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 色んな意味で、鈴木唯人が目立ちまくった試合だった。これまで左サイドハーフで起用されることが多かった唯人だが、ディサロおよび後藤の低パフォーマンスと、カルリーニョスの負傷離脱で、唯人がサンタナの相棒として2トップの一画として起用されるようになったのが、この試合だった。

 試合序盤に、唯人が突進し、ゴールキーパーまで外しながら、シュートをポストに当ててJ1初ゴールを逃した場面は、今季のJの珍プレー集で優勝しそうなトホホなシーンだった。しかし、その薬が効いたのか、その後この試合で唯人は、前線ハイプレスでチームに勢いを与える。なかなか前への矢印が向かないロティーナ清水にあって、唯人のプレスが勢いをもたらすような結果となった。先制点は、唯人が直接は絡んでいないが(スプリントしてDF2枚を引っ張ってはいたが)、それでも目覚ましい活躍だった。

 ちなみに、これ以降の試合でも、2トップの一画である唯人が前からプレスに行くのは定番になるわけだが、プレスの激しさや運動量ではこの神戸戦が一番だった印象を受けている。神戸戦では、相手GKにまで圧力をかけたり、そうかと思うと自陣に戻ってプレスバックしたり、広い範囲を精力的に動き回っていたが、後の試合ではそこまでの迫力は感じない。本人の変化なのか、それとも対戦相手やチーム戦術ゆえなのか。

 この試合、唯人の働きが光っていただけに、先制直後に唯人に代わって投入された後藤に物足りなさを感じてしまった。84分の場面で、後藤が左コーナーフラッグ付近まで持ち込みながら、なぜか自らタッチラインに蹴り出した場面は、唯人が決定機を外した以上の珍プレーと言わざるを得ない。自分でキープして味方のサポートを待ってもよかったし、相手に当ててコーナーやスローインを狙うならまだ分かるが、なぜ自らタッチラインに蹴り出すのか? 別に、学力テストができなくてもいいから、サッカーだけは賢くやってほしいものである。

 そんなこんなで、内容面で相手を上回ることのできた神戸戦だったが、改めてこの日の神戸のメンバーを見ると、全員が日本人である。あれだけ外国人依存度の高い神戸で、外国人選手が一人もいないのは異例と思われ、イニエスタもサンペールもドウグラスもいなかったからこそ先方の攻め手が限られたということは考慮すべきだろう。

 この試合、もし勝てていれば、今季のベストゲームだったかもしれない。しかし、左右の揺さぶりおよびクロスに弱く、試合終盤に致命的な失点を喫するという悪い癖がまたしても出て、勝ち点は1にとどまった。

 まあ、後から考えると、同点弾を浴びたことよりも、原輝綺が櫻内に踏まれて大怪我したことの方が、ずっと痛かったかな。あれは、守備を固めるためだったのか、奥井に変えてヴァウドを入れ、CBを務めていた原が左サイドに回った直後に起きた悲劇だったわけで、そのあたりも含め、終盤に不幸が集中した試合だった。

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