委員とかに相談したほうがいんじゃないの?
やったねゴーグル君フラグが増えるよ!」




586 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:14:38.54qCiiFrl70 (3/15)

青ピ君だな
補完頼む
脳内で


587 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:18:32.64qCiiFrl70 (4/15)



「いやいや?! 詐欺被害の相談やないって勧誘してますっ! 作れる物がすごいから、急に爆発的ブームからの激品薄にならへんようになってるだけやと思うって! 
せやかてセンセ!! 毎日山ほど夢は見ないやろ? 丁度いいんやってば」

青髪ピアスは拳を握って熱く語る。
どこかの研究施設が一般人をモルモットにデータ収集でもしているのか。
それか在庫を抱えた玩具メーカーが商品の販売促進で尾ひれ付きのステマでもはじめたかとも思えたが、それにしては話がどこか変だ。
限定○名様にお得な情報!系の話がうさんくさいのは今にはじまったことじゃないのだが。
ゴーグルの少年は日頃からアブないことばかりして風紀委員に迷惑をかけている友人が、本格的にヤバい話に手を出していないか疑いながら五面までクリアした。


雑談に応じながらゲームを進める少年の横で青髪ピアスは残念そうに肩を落としていた。

「なんやー。センセクラスなら人気ゲームのカードでA以上は余裕で作れると思うんやけどホンマに? やらへんの?」

実験的なおもちゃのモニター間で出来上がったカードの交換会も行われているらしい。
今日もその交流会がここであると青ピは自慢げに語っていた。
高ランク―高い実用性が見込めるユニークな夢―のカードは特に人気があるそうだ。
その中では、「カードを使ってから何故か数学の宿題が楽々出来る様になった」なんて噂もあるらしい。
夢の中に作った人間の得意分野の情報が紛れ込むことで、それを追体験することも出来るのだろうか。

「俺、ゲームに関してはPARとかあんま好きじゃないんで。攻略動画は撮っても、狙ってゲームの夢みたりカードは作らないかな」

「そーなん? もったいな。あ、そうや! 確かモニター仲間に、メクちゃんのA以上ピンクシリーズ持ってるのがおったと思ったけど在庫あるか聞いてみよっか? 確か好きやったよね罰音ちゃん」

「メクちゃんはDIVAだから。俺の心の聖域だから。他人の夢で会うくらいなら『外』でやってるライブに行きたい。あーあー『外出許可』なーあーあー」

青ピはどうしても謎のカード愛好会に勧誘したいのか、ゴーグルの少年の二次嫁を餌にしてみたが上手くいかなかった。
なぜかがっくり落ち込みだした反応も予想外だったらしく、長身を折り曲げると画面につっぷした友人の肩をはげますようにたたいた。

「センセ……あれなん? なんやそっかー二次でもストイックやねー。なら、これもええかなーこの前たまたまボクんとこで『0マイナス』のカードが出来たんやけど」

「えっ」

「ボク、ノノちゃん好きやし多めやけど……一応三人とも出てたかなあ。レンコちゃんおるけど、ま。センセがいらんっちゅーんならこれも取引に流して」

「あ、あお青ピくん?」

「どしたん? センセ」




588 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:22:12.91qCiiFrl70 (5/15)


「金ならある。言い値で譲っていただけないだろうか。『ラブマイナス』、最近制作サイドで色々あってっスね。スタッフが大幅に変わったりしてですね
ちょっと展望が辛い感じで俺ら全国の「カレシ」は「カノジョ」の実家が心配で心配で…」

なにやら急に早口で話しはじめたかと思うと。
ゴーグルの少年は久しぶりに水をもらったしなびかけの野菜みたいにシャキっと立ちあがる。
まんまと狙いの大物がかかったわけだが、青髪ピアスは何故かものすごく無邪気な笑顔でカードを取り出した。

