インドネシア大統領選挙戦近況その5 投票日3日前にはじまる暴露 | 知りたがりな日本人のブログ@インドネシア

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トップガン風のジャケットで、格納庫を歩くショートフィルムを撮影した後、ヘリコプターの上空からスカイダイビングで、数万人が待つ会場へ。全盛期のジュリーですらやらなかったような登場を、投票日まであと数日という時に候補者本人が挑戦するだなんて、いくらちょっとやりすぎな感じもするが。

 

ガンジャル氏は、国防がテーマの公開討論会の際に着用したミリタリージャケットをキャンペーンのステージでも着用し、リーダーシップをアピールしている。以前はジョコウィを支持していた80年代の硬派でカッコいいメタルバンド”スランク”が、公式にガンジャル・マフッド組への支持を表明しステージに参加するようになってからは、キャンペーンのステージは更なる盛り上がりを見せている。

 

一方、三回目の公開討論会以降、対立候補の悪口を言ったり、怒りっぽかったり、疲れているようにも見え、体調がすぐれないという噂のある72歳のプラボウォ氏と、4回目の討論会以降、アンチファンが増えたギブラン氏。キャンペーンで人が集まっているのはステージ周辺だけという噂がある。角度を変えて撮影したスカスカの写真がよく出回っている。

 

公開討論会第5回目の最終回、教育、健康、社会福祉がテーマだったが前々回のような見どころは特になく、特に影響を与えるような発言もなかった。それよりも影響があったのは、マフッド氏が1月末で大臣を辞任した後を追うように、ジョコウィ大統領がジャカルタ州知事として登場した際に副知事だったアホック氏が、プルタミナ国有企業のコミサリスを辞任したこと。

 

宗教侮辱罪で有罪とされ2年の懲役を終えてから、ほぼ沈黙を守ってきた彼がガンジャル・マフッド組のために再び壇上に上がり、以前と変わらぬ歯に絹着せぬ正論をガンガン飛ばし、迷えるアホッカー(ジョコウィの息子が出るのだから支持しなければならないと思い込んでいる州知事時代からのファン)たちを目覚めさせた。

 

選挙キャンペーン最終日だった2月10日は、各陣営が総力を結集しただけあって、プラボウォ組のブンカルノ競技場の集会も、アニス組のジャカルタ国際スタジアムも満席。アニス組が宗教色の濃い集会だったのに対し、ガンジャル組は、ジョコウィ大統領の地元ソロ市で、地元芸人らによる伝統色の強い集会を行った。

 

選挙運動期間が終わった後、投票日当日までは、選挙活動をしてはいけない期間になっていたが、その間にあった重要な事実・暴露について3つ書いておく。

 

  1. 国内の投票日に先行して行われた在外選挙で、民間の行った出口調査の結果、香港、欧州(英国を除く)、豪州、米国、南米、で、ガンジャル・マフッド組が50%以上の票を得て圧勝、中東ではアニス・ムハイミンが勝利。国内のアンケート調査では、常に圧勝とされているプラボウォ・ギブラン組は一つも勝利していなかった。

    ー>選挙管理委員会委員長が、海外の出口調査結果を、国内での投票が終わる前に公表するのは選挙違反だと警告。通信情報省は即、これを偽情報扱いにした。(前回2019年の選挙の際には禁止されなかった。このような扱いは初めて)
     
  2. 軍事国防アナリスト コニー氏による暴露
  • Mirage2000‐5戦闘機汚職疑惑 
    プラボウォ国防大臣が昨年(15年前に当時の国防相が、メンテナンス費用がかかるから無料でもいらないと拒否したことのある)中古戦闘機12機を8億ドルでカタールから購入する契約をしていたが、計画外の購入であったため予算の調整がつかず、延期になったと報道されていた。コニー氏によれば、この件に関し、欧州の汚職調査会がプラボウォ氏に先渡しされていたキックバック7%について追及していることを、欧州のメディアが報道している。 
    ー>国防省報道官が、この件は既にキャンセルとなったこと、拘束をうける契約は何もないと説明。
     
  • 取引きの申し出があったこと
    軍事アナリストとして、これまでプラボウォ国防大臣の武器購入マークアップ疑惑について厳しく批判してきたコニー氏だが、プラボウォ・ギブラン組の選挙参謀であるロサン氏から、副国防大臣の地位を約束するから支持者にならないかと誘われた。コニー氏が断ると、高級ジープベントレーではどうかと言ってきた。
    ー>ロサン参謀は、取引を持ち掛けてきたのはコニー氏の方だと主張、コニー氏は契約書を画像つきで公表して対抗。
    その文書の中に、プラボウォ氏が大統領になっても任期を全うせず、途中でギブラン氏にその地位を譲るという一文があったことも注目されている。

