アメリカの捜査当局は11日、大谷選手の口座から本人に無断で1600万ドル以上、日本円でおよそ24億5000万円以上を不正に送金したとして、元専属通訳の水原容疑者を銀行詐欺の疑いで訴追しました。不正な送金は違法賭博でつくった多額の借金を返済するためだったとしています。
水原元通訳は現地時間の12日午前、司法当局に出頭して拘束され、ロサンゼルスの裁判所で日本時間の13日午前6時前から今回の訴追を受けた手続きが行われました。
水原元通訳 “大谷選手に謝罪したい”と声明 出頭し拘束・保釈
大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の口座から不正に送金したとして銀行詐欺の疑いで訴追された、元通訳の水原一平容疑者が、現地時間の12日、ロサンゼルスで司法当局に出頭し拘束されました。水原元通訳は裁判所で今回の訴追を受けた手続きが行われたあと、保釈され、弁護士が水原元通訳は大谷選手に謝罪したいと願っているとの声明を出しました。
この日の手続きは15分ほどで終わり、保釈の条件として、被害者である大谷選手に一切、連絡をしないこと、オンラインを含む一切のギャンブルをしないこと、それに加えて特別の条件としてギャンブル依存症を克服するためのプログラムを受けることなどが示され、こうした条件に違反した場合、保釈は取り消され、保釈金2万5000ドル、日本円で380万円余りを支払うこととされました。
また、次回は来月9日に罪状認否が行われることになりました。
このあと、水原元通訳の弁護士は声明を出し、水原元通訳がすでに保釈されたことを明らかにしました。
そのうえで「水原元通訳は大谷選手やドジャース、大リーグ、そして家族に対して謝罪したいと願っている。また、法廷で述べたようにギャンブル依存症の治療も希望している」としています。
一方、当初行うとしていた現場での取材対応は取りやめ「現時点ではこれ以上のコメントはないが、法的な手続きが進めばさらにコメントを出すだろう」と結んでいます。
廷内での水原元通訳の様子は
現地時間の12日午後1時47分、日本時間の13日午前5時47分に廷内に入った水原元通訳は、黒いスーツ姿でネクタイはなく、白いワイシャツのボタンを一番上までとめていました。
廷内に入ると満員の傍聴席の方に一瞬目をやり、表情はふだんと変わらない落ち着いた様子でしたが、ほおは少し痩せたようにも見え、疲れの色も感じさせました。
水原元通訳は、マイケル・フリードマン弁護士とともに判事から向かって右側の席に座ると、弁護士の要望で付き添った刑務官が足かせを外しました。
その後、弁護士とともに起立して廷内の中央に移動し、判事から、保釈金として2万5000ドルが設定され、保釈の条件としてオンラインを含むすべてのギャンブルをしないこと、被害者である大谷選手に一切、連絡をしないことなどが示されました。
水原元通訳はすべてに小さな声で「はい」と答え、さらに判事が水原元通訳に対する特別の条件としてギャンブル依存症を克服するためのプログラムを受けることも示すと、大きくうなずいた上で「はい」と答えました。
最後に次回の期日は来月9日と告げられ、手続きは15分ほどで終了しました。
廷内には50人ほどの一般傍聴席が用意されましたが、すぐに満席となり、中に入ることができない人もいました。
アメリカ連邦法の「銀行詐欺罪」とは
アメリカの連邦法に定められている「銀行詐欺罪」は金融犯罪の取締りに使われ、故意に金融機関を欺いたり、うそや詐欺などを用いて金融機関が所有・管理する金銭や有価証券などの資産を取得したりした場合に適用されます。
罰則は、「100万ドル以下の罰金」もしくは「30年以下の拘禁刑」、またはその両方が科せられると定められています。
起訴までの手続きは
アメリカの司法制度に詳しい専門家によりますと、裁判所では、裁判官による最初の審問が行われ、黙秘権の告知などが行われます。
そして保釈金を払うなどの条件が整えば釈放され、整わない場合は勾留されるということです。
その後は、民間人からなる「大陪審」と呼ばれる非公開の審理が行われ、訴追された容疑者を正式に起訴するかどうか決めることになります。
アメリカでの「訴追」とは
アメリカの司法制度に詳しい専門家などによりますと、訴追は多くの場合、検察官が訴追請求状を裁判所に提出して行われる手続きで、日本にはないものだということです。
大谷選手「これで一区切りとして野球に集中したい」とコメント
大谷選手は12日、水原元通訳が訴追され裁判の手続きが進んだことについて、本拠地で行われるパドレス戦を前に「捜査当局の捜査に感謝します。個人的にはこの件についてはこれで一区切りとして、野球に集中したい」とコメントしたと、ロサンゼルス・タイムズが伝えています。
大谷選手は日本語で返答し記者からの追加の質問には答えなかったということです。
試合開始前 いつもと変わらない様子で練習
大谷選手は試合開始前、練習を行うために小走りでグラウンドにやってくると、キャッチボールをして体を動かしました。
大谷選手はピッチャーとしてのリハビリを続けていてこの日はときおりトレーナーとフォームなどについて話しながらいつもと変わらない様子で10分ほどかけてキャッチボールを行い50球を投げました。
練習後はトレーナーと足の踏み出し方や腕の使い方を確認したあと走ってベンチ裏へと向かい、報道陣からの問いかけには答えませんでした。
ロバーツ監督「翔平が前進できることをうれしく思う」
ドジャースのロバーツ監督は水原元通訳が訴追され裁判の手続きが進んだことを受けて試合前の会見の中で「少しクリアになり、翔平が前進できることをうれしく思う。翔平の潔白が明らかになり、私たちはそれを信じていた。この事件が過去のものになり、これで野球に集中できることをうれしく思う」と話しました。
そのうえで、「彼は見事に対処してくれた。彼は野球をプレーすることだけに集中し、気を取られることなく、すばらしい仕事をした。彼は重荷を背負わないといけなかったが、それはプレーには影響しなかったと思う」と野球に対する大谷選手の姿勢を評価していました。
そして、「私たちの仕事は、プロフェッショナルになること、組織を代表して毎日ベストを尽くすことだ。みんな生活の中でいろいろなことがあるが、仕事に集中しないといけない。われわれは今いい野球ができていて、それはこれからも続いていくだろう」と改めてシーズンの戦いに集中する姿勢を強調していました。
ドジャースファンからは
ドジャースファンからは大谷選手が野球に集中できる環境が整うことを願う声が聞かれました。
大谷選手のTシャツを着た男性ファンは、「彼は本当に野球に集中しているし、関わっていないと信じていました。彼は仲間を信じていただけなのに、こんなことになって悲しいです」と大谷選手を気遣いました。そして、「彼も人間だから、多少はプレーに影響があると思うが、この活躍はすごいし、だからこそ彼は野球界にとって価値があるのだと思います。これからも“大谷”であり続けてほしい。彼がプレーオフで活躍する姿を見たいです」と話していました。
別の男性ファンは「きのう訴状を読んで、水原元通訳があんなことをするなんて本当に信じられませんでした。報道やSNSで大谷選手を信じていないネガティブな声もありましたがこうして落ち着いて彼が野球に集中できることがうれしいです。きょうはホームランを打ってほしい」と話していました。
また、女性ファンは「この問題にはフラストレーションがたまっていました。これで私たちも野球に集中できる。早く解決できたことはすばらしいと思います。彼はすばらしい選手なので、はやく落ちついてドジャースの一員になっていくといいと思います」と話していました。