「やーっ、そんなぁボクとセンセの仲やないの! ええよそんなん。ハイどうぞー」

カードに貼られた付箋には「『ラブマイナス』ノノ、レンコ、もなか S」とあといくつか教室、制服などの単語が書いてあった。
カードに記録されている夢の中で覚えているものを程度メモしてあるらしい。
トレードするのに「誰が作った」、「どんな夢か」が交渉材料になるならストーリーなんかもあった方がいいのだろうが。
断片的な情報しかそこにはなかった。
ゴーグルの少年は、そんなことよりアルファベットに注目したらしい。
なにしろ。
ついさっき夢にはレアリティがつくと聞いたばかりだ。

「これっ……一番レアなやつ? マジで! いいの? えーっ本当に?」

「いやーボクんとこではSの出来っちゅーてもセンセが気にいるかはわからへんもん。
どうしてもっちゅうんなら……トレードにせえへん? 後でボクの装置貸すから、ゲーム系のカードが出来たらもらってもええ?」

もしや初めから目的はそっちだったのか。
たった今いいことを考えついたような顔で交渉をしかけてきた悪友だが。
ゴーグルの少年は眉間にしわを寄せていたさっきまでとは大違いの隙だらけなハイテンションで諸手をあげた。

「そんなんお安いごようっスよー!! もー青ピくんてば愛してるー持つべきものは友だちだね!」

「ホンマやねー。え、三枚もええの? センセめっちゃ好きー。ずーっと詰まってるとこがあってな? でもセンセはゲームのコツとか教えてくれへんしー」

「聞かれたら教えてるじゃないかー何言ってんのさーはっはっはー」

「ズバーっとかズドーンとかスササッて言われてもボクよおわからへんもーん」

おかしいなー垣根さんはそれで出来るんスけどねーと不思議がりながら少年はご機嫌でカードをバッグにしまった。
ぐちっていた青ピは別のゲーム機の前まで行くと、ゴーグルを手招きする。

「ちょっとほら。これは? センセここやってみて」

「えーっと。いいっスか? こっちを、こう。こうして、こう…………」





「で、ここを」

「ここを?」

「だらっしゃあ! って。ほらできたー出来たじゃないか青ピ君!」

「だーかーらーボクには出来へんってば! そんなん気合で出来るかー!」

ほらどうだ! とゲームの先生役はいい笑顔で振り返った。
青髪ピアスは STAGE CLEAR! の文字がでかでかと表示された画面におもいっきりツッコミをいれた。



589 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:27:47.25qCiiFrl70 (6/15)


「俺はさぁ青ピ君……期待に胸を躍らせて、パソコンの出力端子を機能最大精度でまとめてゴーグルに繋いだあの日の絶望をそりゃもう深く覚えてるんだよ!!」

場所をファーストフード店に変えた二人は『インディアンポーカー』の話題で盛り上がっていた。
ちなみに会計は、テンションが上がりきってすっかり心の中までお花畑になりつつあるゴーグルの少年持ちである。
心の壁も距離もぶち破って今なら多少の無理難題もひとつ返事でどうぞウエルカムな近距離無警戒ぶりだった。

一応これでも暗部組織の一員なのだ。
こんな、絵に描いたように悲しい残念なオタクであっても。
学園都市の汚れ仕事や面倒事を回されたり、鉄さび臭い殺伐ワールドを日常パートのすぐ横で繰り広げなくちゃならないような人間の一人。
その筈だが、今の彼はとてもそんな風には見えなかった。
ちょっと怪しい契約書に適当にサインをしたり、あからさまな詐欺っぽい勧誘にホイホイついていきそうな雰囲気だが、ちょっとした判断力の大幅な低下が原因なのだから仕方がない。
一般人からオタクをも殺す「嫁」の一文字の破壊力はすさまじいものだった。

「円盤入れてみても、そりゃ少しは画質音質良くなったかなーいや気のせいかなくらいのもんでさ!!
調整も適当すぎて後で具合は悪くなるし二次元にダイブなんて出来なかった。
俺はやっぱり惨事元の男の子なんだなぁどんなにあの子が恋しくても虹の向こうにいけないんだ……ってあの日は自分の無力さに枕を濡らすしかなかったんだ。
その夢が! 今、君のおかげで叶うかもしれない! あなたが神か?!」

