先日、滋賀県高島市へ見積調査の後、時間があったので、散策に出かけました。
滋賀県は大好きな土地ですが、その中でもお気に入りは
西に比良山系を望み、丁寧に整備された
ゴルフ場のフェアウェーのように
びわ湖まで田園が延々と続く、
解放感ある高島市周辺の初秋の風景です。
今回訪れた場所は高島市新旭町針江。
この小さな集落には
日本の生活で見ることが少なくなった
湧水利用の文化が今なお残されています。
集落内の地盤に20m程の鉄管を打ち込むと
豊富な比良山系の伏流水が湧き出ます。
針江で暮らす人々のほとんどが
その水源から湧き出す水を
水路や生活用水として利用するシステム。
それが「かばた(川端)」です。
「かばた」は大きく分けて
針江地区に張り巡らされ
各家庭に引き入れられる水路と、
各家庭の敷地内に
湧き出た水源に分けられます。
家を取り壊した跡に今なお残る壷池
水源から湧き出たきれいな水は、
飲み水をはじめ、野菜など食材を洗い、
冷やしたりする「壷池」、
その後、食器洗いを
「端池」で使用するなど、
用途ごとに汚れた水が
混じらないよう区切り、利用されます。
最終的に洗浄なので出た飯粒や野菜くずなどは、
敷地内の壷池に飼われている
鯉などに食べさせることで
下流で利用する人々のことも考え、
汚れた水が水路に戻ることのないよう
集落人々の信頼関係のもと、
工夫、維持されているそうです。
水路に泳ぐ鯉
しかし、現在に至るまでずっとこの水の文化が
大切に守られてきたわけではなく、
十数年程前までは
この地区の住民のほとんどが水道水を使用し、
かばた文化が消えかかった時期も
残念ながらあったようです。
そんな中、2004年琵琶湖の水との共生をテーマとしたドキュメンタリー番組で
「かばた」が紹介されたのをきっかけに、
昔から脈々と伝わる水とともに
暮らす文化の大切さを見直されることとなり、
針江地区で暮らす多くの方々の努力の結果、
昔ながらのかばたの姿を取り戻したという
歴史があると聞きます。
針江地区の街並み
私たちアスワットも
「自然との共生」という難しいテーマを
かかげて仕事に取り組んでいますが、
人が豊かな暮らしを求めて進歩していく上で、
自然との共生は理想であり
現実的には難しいのでは?
という率直な意見もある中で、
私自身も相反する両者に
それはあり得ないことではないだろうかとも、
考えたりすることもあります。
今回、針江で暮らす人々のかばた復活の取り組みを
自分自身で歩いて見ながら感じたこと。
『自然との共生』
それは自然から私たちの暮らしの方へ
歩み寄ってくることは決してない。
しかし、脈々と受け継がれてきた
文化や知恵をとおして、
私たちの暮らしに自然がいかに大切なのかを
やさしく語りかけてくれている間に、
私たちがどれだけ
近くに歩み寄ることができるのか。
そうすれば自然は静かに
私たちに寄り添い長くつき合ってくれるはず。
透き通った水路に揺らめく梅花藻を眺めながら
そう感じた針江の散策でした。
梅花藻:バイカモは漢字で『梅花藻』と書き、
初夏に梅の花に似た白くて小さい花が
咲くことからきています。
咲くことからきています。
バイカモは清流にしか育たず、
ここは滋賀県でも数少ない生育地のひとつ
あわせて読みたい関連記事