調布国際音楽祭2023 川久保賜紀×佐藤晴真×松田華音チャイコフスキー《偉大な芸術家の思い出に》 | ベイのコンサート日記

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音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

(6月29日・調布市グリーンホール

前半はまず松田華音のピアノ・ソロで、チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より抜粋、「行進曲」「金平糖の精の踊り」「間奏曲」「トレパーク」「中国の踊り」の5曲が弾かれた。

調布市グリーンホールはデッドで響かず、松田には気の毒だった。それでも「行進曲」はキリリとしており、「間奏曲」は幻想的。

 

川久保賜紀(ヴァイオリン)と松田華音チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出 Op.42 は、二人とも丁寧な演奏だが、心の奥には届かない。やはり会場の音響のせいもあるのだろうか。

 

佐藤晴真(チェロ)と松田華音によるラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34-14(フーシュケ編)では、佐藤が舞台前方で弾くこともあって、音が前に出てきた。

 

前半最後は松田華音のソロで、チャイコフスキー:四季 Op.37aより「舟歌」「刈り入れの歌」

松田はホールに慣れたのか、演奏に活気が出ていた。

 

後半は3人によるチャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50「偉大な芸術家の思い出に」

ほの暗く情熱的な第1楽章「悲歌的小品」は、チェロのロマンティックな主題で始まる。最後は葬送行進曲となる。松田のピアノが際立っていた。

 

第2楽章 主題と11の変奏とコーダ

主題:松田の抒情的なピアノが惹きつける。

第2変奏: Più mosso 3人はまだ様子見という感じ。 

第3変奏: Allegro moderato 3人の緊密さがもう少しほしい。

第4変奏: L'istesso tempo (Allegro moderato) レガートに弾く松田のピアノが惹きつける。

第5変奏: L'istesso tempo 佐藤晴真のチェロの重々しさがいい。

第6変奏: Tempo di Valse 引き続き、佐藤のチェロの鳴りがいい。

第7変奏: Allegro Moderato ピアノに勢いがある。

第8変奏: Fuga (Allegro moderato) 松田が好調。

第9変奏: Andante fieble, ma non tanto ピアノが幻想的な表情。川久保も佐藤もしっとりとした表情があった。

第10変奏: Tempo di Mazurka マズルカを思わせるピアノが美しい。川久保が激しく弾く。

第11変奏: Moderato 3人がひとつになり、美しく歌い上げた。

最終変奏: Allegretto risoluto e con fuoco 3人は堂々とした演奏。佐藤と川久保が健闘。

コーダ: Andante con moto – Lugubre 劇的な演奏。ピアノがもうひとつ深い音だといいのだが、ホールの影響もあるのだろう。

 

アンコールはなし。

 

調布市グリーンホールは1977年開館で築46年。6月30日で閉館となった中野サンプラザが築50年なので、それよりも少し新しいが、いかにも昭和の香りがするホールで、トイレも狭く、エアコンの音も気になる。なにより音響が良くない。

 

4年前の調布国際音楽祭の記者会見で調布市文化・コミュニティ振興財団の責任者に『グリーンホールの建て替えの予定はありますか?』と質問したさい、『予定はあります』との回答があった。桐朋学園もあり、バッハ・コレギウム・ジャパンの地元でもあり、調布国際音楽祭も10年を超えた。民度も高く、駅前も整備され、きれいになった調布市にふさわしい音楽ホールの建設は急務だと思う。

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調布国際音楽祭2023 川久保賜紀×佐藤晴真×松田華音 チャイコフスキー《偉大な芸術家の思い出に》

(6月29日・調布市グリーンホール)

チャイコフスキー:「くるみ割り人形」より抜粋

チャイコフスキー:なつかしい土地の思い出 Op.42

ラフマニノフ:ヴォカリーズ Op.34-14(フーシュケ編)

チャイコフスキー:四季 Op.37aより

チャイコフスキー:ピアノ三重奏曲 イ短調 Op.50「偉大な芸術家の思い出に」

 

ヴァイオリン:川久保賜紀

チェロ:佐藤晴真

ピアノ:松田華音

 

 

 

 

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