「なんやボクにはなにをしたんかはよおわからんけど……その辛く苦しい気持ちはよぉっくわかるでセンセー!」

「わかってくれるか! 青ピくぅぅぅんんん!!」

熱い友情を確認しあうオタク共の雄叫び飛び交うおかしな儀式は、
「他のお客様の迷惑ですんで神だか何だかしらねーがでてけゴルァ」と笑顔&殺気全開の店員さんに追い出されるまで続いた。





590 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:30:46.52qCiiFrl70 (7/15)


鼻歌まじりで隠れ家にやってきたゴーグルは上機嫌でドアを開けた。
テレビの前にはまたしてもプチ家出中のリーダーがつまらなさそうに座っていた。
以前なら、超の付くプライベート(オタク活動、主にゲーム)で既に誰かが居る隠れ家を使うことは組織のメンバーの前では控えていた筈だ。
だが少年は部屋が被ったことは気にしていないのかカードをかかげてくるくるおどっていた。
どうやらまだ夢も見ていないのに青ピの癖が早くも伝染したらしい。
そして今まさに脳内お星さまだらけで無敵モードに突入した彼はそう簡単に止まれなかった。

「垣根さんじゃないスかーこんばんわーきいてくださいよー俺、友だちにインディアンポーカーのカード貰ったんスよー!」

なんだそりゃ、と振り向きもしない背中を向けたままのリーダーから一応返事があった。

「これを使って寝ると他人の見た夢が見れるんス。えっへっへー青ピ君も好きなゲームでよかったなあ」

そっちの部屋かりまーすと無駄に挙手つきで宣言した超絶ハイテンションなゴーグルの少年に。
厄介なものを感じ取ったらしい垣根は、さっさとあっちいけ、と追い払うように手をふった。

「寝言が聞こえても返事はしねえから安心しろ」

「ありがたいっスけど。なんでっスか?」

寝言と会話するとそいつ目が覚めなくなるって言うだろ、と冗談なのか本気なのかわからないトーンで言いかえされたが、

「垣根さん。俺のスマホ通話にしとくんで、カード使いはじめたらめっちゃ話しかけて下さい」

ゴーグルの少年は大真面目な顔でそう宣言した。

「ああ。ウザそうだから切っとく」

しばらくして。
部屋からでてきたゴーグルの少年は、入っていった時とは別人のようにテンションが低かった。
おまけに泣いていた。



自分の余命宣告でもされたのかと言いたくなるほどの暗い空気を背負っているのを流石に垣根も無視はできなかったのか、

「泣くほど感動的だったのかよ」

「いや……あの、思ってたのと違うっつうか、大分……衝撃的で」

床に崩れ落ちた少年は、そのまま拳で床を叩いた。
違うそうじゃないんだどうして、どうしてそうなっちゃうんだよ……最低だ、俺などと意味の分からないことをぶつぶつ呟いている。
何がどうショックだったかはわからないが、とにかくものすごい落ち込みようだ。
青髪ピアスはSランクだと思った夢は、どうやらゴーグルの少年の好みではなかったらしい。
反応からして大外れ、それも期待していた分だけギャップが激しくてきつい結果になってしまったのか。

「俺…別にああ言うノノちゃんが見たかったんじゃなくてっスね。いろいろと方向性が……ううう、レンコちゃんは、俺のレンコはあんなこと言わないんだぁあああ」

「たかが夢なんだろ。それもゲームの」

うるせえ黙れ、と厳しく言われたがよっぽどショックだったのかゴーグルの愚痴は止まらない。



591 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:33:15.18qCiiFrl70 (8/15)


「夢だけど、中身ばっちり覚えてて好きなキャラの夢なんてそうそう狙って見れないっスよ。
しかし……似たようなオタク同士でも嗜好の差は谷のように深く山の如く越え難いものなのだと俺は今知りました。
でも貴重なSレアを快く譲ってくれた青ピ君の友情は◯ェルタースオリジナルっスね!!」

