拙著 「僕が帰りたかった本当の理由」
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ノンバーバル
2023年3月7日
今日は、
我が家の長男坊、
諒(りょう)の誕生日。
日本へ連れて帰れていたら28才になる。
彼の時計は26才のままシアトルで停まった。
あれから間もなく2年の月日が経つ。
もし連れて帰れていたら
優れた日本の福祉に支えられて
穏やかに生きていけたのかなぁ?
そんな事を今でも思う。
★
自閉症者の多くの場合、
自分の気持ちを言葉で表すことが出来ない。
話したい思いが有っても
頭の中で言葉へ変換する過程で、
様々な邪魔が入って
言葉へ辿り着く事が出来ないのだという。
思いを言葉に出来ない分、
周囲からは幼い子供の様な扱いを受けてしまう。
そして、
思いが伝えられないことがストレスと成り、
様々な問題行動へと発展する。
周囲からは尚更
『難しい障害者』
という扱いが強まってしまう。
これが
行動障害系の自閉症者が
生きている典型的な世界だ。
諒も
そんな不自由な世界の中で26年間を生きた。
★
有名な自閉症者で、
東田直樹さん
という作家が居る。
彼も話せない自閉症者の一人だが、
文字盤やキーボードを用いる事で
人とのコミュニケーションが図れる。
彼が執筆した本は、
ノンバーバル(非言語)な自閉症者でも
実は、
心の中には豊かな情緒が織りなす
精神世界が広がっている
という事実を
世界中の人々に知らしめた
パイオニアだ。
言葉を発する事が難しい
障害者の気持ちを代弁することになったので
世界中の人々が驚き
本は大ヒットとなった。
今では、
世界中で翻訳されて、
或る意味、
自閉症界のヒーロー的な存在となっている。
そして
東田直樹さんが言葉での表現が出来るようになった
最大の理由は、
母親である明子さんが開発した技法に依るものだ。
文字盤を指さして意思を伝える技法。
これを使えば、
話そうとすると頭の中で消えてしまう言葉を
引き出すことが出来る。
効果が認められて、
一部の
特別支援教育や障害者福祉業界でも
使われ始めているらしいのだが、
導入や実践の難しさが有って、
広く普及するまでには至っていないのが実情の様だ。
実は
アメリカにも
これに酷似した技法が存在している。
1990年代にインドの教育者によって開発された
RPM
という技法だ。
こちらも、
科学的な根拠が不十分、
専門的なトレーニングを受けた指導者による支援が必要、
時間やコストがかかるという課題、
といった理由によって、
アメリカの福祉制度全体で
採用されるまでには至っていない。
当然、我が家の長男坊、
諒も、
その技法を取得する機会を得る事は
出来なかった。
従来型の支援プログラム(TEACCH)の中で
用いられている技法
(PECS, AAC, SCERTS)
に限定されたものしか教育を受けられなかった。
結果として、
自分の本当の思いを
言葉で表現する手段を
最期まで持つことは出来なかったのだ。
★
そのRPM技法に
運よく出会って実践する事が出来た
友人がアメリカに居る。
彼女のブログ(↓下段)からは、
ノンバーバルな自閉症の
息子さんが
『ありがとう』
という感謝の思いを
言葉で伝えられるようになった
喜び
がヒシヒシと伝わってくる。
↓
もしも、
諒もRPMに出会えて
心の思いを言葉に出来ていたら、
さぞかし幸せだったろうになぁ..
そんなタラレバな事を
彼女のブログを読みながら思う。
シミジミと
諒の遺灰に手を合わせていると。
諒) 『親父! 僕はもう話せるようになってるよ。』
身体から抜け出て
流暢に言葉で話す事が出来るようになった
諒の元気な声が聞こえて来た。
諒) 『僕の事なんかより、RPMの普及活動でもしたら?』
諒) 『どうせ暇なんでしょ?』
諒) 『講演会ででも話せるでしょ?』
確かに、
文字盤形式のコミュニケーション技法が
もっと普及出来たら、
感謝の言葉を周囲の家族や支援者へ
伝えられずに苦しんでいる
沢山のノンバーバルが
救われるかもしれない。
今日は諒の28歳の誕生日。
人生の中でも
最も躍動的と言えるこの時期に、
彼ならどう動いただろうか?
諒と相談しながら、
やってみるかな。
★★★★★★
諒君が、
いつもアメリカで食べてた大好物のウエハース、
誕生日プレゼントだよ。
江別のKALDIで見つけた。
日本でも売ってて良かったぁ。
-参考-
♦RPM(文字盤)
"Rapid Prompting Method"
"Treatment and Education of Autistic and Communication-related handicapped Children"
♦PECS(絵カード、日程表)
"Picture Exchange Communication System"
♦AAC(絵カード)
"Augmentative and Alternative Communication"
♦SCERTS(感情調整)
"Social Communication, Emotional Regulation, and Transactional Support"
書籍の購入は下のサイトから。
諒のウエハースも載せてみた。
↓