エンリコ・オノフリ(指揮)ハイドン・フィルハーモニー管弦楽団 「奇蹟」と「運命」 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(6月27日・浜離宮朝日ホール)

革命的なハイドンとベートーヴェン。「奇蹟」と「運命」というタイトルがあまりにも符合する。

2018年にも同じオーケストラでニコラ・アルトシュテットの指揮とチェロによるオール・ハイドン・プログラムを聴いたが、その時は今夜ほど過激な印象ではなかった。

ハイドン・フィルハーモニー ニコラ・アルトシュテット(指揮/チェロ独奏) | ベイのコンサート日記 (ameblo.jp)

 

ハイドン・フィルハーモニー管弦楽団*は8-6-4-4-2の編成で、立奏。ノン・ヴィブラート奏法。トランペット、ホルン、トロンボーン、ティンパニはナチュラル楽器。木管はモダンも使う。

 

1曲目ミヒャエル・ハイドン(ヨーゼフの5歳下の弟。19歳年下のモーツァルトとは大親友だった)の「交響曲第 39 番ハ長調P31」。3つの楽章で構成される。

元気溌剌の演奏。オノフリのエネルギッシュな指揮が音楽の勢いを伝える。

第1楽章と第3楽章の一部のオノフリ、ハイドン・フィルの映像がある。
ハイドン・フィルハーモニー/エンリコ・オノフリ指揮「ミヒャエル・ハイドン:交響曲第39番第1楽章より」 - YouTube

ハイドン・フィルハーモニー/エンリコ・オノフリ指揮「ミヒャエル・ハイドン:交響曲第39番第3楽章より」 - YouTube

 

ヨーゼフ.・ハイドン 「交響曲第96番 ニ長調 Hob. I:96 《奇蹟》」

オノフリ、ハイドン・フィルの演奏はアグレッシブ。古楽系の音源をいくつか比較のため聴いてみたが(ミンコフスキ、アーノンクール、ノリントン、ブリュッヘン)、一番過激な表情がある。古楽特有の音の切れとぶつかり合うハーモニーや金管の激しさがそれを強調する。

第1楽章アレグロはベートーヴェンの初期交響曲と変わらない活気がある。
第2楽章の優雅なアンダンテも、トリオのミノーレになると激しい表情が強調される。第3楽章メヌエットのトリオのオーボエのソロが飛びぬけて美しい。楽器はモダン?
第4楽章フィナーレ、ヴィヴァーチェ・アッサイは軽快な舞曲だが、オノフリ、ハイドン・フィルは付点音符を強調する。またミノーレの短調の中間部を激しく弾き、スフォルツァンドに最大の力を込める。チェロとコントラバスの低弦のゴリゴリとした響きも凄い。この楽章はこれまでのハイドンの交響曲のイメージを変える革命的な激しさがあった。

 

後半のベートーヴェン「交響曲第5番 ハ短調 op.67 《運命》」は強烈な演奏になるのではと予想したが、実際はそれを超えた。ハイドンも革命的だが、ベートーヴェンも凄まじい。

 

第1楽章の運命主題の叩きつけの激しさはほぼ予想の範囲内。第2主題が出る前のナチュラル・ホルンがヘロヘロだったのはご愛敬か。コーダでもこけたのはちょっといただけない。

そのコーダの低弦は凄まじい。ティンパニにも驚愕。浜離宮朝日ホールというこぶりのホールで座席も近かったので余計にそう思えたのかもしれないが、バロック・ティンパニであれほどの激しい打音を聴くのは初めて。

 

第2楽章アンダンテ・コン・モート チェロとヴィオラの主題は勇壮。ゥッティは充実した響き。第1変奏のチェロとヴィオラがいい音。チェロが特にいい。

 

第3楽章スケルツォは冒頭のチェロとコントラバスによる動機のテンポが速い。トリオのチェロとコントラバスによる主題の動きの速さ、ゴリゴリ、ゴツゴツした強烈な音に仰天。これも革命的だ。

 

第4楽章も冒頭のトゥッテイの第1主題から強烈。ナチュラル・トロンボーンにコントラファゴットも加わる。上行する第2主題も同様に激しい。提示部繰り返しあり。再現部はそれまでを上回る激烈な演奏で進み、ガンガンと躍動する和音で締めた。

 

浜離宮朝日ホールの聴衆からロックコンサートのような歓声が起きた。

 

アンコールは《奇蹟》の第3楽章メヌエット。

 

 

エンリコ・オノフリとハイドン・フィルのコンサートは、明日7月1日(土)14時からと7月2日(日)14時、ともに紀尾井ホールでの公演が、7月4日(火)14時からは大阪、いずみホールでの公演が予定されている。

詳しくは下記招聘元のサイトにあります。

Haydn Philharmonie 2023 (postedstuff.com)

 

 

エンリコ・オノフリのプロフィール

14歳にして初めてヴァイオリンを手にし、直ぐにN.アーノンクールよりコンツェントゥス・ムジクスに招聘される。その後22歳でJ.サヴァールの

楽団のコンサートマスターに抜擢される。20歳よりイル・ジャルディーノ・アルモニコのソリストを務めているが、同楽団の高名な「ヴィヴァル

ディの四季」CDのソロは彼が若干26歳の時の録音である。その後イタリアバロックを中心に、ソリストとしてのオノフリの名声はヨーロッパ中に

知れ渡っている。近年はベルリン古楽アカデミー等欧州各国の古楽団体や、リヨン国立歌劇場等モダン・オーケストラにも頻繁にソリスト、指揮者として客演している。自身のソロ活動としては「アンサンブル・イマジナリウム」を立ち上げ、2010年にロンドンで行った演奏会は英国 “The Telegraph” 紙の《2010年クラシック公演》にて第1位を得ている。ハイドン・フィルハーモニー首席客演指揮者。

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