こんにちは。
あおい堂鍼灸院の今泉です。

 

 

病院における円形脱毛症の治療は日本全国どこへ行ってもだいたい同様の治療が受けられます。

一方で鍼灸治療に関しては円形脱毛症と言えばこのような治療と決まったものがあるわけではありません。故に10人の鍼灸師が居れば10通りの治療があります。

そのような中ネットで鍼灸を検索していると時折見られるのですが身体が鍼だらけのまるでハリネズミではないかと思える画像があります。すごいです。ネットの世界では特に美容鍼灸に関してハリネズミ傾向が強いと個人的に思います。高校生(?)の時に流行った「ヘルレイザー」という映画を連想せざるを得ない。よくもまぁこんなに鍼を打ったものだと感心してしまいます。しかし問題はソコではないのです。今までに鍼灸を受けたことのない人たちはその画像を見て鍼灸とはこういうものだと印象を持ってしまうのです。結果「鍼は悪いところに数多く打ってなんぼ」の単純な刺激のみ療法だと思われがちです。実際に当院に初めてご来院される方々の中でも人生初の鍼灸となる場合があります。その際に脱毛部が鍼だらけになる覚悟で来られる方も実際に多いです。確かにネットを見ていると脱毛部に鍼を打ちまくってまるで茶道の茶筅のようになっているものが散見されます。これで改善したなどと書かれていればそれは単純な刺激によって髪が生えてきたと思われて無理ありません。どのような意図で多数の鍼を打っているのか不明です。ではこの療法が無効なのかと言えば無効とまでは言いませんが無駄の多い努力に私は感じられますし、適応できる状態が非常に少なくなってしまいます。単発や多発ならばいくつかの脱毛部にそのような施術を試みる事もできると思いますが、もしそれが汎発性のように面積の大きい脱毛部だったりしたらどうするのかなぁと思います。それこそ超ハリネズミにならざるを得ません。

 

では患部に鍼をしなくても治るのか。

本日はこれについて症例を交えながら見てみたいと思います。

 

 

≪症例≫

  • 30代女性
  • 人生初の円形脱毛症(多発型)
  • 舌色:暗紅
  • 舌体:胖大(ばんだい)
  • 脈状:弦脈(げんみゃく)
  • 六部定位脈診:左関弱い
  • 軽度のアトピー
  • ねつき良い
  • 肩こりはそれほど

※脱毛状態:多発型

とはいえ2か所のみの多発型で場所は下の図の『K2R』と『S4L』

↑1年半前に頑張って定めましたが今まで1度も使わなかった草

 

≪ながれ≫

発症は6カ月ほど前で美容室で指摘される。皮膚科においてステロイド塗り薬(デルモベート)を処方される以外に市販の塗り薬を使用。当院においての治療中もお薬の条件に変更はなかった。

来院動機としては脱毛部に変化がなく不安になったため。

最初の脱毛部は『K2R』でほどなく『S4L』がみつかる。

因みに『K2R』は縦7センチ、横4センチ程度の脱毛部である。

『S4L』の大きさは下の画像を参照してください。

 

≪証立て≫

脈も舌もそれほど何かを強く感じさせるものはありませんでした。

敢えて言うならば舌体が胖大舌は陰虚がうかがえます。胖大舌とはベーッと舌を出していただいた時に大きく分厚い形をしている事です。舌を出す時、ベロンと出すかベーと出すかシャーッと出すか(?)舌の形状が人により異なります。胖大舌とは陰虚の為に舌を引き締める事が出来ていない状態から陰虚と判断しました。六部定位脈診から左の寸関の部位の脈が弱い事から陰(血)虚であると云えます。それと脱毛部が発現した部位は足少陽胆経の流注である事から『肝血虚』とみましたが、程度はそれほどでは無いように感じました。

強いて言えば体質は肝血虚ですがおそらく軽い気滞が生じて発症したと判断しました。

少しわき道にそれます。

円形脱毛症に成ると何か身体に深刻な悪い状況が訪れていると感じてしまいます。もちろんそういう場合も当然あるのですが、そうでもない、単純に身体がこったり一時思い悩んだりしただけである場合があります。過去記事『ケガとヤマイ』にも書きましたが今回の症例は種明かしをすると『ケガ』にあたると思います。『ケガ』は身体の不調が引き起こすわけではありません。何か突然のアクシデントに見舞われて「ケガ」をする場合がほとんどだと思います。病の爆弾理論でいえば起爆装置はそこそこの規模だったが爆薬が少ないので小規模の爆発だったと例える事が出来ると思います。「ケガ」の場合は脈も舌もそれほど悪くなっていない、悪化していないと感じています。ただし「ケガ」であっても「ケガ」の程度の軽重はまた別の話です。

 

私のブログも少し反省なのですが難治性に照準を合わせた書き方をすると円形脱毛症の全てがとんでもなく重篤な体調不良によって引き起こされると感じてしまいます。世間全体でみれば実際は軽傷の方がずっと多いと個人的に思います。ここで記しておきます。

 

 

 

≪施術の経過≫

↑例のごとく当院での画像撮影は2回目から始まります。

これは『S4L』です。見てみると折れている毛(萎縮毛)や切れ残った毛がまだ見受けられます。過去記事「予測される脱毛範囲」でも書いていますが脱毛部生え際よりも内側の毛はいずれ抜けて仕舞います。よって生え際よりも内側の毛が折れても切れても抜けても「新たな悪化」ではありません。むしろ順当な流れと云えます。初診時にマイクロスコープを用いて脱毛部を観察した際には産毛は確認されませんでしたが第2診では極短い白い産毛が確認できました(画像では非常に見えずらい)。