おまけにしゃべってるうちに勝手に意味不明でいい感じに立ち直ってしまった。
そう言うのはSNSでやってろと言いたくなる短時間での切り替えだ。
そんなゴーグルの少年の大騒ぎで、むしろ興味がわいてしまったのか。
垣根はまだ残っているカード手に取って眺めだした。

「そんなに面白れーのかよ。これは」

「こっちは他のユーザーから貰ったんス。Aレアカードがいくつかゲット出来たんスよ」

カードのトレードをしにゲーセンにやってきた青ピの知り合いからもその話を聞いていた。
ちなみにゴーグルの少年が青髪ピアスの友人だと知ったら無償で譲ってくれた。
どうやら彼は体験者の中でもカリスマ的な人気を誇っているらしい。
みんな揃って青ピのような無邪気(にみえなくもないよう)な笑顔を浮かべていた気がする。

「さっき装置の作り方も見せてもらったんスけど……やっぱこいつ俺のゴーグルにちょっと似てますね」

そう言って少年は借りてきた紙の袋をみた。
中には例のカードを作る装置が入っている。
童話に出てくるお菓子の家のように組み上げられた、おもちゃの集合体だった。
そのうち一つに脳波をキャッチして専用のボールを動かして遊ぶ念動能力を科学で再現したようなものがある。
他にも五感や脳とリンクして遊ぶタイプのおもちゃを交えて作り上げられていた。

彼の使うゴーグルは駆動鎧などにも使われているBMI(ブレインマシンインターフェイス)技術を応用している。
人間の脳から送られた信号を拾いあげ、機械に伝えて手を触れずに操作するのが学園都市外部でも実用化されているBMI技術だが。
ゴーグルはその逆。
リンクした機器からの情報を使用者の脳に直接送ることで情報伝達の簡略化と大幅な向上を図っている。


592 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:35:00.16qCiiFrl70 (9/15)


「俺のは視覚の割合多めなんスけど、このカードは脳に働きかけて情報の吸出しと書き込みをして夢を再現させてるみたいっス」

続いて荷物から取り出した自分のゴーグルを回すと輪の内側とカードを見比べながら少年は珍しく、ゲーム以外の分野で解説をはじめた。
本来は念動力補助目的で彼の視点を増やす機械なのだが、ゴーグルの少年はそれで「ながら見」もするとぶっちゃけた。
カメラやモニタを機材に登録しチャンネルを繋いで行動中も動画や情報を頭に流し込むのだと言う。

「学校のテスト勉強にも使えますよ。暗記系は頭に映像で流して俺は飯食ったりゲームしてます。一発でフル記憶まではしないんで、何周かしますかね」

「んなことしてよく平気だな。普通の映画だって長時間見続けるなって注意書きがでてくるだろ」

と呆れた顔をした垣根だが。

「そうか……それでお前、頭が」

と直後にいやに納得した様な、同情めいた風にうなずいていた。
日頃の少年の様子や奇行と言動を思えば使いすぎの弊害もあって仕方ない、と思ったらしい。

「無休じゃないっスよ流石に重いし疲れるんで時々外します。被るだけじゃ深くサイコドライブなんてしませんし、こいつは俺にはメガネとそんなかわらねえっス」

生き物が道具を扱う技術は人がサルから進化の道を歩き出すその以前からはじまっている。
そしてそれ以来ともに進み適応し続けているものだ。
手にした道具をまるで自分の一部のように感じる仕組みをもともと人間がもっているからこそ。
イメージと実際の動きがスムーズにつながって、駆動鎧やおもちゃのボールは動いてくれる。

さらに優れた技術をもつ者は道具との間に強いつながりを持つ。
各分野のプロはメスや楽器、球技のボールやラケットを手足のように扱い、それには自動車や航空機のような体よりはるかに巨大なものもふくまれる。
優れた能力者ほど、自分の手足以上に自在に能力を扱うことを考えたら、能力開発からまるっきりかけ離れた話題でもないのかもしれない。
自分の体の一部と言えるほどに道具に慣れ親しめば脳の自己認識もそれにあわせて広がっていくと言う研究もある。
それと同時に、眼鏡を探す眼鏡っ子の法則が存在する矛盾を解き明かせたらイグノーベル賞も狙えたりするだろうか。

