大河ドラマ『光る君へ』に、恋に生き、恋心を詠う和泉式部が登場したので、和泉式部について知ろうと思い、その著作『新潮日本古典集成〈新装版〉 和泉式部日記 和泉式部集 [ 野村 精一 ] 』について
帥宮との恋の始まりから、帥宮と北の方(正妻)の住むところに連れていかれ、帥宮と北の方(正妻)の関係が完全に崩壊してしまうまでを描いた和泉式部の心の変遷を描く日記と数々の歌
レビュー
本書は、和泉式部によるものとされる『和泉式部日記』と和泉式部の和歌を収めた『和泉式部集』で構成されています。
解説によると、『和泉式部日記』については、今は”日記”ですが『和泉式部物語』とも呼ばれたこともあるそうです。確かに、日記というように何年何月何日とはっきりとした記録は、帥宮敦道親王が和泉式部を正妻と伴に住む自らの邸に召人(使用人)という名目で連れていく日くらいしかないので、恋物語という形で理解される余地も十分にあるんだと読了して思いました。
『和泉式部日記』は、和泉式部が弾正宮為尊親王が若死にしたことで終わってしまった恋に、ショックを受けていた折に、その弟の帥宮敦道親王が亡き兄弾正宮に仕えていた小舎人童に和泉式部に、一緒に亡き兄のことについて語り合いましょうという歌を贈り、そこから恋が始まっていくことで始まります。
和泉式部は、夫がありながら、妻もある貴顕の弾正宮と許されざる関係となり、また、妻もある貴顕のその弟の帥宮とも許されざる関係となります。ただ、帥宮にも正妻がおり、また、乳母や周りからも、あの恋多き女で、いろんな男が通う女と非難されることや、その噂を本当ではと思わせてしまう出来事などで、契りあったにもかかわらず、二人の恋はすれ違いが多く、それに苦しんだり、恨んだり、疑ったり、けど愛しているってことでお互いに歌を贈り合い、その歌とそのときの和泉式部の心情がつづられています。
この日記では、帥宮はついにはその正妻と暮らすところに、自分の使用人(召人)という形で連れてきて、正妻は家を出て行ってしまう形で終わります。その後のことは描かれず、許されざる男女の関係の二人が、ついに一緒に暮らすことになるというハッピー?エンドとなります。
『日記』がこの帥宮との恋愛の大部分だけ(帥宮との恋愛もすべてではない)で構成されているのは、この日記がいつ書かれたのかということや、それだけ帥宮が忘れられない存在として和泉式部の心に刻まれているのだろうかなと思わされるものでした。
『和泉式部集』は、春・夏・秋・冬といった四季を詠ったものや、虫・菊・あさがお・庭の雪などの景物を詠ったもの、男女の仲となった男性たち(弾正宮、帥宮、初めの夫の橘道貞、次の夫の藤原保昌など)それぞれに詠った歌や弾性と交わし合った歌などで構成され、和泉式部の歌を味わうことができます。
〈書籍データ〉
『新潮日本古典集成<新装版>
和泉式部日記 和泉式部集』
校 注:野村精一
発 行:株式会社新潮社
価 格:1,800円(税別)
2017年12月25日 発行
図書館で借りた本のデータです。