 

 

 

↑第3診です。

耳の上部との境が抜けてしまいました。一方で折れている毛や切れ残った毛はまだあるものの、前回は見えていなかった黒や白の産毛が確認できます。

 

 

↑第4診です。

まだ少数の切れ残った毛はあるものの、折れた毛は無くなりました。折れた毛は非常にもろいのでちょっとした事で直ぐに切れてしまいます。観察時にあるという事は時系列的につい最近折れた(異常を起こした)事が分かります。つまり何かしらの悪い現象が継続している事に成ります。症例では折れた毛が無い事から悪化は食い止まったと想定できます。

 

 

 

↑第5診です。

ずいぶん産毛が太くなってきました。切れ残った毛はよく見るとまだ少数残っています。ただどのような症例経過でもビジュアルが完全回復したのち半年程度はよく探すとまだ少数残っていたりもするのでこの段階で切れ残った毛がまだあるのは異常とは言えないと思います。

 

 

↑第6診です。

第5診の時に既にダイタイは回復していたのですが確認の意味で3~4週間後に来ていただきました。上記の画像のように分けているのでまだ脱毛部があるようにも見えますが直接見てみると周囲の頭皮と変わりません。脱毛部から生えて来た髪が時間的に周辺の髪の長さまで伸びていないのでそこだけ髪の長さが短くなっているだけです。

画像は掲載していませんがもう一つの脱毛部「K2R」も同じような状態になっています。

これにて施術は終了としました。

 

 

 

≪総評≫

当院においては軽度の症例だったと思います。実際に「こんなに早く治るんだったら良いよね」と思われるかもしれません。ただ処方されたデルモベートも使用しているためどちらが中心に功を奏したのかは分かりませんが、時系列的にずっと沈黙していた症状が施術開始後に良い方へ動き出したのを見ると……(*//艸//)。←ご想像にお任せいたします。

 

この症例の特徴は何かというと本記事のテーマに戻りますが

患部に鍼をしていないのです。

でも本体ともいえる『K2R』の方には毎回1本だけ鍼をしています。しかも直ぐに外れてしまいそうな超浅い鍼です。なので今回ご紹介した画像は全て鍼をしていない『S4L』のみなのです。

円形脱毛鍼灸施術で時々話に聞くのですが深い鍼をする事もあります。えっ……頭皮に深い鍼?!頭蓋骨に刺すの??と思うかもしれませんがそうではなく横に向けて頭皮に平行に深く(長く?)刺します。少々えぐいお話です。誰が言い出したのかやり出したのか不明ですがその方式が好きな鍼灸師が結構多くいます。このやり方は正直痛い事が多いですし出血もしてしまいやすいです。想像ですがこの方式がやりにくいため代替案として患部に沢山の鍼をして茶筅状態にする方法を編み出したのではないかと思います。

しかし、先ほどの『S4L』の経過を見てお分かりの通りに必ずしも患部に鍼をしなくても良いのです。むしろ鍼の数が少ない方が良くは有っても悪くはない無難であり同時に指向性のある施術だと私は感じています。よく料理に例えるのですが高級で良い調味料が種類豊富にあったからと作る料理にそれらを全部入れれば美味しい料理に成るとは言えない事と似ています。鍼の数は互いに効果を高める事もあれば打ち消しあって効果を相殺してしまう事もあると感じています。どこかが痛い時、浅い鍼をしながら患部を動かして痛みを消す運動鍼と呼ばれる鍼のやり方があります。私はこの方法を良く用いるのですが、その際に1本だったら痛みが消えていたのに調子に乗って近くにもう1本ついかしたら痛みがぶり返したなどという事は今まで何度も経験してきています。

これも「気」を動かすための鍼ならば少数で良い、というか逆に少数であるべきともいえる現象だと思います。

 

 

そしてまた症例の話に戻ります。

先ほど「『K2R』が本体だ」なんて表現をしました。確かに発症も早く、大きさも『S4L』よりも大きいので本体だと思います。そして本体には鍼をして随伴症状である『S4L』には何もしていません。ですが『S4L』は本体と同時期に治りました。

これは円形脱毛症のあるあるだと思います。

例えば汎発性だったとしても全頭が一斉にムラなく生えてくる事は稀であると思います。例え一斉に生えてきたように見えたとしても必ずどこか回復の遅れがムラとして生じている事だと思います。そこが一様に見える症状の中でも最も病が重い部位だと思います。そこが本体です。大抵の場合は最も最初に発症した部位か、面積の最も大きな部位、他は治るのにそこだけなかなか治らない部位などが本体を見定める方法だと思います。ご自身で頭皮マッサージなどをしてみる場合は他はおいても本体を中心にケアしてあげられるのが良いと思います。

 

 

よければ参考にしてみてください。

 

≪参考過去記事≫

↓ケガ?ヤマイ?ナンノコッチャ?

 

↓起爆装置と爆薬だって?

 

 
以下オススメ品
 
 

 

 

 

胃が元気になる気がします(個人的な感想)。

副作用はお腹がすくこと?!

亜鉛も銅も入ってます。

チロシンも入っています!

 

 
 
 
 
 
 

 

 
 
 

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