「うーん、そうかぁ」
少し元気のない、颯太の声が聞こえる。
「まぁ、聞かされても、何にもわかんないしなぁ」
ははは!
何とか裕太は、笑ってごまかしてやれ…と思うのに。
「まぁ~そうだろうなぁ」
颯太は何か思いつくことがあるのか、神妙な声を出す。
「先生はまだ、そっちにいるの?」
「うん、何だかじいちゃんに…伝説のこととか、詳しく聞きたいんだって」
「そっかぁ~先生って、そういう話を聞くのも仕事だって、言ってたもんなぁ」
颯太と裕太は、それぞれ思いを飛ばす。
本当に自分たちは…その伝説の島に、たどりつけるのだろうか…と。
「ちょっと、裕太!
いつまで話し込んでいるのよ。
早く電話を切りなさい」
いつものように、階段の下から、母さんが裕太のことを、うらめしそうに
見上げている。
「あっ、ヤバイ!」
「もしかして、オバサン!」
「うん」
母さんの鋭い視線に、裕太はそそくさと、電話を切ろうとする。
「あっ、ねぇ~
また、何かわかったら、電話して」
颯太の声が、裕太の耳に飛び込んでくる。
「わかった」
裕太がにぃっと笑う。
「こらっ!」
母さんの顔が目に入る。
「じゃあ、また」
電話の向こうの颯太に向かって、裕太は軽く手を上げる。
「うん、また」
一瞬、裕太の笑った顔が、見えるような気がした。