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非合理な生き方

 

 

2023年3月31日

 

 

「あ~ぁ、あと3年かぁ」

 

 

我が家の三男坊、

15歳

颯太郎(そうたろう)が

つぶやいた。

 

 

いったい何の事かと聞いてみると、

あと3年して18歳に成れば、

選挙権が与えられて

自分は大人として認められる。

 

 

そして、

大人として認められれば

親父の年収を教えてもらえる...

 

 

と、いうことらしい。

 

 

はぁ?

 

 

そんなルールが世の中に

有るものかと思いながらも、

更にその先の話を

聞いてみると、

 

 

我が家の生活水準と

同じレベルの生活を築く為には

自分が

どんな職業に就く必要が有るの

を見極めたい。

 

 

つまり、

親父の収入を参考にして

自分の職業を決めようという事の様だった。

 

 

う~む、

なかなか面白い発想だ。

 

 

実に合理的で、

颯太郎らしい。

 

 

 

 

 

 

合理的と言えば、

先日の英検の試験の時もそうだった。

 

 

颯太郎は、

インターネットから過去に出題された問題を見つけて、

その問題を、最近流行っているAI、

ChatGPTに答えさせた。

 

 

そして、

その答え方のパターンだけを頭に入れて

試験に臨んだのだ。

 

 

なんと

試験対策として行ったのは

たったそれだけ。

 

 

しかも

試験直前の前日だけだ。

 

 

 

『自分の目標に向けて

先ずは合理的に最短の道を見つけて、

成果を得る。』

 

 

 

そんな感じが彼のポリシーなのだろう。

 

 

これが

Z世代と呼ばれる今の若者の

思考なのだと

感心させられたのである。

 

 

 

 

 

 

でも、

人生は合理的な思考と行動だけ

上手く渡って行けるのだろうか?

 

 

そんな事を思いながら、

今度は自分の人生を振り返ってみる。

 

 

例えば、

私がアメリカで生活してみたい

と思ったのは25歳の時だった。

 

 

そして

その夢を実現する為に費やした時間は10年

 

 

実現に向けて

色々と画策はしたものの

費やした10年という長さは、

決して合理的で効率的とは言えない

 

 

挙句の果てに、

渡米の決め手になったのは、

自分の意思や努力というよりは、

障害児だった長男坊、諒(りょう)のお陰だった。

 

 

 

会社の上司) 『日本よりも優れたアメリカの療育を享受できれば

仕事に集中出来るでしょ?』

 

 

 

これが

アメリカへの赴任命令を下した

当時の上司の言葉だった。

 

 

合理的な話では無く、

単に

諒の存在が私の夢を叶えてくれたのだ。

 

 

 

 

もう一つ、

次の例でもそうだ。

 

 

非常に制限されることが多かった

重度の知的障害者(長男坊)を支える

我が家の生活は、

不自由で生きづらい人生だった。

 

 

なんとか

この問題を解決したいと考えて行った行動

合理性に長けたものばかりではなかった。

 

 

激しい嵐の中を、

自分の意思では右も左も決められず

進める方向にだけ

ただひたすらに

進むしかなかったのだ。

 

 

 

 

でも

何故なのか、

その結果で辿り着いたところには、

精神性の高い人々との出会いや、

数々の奇跡的な出来事

想像もしなかった豊かな精神世界

広がっていた。

 

 

振り返ってみると

覚悟を決め

ひたすらに問題に対峙してきたことが、

結局は自分の魂が望むところ

運んでくれた人生だったように感じる。

 

 

明らかに

合理的で効率な人生では無い。

 

 

でも、

だからこそ辿り着けた境地が有ったのだ。

 

 

まるで

非不合理な生き方でも

覚悟を決めてただひたすらに歩む事

行きたい場所へ

連れて行ってくれることを、

教えてくれているかのようだ。

 

 

「こんな親父の経験も颯太郎へ教えても良いかもなぁ?」

 

 

そう思った。

 

 

 

 

 

私) 『親父の年収は今は教えられないけど、

もっと面白いものを教えてあげるよ』

 

 

そう言って、

私が颯太郎へ準備したものは1枚の紙

 

 

そこには

2本の折れ線グラフが描かれている。

 

 

縦軸には金額

横軸には22歳から58歳までの私の年齢が記されている。

 

 

描かれた2本の折れ線グラフは、

 

 

『我が家の収入

『我が家の資産

 

 

を示したものだ。

 

 

具体的な金額は示されていないが、

この2本の折れ線グラフを見れば

収入と資産との相関関係が分かる。

 

 

すなわち

収入が生活水準に与える影響を説明したものだ。

 

 

 

私) 「資産の大きさは、実は収入だけが要因じゃないのが分かるよね」

 

私) 「人生に起きるイベントの種類と、どうやって生きるかの方が大きい」

 

 

 

真面目な説明を開始すると、

 

 

 

『またまた親父の説教が始まったなぁ...』

 

 

 

そんな表情を浮かべながらも

颯太郎は黙って私の説明を聞いている

 

 

 

我が家のイベント、

 

「就職」

「結婚」

「共稼ぎ」

「障害の有る息子の誕生」

「新居建築」

「アメリカ赴任」

「訴訟」

「転職」

「交通事故」

「火事」

「アメリカ家購入」

「永住権取得」

「資金運用」

「発病」

「息子との死別」

「3度目の新居購入」

「日本への本帰国」

「出版」

「闘病」

 

 

人生の各イベントに合わせて

我が家の資産は

ジェットコースターの様に

上がり下がりを繰り返すことが見て取れる。

 

 

そこに

合理的な法則が無いのは明らかだ。

 

 

そこに有るのは、

目の前に起こる問題に

ただひたすらに対峙する事が、

生活水準を決めて来たという記録だけだ。

 

 

ほら、

 

 

私) 『収入で生活水準が決まる訳じゃないよね』

 

 

生活水準を意識して働くよりも、

 

 

私) 『頭で考え過ぎず、目の前の問題に真摯に対峙する』

 

 

そうすれば、

自分の魂が望むところへ歩んで行ける

 

 

そんな真面目な説明を続ける。

 

 

最後まで大人しく聞いていた颯太郎だったが、

理解してくれたかどうかは分からない。

 

 

ただ、

 

 

 

颯太郎) 『ふ~ん、そっか。』

 

 

 

と、

一言だけ残して、

颯太郎は、

2階の自分の部屋へと

静かに姿を消していった。

 

 

 

 

★★★★★★

 

 

 

もう3年後には、

具体的な収入金額を聞いて来ないかな(笑)

 

 


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