「でもお前、前にぶっ通しでゲームしてなかったか」

「流石に熱と鼻血が出たら止めてますから大丈夫ですって」

使用者本人はけろっとして笑いながら言ったが。
やっぱり全然大丈夫じゃなさそうだった。
あるあるネタの振りじゃなくマジっぽいのが手遅れだ。色んな意味で。



593 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:41:03.12qCiiFrl70 (10/15)


「そこまでして成果はあんのかよ」

「テストの方の結果は……まあテレビみながら勉強してるようなもんスかね。こいつで記憶領域までの書き込みと定着が出来たら俺もう一生勉強なんてしなくていいんスけど」

だめな子の夢みたいな話を苦笑いでするゴーグルだが、出来すぎて困る子の代表みたいな垣根はなにがそんなに悔しいのか理解できないと言った様子だった。

「集中して普通に勉強した方が早いんじゃねえの。それか小型化していっそカンニングでもしたら」

「こいつ目立ちますよねーそれが出来たらいいんスけど。あ、でもそしたら俺改名してカチューシャとかイヤホンにしないといけないっスよ」

なんて冗談を言いながらゴーグルの少年は話を続けた。
確かに話をすればするほど、こうなっているだろうと考えつくカードの仕組みとゴーグルの間で似ていそうな点が出てくる。
分解したらもっと詳しいこともわかりそうだが、そこまでするほどの話題でもなさそうだった。
おまけにカードはどれも未使用。
ちょっと気になるレベルでばらばらにするのはいくらなんでももったいないだろう。
BMI技術そのものは子どものおもちゃになるくらい、既に学園都市のあちこちに普及しているのだから今更驚くことでもないのだが。
他人と夢を共有する、と言うのはなかなかユニークな思いつきだった。
そこでふと、ここを直に繋いじまったらどうだ、と垣根が自分のこめかみをつついた。

「BTBI(ブレイントゥブレインインターフェイス)スか?
そっちはそこまで広く浸透するんスかね。今だってやろうと思えば念話能力とか洗脳能力で足りるじゃないスか」

簡単なコミュニケーションていどならまだいいが、マインドメルティングまで行って人類みんなで赤い海にダイブするようになるのはちょっと嫌だ。
と垣根にはよくわからない言語でコメントが返される。

「あれは規模が小さいだろ、確かあの辺は強能力者が多いしな、やっても横並びになりそうだ。でも複数の能力者同士の脳を繋いだりすりゃあ面白くなるかもしれないだろ」

「オラに力をわけてくれー! とか出来ちゃったらヤバいっスね。えーと、能力者間でなんか演算とかそう言うののやり取りをしたりだとかしてすげー能力を使えないかってっスね?」

なにそれ、と言いたげな垣根の反応にゴーグルは慌ててつけたした。
パロディは、元ネタがお互いわかっていないとうまく伝わらないのがつらいところだ。

「ぜってぇそんなのには加わりたくねえ。そうだ。お前、「ニューラルアンサンブルの発火保存」や「集団効果」の原理はどうだ? 単一のニューロンのふるまいを人間ひとりに置き換えてみると――」

「タンマっス。えーっと、BMIもっスけど大脳生理学の「相対論的な脳」系の話は確か長点上機の学生が一世代進んだ論文を発表してませんでしたっけ。
俺そっちの専門的なのは全然っス。軽くお茶するんなら連絡先調べさせますよ」

頭が痛くなりそうな話題の予感にゴーグルの少年はてきぱき矛先をそらした。
伝わらないアニメネタではないが、少年にとって小難しい専門分野の話では役不足だ。
ある程度のリアクションを求められたら困るし、うなずくだけの聞き役では中途半端にしか出来そうにない。






