デュトワ指揮新日本フィル ハイドン・ストラヴィンスキー・ラヴェル(6月11日・サントリーホール) | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

シャルル・デュトワと新日本フィルの初共演は1974年3月12日第17回定期演奏会(東京文化会館)。
曲目はベルリオーズ「序曲《ローマの謝肉祭》」、シューマン「ピアノ協奏曲」(ピアノ:内田光子)、バルトーク「管弦楽のための協奏曲」。

 

2022年6月、新日本フィルは創立50周年を記念し、デュトワと48年ぶりの共演を果たした。

プログラムは東京芸術劇場(6/9)がフォーレ「組曲《ペレアスとメリザンド》」、ラヴェル「ピアノ協奏曲」(ピアノ:北村朋幹)、ドビュッシー「交響詩《海》」というフランス音楽。

すみだトリフォニーホール(6/14)はバーバー「弦楽のためのアダージョ」、ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」(チェロ:上野通明)、チャイコフスキー「交響曲第5番」を演奏、2回のコンサートは大成功を収めた。

新日本フィルとしても楽団のポテンシャルを徹底的に引き出すデュトワの手腕に、すぐさま再演を検討したのだろう。翌2023年にもデュトワを招聘、2回のコンサート(6月24日・すみだトリフォニーホール、6月25日・サントリーホール)では、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」、ストラヴィンスキー「バレエ音楽『火の鳥』組曲(1919年版)」、ベルリオーズ「幻想交響曲」というデュトワ得意のプログラムで、これもまた素晴らしい演奏を成し遂げた。  

 

3回目となる今回の共演2日目をサントリーホールで聴いた。
冒頭に珍しくハイドン「交響曲第104番《ロンドン》」が置かれたが、後半はデュトワの十八番ストラヴィンスキー「《ペトルーシュカ》1911年原典版」と「ラヴェル《ダフニスとクロエ》第2組曲」が並ぶ。

 

共演3度目ということもあり、新日本フィルもデュトワの厳しいリハーサルと指揮に対応できるように力をつけていることを感じた。結果的にこれまでで最もまとまりがよく集中度の高い演奏だった。

 

デュトワから奏者個々が可能性を最大限引き出され、目覚ましいソロや合奏を聞かせた。特にフルート首席の野津雄太は大活躍で、《ペトルーシュカ》の謝肉祭の市場(夕方)でのフルート四重奏を引っ張り、また《ダフニスとクロエ》「無言劇」での長いソロを表情豊かに吹き、デュトワを感激させた。

 

また《ペトルーシュカ》での阪田知樹のピアノがヴィルトゥオーゾのように表現力が大きく、ひときわ存在感を放っていた。

 

演奏後デュトワは野津雄太をステージ前方に呼び寄せ、指揮台を指さし「ここへ立ちなさい」と指示、野津が遠慮すると手をとり指揮台に上らせ一緒に拍手を受けさせた。

 

デュトワへのソロ・カーテンコールが長く続いたが、姿をなかなか見せない。コンサートマスターの崔(チェ)文洙が一人登場して、『デュトワさんは大変お疲れで出られません』と聴衆に告げた。デュトワも今年88歳になる。《ダフニスとクロエ》を振り終わった後の表情がげっそりとしていたので心配である。

元気を取り戻し無事に帰国し、来年もぜひまた新日本フィルに登場してほしい。

 

演奏について詳しくは「音楽の友」コンサート・レヴューに書きます。

 

 

 

 

 

  翻译: