アンダーパス(昭和の面影6)

▼今回のお題はアンダーパスです。
1アンダーパス
▲アンダーパスとは線路を地下道で通過する構造をいい、高山市での正式名称は「JRアンダーパス」です。
 このアンダーパス完成に至るまでの歴史を調べてみました。

 1934年(昭和9年)10月、高山本線が開通し高山駅が開業しました。
 当時、この駅の周辺は農地以外は何もなく、線路をまたぐ道路といえば、駅の南側を走っていた県道八幡高山線(郡上街道、現国道158号)で、花里跨線橋により繋がっていました。
▼1948年(昭和23年)3月撮影の航空写真

2航空写真1948
▲現在のアンダーパスの辺りは、国分寺通りと山田街道(旧第一高山上枝線)が踏切により繋がっていました。しかし、まっすぐに繋がっていた訳ではなく、矩形車庫が建てられていたため、それを迂回するように北側に大きく弓なりにして配置されていました。

 高山本線開通2年後である1936年(昭和11年)11月に大野郡高山町と大名田町が合併して高山市が誕生しましたが、その合併協定書に次のような興味深い記述がありました。

 山田街道踏切をガード式に改修すること。

 山田街道踏切はアンダーパスのあたりにあった踏切で、正式名称なのか通称名なのかは不明ですが、ここでは山田街道踏切と表記させていただきます。
 また、この「ガード」とはガーダーブリッジ(Girder bridge)の略語で「桁橋」のことをいい、踏切ではなく、橋を設置して立体交差に改修してほしいという要望だと解釈できます。
 この踏切の写真は「鉄道写真集 高山線の60年」(郷土出版社)の93頁に掲載されており、腕木式遮断機がある踏切で、踏切警手が操作していたようです。(※写真解説では第二校踏切と記されているが誤りである。)
 要望された理由として考えられるのは、踏切が駅に近いことから車両の入れ替え作業のために頻繁に踏切が遮断されて歩行者や車両の通行に支障が生じていたからでしょう。
 1964年(昭和39年)9月24日、高山保線区から高山市(建設部)に対して踏切の歩行者を対象とした地下道化及び自動車の流れが第二校踏切に移り交通量の増加が予想されることから、車両がすれ違いできるように踏切の幅を6mから8mに拡幅するという国鉄の方針が提示され、岐阜国体(1965年)までの完成を目指すことになりました。
 まず、第二校踏切は同年12月に工事が着工され、翌1965年(昭和40年)2月14日に完成し、高山市初の自動遮断機が設置されました。 
 地下道化の工事は当初の予定より遅れて同年8月に着工され、同年12月25日に完成しました。
 地下道は線路手前約30mから掘り下げられ、幅3m、高さ2m、長さ18m、工費600万円でした。また、軽自動車以上の車両は通行禁止とされ、歩行者と自転車専用道として長らく使用されてきました。
▼1997年(平成9年)9月撮影の航空写真

3航空写真1997

▲正式名称は「花里地下道」とされ、私達は「地下道」又は「ガード」と呼び、地下道の上に掛かる橋は国鉄では「花里架道橋」と呼んでいたようです。
 1972年(昭和47年)に駅西地区の13町内会長から国鉄名古屋管理局に地下道に雪除けの屋根を付ける陳情書が提出され、後日設置されました。

 その後、自動車による交通量が増加し、地下道の拡幅が要望されたことから、2006年(平成18年)5月、高山駅周辺土地区画整理事業の1つとしてアンダーパスの工事が着工されました。
▼2008年(平成20年)5月撮影の航空写真

4航空写真2008
完成したのは3年後の2009年(平成21年)6月で、幅11m、高さ3.1m、長さ210m、事業費約23億3千万円でした。
アンダーパスは市道(花里昭和1号線)で、車高の高い大型バスなどは通行できないものの、一般車両が通行でき、これに合わせてアンダーパスから国道41号に抜ける市道(昭和中山線)は幅12mに拡幅されました。
 アンダーパスの工事により、その上にあった開業当時のままの木製矩形車庫(1934年築)は取り壊され、現在はその半分の長さの鉄骨製の車庫がその北側に新築されました。また、アンダーパス完成後、地下道は埋め立てられ、駐車場の一部となりましたが、その面影がわずかに見られます。
▼地下道があった付近(赤線の部分)

5アンダーパス

6アンダーパス
【航空写真】
国土地理院地図
【参考文献】
「高山市史(第一巻、第二巻)」、高山市民時報、「鉄道写真集 高山線の60年(郷土出版社)」
プロフィール

高山のキューロク

Author:高山のキューロク
岐阜県高山市在住で、高山駅の歴史を調べたり、それを鉄道模型で再現することをライフワークにしています。

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