594 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:45:51.33qCiiFrl70 (11/15)



「……じゃあ気分転換に軽く読書でもするか。前にあった『幻想御手』のデータどこやった」

「え。あれ結局流れてませんでした? ありますけど。あっちこっちに」

はいこれですねどうぞ。
と今すぐ出てこないことがご不満だったのか。
はぁ? なんで、と言いたげに垣根はゴーグルを睨みつけた。

組織で主に使っているプライベートクラウドに集めた情報をそのまま放置しておけばハッキングのリスクもあるので。
一定期間を置いたらデータをコピーしブロックごとにフォルダを分けた上で別の場所の物理ドライブでばらばらに保管しているじゃないかと少年は確認した。
作業は下部組織の技術担当みたいな連中がしているが、ドライブやサーバーのアクセス権の一部はゴーグルの少年にも与えられているし保管場所の話をされたこともある。
オタクが誤解されているなぁとゴーグルの少年はここでもちょっとした温度差を感じていた。
別にオタクだと自称していても機械にものすごく強い訳ではない。
その時は携帯ゲーム機の記録領域に情報を書き込む話をした。
少年は基本、ソフトを買う派(それも複数)なのでハード(これまた複数)に用意されているDL用の容量が余ることが多かったから思いついた話だ。
AIの記憶媒体があれば、紙幣のICチップにさえ情報を隠せてしまう学園都市の技術力では、諜報活動をする方も防ぐ方も苦労しそうだった。

「見るんスか? 必要なら一覧から関連データ引っ張って、並べてまとめときますけど」

「じゃあ眺められるようにしとけ。今すぐな。それとシステム神経生理学系の資料も追加。大脳生理学は専門じゃねえからな。一応古典にも敬意をはらってやるか」

そういって、垣根はコンビニに買い物を頼むように気楽な様子で口を開いた。
しかし出てくるのは簡単なおつかいメモの中身ではない。
研究者の名前と幾つかの論文が上がって、後は……MNAP(マルチニューロンデータ集積プロセッサ)、オペラント条件付け、あとマルチタスキングの基礎理論……
まぁ、とりあえずはこの辺だな、とつぶやく垣根はどうってことなさそうな顔をしてるが。
横で聞いていただけのゴーグルの少年には難解な香辛料の名前みたいになんだかよくわからない専門用語の嵐だ。

「今スか?! ちょ、ちょっと待ってもらえます?」

ゴーグルを被った少年は大慌てであっちこっちと動き回った。
頭の横から垂れ下がったケーブルがクラゲの足のようにぶらぶらしていた。
パーフェクトな執事並みのサポートスキルをスペック不足の部下に唐突に期待されても困ってしまう。




595 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:47:55.65qCiiFrl70 (12/15)


ガチャン、とドアを閉める音に反応したゴーグルの少年は小声とボディランゲージで「こっちにきてくれ。なるべく静かに慎重にな」と少女に伝えた。
メッセージを読んだ彼女は、バイトが終わってからそのまま駆けつけてくれたのか前髪を軽くなでつけると部屋にはいってきた。

「(心理定規ー!)」

「何よ。急に呼んだりして。君たち何してるの?」

「しっ、今垣根さん夢を見てるんスよ」

さっと口元に指を立てると、少年はソファに目くばせした。
足を組んで横になった垣根の額の上にはカードが一枚乗せられていた。
どうせなら時間つぶしにとゴーグルの少年が一枚進呈したものだ。

「きれいな顔してるだろ、寝てるんだぜ? それ。って言いたくなる安らかな表情っスね」

「そのまんまじゃない。何これ」

「このカードに誰かの見た夢が入ってるんス。夢の中のことを経験するんで、体感ムービーな遊びが出来るみたいなんスけど」

一度眠るとカードの中身が再生し終わるまで目覚めにくい効果でもあるのだろうか。
その前から眠っているのだが、心理定規に説明している間も垣根は静かに寝息を立てていた。