3.映画Dirty Vote 

  • 第一線で活躍する三人の法律・調査の専門家である大学教授が、公表されているデータを元に、今回の大統領選に向けてどのような陰謀がしくまれてきたかを考察する2時間の映画。Youtubeで公開され、2日間で既に7百万人が視聴している。
  • ジョコウィ政権下で、地域によってまちまちだった地方選挙を全国一斉同日に行うことにする変更があったが、任期が終了した知事の代役は次の選挙が行われるまで大統領の指名するというルールを利用して、20州知事、82市長/県知事が、2024年の選挙のために準備されてきたこと。裁判所の決定では、地域の意見を聞いた上で知事や市長を選抜することになっていたが、内務大臣によって無視されていたこと。
  • 選挙で勝利するための条件の一つである、最低州数を満たすため、(選択権を族長に任せるという伝統があるため)操作しやすいパプア州に2州を追加し、前例のない速さで州として、今回の選挙に参加する運びになっていること。
  • 選挙のための貧困者支援物資の配給が、パンデミック期を上回っていること。政府から突然配給先の変更指示により、得票に有利な地域に向けて配られ、大統領をはじめ、大臣らがこぞって自ら手渡し、”大統領のお陰”と念を押し、自らの政治活動のために活用していること。
  • 大統領出馬条件の一つ年齢制限に関する憲法裁判所の裁判では、実質的に賛成の裁判官が2名だけだったにも関わらず、大統領と義理の家族にあたる裁判長が強引に判決を通してしまったこと。裁判長は、被告が要求していない条件・言葉を付け加え、ギブラン氏出馬の道を開いたいきさつ。
  • 選挙管理委員会による、新政党設立の登録受付に不公平があったこと。特定の候補者に有利になる政党は、条件を全て満たしていなくても受付け、そうでない政党の申請は却下されていたこと。
  • 副大統領候補としてギブラン氏の登録を受け付ける際の手順に重大な誤りがあったという倫理委員会の判決により、選挙管理委員会委員長に対し、”最終的な制裁”(もう一回やったらクビ)を出していたが、実は、この委員長、昨年3月にも別件で最終的な制裁をうけていたこと。 

→ この映画が拡散されていることに対し、プラボウォ・ギブラン組の参謀チームは、誹謗中傷、信ぴょう性がない、訴える、とコメント。ガンジャル・マフッド組の参謀チームは、”反射的に訴えるのではなく、一つ一つデータを出して否定するべき”とコメントした。また、アニス・ムハイミン組参謀ユスフカラ氏(ジョコウィ政権一期目で副大統領だった)がとても意味深なコメントを付け加えて賞賛を示した ”こんなのまだ氷山の一角、25%にすぎないだろう”

 

それにしても、国民から愛される大統領が、口では仕事、仕事、と言いながら、陰でこんなに卑劣なやり方で、次の選挙の準備をしていただなんて非常にショックな内容だ。その一方で、この映画を、投票日直前に発表した先生たちの職業的正義感に敬意を示さずにはいられない。彼らは当然、選挙の後その通りになっているかどうかを検証するつもりにちがいない。そしてその結果は、組織的不正の証拠になる挑戦状ともいえる命がけの暴露だ。

 

明日は投票日、不正がないことに加えて前回のように開票スタッフが全国で何百人も亡くなるということがないことを祈る。また、ジョコウィ大統領の時のように、投票では白組の圧勝だが、閣僚では黒組が圧勝で失望することのないよう、ここで各候補者の選挙活動資金と主な支持者、メディアについて、参考までにざっとメモしておく。

#kongromaret di pilpres 2024

 

プラボウォ・ギブラン組

選挙運営委員会に登録された選挙運動資金314億ルピア

プラボウォ氏自身とその弟が億万長者、現役の経済系大臣のビジネスを含む鉱山開発やエネルギー、不動産などのコングロマリット企業、メディアではバクリーグループのViva ニュースやTVOneなど

 

ガンジャル組

234億ルピア

MNCグループのタノエ氏、観光経済大臣のサンディアガ氏(2019年の選挙ではプラボウォ氏の副大統領候補だった)、闘争民主党メガワティ氏の娘プアン氏の夫、産業会議所(カディン)会長、どちらもエネルギー関係会社社長。など

因みに、タノエ氏は、妻と子供5人揃って選挙に出馬している。

 

アニス・ムハイミン組

1億ルピア

アニス組には、メトロニュースを所有するナスデン党党首スルヤパロー氏、元副大統領のユスフカラ氏、ゴーベルグループ、インドネシア一のオンラインプラットフォームトコペディア社長。など

 

 

 

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