「心理定規がこんな早く来れると思わなかったんで、レアな垣根さんの写真とっといたんスけど見ます?」

「……なに、これ」

スマートフォンの画像を見せられた心理定規は、軽く絶句しつつゴーグルを見返した。
そこには数枚の寝顔の写真があったが、どれも無駄にキラキラ白飛びしてはしゃいだ女子高生のプリクラみたいになっていた。

「未加工なんスけど、なんか光っちゃってるんスよ。『未元物質』って写真に写るんスかね」

「やだ。本当ね」

小さなシャッター音に続いて心理定規のスマートフォンの画面でもアイドルのCDジャケットやグラビア写真みたいになった垣根の寝顔が写っていた。
無駄にキラキラして、それが何だか似合っているのが笑える。
本人にはとても見せられない画像データがそれぞれの携帯に保存された。
垣根にばれたら本体を容赦なく真っ二つにされるだろう。
横にへし折られるのではなく、縦に。

「これは何の夢をみてるの?」

「えーっと確か……『カナダの森と渓流(おまけ)』っスかね。あれ。おまけ付きってなんだ?」

カードの入っていたスリーブに貼られたラベルを読み上げるとゴーグルは首をひねった。
見比べながら残りのカードを手に取ると心理定規に見せる。

「Aランカーの人が居て『いい夢旅気分』ってシリーズのカードが貰えたんスよ。心理定規もどうっスか? もう一枚、こっちは……南の海でイルカと遊べるやつがあります。
人気のだとBランカーの『動物モフモフシリーズ』なんてのもあるらしいんスけどそっちは在庫無しで」

他にも、『いやがるワンちゃんにかわいいお洋服を着せる夢』とか『おねえさんとこいぬちゃん』ってほのぼのっぽいのもSNSに作られたモニター間トレードリストにのっていた。
夢の記録と言うより個人の日常がアップされた動画サイトみたいなラインナップだったが、そうそうドラマティックな夢ばかり見る人間もいないだろう。




596 ◆q7l9AKAoH.2015/11/23(月) 23:51:15.40qCiiFrl70 (13/15)


ほのぼの系もゲットしておくべきだったのか? と頭を悩ませる少年にはまだゴーグルが装着されていた。
そのケーブルのうち一本は、ミニタワー型のパソコンケースに接続されている。
どうしたのそれ、と聞かれてゴーグルは垣根にデータ整理を言いつけられたと息をはいた。

「幾らなんでもんなすぐ準備できないんで、終わるまでこいつに垣根さんの相手してもらおうと思ったんスよ。あ。今、該当ファイルを順番に並べ替えてもらってます」

あちこちの引き出しや箱の中、棚にばらばらに隠しておいたジグソーパズルのピースを必要な分だけ集める作業を済ませたらしい少年は完成図にそってそれをまとめる指示を出す。
それにも、本人の手や指は使われない。
軽く手を振るだけで能力で操作されるマウスもキーボードも、まるで直接彼の脳から信号を受けているようによく働いていた。

人使いの荒いリーダーの方はそんな苦労をよそによく眠っていた。
黙ってじっとしているとイケメンさが跳ね上がる、と部下たちののんきな会話のネタにされていたのだが。

「なんか……うなされてない?」

「と思ったら笑いだしたっスね」

「……ただの雑魚じゃないって訳か! いいぜ、少しだけ本気を出してやるか!」

更に、安眠とはほど遠そうな寝言まで言いはじめた。
異変を感じて急いで二人がその場を離れると。
眠ったまま笑い続ける超能力者が目覚めるまで心理定規はドアの近くで様子をうかがっていた。
普段はそれなりの気づかいや手加減があっても、寝ている人間相手にその常識は通用しないだろう。
ちなみに。
ケーブルの長さが足りなくて、退避をしくじったゴーグルの少年が庭にリードで繋がれた犬みたいにずっこけたが。

心理定規は、
(静かにしてね)と自分の唇に人差し指を当てた後、無言で手を振って離れてしまった。
ぷるぷる震える愛玩犬なら助けてもらえたかもしれない。